SCP-4877

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モハーの断崖、アイルランド。SCP-4877が日常的に発生する場所。

アイテム番号: SCP-4877

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-4877に理解を示す全ての個人は質問されます。SCP-4877に関する全ての可能な情報を引き出せたら、これらの個人には記憶処理が施され解放されます。SCP-4877を描写または記述した写真、ビデオ、その他のメディアは財団のウェブクローラーによって削除されます。

SCP-4877にリンクされている個人が七日以上行方不明になった場合、高所から落ちて死んだというカバーストーリーの下で個人の死を偽装するために複製体を用意します。

説明: SCP-4877は自由落下中に個人にかかる重力を減少させることができる現象です。この現象を引き起こすために必要な状況はよく分かっていませんが、初期の研究から以下のことが分かります。

  • SCP-4877は個人を問わず発動します。
  • 個人が自由落下していないと発動しません。
  • 個人は意識的にSCP-4877を引き起こすことを試みなければいけません。
  • 個人は目を閉じる必要があります。

SCP-4877が正常に発動する前に、肉体的にも精神的にも満たされる追加の条件があると考えられています。SCP-4877に関する具体的な情報が不足しているため、財団は必要な手順を確認できていません。

発見: SCP-4877はYouTubeに投稿された動画が1時間以内に約30000回再生されたことを受けて、財団の目を引きました。

<00:00> 黒い画面。中央に字幕: "飛行クラス: 最終試験".
<00:04> 少年が海沿いの崖っぷちに立っています。長い黒髪を持つ10代後半で、すらりとした体つきです。何人かの若い男女がカメラのフレームの端にいて話しています; マイクに向かって吹く風が他の全ての音をかき消しています。
<00:10> 40代半ばくらいの禿げた男がフレームに入ります。アロハシャツとスウェットパンツを身につけています。男は近づき少年の肩に手を置きます。二人が交わす言葉は風にかき消されています。
<00:44> 男は微笑み、少年の背中を軽く叩いてフレームから出ます。
<01:08> カメラは崖っぷちをパンします。水面に突き出た岩に波がぶつかります。カメラはまたパンして少年を映します。
<01:14> 少年は走って崖から飛び降ります。
<01:20> 少年は岩に突き刺さります。
<01:23> カメラは崖っぷちに集まった観客に戻ります。観客は拍手をします。観客の表情ははっきりしません。
<01:30> - 黒い画面。"今日からOneLeapに参加しよう!"という字幕があります。
<01:32> - 動画終了。

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OneLeapの広告チラシ。

この動画はYouTubeのコミュニティガイドラインに違反しているとして、人気を博した後すぐに削除されました。当初この動画はアノマリーとして目を付けられていませんでしたが、奇妙な性質が示されたことから若手の研究員アバゲイル・リンが駆け出しの調査を行いました。

リンは動画の場所をアイルランドのモハーの断崖の南端であると特定しました。崖の高さが約120mであることを確認した後、リンは動画に映った落下が本来かかるべき時間よりも1秒近く長く続いたことを指摘しました。

追記 SCP-4877-1: 投稿された動画で観察された現象をSCP-4877と正式に命名した後、リン研究員は少年を17歳のアストン・クーチャーと特定しました。アイルランド治安防衛団1はクーチャーが事故中に本当に死亡したことを確認しました。動画に映っている出来事についての詳細は財団の調査に支障をきたさないことを保証するため、法執行機関には公表されませんでした。

リンはクーチャーに話しかけた禿げの男をレインボー2と特定しました。彼の住所と連絡先を聞き出したリン研究員はOneLeapのことについて知りたい民間人を装ってレインボーにインタビューをしました。

<ログ開始>
リンはレインボーと会う約束をした喫茶店に入ります。彼は窓際のテーブルに座り、マグカップから飲み干しています。リンはテーブルの横で止まります。
リン: あのー… こんにちは。あなたがレインボーさんですか?
レインボーはリンの方を向きましたが、彼女の後ろに目を向けているように見えます。
レインボー: あなたがキャサリン3と呼ばれている人か。良好な空気波だな。
リン: 座ってもいいですか?
レインボー: 好きなようにリラックスしてくれ。座ったり、立ったり、挙手跳躍運動をしたり。快適に過ごしてくれ。良好な空気波だな。
リンは座ります。レインボーは彼女と目を合わせません。
リン: あなた達が一週間前に投稿した動画を見て興味が湧いたのですが、まだあなた達が何をしているのかよく分からなくて…
レインボー: 物事をすることに意味はないよ。感じることが大事なんだよ。良好な空気波のようにね。
リン: 話についていけないのですが。
レインボー: それは誰かが内部のダイオクセリン受容体ではなく頭で考えている音だよ。
レインボーはシャツのポケットからペンを取り出し、ナプキンに住所と時間を走り書きします。それが終わると、レインボーは初めてリンと目を合わせます。
レインボー: 見る前に跳べよ。良好な空気波だな。
レインボーはテーブルから立ち上がり、よろめきながら喫茶店を出ていきます。
<ログ終了>

インタビューで収集した情報が不足していたため、プロジェクトリーダーのテラー博士はOneLeapグループに潜入して情報を収集するための調査を行うことを決定しました。通常のプロトコルでは現地調査のためにフィールドエージェントを選ぶことになっていますが、レインボーに出席することを期待されているリン研究員が選ばれました。

追記 SCP-4877-2: 以下はリン研究員がOneLeapの調査の際に提出した一連の現地レポートです:

レポート #: 1
日付: 4/13/2019
第一回目の集会から帰ってきました。起こったことを全て説明しようとしますが、多くは記憶からのものです… 筆記帳はおろかマイクすら持って行くのを忘れてしまいました。4
荒れ果てた公民館の奥の部屋で会いました。誰かがお菓子を持ってきていたと思います。正直、皆が静かだったことを除いたら父のアルコール中毒者更生会の集会の説明を想起させました。
何人いたかは正確には覚えていません。16人くらいか20人近くだった気がします。レインボーを待っている間に話しかけておけばよかったです。彼は遅刻しましたが、皆それが当たり前かのように振舞っていました。
会議が始まると私たちは皆地面に輪になって座っていましたが、レインボーは折り畳み椅子に座っていました。彼はシャツのポケットに入れていた小さな筆記帳から何かを読み始めました。何を言っていたかは覚えていません。私は緊張しながら必死に馴染もうとしていました。
しかし私の偽名は忘れていませんでした。レインボーは新人たちを全員起立させて自己紹介をさせました。私の吃音は正しい名前を覚えようとしたというよりも緊張からだと思われたのだと思います。新人の女の子は私だけじゃなかったです。彼女の名前はオリビアでしたが、苗字は忘れてしまいました。
私はなぜこんなことをしているのか分かりません。なぜかは分かっていますが、私には研究室のほうが向いています。
次回のレポートではもっと徹底してみせます。申し訳ございませんでした。

追記 SCP-4877-3: レポート9を受けてリン研究員の任務は完了したと判断され、リンはサイト-24に戻るよう命じられました。リンからの帰還の確認が取れないまま12時間が経過した後、機動部隊イオタ-10("ポリ公")はリン研究員の回収のためにダブリンに派遣されました。任務のために借りていたアパートは空室で、中にはリン研究員の持ち物が入っていました。リン研究員のパソコンからは以下の資料が回収されました:

序文: 以下のファイルは"rainbow_interview_2.mp3"というタイトルです。リン研究員のスマホで録音されているようです。
<書き起こし開始>
これが公共の場で録音されていることを示す背景会話が聞こえてきます。
リン: お忙しいところすみません。
レインボー: 心配いらないさ。今日はいいバイブスだな。
リン: 気になったのですが、なぜオリビアを早く卒業させたのですか?
レインボー: 飛びたくなったか?
リン: 違います!急ぎたくないんです。ただ気になっているだけです。
レインボー: あなたが探しているものがあるよ。
リン: あのー…よく分からないのですが。
レインボー: オリビアは利口な娘だったよ。すぐに理解できた。良好な空気波だな。
リン: つまり彼女に何か特別なものがあったということですか?
レインボー: 特別?誰が特別だって?彼女があなたより特別だとは思わないよ。
リン: 私も卒業できるってことですか?
レインボー: 分からない。俺は成績を与えるだけだからね。君は卒業できると思うか?
沈黙。
リン: 理解できたような気がします。本当にありがとうございました!
レインボー: 見る前に跳べよ。良好な空気波だな。
<書き起こし終了>

序文: 以下のファイルは"01103_STREAM_v0491.mp4"というタイトルで、財団が配布している現地カメラの映像と同じ命名規則です。リン研究員には今回のミッションのために、このようなカメラが与えられていました。
<書き起こし開始>
動画は崖っぷちを映しています。周りには誰もいないように見えます。空は暗いですが、雲に覆われているので見えません。
リン: 分かったわ。そして私は上に何があるのか見に行きます。これは私の仕事の1つで、できることを知っているわ。説明するのが難しいわね。どこから確信を得たのか分からないけど、今はあるの。それでこのまま消えて行ってほしくない。
リンは深呼吸をして、崖っぷちに向かって走る準備をします。
リン: [息を切らして] 一っ飛び、一っ飛び、一っ飛び…
リンは崖っぷちに向かって走り、飛びます。彼女は上昇し始めます。
リン: 一っ飛び、一っ飛び、一っ飛び!
リンの体が水平になり、両腕を広げます。マイクに当たる風の向こうに彼女の笑い声が聞こえます。3分後、リンは雲の中に入ります。
リン: も- もう目を開けてもいい?
リンの速度から推定するとこの時点で雲を抜けたはずですが、霧はまだ続いています。前方に光が見えます。
リン: 上昇気流に押されているのを感じるわ。飛んでいるような気がする。見たくない。
リンが光に近づくと光の向こうにシルエットが見えますが、その特徴は判別できません。
ウォルシュ: キャサリン?あなたなの?
リン: オリビア?どこに何があるか分からなくてごめんね。まだ目を開けてないの。
ウォルシュ: いいのよ!謝る必要はないわ。良好な空気波ね。
リン: 良好な空気波ね!
人影が手を伸ばす。
ウォルシュ: 手を伸ばして私の手を掴んで、引っ張り上げてあげる!
リン: 分かった。
リンが人影に向かって手を伸ばします。リンを引っ張って向かい合っているように見えます。後ろの光のせいで特徴が分かりません。
リン: あなたの手冷たいわ。大丈夫なの?
ウォルシュ: 私はリラックスしてるだけよ。あなたも翼を見つけたみたいね。
リン: そうなの。まだ頭の中が整理できてないけどね。
ウォルシュ: 今はここにいるよ。
リンは人影の手を放します。二人は宙を舞っています。
リン: またレインボーみたいに話してる。
ウォルシュ: そうね。彼に影響を受けたみたい。
リン: 言いたいことがたくさんあるの。あなたもここにいるなんて信じられない!私と雲だけになると心配してたの。
ウォルシュ: まあ、こんな感じになったね。
リン: 本当に夢みたい。目を覚ましたくない。毎週コーヒーを飲むのを再開することもできるし。
ウォルシュ: コーヒー?
リン: 週に1回会って話をしようて言ったでしょう。
ウォルシュ: そうだったね!ごめん、忘れてた。
リン: あなたオリビアだよね?
ウォルシュ: 私を信じてないの?
リンは目を見開きます。
リン: あなた- あなたオリビアに見えないわ。
<**書き起こし終了 **>

リン研究員の遺体はモハーの断崖の底の岩に突き刺さっているのが発見されました。レインボーやリンの過去の報告書に記載されているメンバーの居場所を突き止めようとしましたが失敗に終わりました。OneLeapに関わる全てのメンバーの収容はレベル4の優先事項とされています。

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