じゃりじゃりさま

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Oda_kent 2021/04/17 (Sut) 12:00:43 #13423564


つい最近、某オカルト系雑誌の依頼でとある村に行く機会があった。今回はその村で起こった話をしようと思う。
その村はいわゆる辺境に位置していて、私が見た感じ人口もだいぶ少ない。地図にも乗らないほど田舎だと思ってくれればいい。
のどかで田園が広がるような風景が好きなもんで、正直この依頼を受けて正解だと思ってた。当時はな。

Oda_kent 2021/04/17 (Sut) 12:02:17 #13423564


さて、私は何もただ遊びに来ただけではない。先述の通り、私は依頼を受けてこの村に来たのだ。
依頼の内容は、この村の信仰について調べる事。どうやらこの村では独特な信仰が行われているらしく、それに興味を持った某雑誌側が私に依頼をしてきた。どうやらその某雑誌は心霊や都市伝説に慣れているパラウォッチャーを使って調査をしているらしく、たまたま私が目に留まったらしい。正直怪異慣れしているとは言え、一般人を使うのはどうかと思うが。
その村までの通路は正直悪路中の悪路で、崖に落ちかけたりよく分からない虫に刺されたりした。
この先に本当に村があるのか?とずっと思っていたのだが、本当にあった。
急に視界が開けたかと思うと、目の前の景色には黄金色の田んぼと古い建物がいくつも立つ、まさに田舎の空間が広がっていたんだ。
試しに住人に話しかけてみても、普通に返事をしてくれた。どうやら閉鎖的な村ではなかったようだ。
何でも外から人が来るのは珍しいらしい。私が某雑誌の依頼でここまで来たとその人に伝えると、「うちに泊まるかい?」と言ってくれた。数日間は調査する必要があると思っていたので、その申し入れは大分嬉しかった。

Oda_kent 2021/04/17 (Sut) 12:05:21 #13423564


その人の家の場所を教えてもらい、ひとまずはそこで別れた。散歩がてら、村の様子がどんな感じなのかを調べたかったからだ。
村を数分ほど歩いてみると、村に電気が通っていないことに気が付いた。
電柱、街灯、そういった類のものが一切ないのだ。夜はどうしているのだろうと思っていたら、「1つ100円」と貼り紙がされた小屋があった。中にはいくつかのろうそくと燭台、マッチが置かれており、これで光源を確保しているのだと知った。
次に、妙に若者が多いということに気が付いた。
たまに道で人とすれ違うのだが、そのほとんどが10代前半~後半ほどで、稀に老婆や老人とすれ違う程度だ。
田舎というと老婆や老人が多いというイメージとのギャップを感じ、正直かなりの違和感があった。
そして、ある程度歩いたところで巨大な建物が目に入った。
森の中にほぼ隠れた状態で存在している、通常のものの何回りも巨大な神社だった。
神社の手前には広場があったんだが、何かの準備が進められているようで立ち入り禁止と書かれた看板が道の真ん中に立っていた。広場には何もなかったことが妙に印象深かった。

Oda_kent 2021/04/17 (Sut) 12:10:41 #13423564


しばらくして、私は住人に教えてもらった家に向かうことにした。長い間散歩していたのか、上り途中だった太陽はいつの間にか真上に位置していた。
数分ほど歩くと、すぐにその家にたどり着いた。
そこで、微妙な違和感を感じた。一見普通の田舎にあるような家なのだが、何かが違う。
違和感の正体は、壁の素材だった。
壁の全てが押し固められた砂利や土、砂でできているようだった。
なぜそんな素材で?と疑問に思いながらも、開き戸をノックし、中へと入った。よく見ると開き戸も壁と同じ素材でできているようだった。
すぐに家の奥からはあの時の住人が出てきた。これから食事をするとのことだったので、一緒に食べさせてもらうことになった。
出てきたのは玄米とほうれん草のお浸し、豆腐の入った味噌汁という質素なものだった。
一緒に食事を摂りながら、その住人に色々と聞いてみることにした。
どうやらその住人(加藤というらしい)は40年以上この村に住んでいるらしく、かなり詳しかった。
・この村は槌威志(つちいし)村という名前であること。
・電気や水道、ガスなどの存在は殆どの住人が知っているが、最低限の生活用品の補充以外は外と交流をしないために使ったことはないということ。
・毎年秋になると、来年の豊作を祈って広場でお祭りを行うこと。
・じゃりじゃりさまという神様が信仰されていること。
・じゃりじゃりさまは子供が好きだということ。
……などなど、色々なことを教えてくれた。
私は味噌汁を飲み干すと、「最後の質問です」と前置きして、建物の素材について聞いた。何故砂や土を固めたものを使っているのかと。この時飲み干した味噌汁は、妙に味が薄かった気がした。
加藤は最後まで嫌な顔をすることなく、こう教えてくれた。

じゃりじゃりさまはね、土や砂利、砂と言ったものを好むんだ。何でかは分からないけど、神社の巫女が言うには、自然の力を最も感じられるのがそれなんだって。実際、ほとんどの建物が土や砂利でできてから、豊作の年が多くなったんだし、本当のことなんだろうね。

その時の加藤の顔は笑っていた。だが、何故か目が笑っていなかったのが気になった。
そう思ったのもつかの間、加藤は何かを思い出したような顔になって、話しかけてきた。

そういえば、君は神社とそのすぐ目の前にある広場を見たかい?今日はさっき言った祭りの日なんだ。夜になったら一緒に行かないか?

何か嫌な予感がしたものの、気のせいだと思ってその誘いを了承した。

Oda_kent 2021/04/17 (Sut) 12:13:49 #13423564


じゃあ僕は昼寝するから、と加藤は二階に上っていき、そして扉が閉じる音が聞こえた。
私は軽く家の中を探索してみることにした。
まずは台所。ガスや水、電気は本当に通っていないらしく、燭台や竈なんかが置いてあり、そして竈の上にある窓からは小さな井戸があるのが見えた。
ジブリ作品の世界にいるようだった。
ただ、何故か妙に真新しいように見えた。井戸には見た感じコケなどは生えていないし、竈には炭がほとんどついていなかった。まるで数回しか使ったことがないかのように。
次に、先ほど食事を摂った居間に行った。囲炉裏や仏壇があり、縁側からは田舎の綺麗な景色が見えた。
台所のように囲炉裏も仏壇も、妙に真新しいように見える。
仏壇の前にまで来たとき、奥に奇妙な生物の描かれた絵画が見えた。
巨大な頭に垂れ下がった肩、異様に長い右腕を持つそれは、大事そうに仏壇の奥の壁に吊るされていた。正直、かなり不気味だった。
廊下はほぼすべてが砂や砂利、土を押し固めたような素材である以外は特に変わりない。
そしてトイレだ。
ぼっとん式のトイレなんだが、やはりと言うべきか、妙に真新しかった。
サビていたり、臭いがするのかと思ったがそんなことはなく、無臭で、便器の色は外側も内側も白だった。
加藤は、本当に40年以上もここで暮らしていたのか?と大きな疑問が湧いた。
しかし、いま彼は寝ているし、せっかく家にいれさせてもらったのだ。わざわざ嫌われるようなことをする必要はない。
結局私は、夜になって加藤が起きてきてもそのことは聞かなかった。

Oda_kent 2021/04/17 (Sut) 12:16:21 #13423564


加藤に連れられて、真っ暗な夜道を私は歩いていた。
加藤の手には火の付いた燭台が握られ、暗い夜道を照らしていた、
空を見上げると、そこには今まで見たことのないほど綺麗な夜空が広がっていて、カメラを持ってくればな、と思うほどに綺麗だった。
視線を前に戻すと、遠くに明かりが見えてきた。
近付いていくと、どうやら祭りの提灯の光のようだった。屋台が建ち並び、その間に張られた線に提灯がぶら下がっていた。
どうやら始まっていたみたいだね、と加藤がいい、何か食べるかと聞かれた。
先ほどから妙に腹が空いてない私はそれを断り、広場の探索を始めた。
屋台はよく見ると一切の継ぎ目がなく、例の素材で作られているようだった。元々そういうセットがあったのかと思ったが、そこで朝に見た時の広場を思い出した。
そこにはなにも建っていなかったはずだ。
そんな十数時間で建つものなのかと、大きな疑問が湧いた。元々あったとしても相当重いだろうし、どうやって持ち上げたのかが分からない。あれを組み立てたとするのなら、なぜこんなにも継ぎ目がないのか。
仮に一から作ったとしたら……。どうやって圧縮し、どうやって形を整えたのか?
広間には一切削ったり、掘ったような跡もなかった。
疑問は深まるばかりだった。

Oda_kent 2021/04/17 (Sut) 12:20:54 #13423564


暫くすると、屋台が店仕舞いを始めた。
店仕舞いとは言っても、火を消し、調理器具や商品を取り外して地面に置く程度のことだった。
いつの間にか村人たちは神社のほうへと歩き始めていた。どうやらこの村のほぼすべての人口が居るらしく、かなりの密度になっていた。
その様子を眺めていると、加藤が私の横に近づいてきて、

そろそろ儀式が始まるよ。

と言い、神社のほうへと歩いて行った。
儀式?となりながら、加藤の後を私は追いかける。恐らくその儀式とやらを見ないと、依頼は達成できないと思った。
神社に近づくにつれ、私は段々と体が震え、悪寒を感じるようになってきた。
あの神社には、何かがいる。そう直感的に感じた。恐らくじゃりじゃりさまだ。

Oda_kent 2021/04/17 (Sut) 12:23:22 #13423564


神社の鳥居をくぐると、急に体の震えも悪寒もなくなった。気のせいだったんだと自分を騙し、私は村人たちが密集している場所へと歩いて行った。
どうやら何かを囲むように集まっているらしかった。
村人たちをかき分け、囲んでいる何かを見える位置につく。
そこにはかなり若い巫女と、その巫女を囲むように置かれた3つの御膳台があり、御膳台の上には饅頭のようなものが3つと、水であろう液体が入った盃が置かれていた。
巫女は美人俳優とはレベルが全く違うほど顔が整っており、僅かに幼さがあった。
暫くすると、巫女が口を開き、儀式に関する説明を始めた。
・巫女に指名された者は御膳台の前で正座し、じゃりじゃりさまに祈りをささげる事。
・次に御膳台の上に置かれたでいがん(饅頭のようなもののこと)を食べ、そして盃の水を一気飲みする事。
・それが終わったら、再びじゃりじゃりさまに祈りをささげる事。
その説明が終わると、巫女は早速2人の名前を読み上げる。
そして50代と40代ほどの男が前に出てきた。
巫女が3人目の名前を読み上げないので、何故かと思って巫女のほうを見ると、彼女は何やら戸惑った表情で私のほうを見ていた。

じゃりじゃりさまは貴方に儀式に参加してほしいとのことです。

俺も思わず戸惑った。俺はあくまで儀式を見るだけのつもりだったからだ。
だが、巫女の申し訳なさそうな姿を見て私は参加することにした。

Oda_kent 2021/04/17 (Sut) 12:27:59 #13423564


儀式に参加した私は、まず言われた通りに祈りをささげる事にした。
如何せん神に対するお祈りの方法はあまり知らないのだが、神社のように両手を合わせて目を瞑り、そして頭を下げた。
片目を僅かに開けて見渡すと、他の2人も私と同じようにやっており、合っていたのだと僅かに安心した。
そして巫女が「やめ。」と言うと同時に私は頭を上げた。
その時一瞬だけ他の2人と目があったんだが、明らかに虚ろで、死んだ魚の目のようだった。
次に巫女がでいがんを食べるように指示を出してきた。
でいがんを持ち上げてみると、僅かに崩れるような、ボソボソとしたような感じだった。
そして口の中に入れた瞬間、思わず吐き出しそうになった。
泥団子だった。
饅頭のように表面が滑らかで気が付かなかったが。明らかに泥だ。しかし他の2人は気にせず食べているようで、私は顔を歪めながらなんとか全部食べ、そして盃の水を一気飲みした。
口の中と胃袋にはまだ嫌な感覚が残っていたが、それでも緩和されたほうだった。
そして全員が食べ終わったことを確認した巫女が、再び祈りをささげるように指示を出した。
私は気分が悪いのを抑えながら祈りをささげる。
暫くすると、突然砂嵐が吹いてきた。いつの間にか村人たちは囲むのをやめ、遠くから見ているようだった。
砂嵐から顔を守りながら、風が吹いてきた方向を見る。
そこには、泥の塊が”立っていた”。
立っていたという表現はおかしいのかもしれない。ただ、私には立っているように見えた。
人型ではあった。だが、明らかに奇妙な形をしていた。
巨大な頭に垂れ下がった左肩、そして異様に長い右腕。体は流れるようにうねり、地面には泥が少しづつ広がっていった。
加藤の家で見た絵と完全に同じ外見だった。
じわじわと近づいてくるそれに、私は本能的な恐怖を覚えた。しかし、逃げようにもなぜか体が動かない。
周りを見ると、村人たちに体を押さえつけられているようだった。
必死に抵抗しようにも、複数人からかなりの力で掴まれており、全く動くことはなかった。
この時の村人たちの、張り付いたような笑みが嫌に記憶に残っている。
ある程度泥の塊が近づいてきたところで、「じゃりじゃり」という音が聞こえてきた。
これがじゃりじゃりさまか、と分かると、胃から何かが込み上げてきた。
じゃりじゃりさまの伸びた、異様に長い右腕があと数cmで私に触れるというとき。耐えきれずに私はその場で吐いた。

Oda_kent 2021/04/17 (Sut) 12:30:21 #13423564


口から出てきたのは、乾いた大量の砂や砂利、土だった。
泥団子の量では飽き足らず、加藤の家で食べた食事と同じくらいの量が出てきた。
あれも土砂でできていたのか、と思った瞬間、急にじゃりじゃりさまが苦しむような金切り声を上げた。
声というよりかは、金属同士がこすり合う音に近かったかもしれない。
そして次の瞬間、じゃりじゃりさまは体が崩れ、山の形をした泥になった。
俺が戸惑っていると、巫女が私の両肩を掴み。「何をした」と酷くしわがれた声で連呼してきた。
肩に伝わる力は女性だと思えないほど強く、骨がきしむ音が聞こえた。
そして、巫女は突然泥になった。
村人たちは俺を掴んでいた手を離し、慌てて神社から逃げようとするが、次々と泥になっていく。
そして、遠くから地響きが聞こえてきた。
広間のほうを見ると、屋台や田んぼ、提灯までもが泥に変化していった。
私は急いで神社から逃げ出す。
ほとんどの村人が泥になった中、3人ほどの子供は混乱した様子で私のほうを見ていた。
その子供は泥になる様子がなく、ひとまず彼らを連れて村から逃げることにした。
神社から出ると、田んぼは波のように泥へと変化していき、ほとんどの家は泥となって崩れた。
よく見ると道も泥に変わろうとしているようだった。
慌てて私は3人を担ぎ、村の外へ必死に走った。村から出る瞬間ふと振り返ると、あの神社だけは泥になることなく、そこに佇んでいた。

Oda_kent 2021/04/17 (Sut) 12:34:43 #13423564


うろ覚えに森を走り抜けると、偶然そこにいた農民が驚いた様子で私に話しかけてきた。

あんた、あの森の奥には何もないのに、どうして森から出てきたんだい?

私はあの村のことを話すも、農民は「そんな村はない」と返され、私は酷く混乱した。
とりあえず、私は子供3人を村の交番へと連れて行った。
村の交番にいた警察は驚いた顔になってその3人を見ていた。
話を聞いてみると、その3人は数カ月前から行方不明になっているとのことだった。
なぜ見つけられたのかと聞かれたので、私は咄嗟に「きのこ狩りで森の奥に行ったところ、3人が木のそばで泣いていた。」という嘘をついた。
子供たちも私に話を合わせてくれたおかげで、警察が私を誘拐犯だと疑うことはなかった。
その後は子供たちの親に感謝され、菓子折りを貰い、私は帰路についた。
某雑誌には適当に嘘をでっちあげて記録を送り、それ以降連絡をすることはなかった。
こんなことを言っても信じられるわけがないだろう__私はそう思った。

Oda_kent 2021/04/17 (Sut) 12:38:55 #13423564


あれ以降、あの村の近くにはいっていない。
後々調べてみると、槌威志村はそもそも存在しないというのだ。
では、私が見たあれは何だったのだろうか?ただの夢か?ではあの子供たちは?
結局、何も分かることはなく、私はその村について調べるのをやめた。
もう何も情報を得られないからだ。
ただ、あの時巫女に握られた跡は未だに赤く残っている。

Oda_kent 2021/04/17 (Sut) 12:42:11 #13423564


しかし、あれ以降私はあの3人の子供の親族と交流を持つようになった。
せっかくできた縁を切る理由もないので、たまに遊びに行くこともあるし、関係は良好だ。
特に3人の子供のうち1人の姉からは甚く感謝され、弟の近状報告ができるようにメールアドレスを交換しないかと言われた。
最初は断っていたんだが、何回も言われるうちに折れて、結局アドレスを交換することにした。
それからはたまに連絡を取り合っていた。どうやら彼女の弟はすくすくと育っているようで、私は内心安堵していた。

Oda_kent 2021/04/17 (Sut) 12:42:11 #13423564


しかし、最近彼女から段ボールが送られてきた。
段ボールの中には一通の手紙と、20cmほどの小包が入っていた。

突然ですが、私達は引っ越すことになりました。親の意向で心機一転をするため、携帯も解約することになります。引っ越し先の住所を教えたいのですが、どうしても教えることはできません。ごめんなさい。
ですが、私達と貴方の絆は会えなくなっても変わりません。
そのため、私達のことを忘れないために、小包の中にあるものを私達だと思って大切にしてください。
またいつか、会えることを願っています。

その手紙を読んで、私は寂しい気持ちになった。彼女たちにもう会えないとなると、なかなかに辛いものがあった。
そして小包の包装を解き、ふたを開ける。



中からは泥人形が出てきた。


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