2000年代、東京

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日本の経済・政治・文化の中心地であり、ロンドンやニューヨークと肩を並べる、いわば”世界都市”である都市、東京。事実上の日本の首都として機能するこの都市は、都市圏を含めると約3000万人、日本の人口の4分の1を抱え、都市圏としては世界最大の人口を誇っている。さらには治安も非常によく、観光客がよく訪れる都市でもある。

夜中のこの都市の路地裏で、1人の女が葉巻をふかしていた。女は帽子を深くかぶり、顔に影が覆いかぶさっている。帽子からは短く切られた銀髪がはみ出ていた。女以外誰もいない路地裏で、携帯電話の呼び出し音が響く。

「……もしもし。」

女は葉巻を指に挟んで口から離し、電話へと出る。聞き取れないものの、低い男の声が路地裏に響く。女は数分間、男と会話を続けていた。

「分かった、とうとう明日ね。」

女はそういって電話を切ると、再び葉巻を咥える。

「ふふ、明日まで平和を楽しみなさい、東京。」

女は路地裏の奥へと消えていく。葉巻の紫煙が路地裏のよく晴れた空へと立ち昇り、そして消えていった。


時間帯は朝、非常に晴れ渡った快晴だ。しかし、空を見上げている東京の人々は、快晴に注目しているわけではなかった。

「おかあさん、あれ何?」

どこかから聞こえた子供の声が発端だった。その言葉を聞いて空を見上げた人々は、空に何かが浮かんでいることに気が付く。平べったく円形状で、真下では3つの赤い光とその中央にある青い光が、ゆっくりと回転している。所謂UFOに近いものだ。メディアのヘリコプターがUFOの周辺を浮遊し始めた頃、UFOが動き出した。何回か規則的に動いた後に一列に並ぶと、空に人の顔のホログラムが映し出される。映し出されたのは銀髪で短髪の、路地裏にいた女性だった。

「東京の皆さん、こんにちは。今日はいい天気ですね、雲一つない素晴らしい快晴で、湿度もそこまで高くなく、そして暖かい。さらに本日は金曜日、明日はお休みです。皆さんも、さぞかし今日は良い気分で外出なさったでしょう。いえ、なさっていたでしょう。」

女は数秒間目を閉じると、歪んだ笑みを浮かべる。

「おっと、自己紹介を忘れていました。我々はカオス・インサージェンシー大混乱カオスを巻き起こし、世界に反乱インサージェンシーする者。我々は私利私欲のために活動していましたが、あるメンバーが”世界征服をしたい”と言い出しましてね。手始めに、世界最大の人口を有する東京を征服させていただきます。」

そう言い切ると、ホログラムは消失し、UFOもいつの間にか姿を消していた。人々は暫く空を見上げたのちに、ネットニュースやSNSで情報収集をしようと、携帯を手に取る。

その時だった。

平和な東京に、銃声と悲鳴が響く。

日常は音を立てて崩れ去っていった。


東京近隣のどこかの町にて。
1人の男が昼のバラエティ番組を見ていると、画面が突然切り替わった。

『臨時ニュースです。東京都全域にて”カオス・インサージェンシー”と名乗るテロ集団による、大規模なテロが発生しています。現在判明しているだけで5000人以上の死者が発生し、増加する可能性が高いとのことです。詳しいことが分かり次第、またお伝えします。』

その後再び画面は元に戻った。しかし、少しして外から悲鳴と銃声、そして大きな爆発音が聞こえてきた。男は何事だと近くのカーテンから外を覗く。そして、男は目を見開いた。

そこには、惨状が広がっていた。

赤く染まった道路に、隣の家を燃やすメラメラとした炎。そして、塀から僅かに見える、肌色の何か。男は肌色の何かの正体に気が付くと、その場で座り込んでしまった。
逃げておけば、まだ助かったかもしれない。

玄関から何かが割れる音がした。そして、走るような足音が聞こえてくる。

男が振り返った瞬間、彼の意識は途切れた。最期に見えたのは、オレンジ色の作業着を着た男が、銃を構えている姿だった。

「ああ、今まで我慢してたんだよ。ようやっと人を殺せる。財団なんかくそくらえだ。」

男は血だまりが出来た部屋の中、興奮したような上ずった声で呟いた。血を掬い、部屋の壁に何かを描く。そして男はカーテンで覆われていたガラスを割り、家から出ていった。

部屋には、財団のシンボルの上に”go to hell”と血で書かれた絵と、頭を撃ち抜かれた死体のみが残っていた。


???

「おい、これは一体どういうことだ、水野!」

1人の大柄で金髪な男が、水野と呼ばれた白髪の女性……さきほどの女性に怒鳴っていた。

「どういう事も何も、リーダー。そのままです。私は東京へ宣戦布告したのですが。」

対して水野は淡々と、真顔のまま返事を返した。

「いくら過激派のお前でも、なぜこんなことをしでかした!? 答えろ!」

カオス・インサージェンシーは、財団やGOCへのみ襲撃する穏便派と、欲望の為に一般社会へも襲撃を仕掛ける過激派に分かれていた。リーダーと呼ばれた男はどちらでもなかったのだが、いわゆる大虐殺などを行うのには気が引けていたのだ。

「簡単ですよ、協力相手が出来たんです。」

水野がそういうと、突然リーダーの首に鋭い衝撃が走り、前に倒れ込んだ。リーダーは完全に気配を消された状態で、真後ろから攻撃されたのだと瞬時に察した。

「お前、何を……!」

地面にまで下がった頭を上に動かされると、2人の男の顔が視線に入った。

「やあ、どうも。グリーン・スパロウ財団のグリーンだ。人口が多い東京を始末しないかと声を掛けられてな、今回協力させてもらうことにした。」

抹茶色のスーツを着た彫りの深い、グリーンと名乗る男が名刺をリーダーの手に握らせながら自己紹介をする。目は緑と灰色のオッドアイだ。

「こんにちは。わたくしマーシャル・カーター&ダーク株式会社から来た加島というものです。今回はカオス・インサージェンシー様とグリーン・スパロウ財団様に弊社の製品を大量購入していただけるとのことでご挨拶に伺いました。今後とも良い取引を期待しています。」

僅かに紫がかったスーツを着こなす、日本人らしい彫りの浅い男が片目を開け微笑み、僅かにお辞儀をする。そこから見える目の色は紫色だ。

「ええ、そういうわけで。暫くお眠りくださいな。」

脳震盪を起こし頭が回らなくなっていたリーダーの後頭部に、鋭い蹴りが当てられる。
リーダーの意識はその瞬間どこかへと飛んで行った。


東京の某高層ビル。壁一面の窓からは東京を一望できる。

「グリーン、加島。今回は協力ありがとう。こんなことに巻き込んで申し訳ないわね。」

水野は外を見ながら、後ろにいる2人にそう話しかけた。

「ああ、いいんだよ。こちら側もこういう話を待っていたからな。」
「いえいえ。いつも良くさせていただいていますし、今回はその恩返しということで。」

2人はそれぞれ別の反応をするも、今回の襲撃に対しての嫌悪感を持っていないようだった。

「にしても、”世界征服をしたい”だなんてよくそんな目的でカオスの構成員からの賛成を得られたな?」

グリーンが疑問に思ったことを口にすると、水野はクスッと笑い、口を開いた。

「ああ、あれは半分本当だけど半分嘘。」

水野は少し間を置くと2人のほうを向いた。

「財団を潰す。それが本当の目的よ。」

「まあ、世界中が財団に協力している現状、実質世界征服になるのかしらね。」と水野は付け加えた。再び水野が外へと視線を戻した時、加島は僅かに苦い顔をした。

(万が一にでも財団が潰されたら、危険物のちょうどいい押し付け先が減るぞ……。まあいい、どうせ潰せるわけがない。ちょうどいい稼ぎ場として利用させてもらうか。)

マーシャル・カーターにとって、危険物のちょうどいい押し付け先である財団が潰されるのは好ましくないことだ。しかし、万に一つもその可能性はあり得ないと加島は切り捨てる。稼ぎ場として、カオスとグリーンスパロウ、そして東京を利用するだけだ。

(財団が潰れればグリーン・スパロウを邪魔する奴が減る、非常に好ましいことだ。だが、本当に潰せるのか?)

グリーン・スパロウとしては財団が無くなることで、彼らの目的を果たしやすくなるという利点がある。しかしグリーンは、カオス、マーシャル・カーター、グリーン・スパロウで財団を潰せるのかと疑っていた。
その後数分ほど3人で他愛もない会話をし、加島とグリーンはどこかへと歩いて行った。

「……さあ、財団は一体どうするのかしら。」

誰もいなくなった部屋で、水野は一人そう呟いた。


とあるビルの上空。そこには3m以上はあろうかという巨大な鳥かごが置かれていた。

「作戦開始。」

ヘルメットを被ったグリーンが無線機にそう告げ、巨大な鳥かごの扉を開ける。
次の瞬間、中にいた大量のワシが空へと飛んでいった。

「さて、最近完成したばかりの新兵器だが……上手くいくか?」

ワシは地上で逃げまどっている1人の若い男を見つけると、大きな鳴き声を上げ始める。それを聞いた若い男はその場に突然うずくまると、苦しみ始めた。そしてその男に何匹もの鳥が止まり、その身を啄み始める。
男の叫び声が辺りにこだました。

「ふむ、問題はなさそうだ。」

ジェーンはその無表情な表情から、僅かに口角を上げる。
多くのワシが東京各地から飛び立つのが見える。この空がワシで覆われるのも、時間の問題だろう。


とある住宅街。そこには、大量の死体が転がっていた。その死体にはいくつもの穴が空いているが、それに対する出血の量が少ない。そして、肉が焼け焦げたような臭いがした。

「おお、すごいな。これがMC&Dのレーザー銃か。」

彼らを射殺したのは、SFの定番であるレーザー銃だ。熱により傷口が焼かれ、出血が止められているのだ。

「気に入っていただけましたか、弊社の新兵器は。」

僅かに紫がかったスーツを着こなす糸目の男、加島は不気味な笑みを浮かべながらカオスの男へと尋ねた。

「ああ、これはすごい。銃弾よりも確実に的に当たる、素晴らしい!」

カオスの男はそれを褒めたたえ、子供のようにはしゃいでいる。彼はオレンジ色の作業着を着ていた。

「お気に召したようですね、こちらとしてもうれしい限りです。」

僅かに目を開き、より不気味な笑みを浮かべる加島はそういうと、どこかへと歩いて行く。ある程度歩いたところで、誰にも聞こえないような声でこう呟いた。

「まあ、別に我々が作り出したわけではありませんがね。」

加島は、浮かべた笑みを消し、再びどこかへと歩いて行った。

レーザー銃には、赤い恐竜の顔が刻まれていた。


東京西部に存在する財団施設、サイト-8106。その会議室には、現在複数の機動部隊が集結していた。

「えー、諸君がここに集められたのはほかでもない、知っての通り東京がカオス・インサージェンシーにより襲撃された。なんとなく察しがついたと思うが、君たちにはカオスの鎮圧に向かってもらいたい。」

司令官が機動部隊を集めた理由を説明する。機動部隊側はざわつくこともなく、非常に静かだった。機動部隊はすでに、事前にその情報を司令部より伝えられていたからだ。しかし、グリーン・スパロウ財団とMC&Dがカオスに協力しているというのはまだ知らない。

「これからカオス・インサージェンシー制圧作戦、通称コスモス作戦について説明する、……」

司令官が作戦を説明する中、1人の機動部隊隊員が横にある窓を見た。木々に囲まれた風景の奥からは、僅かに東京が見える。そこから見える東京は平穏そうに見えた。近づけばすぐにでも人々の行き交う声と、車の走る音が聞こえそうだ。

「……では、何か質問は?……ないようだな。では、即座に下の階に駐車しているホバー式輸送車両に乗るように。……そうだ、最近Dクラス職員の消失事件が相次いでいる。カオスが関係している可能性があるため、注意するように。以上。」

司令官はそう言うと、どこかへと去って行った。機動部隊員は会議室から退出し、階段を下っていく。下の階には広い駐車場が広がり、それを埋め尽くすようにいくつもの輸送車両が並んでいた。
その輸送車両には、タイヤが一つもついていなかった。


森の中でなにかが僅かに動く音が聞こえる。鳥たちは気付いているようだが、それを無視していた。木の陰の下には、いくつもの輸送車両が宙に浮いた状態で走っていた。

「隊長、カオスとの戦いに我々は勝てるんでしょうか?」

1人の隊員が、不安そうに顔を曇らせながら隊長にそう尋ねる。輸送車両の中にいた他の隊員の中には、彼と同じように顔を曇らせるもの、余裕をもった表情のものがいた。

「それは私には分からない。ただ、本部やロシア、中国からも機動部隊が救援に来る様だ。世界オカルト連合GOCも動き出したと聞いたし、負けることはないだろうと思う。」

隊長はそう言うと、外を見つめるようにして黙ってしまった。次の瞬間、車両は森を抜ける。東京が間近に迫ってきた。

「……本当に、負けませんかね?」

東京は厚く黒い雲に覆われていた。日光に照らされて輝いていたはずのビル群は、鉛色に包まれて重々しい空気を作り出す。

数分ほど輸送車両の中で無言の時間が続く中、車両が停まった。外を見ると、間近に東京の街並みが見えた。

「……。」

隊長が無言で降りると、後に続いて隊員たちが次々と降りていく。

そこはまさに、悲惨としか言えなかった。

建物の壁や道路には血が飛び散り、様々な死に方をした市民の死体が転がっていた。頭を撃ち抜かれたものから体がバラバラになっているもの、酷いものでは挽肉になっているものまであった。それをカラスが啄んでいる。そして建物には穴が開き、燃えているものもあった。
しかし、それを見たとて吐く者も居なければ足を止める者も居ない。

「行くぞ。」

いつものこと、分かってると言わんばかりに、部隊はひとつの言葉も交わさず頷く。手には馴染みの得物レーザー銃を握り。
機動部隊は、遂に東京に足を踏み入れた。


東京は襲撃されて数時間後だとは思えないほどの静けさだった。
辺りには死体が転がり、焼け焦げたような跡やアスファルトが融けた跡があちこちに見受けられた。

「……まるでレーザー銃でも撃ったみたいですね。」

機動部隊員が焼け焦げたような跡を見てそう呟く。

「レーザー銃? カオスの連中がそんなものを作れる技術力は無いように思えるが……。」

隊長が隊員の呟きに反応したその時、ビュンッという音と共に、赤い光が隊長の頬を掠めた。

「敵襲! 敵襲!」

すぐさま隊員の1人が叫び、各々は車やビルなどの遮蔽物に身を隠す。遮蔽物から僅かに顔を出してみれば、防弾チョッキとヘルメットに身を包んだ人間が5人ほどおり、それぞれがレーザー銃を構えているのが見えた。それぞれの防弾チョッキにはカオス・インサージェンシーのロゴが描かれていた。

「よぉ、財団の犬ども。殺しに来たぜ。」

リーダー格であろう男がそう言ったかと思えば、レーザーが再び飛んでくる。車に直撃したレーザーはそのまま直進し、どこかへと消えていった。防弾チョッキを融かすほどの熱が直撃すれば一溜りもないのは明白であり、思わず冷や汗が機動部隊員たちに流れる。しかし、やらねばやられるというのが世の常。隊長の合図と共に機動部隊は一斉に身を乗り出し、負けじと真っ青なレーザーが相手に打ち込まれる。突然の反撃に反応が遅れたのか、隠れ遅れた1人のカオス構成員の頭に直撃。脳を焼き尽くされ即死した。じりじりと距離を詰め始める機動部隊に対し、カオスはゆっくりと交代しながら時折顔を出してはレーザーを放つ。それに対し、撃たれた方角へ適格に撃ち返す機動部隊。青と赤の光が交錯し、ぶつかり、打ち消し合う。しかし、練度の差は圧倒的であり、カオス構成員は追い詰められていった。

「く、くそ!」

ついに焦燥しきったカオス構成員が逃亡を試みた。制止する仲間の声をよそに無防備にも機動部隊に背を向けると、次の瞬間彼は両足を打ち抜かれた。

「……あいつは捕虜にしろ。」

隊長の命令により、機動部隊は彼にそれ以上の銃撃を加えることなく、他のカオス構成員を1人1人始末していった。短い断末魔が3回聞こえた後に、辺りには機動部隊の足音と生き残ったカオス構成員のうめき声だけが響いていた。

隊長の指示により、機動部隊員たちは彼の装備を外し始めた。ヘルメットを外し、防弾ジャケットを外すと、その下からDクラス職員特有のオレンジ色のつなぎが現れた。"D-991231"と書かれており、数年前に失踪したDクラス職員の番号の1つと一致していた。

「……で、なんだ。わざわざ俺を生かしたってことは尋問でもするつもりか? やってみろよ、情報なんて1つも吐かねぇ。」

隊長が合図すると、1人の隊員が彼の肘に関節技をかけた。一瞬にして汚い悲鳴が響く。

「わかったわかった、話すからやめてくれ!」

「……数年前、どうやって財団から脱走した?」

「はん、俺にも分かんねぇよ。カオスの連中がいつの間にか俺の収容房にいて、出たいかと聞かれて、そんで今さ。」

「……貴様以外にも何人のDクラスがいる?」

「数えたこともねぇな。100は下らねぇんじゃねぇのか? 少なくとも、てめぇらがぶっ殺したあいつらも全員Dクラスだぜ?」

隊長の指示で死体の防弾チョッキを脱がせたところ、確かに全てオレンジ色のつなぎを着ており、そして失踪したDクラス職員の番号がそれぞれに書かれていた。

「……なぜこんなことが起きている?」

「あぁ? 聞いてねぇのか。今頃ニュースになってるだろうに。カオス・インサージェンシーは、世界征服を宣言したんだよ。MC&Dとグリーン・スパロウの連中と手を組んでな!」

隊員たちが僅かにどよめく。MC&Dとグリーン・スパロウが今回のテロにかかわっているというのは、財団が恐らくまだ把握していなかった情報であり、その衝撃は大きかった。

「手始めに東京を支配し、次にニューヨークと上海を。他の大都市を全部潰して、そこからゆっくり世界を踏み鳴らすって寸法さ。ははは、馬鹿みてぇだが夢があるじゃねぇか! 俺たちが世界を支配するんだよ! 税金を貪る無能政治家どもを駆逐し、国家なんてクソみてぇな枠組みを破壊し、財団とGOCを破滅させるんだ!」

「……そんなことができると思っているのか? 少なくとも財団とGOCは既に動き始めているぞ。」

にやり、とD-991231は口角を上げる。

「そんなの既に把握してるに決まってるだろ? 考えてもみろ、そんな考えも無しに世界に喧嘩を売るようなことをするか?」

そういうと、彼は遠くに見える東京スカイツリーに目をやる。釣られて機動部隊員たちがそっちを見ると同時に、声を上げた。青と白に彩られたはずのスカイツリーは赤黒く染まり、時折脈打つかのように赤い筋が走る。なによりもその頂点は変形しており、巨大な砲台のようになっていた。

「スカイツリーを魔改造して作られた巨大な指向性レーザーさ。登録された地点に向かってICBMみてぇに極大のレーザーが突き刺さるってしろもんよ。それに何が登録されてるか、てめぇらならすぐわかるよなぁ?」

そういって高笑いした後に、体力を使い切ったのだろう、その場でD-991231は倒れ伏せた。しばし辺りに重い沈黙が流れる。隊員たちは俯き、絶望しているようにも見える。

「……タイムリミットがどれくらいかは知らないが、早く破壊するに越したことはないだろう。」

隊長はにやりと笑い、隊全体にそう声をかける。その目には絶望は含まれず、やる気と自信に満ち溢れていた。

「我々ならできる。天下の財団だぞ? それに……見てみろ。」

隊長が指差した方向へ、隊員たちは目線を向けた。そこには、無数の財団車両が東京に突入し、そこから機動部隊がいくつも下車していく光景が広がっていた。

「さあ、始めようじゃないか。我々の意志が勝つか、やつらの私欲が勝つか。結果は明白だろうがな。」

今まで曇っていた隊員たちの目に、光がともる。そして、全員が拳を空へと突き上げた。

どよりとした雨空。舞台の幕開けには反吐が出そうなくらいにピッタリだ。

どちらが生き残るか、遂に競争狂奏が始まる。



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  1. portal:6717718 (07 Nov 2020 15:59)
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