ポーランド政府による”ショパン・プロジェクト”開始から半年経過 国内では反発の声も根強く……

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海外

ポーランド政府による”ショパン・プロジェクト”開始から半年経過 国内では反発の声も根強く……

2018年12月11日

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フレデリック・ショパンの写真 1849年撮影

6月10日、ポーランド政府が”ショパン・プロジェクト”と名付けられた復興事業を開始した。

”ショパン・プロジェクト”はポーランドの復興を目指すとともに、ポーランド国内でのフレデリック・ショパンの評価を偉人へと復権させることを目標としている。具体的な方法として、国内での公式・非公式問わない音楽祭やショパンに関する観光業などへの奨励・資金援助などを行うとしている。

聖ショパン正教会を含めた団体はこの活動を絶賛、自身らも協力するとの声明を出し、一部地域では聖ショパン正教会主催による音楽祭が始まっているという。

プロジェクト開始から半年、人々の反応はどうなのか。

「このプロジェクトを政府が立ち上げてくれて、本当に良かったと思います。」

そう語るのは観光ツアーガイドであるアリツィア・バダジェフスカさん。

「今までは一切観光客の方々が来ないということが少なく無かったのですが、”ショパン・プロジェクト”が始動して以降何十、何百という観光客の方々が来てくれました。フレデリック・ショパン博物館やショパンの生家などを見た方々が興奮したように、楽しそうに写真を撮っているんです。そしてツアーの最後に口をそろえて”楽しかった”と言ってくれました。このプロジェクトでポーランドが復興して、観光客の方々が更に安全に、更に楽しく来れるようになってほしいです。」

彼女のような賛成者の中には、”ショパン・プロジェクト”によって人々の楽しそうな顔が見れるという理由が多かった。
また、別の理由で賛成する人もいる。

「私は”ショパン・プロジェクト”に救われました。」

そう語るのは現在ワルシャワのアパートに住んでいるピアニストのアレクサンドル・アダムスキーさん。

「あの事件以来家を失っていた私は、ストリートピアノで食費を稼いでいました。その時、聖ショパン正教会の方が私に”音楽祭に出ないか”と声をかけてくださったのです。音楽祭に出て演奏すると、大きな拍手と歓声が私を包んだのです。その後、音楽祭への出演料として多額の現金を頂きました。あの日以来、あちこちの音楽祭から声をかけていただけています。私の音楽で生きる決意をしたという話を聞いた時は泣きそうになりました。間違いなく、”ショパン・プロジェクト”が無かったら私は死んでいたでしょう。」

彼のような被害者が、”ショパン・プロジェクト”によって命を救われたという理由も多かった。

しかし、”ショパン・プロジェクト”には否定的な意見が少なからず存在する。

「私はマウォポルスカ県の田舎で、夫と共に静かに暮らしていたんです。」

そう語るのは現在ワルシャワの仮設住宅に住んでいるアガタ・カバルスカさん。

「しかし、あの忌々しいショパンの顔をしたセミにより、夫は貪られました。私は夫の指示で部屋にずっと閉じこもっていたので、私だけはセミに貪られず、今こうして生きています。昔は好きだったショパンの音楽も、今はあのセミを、あの惨状を思い出させるものでしかありません。街中で耳にするたびに、それに交じって羽音が聞こえてくるんです。」

彼女のような被害者の中には、”フレデリック・ショパン”そのものに対し忌避意識がある人もいる。
一方、また別の理由で”ショパン・プロジェクト”に反発する人もいる。

「このプロジェクトが成功するようには、どうしても思えないんです。」

そう語るのは現在ワルシャワの一軒家に住んでいるアベル・コヴァルスキさん。

「聖十字架教会の近くを通ったところ、”ショパンの心臓を破壊しろ”だとか、”ポーランドに復興を、ショパンに滅びを”だとか、酷い落書きがされていました。ショパン本人はヴェール崩壊とも、ポーランドの南部壊滅とも関係がありません。しかし、風評被害が余りにも大きいんです。ショパン目当てにポーランドへ来る人もあまりいないのではないでしょうか。」

風評被害により、ショパン関連の観光を目的とした人々が来ないのではないかという意見もある。

反発の声は少なくはない。30代以上のポーランド国民1000人に行われた世論調査の結果、543人が賛成、301人が反対、156人が無回答であったという。(第二中央ポーランド新聞社より提供)
この反発の声が今後”ショパン・プロジェクト”にどんな影響を与えるのか、今後とも注目していくべきだろう。

ポーランド神格存在出現事件以来より始まっていた物価の高騰は、現在落ち着きつつある。しかし、落ち着きつつあるとはいえ、依然物価は高いままであり、食料品や生理用品の窃盗事件は未だに後を絶たない。
例えば、ポーランド神格存在出現事件前のパンの値段は約0.42ズウォティ(約12円)だったのに対し、現在は約60ズウォティ(約1790円)であり、凡そ150倍となる。ポーランドでの労働月給は平均約5,500ズウォティ(約16万円)であるため、パンは月に90個しか買えない計算になるのだ。当然ながらパンだけでは栄養を摂るのは厳しく、他の食材も買うこととなるためにこれ以上の経済負担がかかるだろう。さらに各地では難民が発生し、国外への人口流出も増えてきている。そのため、ポーランド政府は”ショパン・プロジェクト”で得た資金を南部の復興、及び治安の維持に使うとの声明を出しており、国内の安全化、及び住居の確保に努めるようだ。現在、外国から戻ってきた国民に対し凡そ10000ズヴォティ(約28万円に相当)の特別給付金の配布案が国会にて出されており、今後の動向が気になるところである。


財団は語る

「ポーランド国内、特に南部は未だに復興のめどが立っていません。」

財団渉外部門特設ポーランド復興局に所属する初夏 冬至博士(はつなつ とうじ、日本支部より派遣)はそう語る。
南部崩壊により大規模な経済的打撃を受けたポーランドは、復興の為に回す資金が非常に少ない。マイナス成長していたポーランドのGDPは近年ようやくプラスへと回ったばかりだ。
時に南部には異常存在が出現し、復興作業を妨害することもある。

「しかし、今回の”ショパン・プロジェクト”により復興が早まる可能性が大いにありえます。」

ポーランド神格存在出現事件以降、世界は大きな変化を遂げた。ヴェールの崩壊を始めとし、パラテクノロジーの浸透、新たな市場の開拓、新たな人権問題。しかし、以前としてポーランドの状況は変わらない。物価の高騰、治安の低下、風評被害。”ショパン・プロジェクト”はそれを変える新たな一手になり得ると初夏 冬至博士は語る。
事実、”ショパン・プロジェクト”開始以降徐々に南部復興へ回される資金が増加してきている。このままプロジェクトが成功すれば、20年以上かかると見積もられた復興が5年以上短縮するとのことだ。
すでに復興が完了した地域には人が住み始めており、段々と日常が戻りつつある。

「ポーランドが復興すれば、財団の大きな利益になるとともに、ヴェール崩壊による様々な打撃を受けた国際社会にとって新たな希望の光となるはずです。我々はポーランドが復興するその日まで努力を続けます。」

ポーランド復興の日は、そう遠くないかもしれない。
しかし、一方で懸念点も存在する。

「現在、ポーランド国内において故ショパンに対する信仰心が急激に増加しています。」

そう指摘するのは戦術神学部門所属のオリバー・ジェイソン博士だ。

「1998年当時、ポーランドは不安定な状態にありました。そのポーランドを支えていた柱の1本に、故ショパンの存在があったことは否定できません。彼の祖国に対する思いに感化された当時の国民が、彼の楽曲を心頼りにしていたという話は多く聞きます。その結果、故ショパンに対する信仰心及び尊敬心は前例がないほどに増加し、ポーランド神格存在出現事件を引き起こす1つの要因になった可能性が高いのです。」

事実、1998年当時のポーランドは民主化して10年も経っておらず、共産主義政権時代の膨大な借金や経済危機が深刻な問題となっていた。そんな中、どのような状況にあっても不変である音楽が、当時の国民の心の支えになっていた可能性は否定できない。

「このまま信仰心や尊敬心が増加していった場合、再び神格存在が出現する可能性が高いでしょう。”ショパン・プロジェクト”が現在のポーランドにとって起死回生の一手になり得るかもしれないというのは理解しています。しかし、それ以上にリスクが大き過ぎるのです。」

神格存在の再出現。それは現在のポーランドに止めを刺し、再び世界が混沌に陥るかもしれないとオリバー・ジェイソン博士は警告する。

「”ショパン・プロジェクト”について、私は再考すべきだと考えます。神格存在の再出現という大きなリスクがある以上、私には賛成できないのです。今は大丈夫でも、明日や明後日のことは誰にも分かりません。ならば、少しでも破滅のリスクを減らすため、なにか別の方法を考えるべきだと思うのです。」

ポーランドの明日がどうなるのか、それはまだ分からない。


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