2011年、ギリシアにて

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__2010年、ギリシャは経済危機の真っ最中だった。政権交代により発覚した財政赤字隠蔽は、今やEUを巻き込むほどの大規模な経済危機を引き起こし、ギリシャ政府はその対応に追われていた。

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「さて、いったいどうしたものかね……。」

複数の人物が並ぶ中、ギリシャ共和国首相であるゲオルギオスは呟いた。
2009年の際に首相になり、初めて伝えられた大規模な財政赤字隠蔽。そして、そこから巻き起こったEUの経済危機。ゲオルギオスは少しでも赤字を減らそうと、頭を必死に巡らせる。

「私としては、維持費も馬鹿になっていない遺跡群や神殿群の維持の、民間委託を推奨します。」

沈黙が続く中、財務大臣はそう切り出した。
即座に複数の大臣が頷き、それを肯定する。ゲオルギオスはそれを複雑な表情で見ていた。

「待って下さい!! 遺跡も神殿も、我が国にとっての重要な観光資源であり、それの維持を民間委託するとなるとどうなるか分かりません! このご時世の中、市民がボランティアをする可能性は低いですし、雇ったとしてもその為の財産が有りませんよ!?」

即座に文化・観光大臣は即座に反論するが、財務大臣の急展開的な優勢は崩せない。
即座に財務大臣は口を開く。

「おやおや、今はあくまで赤字を減らすためのもので、黒字に傾ける会議ではありませんよ? 観光客が入ってきている状態で赤字なのですから。」

まさに屁理屈ともいえる言葉だったが、それは正しかった。観光客が重要な資金源になっていることには違いないが、それでも結局赤字の部分は埋められない。観光客を誘致すれば赤字の回復にはつながるかもしれないが、それにはあまりに時間がかかった。

「さて、首相。改めて私は、遺跡群と神殿群の維持の民間委託を提唱いたします。それにより発生した予算を別の経済政策に回すことで、赤字は多少なりとも抑えられるでしょう。」

ゲオルギオスは数秒間の沈黙の後、口を開いた。

「……そうだな。我が国にとって、神殿群や遺跡群は非常に重要な観光資源だ。」

その言葉に文化・観光大臣は一瞬顔を顔を輝かせるが、次の言葉に一瞬でその顔を曇らせた。

「しかし、その維持費は非常に多く、我が国の財政に与える影響は計り知れない。よって、維持の民間委託を決定する。」

それでいいな、とゲオルギオスは文化・観光大臣の顔を見る。
文化・観光大臣は数分の沈黙の後に、口を開いた。

「……ええ、いいでしょう。今回は認めます。しかし、何が起ころうと私は知りません。何かが起こったときは、私の責任ではないので。」

と不吉なことを言いながら、渋々と承諾した。

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ゲオルギオスはクーラーを付けていない閣議室から退出した後に、その汗ばんだ顔をトイレの洗面台で洗っていた。

(……どうしても観光大臣が言い残した、あの言葉が気になる。)

ゲオルギオスは、文化・観光大臣の確信したかのような言い方が気になっていた。果たして、自分の判断はあれでよかったのだろうかと鏡に映った自分の顔を見る。
その時、鏡がパリンと音を立てて、砕け散った。
ゲオルギウスはあまりの事態に目を見開く。

「……そういえば、日本とアメリカには鏡が割れると不吉なことが起こる、という迷信があったな。」

ゲオルギオスは、今の事例も相まって不吉なものを感じていた。彼は何も起こらないことを心の中で祈りながら、トイレから出て行った。

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とある宗教系新聞記事にて


神殿群と遺跡群の維持、民間委託へ

本日未明、議会にて5時間に渡った来年度の予算案についての討論の末、我が国の神殿群と遺跡群の維持費の削除が決定された。この際の維持費となる予定であった予算はインフラや国債へと回され、経済の活発化を目指す目論見だ。
これにより神殿群と遺跡群は民間委託、つまりボランティアにより維持が行われる予定だ。
市民からは「重要な観光資源を放棄するのか」「我が国の歴史を、神を蔑ろにするのか」と怒りと不満の声が上がっている。

(中略)

パルテノン神殿を始めとした我が国の重要な観光資源である神殿群と遺跡群は、全ての維持が国民に任された。
この行いは国の財政のみを優先して神々を冒涜するものであり、今後とも政府を厳しく見ていくことにする。


「……くそが!!」

一人の男が、その一面見出しを黙読した瞬間、その新聞紙は地面に叩きつけられ、男によって何度も踏みつけられていた。
その光景は少し異様なものであり、周囲の視線を集める。
男は舌打ちをすると、その新聞を拾い上げ、路地裏へと姿を眩ませる。

「……会社越しに抗議でもするか?」

男はそう一つ呟くと、路地裏から姿を消した。

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__2011年某日、パルテノン神殿にて。

「……随分と酷くなったものね、私の神殿も。」

神殿の中で一人、美しい女性は呟いた。
かつては古びながらも尊厳を保っていた神殿の柱は崩れ、スプレー缶による落書きが酷く描かれている。

「これなら彼が怒るのも頷けるわ。……いかんせん大人げないとも思えるけど。」

彼女は少しの光を放った瞬間、その場から消えていた。

時は遡り、10日前

「ギリシャの野郎、俺らを蔑ろにするってのか!!」

一人の男……アポロンは憤怒していた。
予言神、音楽神、医療神など、様々なものを司る彼は、自身の神殿であったアポロン神殿が荒廃していく様を見て、我慢ならなかったのだ。

「アポロン、落ち着きなさい。人間は罪な生物よ、それぐらい許さなくてどうするの。」

美しい女性……知恵、芸術、工芸、戦略を司る神であるアテネはアポロンを冷静にさせようと諭していた。
しかし、アポロンは冷静になる様子を見せなかった。

「だがよ、俺はどうしても我慢ならねえんだよ! いままであそこらへんのヒューム値を維持してやってたっていうのに、こんなのはあんまりだぜ!?」

アポロンの言うことにも一理あるとアテネは思った。
世界中のヒューム値というのは、世界中で信仰されている神が維持をしていた。イスラム圏ではアッラーが、キリスト圏ではキリストが、日本では八百万の神々が、というように、土着の宗教や信仰されている宗教によって、ヒューム値の安定に努める神がいた。
イスラム圏にて紛争が多いのはアッラーの手がそこまで回っておらず、現実性が歪むことにより、宗派の違いによる欲望が現実改変として具現化し、発生していると考えられている。
ともあれ、バルカン半島のヒューム値を安定させていたのはギリシャ神話の神々とキリストであった。
ギリシャ神話は一見信仰されていないように見えて、国民の心には強く根付いていた。
そのため、キリストに役目を奪われず今の今までこうしてヒューム値の安定化に努められているのだ。

「確かにそうではあるけど、神である私たちが怒ってどうするの、さすがに大人げないわよ。」

それでもアテネは彼を止めようとする。
どうしても、彼女は彼を止めたかった。仮に彼が暴れだしたら、ギリシャで大虐殺が始まるだろうと考えたからだ。

「……チッ。分かった、こうしよう。俺はTttに依頼して、ギリシャ政府に抗議する。奴らの目の前に使者が転移するとかだったらさすがに信じるだろ。」

その提案ならと、アテネは口を開く。

「それならいいわ。でも、これだけは約束して。仮に失敗しても、ギリシャを滅ぼさないで頂戴。」

アポロンは数秒間の沈黙の後に、「分かった」と短く了承した。

____

2日後、ギリシャ上空にて

雲のはるか上にて、胸にTttと書かかれた正装を着ている3人の男女がアテネを目指して進んでいた。

「先輩、まだですかー?」

その中でも一番若く見える少女は、先頭にいる男にアテネはまだかと訊く。

「まだだ、あと数時間ぐらいかかる。」

男は端的にそういうと、沈黙した。

「えー、もう疲れたんですけど!」

「静かに、着いたらあとはすぐに終わるから。……直接会議室に乗り込めればよかったんだけど、私たちはそんなことできないからね。」

駄々をこねる少女を、最も年長に見える女性が諭す。
その時、すぐ近くを戦闘機が猛スピードで横切った。

「!? ちょっと先輩、いまの__!?」

少女はそれに驚き、男に何かを訊こうとして前を向く。
そこに男は、いなかった。

「キャ__」

短い悲鳴がすぐ近くで聞こえる。先ほどまで年長の女性がいたところには、何もなかった。

「え?」

少女が唖然とした瞬間、少女の意識は手放された。
最期に見えた光景は、地球に五芒星が描かれたシンボルだった。

「こちら迎撃隊。突如として上空に出現した天使型のタイプ・ブラックの掃討に成功した。これより帰還する。」

____

そして現在。

「……一体、どういうことだ?」

アポロンは未だに会社の使者が戻って来ないことに苛立っていた。
それもそのはずだ、数日前に撃ち堕とされたのだから。

「アポロン、残念なお知らせよ。」

アテネの声に、すぐにアポロンは振り返った。
手に一枚の紙を持ったアテネがそこに立っていた。

「残念なお知らせだと?」

アポロンはその言葉を聞いて、アテネを睨む。
アテネは全く顔色を変えずに、言葉を続けた。

「Tttの使者がギリシャに駐在していたGOCに撃ち堕とされたわ。どうやら死体は完全に持ってかれたようよ。」

アポロンは、それを聞いて顔を真っ赤にする。
アテネが何かを言おうとしていたところをアポロンは遮って、こう言い放った。

「もう我慢ならん!!」

すぐに彼の体は淡い光に包まれる。
アテネはそれの意味に即座に気が付き、彼を止めようとした。
しかし、もうその場にアポロンはいなかった。

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