認証が完了しました、O5-7
アイテム番号: SCP-XXXX-JP
オブジェクトクラス: Neutralized
特別収容プロトコル: 現在SCP-XXXX-JPは存在せず、有していた認識災害は対抗ミームにより無効化されました。しかし関連する情報の重要性から、SCP-XXXX-JPの存在は隠匿されます。
説明: SCP-XXXX-JPは、1956/7/13にサイト8191の空室となっていたオフィスのデスクに着座した状態で出現した、認識災害を有する死体です。40〜50歳のモンゴロイド系男性であり、死因は複数の外傷に伴う出血多量によるものです。
SCP-XXXX-JPの有する認識災害は、自身をサイト8191の「サイト管理者であると認識させる」もの、並びに「死亡した状態で出現した"という事実を認識不能にする」ものの2種類に分類されます。留意すべき点として、権力と責任の一極集中によるリスクを回避する目的から、当時の財団にサイト管理者及びそれに類似した役職は設置されていませんでしたが、認識災害に曝露した全ての人間はサイト管理者を「サイト内における全ての権利と責任を持つ役職」であると認識していました。
SCP-XXXX-JPの出現した2009/9/16には、サイト8191において同時多発的な収容違反による大規模インシデントが発生していました。これによりサイト8191は███名の死者・サイトの約8割の破壊など致命的な損害を出しています。SCP-XXXX-JPの出現したオフィスも破壊の対象となっていましたが、監視カメラ映像よりSCP-XXXX-JPの出現はインシデントの沈静化後であった事が確認されており、また出現時点で既に外傷が存在し、死亡していた事が明らかになっています。しかし前述の認識災害により、SCP-XXXX-JPは当インシデントの際に死亡したものとみなされていました。SCP-XXXX-JPはその後、サイト81██における収容違反の責任のため形式上セキュリティクリアランス0に降格された後、一般的な手順に乗っ取って火葬されています。
2016/2/19に他ミーマチックオブジェクトの研究において偶発的に対抗ミームが開発された事により、SCP-XXXX-JPの異常性は発見されました。SCP-XXXX-JPの出現原因は正確には現在まで不明であるものの、インシデント発生後の調査により確認された、収容違反した複数のオブジェクトの影響によるサイト8191のHm値の減少が関係しているのではないかと推測されています。
以下はインシデント発生当時サイト8191に勤務していた長尾博士に対し、SCP-XXXX-JP対抗ミームの摂取を行わせた後に実施されたインタビューの記録です。
インタビュー記録SCP-XXXX-JP
対象: 長尾博士
インタビュアー: 曽根博士
<記録開始>
曽根博士: それではまず、当時も話された事かとは思いますが、収容違反発生時のサイト81██の状況について今一度教えて下さい。
長尾博士: あの時はサイトの各所で、様々な問題が同時に発生しました。オブジェクトの活性化、情報の誤伝達、実験における事故、どれも単体では大した事のないものでしたが、それらが重なり合った結果極めて重大で、悲惨な事態を生み出す事になりました。ほとんどの者は死に、生き残った我々も絶望していまいた。今でも夢に出るほどです。
曽根博士: 分かりました。では次に、SCP-XXXX-JPの出現した原因について、何か心当たりはあるでしょうか。
長尾博士: 心当たりといっていいのかは分からないですが、SCP-XXXX-JPの出現は当時の私にとって、救いになっていたと思います。
曽根博士: 救い、ですか。
長尾博士: 恐らく私に限った事じゃない、インシデントの後生き残った皆にとって、SCP-XXXX-JPは救いだったでしょう。対抗ミームを摂取した今なら思い出せます。誰のせいとも言えない、小さな失敗の積み重ねで起きた事件だったからあの時は誰もが責任と罪悪感を感じていたし、そのせいで今後受ける処分を恐れていた。私達にはそれらを預けられる、大きな何かが必要でした。
曽根博士: ではSCP-XXXX-JPがその役割を果たした、という事でしょうか。
長尾博士: そうです。思うに彼は、私達の願いの集合体なのです。あの場にいた全員が彼を願った、自分達の責任と業を押し付けられる死体を。言い換えればあれは、責任を受け止めきれなかった私達の弱さなのでしょう。
<記録終了>
補遺: サイト管理者の設置
長尾博士他、インシデント当時サイト8191に勤務していた職員に対するインタビューを受けて、サイト管理者という役職が職員の精神状況に対して有用な働きを持つのではないかとの提言がなされました。複数の小規模サイトにおいてサイト管理者を設置しての観察を行った結果、いずれのサイトにおいても職員の精神状態が設置以前と比べて大幅に改善されている事が確認された事、またそれに伴い心的ストレスを原因とする事故が半分以下に減少していた事が注目されました。
これを受けて当時のO5評議会により、サイト管理者の役職を各サイトに設置する事が決定されました。権力と責任の一極集中によるリスクを回避するため、サイト管理者に与えられる業務は各種提案の最終的な許可のみとし、これはプログラムにより全て自動承認されます。このため、サイト管理者は実際には財団のシステムにおいて何の役割も持つ事はありません。また、この事実を秘匿するため内部保安部門により、公の場においてサイト管理者・部門主任を演じる人員が派遣される他、定期的にダミーの申請が作成され却下されます。問題が発生した場合の処分については、形式上その大部分をサイト管理者が受け、実際に原因となった職員への処分はこれと比較し軽微なものとします。このシステムで規律を維持するため、基準となる罰則規定はシステム移行以前に比べ厳格に設定されます。そのため、実質的な処分内容はシステム移行以前とほぼ同様のものに維持されます。システム上サイト管理者・部門主任の判断がなくとも提案認可の安全性は保たれており、そのため当システム移行後に収容違反件数の増大などは発生していません。当システムは現在まで、職員の精神障害発症割合を以前の約40%程に、心的ストレスを原因とする事故の件数を以前の約30%程に抑える事に成功しています。