この赤く染まった世界で

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1956/12/10 日本標準時12:40 ウラジオストック 財団極東支部統括局

「……。」

1人の男が部屋の中で立派な椅子に腰かけ、本を読んでいた。どこか厳つい顔をしたロシア系の男だ。
窓からは雪景色が見え、その港町を見事なまでに覆っている。
男がいる部屋には立派な机が1台あり、窓と扉以外は本棚で覆われていた。机の上には地球儀とランプ、そして赤い旗が置かれていた。

「はぁ……。」

男はため息をつき本を閉じる。そして立ち上がり、本棚から新しい本を取り出そうとした。
その時、コンコンコンと3回のノックと共に女性の声が聞こえてくる。

「同志カルカロフ、もうそろそろでお時間です。」

カルカロフと呼ばれた男は本棚に伸ばした手を下げると、近くのコートスタンドに掛けられていたカーキ色のコートを羽織った。そしてコートのポケットから革の手袋を取り出し、手にはめ込む。

「済まないアバルキナ。本に熱中していたもので。」

カルカロフはそういいながら扉を開ける。扉の先にはアバルキナと呼ばれた、金髪の女性がいた。

「いえ、特に問題ありません。同志アガーポフが北海道にてお待ちです。」

アガーポフと会うのはもう何年振りになるだろうか、とカルカロフは思った。
本名ニコライ・アガーポフ。かつて財団がアメリカに本部を置いていたころ、旧ロシア支部でカルカロフとは同期だった男だ。
冷戦が終結してからは会うことがめっきりなくなっていた。

「そうか、アガーポフが……。分かった、すぐに向かおう。」

「了解しました。」

カルカロフとアバルキナは統括局に併設された飛行場へと歩き出した。


1956/12/10 日本標準時14:13 日本海上空

___

衛星写真よりニューヨークの光源が消滅、遂に陥落か。

5年前、突然発生した異常存在の大脱走による新大陸壊滅はまだ記憶に新しいだろう。
サイト-19と呼ばれた収容施設が突然その機能を停止、内部にいた様々な異常存在があふれ出したのだ。それを皮切りに、様々な収容施設がその機能を停止し、そして北アメリカ大陸は異常存在に支配された。
そしてそれはパナマを突破し、南米に広がった。そしてロサンゼルスやサンディエゴは次々と陥落、異常存在により蹂躙された。ニューヨークとワシントンD.C.だけが即時の陥落を免れることが出来たのは幸運だっただろう。
異常存在の大脱走が判明した瞬間のアメリカ合衆国政府の行動は非常に速かったといえる。
人口の集中地域であるニューヨークと政治の中心であるワシントンD.C.に大量の軍と食料を回し、一時とは言え何とか難を防いだのだ。
しかし、度重なる異常存在の襲撃により人口は減少、苦戦を強いられることとなった。
そしてつい1年前、遂にはワシントンD.C.が陥落したのだ。その後もニューヨークは抵抗を続けていた。
しかし先日、ソビエト連邦政府の発表によると、ニューヨークの明るい街並みが衛星写真に写らなかったというのだ。
これが真実だとするならば両アメリカ大陸で最大の人口を抱えていた都市がなくなり、両アメリカ大陸は完全に異常存在に支配されたということになる。

(中略)

現在財団はこれらが海を渡り他大陸に被害が及ばぬように、各地に防衛拠点を設立している。
財団により人類の命運は握られているのだ。
しかし、人類の命運を握っている財団が、人類が絶滅するかもしれない状況を作り出したのは実に皮肉である。
____

「はぁ……。」

カルカロフは新聞の最後の一文をみるとため息をつき、そして記憶を遡り始めた。

新聞に書かれていた通り、事の発端は5年前、サイト-19の機能が突然停止したことからだった。
何があったのかはカルカロフは知らなかった。ただ、何かのオブジェクトが収容違反したとだけ聞いただけだ。
そこから連鎖的に財団の施設は次々とその機能を停止していった。O5や倫理委員会についての情報は少ないが、O5-1とO5-13、倫理委員会委員長を除いて全滅したと聞いた。
そして、アメリカ西部から大量のオブジェクトが、波紋のようにアメリカ中に広がっていった。
パナマ運河により南米は多少持ちこたえたらしいがすぐに突破され、南米にもオブジェクトが広がった。

こうして、冷戦は終結した。
生き残ったO5-1とO5-13、倫理委員会委員長は何とかソビエト連邦へ逃げ込むと、ソビエト連邦支部を新たな本部へと変えた。
しかし、ここで問題が起こる。財団は大規模な資金源を失ったのだ。
いままで財団は西側諸国、特にアメリカからの資金に依存し、そこを本拠地として活動していた。
しかし今、その資金源が消滅し、財団は新たな資金源を探さなければならなくなった。そこで、財団はソビエト連邦政府に交渉を持ちかけた。
結果ソビエト連邦政府は資金を出すことを承諾する。しかし、ここで複数の条件を出した。

1、財団内に共産党員を配置すること
2、西側諸国の物品をなるべく使わないこと
3、政府の命令に従うこと

財団としては、この条件は簡単に呑めるものではなかった。しかし、資金源としてフランスやイギリス、中国や日本は利用し辛く、他の東側諸国やアフリカなんてもってのほかだった。
そして、ソビエト連邦はアメリカに次ぐ大国であり、その分大量の資金を持っていた。そのため、財団はこの条件を呑むしかなかったのだ。
そして、ソビエト連邦政府は1つの命令を出した。

"財団の完全な共産主義化"

O5は無論反対したものの、資金提供を切られるわけにもいかず、渋々承諾することとなった。
そして、その結果が現在の財団であった。僅かでも資本主義のような発言をした暁には尋問され、強制自白されるまでになった。

カルカロフは、そんな現状にうんざりしていた。

「……アメリカよ、何故滅んだ。」

思わずそう呟いた瞬間、真横より鋭く冷たい視線が向けられた。

「同志カルカロフ、その発言はどういうことですか?」

アバルキナのその言葉にカルカロフは僅かに間を置くと、

「いや、なんでもない。何故アメリカにあったサイトが機能停止したのか気になっただけだ。」

とごまかした。
アバルキナは数秒カルカロフを見つめた後に、視線を外へと向けた。

「そうですか、なら良いのですが。」

カルカロフとアバルキナは数年間共にいたために比較的信頼関係が築かれていた。
アバルキナがここで問い詰めなかったのもそのためだった。

「……はぁ……。」

これで何回目だろうかと思いつつも、カルカロフはため息をついた。窓からは雲海しか見えないが、雲の切れ目からは白く染まった北海道の大地がのぞき込んでいた。


1956/12/10 日本標準時15:19 十勝岳付近

辺りは吹雪で白く染まっている中、飛行機が森の中にあった滑走路へ着陸する。
中にいたのはカルカロフとアバルキナであり、ゆっくりと飛行機から出てくる。

「久しぶりの日本だな、10年ぶりか?」

カルカロフはそう呟きながら飛行機を降り、僅かに積もった雪に足跡を付ける。

「そういえば同志カルカロフは日系人でしたね。カグラ、といいましたか。」

アバルキナはカルカロフの後を追いかけるように飛行機を降りた。カルカロフはアバルキナの言葉に頷くと、

「ああ。日本が共産主義化する前に行われていた、神事に行われる歌舞から来ているそうだ。日本語で神に楽と書いてカグラと読む。」

と答えた。

ここで現在の日本について説明しておこう。日本はアメリカが崩壊してから2年後、共産党が反乱を起こした末に共産主義化した。
しかし、ロシア革命のように皇帝を殺害したわけではない。天皇を殺害した場合日本国民が自暴自棄になることは共産党も分かっていた。そのため共産党は天皇を皇居へと軟禁し、日本国民が自暴自棄になることを避けたのだ。それだけ天皇という存在が日本国民に影響を与えているということでもあった。

「神……ですか。」

アバルキナはそう呟くと、複雑な表情になった。

「名前に神が付いているだけで、私は神は信じていない、そんなに考えなくても大丈夫だ。」

カルカロフのその言葉に、「そうですか……。」とアバルキナは短く返事を返し、僅かに無言の間ができる。
その時、遠くから足音が聞こえてくる。
2人が音の聞こえたほうを向くと、吹雪の中から人影が見えてくると同時に、声が聞こえてきた。

「久しぶりだな、カグラ。数年ぶりだったか。」

カルカロフをカグラと呼んだのは、濃い顎鬚に碧い目が特徴的な、ロシア人だった。

「ニコ、久しぶりじゃないか。」

カルカロフは、ニコとその男を呼んだ。彼の名前はニコライ・アガーボフ、先述の通りカルカロフの同期である。

「そっちの嬢ちゃんは……。」

ニコライがアバルキナを見つめると、カルカロフが口を開いた。

「私の秘書のアバルキナだ。アバルキナ、彼がアガーポフだ。」

アバルキナはアガーポフを見ると、僅かに会釈をした。アガーポフも会釈をすると、カルカロフの方を向く。

「それじゃ、ついてきてくれ。サイトはすぐ近くにあるが、生憎この吹雪なんでな。」

アガーポフはそう言うと歩き出し、それを2人が追いかけていった。


1956/12/10 日本標準時15:32 サイト-8199

吹雪が収まってきたころ、3人の目の前に巨大な施設が現れた。入り口の上には、財団のシンボルと、共産主義を表す”鎌と槌”が並んで飾られていた。

「お戻りになられましたか、同志アガーポフ。そちらのお二方は同志カルカロフと同志アバルキナですね、前々よりお話は聞いておりました。ようこそ、サイト-8199へ。」

1人の若い男が3人を出迎える。
アガーポフは彼に「お出迎えありがとう」と労いの言葉をかけると、彼は中へと入っていく。
カルカロフとアバルキナも中に入ると、かなり豪華なエントランスが目に入った。
赤い絨毯に

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