長旅

「チッ、今日も収穫なしか……。」

ねちゃねちゃと嫌な食感がする完全栄養食を齧りながら、俺はドカッとその場に腰を下ろした。
完全栄養食というのはすごいもので、小型の割に腹持ちが良く、水分補給もできるという優れモノだ。ただ、如何せん不味すぎるというのが玉に瑕だが。
俺の名前は健永。祖先は当時は珍しかった怪異を探しに、世界中を旅していたらしい。今、俺は探すものは違えど似たようなことをしている。
俺が探しているもの、それは、植物だ。青々とした草、色とりどりの花。何百年も前は植物はありふれたもので、破壊さえ行われていたという。今となっては植物は珍しいもので、”生存圏レーベンスラウム"と呼ばれる人間が住んでいるところか、極稀に地面に生えているものしか存在しない。
結局この日も、植物を見つけることはなかった。
俺がいた生存圏は、緑神リュウシェンと呼ばれる、かつては中国と呼ばれていた土地のど真ん中にある大竹林地帯だった。
竹はしぶとく、その根を完全に破壊されるまで増殖を止めないらしい。その増殖速度は、世界を凄まじい速度で覆っている機械と張り合うほどであり、人間の助力がありながらもその勢力は未だに維持されている。
ただ、俺はその数少ない安全地帯を飛び出した。大量の食料と装備を盗み出して。
無論大量とは言っても人一人にとっては、であり、生存圏規模で見ればそこまで減ったわけでもない。装備も旧式の装備で、廃棄予定だったものを拝借しただけ。
竹の世界はもう見飽きた、見たこともない植物を見つけに行きたい__そんなことを言って飛び出したのが2カ月前だ。

「……酸素濃度、有害物質濃度共に異常なしと。」

この装備も文句のつけようはあるが優れモノであり、装着者の健康状態であったり、大型の保存スペース、そして周辺の酸素濃度や有害物質の濃度が分かるという機能が付いている。更に防塵耐性や防毒耐性も完璧であり、これに助けられたことが何度もあった。未だにメンテナンスをしていないのに通常通りの稼働を続けているため、文句を言おうにも言えない。
ただ、それでもどうしても言いたいことが一つだけある。
如何せん、暑苦しい。
どうしても内部機械の稼働だったりで内側に熱が溜まり、蒸れるのだ。最新型はそんなことないらしいのだが、2~3世代ほど前の装備なため、そういう対策が施されていない。

装備を脱ぐと、もわんとした熱気が放出されるのが分かる。袖で汗をぬぐい、保存スペースから愛用のマントを取り出す。表が黒、裏は赤のボロボロになったマントだ。
装備を枕に、マントをかけて目を閉じる。
我ながら無防備だとは思うが、こうでもしないと寝れないんだ。


夢なんか見ることもなく、ただ目が覚めた。どうやら機械の襲撃もなかったらしく、寝返りを打って体勢が変わった以外変化はなかった。
時間の感覚などとうになく、眠くなった時に寝て起きる。装備を着て起動させると、一瞬現在時刻のようなものが視界に映った直後に消滅する。この装備は最初から時刻表示機能が破損しているらしい。
ゆっくりと立ち上がり、再び旅を始めた。

……
…………
………………

いつも通り数時間歩いても、植物は全く見つからない。見つかったとしても、当に枯れた雑草ぐらいだ。
むしろ、段々と進めば進むほど道が狭くなっていっている気がする。

「もう少し進んだら引き返すか……。」

金属構造体というのは一日でその姿を大きく変える。
昨日通った道が、完全に閉ざされていて新しい道ができるなんてことはざらなのだ。
ある程度進むと、途端に空間が開けた。
植物は相変わらず生えておらず、柱状の金属構造体があちこちに生えてはいるが、壁のようにぐるっと囲まれているわけではないようだ。
酸素濃度、有害物質濃度も……特に問題はない。
ここなら仮拠点にできるかもな。
とりあえず、周囲の安全を確保しなければならなさそうだ。一見安全そうでも、機械がどこかをうろついているかもしれない。

柱の間を通りながら、周囲を見回す。数分ほど歩いているが機械がいるようには見えない。
あまりにも何もいないのでどこか不気味さを感じる。


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