漂流

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この記事には自殺、自殺念慮、自害の生々しい描写が含まれています。自己責任でお読みください。

いつも消えてしまいたいと思っていた。人の記憶に残りたくもなかった。埃の中に取り残されたり、壊れた瓦礫の一部になったりするだけで十分だった。財団での私の仕事は、この目的を支えてくれた。一般人や同僚以外の誰にも知られることなく、憧れだった重要な仕事をすることが出来る。誰にも気付かれることなく、社会の亀裂をすり抜けていくことが出来る。

残念なことにこれは私の成長し続ける、梯子を登ってもっと働きたいという欲求とは対照的だった。正直なところ、この欲求がどこから来たのかは分からなかった。単なる退屈だったのかもしれない。いつも自分が手に入れられない物を取ろうと手を伸ばしてきた。いつも自分には起こらないと分かっていたことに向かって努力してきた。そこから教訓を得ることが出来なかった。

本当のことを言うと、私は他の何よりもつらい思いをしていた。腹が立って、生きているのが嫌になった。周りのみんなが好きなことに幸せを見出せていても、私が何の誇りも見出せないなら何の意味があるの?またもや追い越されて、悪循環に陥った。仕事を続けたくなくなった。何もかもがどうでもよかったから、私はその嘘を自分に言い聞かせた。離れたら世界が終わってしまうかのように、仕事に縛られていた。仕事はまだ好きだったが、以前のような活気はなかった。いつも泣き崩れて、私の下で全てが崩れ落ちるのを必死に見たいと思うサイクルを繰り返していた。幸せになる資格がなかった。他の日じゃなく誕生日にこんな気持ちになるべきじゃないが、そうしてそこにいた…

溜息をついて、サイト管理者の事務所の外で待っていた。自動運転状態になって、ただその日が終わるのを待っていた。もし私が主導権を握れば自己破壊的に暴れるだろう。計画があったから、それでも良かったが。素晴らしい計画ではなかったが、他のどれよりも優れていた。どうにもならないと文句を言いたいのは山々だが、それは真実ではなかった。ただ自分の野望を満足させるほど登ったことがないだけだ。ようやく必要なものが手に入るレベルにたどり着いた。

記憶処理薬は本当に必要がなかった。考えれば考えるほど、この不完全な計画が機能する確実な方法がないことが分かってきた。首を振って事務所に戻った。息をしようとすると、冷たい空気が鼻に突き刺さった。現場はいつも極寒だった。

私の机は居心地が悪く、書類が山積みになっていた。机からそれを押しのけ、紙が私の柔らかい指を切り込む感触を楽しんだ。ちくりと痛んだが、開放感があった。机の上で頭を休め、いなくなりたいと願った。今はとても退屈に感じてしまい、仕事では今までと同じような満足感が得られなかった。

忘れ去られたいという考えが頭の中を駆け巡った。広範な規模で上手くいく方法が必要だった。名前を変えて逃げても良いが、みんなの記憶には残るだろう。床の方に目が向いた。その時、"反ミーム"という言葉が頭に浮かんだ。そうだった、反ミーム的な歌を作る仕事を課せられたんだった… 必要性を感じないから、私の知的能力を試していたんだろう。

ピースが上手く収まった。それは私の願いの解決策だった。私自身が反ミームになれたらいいのに。そんな取るに足りない問題を解決するための完璧な打開策だった。必要な情報を手に入れるのは難しいことではなかった。想像していたよりもずっと簡単なことだった。必要だったのは自分の写真、自分の血液4オンス1、そして消しゴムだった。‘AWCY?’アーティストと名乗る人物から聞いた方法だったから、上手くいくかどうか確信が持てなかった。勿論、私はとやかく言える身ではない; 一時期、自分のことを‘AWCY?’の一員だと思っていたからだ。

その日がまだ終わっていないことなど気にせず立ち上がった。遅い昼食の時間だと自分に言い聞かせた。帰りのドライブは長くなかったが、対向車線の中に入ったり橋から激しく曲がったりすることが頭をよぎった。しかし、私にはやるべき仕事があった。このせいで私を覚えている人や気にかけている人を傷付けたくなかった。

プリンターの音が耳障りだったが、それだけの価値がある。2階に上がり、剃刀を手に取った。温めた紙を浅い皿に入れた。胃の中で何かが蠢いて、やめてくれと懇願しているような気がした。片面の剃刀をじっと見つめ、腕に持ってきた。

痛みが私を駆け抜けたが、それを歓迎した。血は腕から皿に滴り落ち、紙に赤い雫を残した。それを何度も肌に押し付け、再び安堵感に身を任せた。面倒くさいから自分の身体を綺麗にしなかった。私は紙が血を食べ、染み込んで1枚の紙全体を汚していくのを見ていた。消しゴムを掴み、紙に押し付けた。顔を消し終えると、血液から暗くてどろどろになっている物が浮かび上がってきた。紙の塊が千切れていくのを見ながら、徐々に自分が誰を消しているのかを忘れてきたが、仕事を終わらせないといけないのは分かっていた。

皿は血まみれで、ぐちゃぐちゃになっていた。誰が消されて忘れ去られたのかは完全には覚えていなかったが、行動が終わったのは知っていた。あとは試すだけだった。効果があるかどうかを。

扉を開いて外を見た。太陽が沈み、雲が流れ込んできた。穏やかだった。鍵を掛ける気にもならず、扉を閉じた。背筋が凍るような寒気がした。通りの向こう側のお節介な老婦人を見た。私のことを遠目に見ているとしか思えないほどに、彼女は私の存在に気付いていなかった。

通りを歩いていると、胸中で心臓がドキドキした。普段は友好的だった人たちも、何の注意も払わずに私を見落としていた。息を止め、肺に空気を求めて悲鳴を上げさせた。まるで今の私を妨げるものは何もないかのように、自由を感じた。その考えが私を怖がらせているのか、安心させているのかはよく分からなかった。

陸橋までハイキングをした。皮肉なことに、私のことを懐かしむ人は1人としていない。誰も私に気付かないし、気にも留めない。通常そう自分に言い聞かせる時は友人、家族、そして財団が傍にいることを知っていたが、今は全員失った。血が腕から滴り落ち、冷たい空気と混ざり合った。

縁を見渡していると凍った手摺は私を歓迎し、私の下を車が疾走していた。空気が顔を通り越し、長髪が乱れた。自分がどんな顔なのか思い出せないし、数秒前に見たにも関わらず手摺の上の自分の手がどんな見た目だったかも思い出せない。私は溜息をついた; もう後戻りは出来ないんだ。

私は手摺を飛び越え、上に乗った。別の突風が私を迎えた。空は厚い雲に覆われていた。雲を見ていると時間が早くなったような気がした。あの上はのんびりしすぎていた。無くなって欲しかったが、そうはならないことを知っていた。ママに電話したかったが、声を聞いても私が誰だか分からないだろうし、電話したことも忘れてしまうだろう。ママのハグはいつも最高だった。

この状況はすごく皮肉に感じられた。私の人生は崩壊し、私に出来ることは自分に同情して自殺することだけだった。私は36歳になっていた… この歳になったら死ぬといつも言っていた。それ以上は生きたくなかった。決意したら自分の手で死ぬといつも言っていたが、今現在私は誰かに助けてもらいたいという芝居がかった独白で引き延ばしていた。誰かが私のことを覚えていて抱きしめてくれることを願っていたが、そうはならないことを知っていた。誰も私のことを見て、聞いて、覚えていてくれていないことを考えると何故引き延ばしてしまったのか分からない。息を止め続けていると、淀んだ空気が私の肺を痛めつけてきた。

雪が顔の上を優しく舞って、髪に纏わりついた。私の足を美しく飾り、腕を刺した。これで終わりだ。やりかけの仕事はなく、自分を説得する方法は何も無かった。更に縁に向かって自分自身を押し出し、まだ空気を試して自分自身を抑えていた。一瞬、自分の身体がどうなるかを考えた。家族や友人がこのニュースを聞くかどうかを考えた。しかし、考えれば考えるほど、それは重要でないことに気付いた。聞いたとしても、私はそこにはいないんだ。溜息をついて自分自身を空中に押し出し、落下する自由な感覚を最後にもう一度味わった。狼狽えた平静が私を覆った。宙に浮いているのを感じた。ドスンという鈍い音がして、私は地面に叩きつけられた。意識が消えていくのを感じた。

これが本当に私が望んでいたことなの?









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