帰りたい。ただ、帰りたい

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__地球は青かった。という名言を知っているだろうか。
かの有名なソ連の宇宙飛行士ガガーリンが地球に帰還した際に、インタビューで答えた言葉だ。
だが、実際の写真を見ると地球は青いものの、大陸の緑や黄色が映っているだろう。
青いというのも大まかに見た結果であり、大陸によって完全な青になることはない。
しかし今では、地球は本当の意味で青くなっていた。

事が始まったのは。2020年だった。
何があったのかは知らない。なんかのオブジェクトが収容違反したのかもしれないし、頭のイカれた要注意団体が変な儀式でもしたのかもしれない。地球は、突然海に沈んだ
壁と化した海水は沿岸内陸関係なく、世界を洗い流した。
俺が生まれた町だって、例外じゃなかった。
隣の家のじいさんも、幼馴染も、友人も、恩師も、そして……そして、家族も。壁は、全てを等しく洗い流した。
俺はその時、偶然にも海底サイトに勤務していた。だから、俺は生き延びられた。家族を全て失って。

それからは、生活が一変した。
まずは、食料が配給制になったことだった。幸い海底サイトでは外部から遮断された際のために食料の生産が行われていた。しかし、それでも在庫は少ない。食料の供給が安定するまでは、暫く配給制のままらしかった。

次に、一切地上に出ることがなくなった。いや、出れなくなったといったほうが正しいか。
地上に繋がる形で設置されていた高速エレベーターが、地上が水没したせいで使い物にならなくなった。地上の方はどうやら瓦礫かなんかで潰されたらしく、海水が流れ込んでくるということはなかった。今はエレベーターは物置と化している。おかげで別の階層への移動も不便になった。

最後。これが最も大きく変わったところだと思っている。
残存している要注意団体との協力体制の構築。どうやら財団は争う意味がないと悟り、潜水艦を使って他の要注意団体を探し、協力して生き残ろうとしているんだとか。すでにGOCと日本生類総研とは接触出来てるらしく、たまにサイト内で彼らの職員を見かけることがあった。収容している生物オブジェクトを食い入るように見つめている日本生類総研の職員は、はかなり不気味だった。しかし、協力体制を築けたといえ、流石にサイト内に入れるのはまずいんじゃないかとは思うが……。
ともあれ、どうやら要注意団体との接触はある程度の利益をもたらしたらしく、配給される食料が少し豪華になっていた。

暫く同じような暮らしをしているうちに、少しずつ他の要注意団体を見るようになった。
壊れた神の教会の奴らがサイトの一角を借りて教会を開いていたり、UIUが財団職員と特事課に講義を受けさせられていたり。なんならマーシャルカーターと東弊重工が協力してサイトの一角に店を構えてたりもしていた。
そして、生活が再び一変した。
要注意団体がサイト内にいるのは当たり前になり、配給制だった食料は好きなように買えるようになった。
さらに、今度はサイトの最上部が立ち入り禁止になった。特に行く予定もないので問題はないのだが、常に工事のような音がそこから聞こえてくる。いくつかの要注意団体と上級の財団職員がそこに入っていくのを見たことがあるので、裏で何かをしているのだろう。個人的に、それに対して僅かながら不信感を抱いていた。俺ら職員に隠して、何かやらかそうとしてるんじゃないかと。

およそ3年ほどだろうか。少し要注意団体が増えたことを除いては、特に変わったことはなかった。
相変わらず壊れた神の教会は信者を増やそうと布教活動を行っているし、東弊とマーシャルカーターは儲けをかなり出しているらしい。UIUはたまにSafeクラスオブジェクトを標的に確保訓練をしていることがあった。
正直、財団内に要注意団体がいることに対する違和感はもう無くなっていた。友人の中にはGOCの奴がいるし、たまに酒を呑みながら世間話をするほどには仲がいい。いまじゃ要注意団体は隣人だし、買い物先だし、日常の一部だ。そんな日常が続くかと思ったとき、掲示板に人が群がっていた。

”宇宙船乗組員募集”

と大々的に書かれた貼り紙には、以下のことが書かれていた。


財団及び複数の要注意団体は地球を脱出し、宇宙に進出することを決定した。
宇宙上のオブジェクトの収容、地球の観察、ひいては地球水没の原因を探るために、宇宙支部を設立する。
宇宙支部設立の第一弾として、以下の人員を募集する。

財団 5名
世界オカルト連合 5名
壊れたる神の教会 5名
日本生類総研 3名
東弊重工 3名
MC&D社 3名

また、現在の決定事項として以下の財団部門が宇宙船に搭乗する。

芸術部門音楽課
芸術部門絵画課
芸術部門文芸課
保安部門
物流部門

この他5つの財団部門が登場することが決定している。


他に応募方法的なものも書いてあった。
正直言うと、最初はあまり興味を惹かれなかった。ここの生活に完全に慣れていたのに、わざわざ離れる意味がなかったからだ。宇宙に興味を惹かれた時期はあったものの、だいぶ昔のことだった。

しかし、一度興味を惹かれたものは、ふとしたことで再び興味を持つことがある。俺もその類だった。
星空は、今では全く見えない。そんな今となっては当たり前のことをふと思った瞬間だ。
突然、星空が見たくなった。数年前から夜空は変わっていないだろうか、月は綺麗だろうか、太陽は、星座は__
再び、宇宙に対する興味が沸き上がってきた。もう一度、眩しい太陽を見たい。優しい月光を浴びたい。星空を眺めたい。その思いが俺を動かした。
応募用紙を貰い、記入事項を全て書き入れ、そして提出する。当たるかどうかが唯一の問題だったが、どちらにせよ後悔はなかった。結果が分かるのは半年後。気長に待てるぐらいには長かった。

半年後、すっかり応募していたことを忘れていた俺は、掲示板に人が群がっているのを見てそのことを思い出した。
緊張により心臓の位置が分かるのを感じながら、人混みをかき分け貼り紙を見る。


……
………

そこには、俺の名前が書いてあった。途端に心臓が落ち着いていくのが分かる。その場から去ろうと自室のほうへ足を向けた瞬間、アナウンスが聞こえてきた。

『入選者は即座に最上階に集合してください。繰り返します。入選者は即座に最上階に集合してください。』

俺は向かっていた足の動きを止めると、その向きを変える。エレベーターの方へ歩こうとした時、エレベーターがぶっ壊れていたということを思い出した。その場にため息をつくと、階段のほうへと歩いていった。

最上階につくと、だだっ広いテラスのような空間に出た。
太陽光はこれっぽちも入ってこないが、魚が泳いでいる姿はさながら水族館のようだった。
その空間の中に、いくつかの長机と椅子、ホワイトボードが見えた。
まだ誰も来ていないようで、俺が一番乗りだったようだ。

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  1. portal:6717718 ( 07 Nov 2020 15:59 )
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