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アイテム番号: SCP-XXXX-JP
オブジェクトクラス: Pending
特別収容プロトコル: 事件のあったレベル2人型実体収容チャンバーは保存された上で現在調査中です。XXXX-JPについてもその調査対象であるため、冷凍保存状態にされています。
説明: SCP-XXXX-JPは原澤セナという人物です。XXXX-JPは自身の視界に映った人物の思考を読み取る読心能力を有しており、これは視界に映る人物が何人であろうとも適切に作用します。ただし、読み取った思考を整理するのはXXXX-JP自身の処理能力に依存するため、例えば3~4人の思考を同時に読み取ることはできても、それを記憶するのは根本的に困難です。
能力に関し、例えば自身の視界に複数人映っていても、ある特定の人物の思考だけを読み取る事、また逆に誰の思考も読まないといった制御をXXXX-JPは可能とします。この異常性について、XXXX-JPの担当職員であったエルネス・坂田博士は以下のように述べています。
しばしばアニメでも扱われる「読心」という能力は、多くの場合、それを有する人物に重い背景がある。これは財団においても同じで、例えば読心能力を持つ人物は7体収容されているが、その多くは人の心が読めることによる罪悪感に苛まれたり、人の深層心理の醜さに病むような子達であった。
しかしXXXX-JPは違った。彼女は物事を俯瞰的に見るような子であり、悍ましい思考を抱くサイコパスの心を見ようと、友人の生々しく苛烈な家族関係に悩む心を見ようと、まるで心を病まなかった。XXXX-JPは例外的な存在であったと言わざるを得ないだろう。
歴史: XXXX-JPは7歳頃から自身の能力を自覚し、それを周囲に公表した上で扱いました。この事は様々なコミュニティで話題となり、その話題は時間の経過と共に財団にも流れ込みました。話題には尾ひれがついていましたが、そのほとんどはXXXX-JPに対してポジティブなものでした。後の調査によればXXXX-JPはリーダー格として小学校で振舞うと共に、その能力を用いて周囲の諸問題に献身的に対応していたとされているため、XXXX-JPはカリスマ的存在としての地位を確立していたと考えられています。
やがてXXXX-JPは典型的な収容手段によって財団に保護されました。
「読心」とは、鍵のついた部屋をこじ開けて中を見るような、他人のプライバシーを侵害するものである。彼女がそんな特異な存在でありながら、なぜカリスマ的存在としての地位を確立することが出来たのか。それは、彼女の担当職員になって1日で理解できた。
整った容姿、卓越したコミュニケーション能力。そして私が悩みを抱える被験者を1人用意し、「能力を使って彼の悩みを明らかにしてくれ」と言った時、私は彼女の行動に末恐ろしいとさえ感じた。なんと彼女は「貴方はこんな悩みを抱えているでしょう」と直接的には尋ねず、「何か悩んでる?」という語り口から始め、その人の口から打ち明けるように話を誘導したのだ。
8歳。年端のいかぬ幼気な女子が、これを可能とするのか。明らかに異常発達した思考能力と精神力に、私は心底慄いた。当然、彼女の異常性は何度も検査し直された しかし結果はどれも同じだった。彼女の異常性とは、読心能力ただそれだけであった。
程なくしてXXXX-JPは数々の財団職員に注目されると共に、様々な実験の対象となりました。XXXX-JPがそれらの実験を通して能力を多用した結果、能力はより精密に制御できるようになり、他人の思考は文章となって脳内に浮かび上がるようになったと本人は述べています。これはXXXX-JPの能力が時間や反復練習によって成長することを示唆していました。この事が判明してからは、実験の頻度も増していきました。
やがてXXXX-JPは犯罪心理学や法律に興味を示すようになり、倫理的収容キャンペーンに従って財団がそれらに関する本を与えました。その結果XXXX-JPは頭角を現すと共に、その知識が異常性を成長させたのか、より人の後ろめたい部分や深層心理を読むことに長けるようになりました。XXXX-JPに対する実験の基軸が捜査関係のものになり、将来的な雇用が展望されるようになったのもこの時期からです。
雇用: 2006年7月、サイト内で殺人事件が発生し、XXXX-JPにはテストとしてこれを調査する任が与えられました。これにはXXXX-JPの能力がコミュニティでどう作用するか試験するという背景がありましたが、XXXX-JPは適切なアプローチで情報を収集し、無事に犯人を特定するに至りました。こういった功績が認められ、XXXX-JPはレベル0職員として雇用されました。
レベル0職員とは、異常とは無関係の業務に関わる財団職員のことである。例えば清掃員、探偵、警備員などがこれにあたるが、XXXX-JPはこの中では“探偵”として職員になった。XXXX-JPは異常性なしでも突出した能力があり、前々からその能力を惜しむ上層部から人事部へと雇用を進めようとする流れがあった。彼女の雇用は遅かれ早かれ必然だったと言える。
彼女は公的に一般社会へ赴く機会が増えた。より原理主義的な職員は厳重な対策を心掛けるよう進めたが、特別な対策はされなかった。見ただけで発動する能力をどう「対策」しろというのか?能力を防ぐために目を隠す?「能力をできる限り使うな」と命令する?馬鹿げているだろう。一応、一般社会での濫用は避けるよう指示し、彼女もそれに同意しているが、それが形式上のものだというのは互いに分かっていた。
ただ、彼女は妙なことを言い始めた。元より、彼女の読心は「ある人が抱く複数の思考がその人の声で自身の脳内に入り込む”」というものであるため、彼女には複数の声が同時に聞こえるのだという つまり聖徳太子のようなものだ。しかし最近ではその複数の声の中に、明らかにその人のではない、くぐもった謎の声が混じり始めたという。これは懸念事項として記録された。
XXXX-JPの任務は主に、財団で起こった非異常な事件について調査することでした。その中には殺人、汚職、ハラスメントなどが含まれますが、調査を進めるうちに異常なものが実際には関わっていたような事例も稀にあったようです。そういった性質からXXXX-JPは機密情報に触れる懸念があるため、業務間での記憶処理や、必要に応じた対抗ミームなどの摂取が義務付けられていました。これについては問題なく行われていましたが、2010年6月、同時服用の禁じられている錠剤3種を誤って服用するという事故が発生しました。
このオーバードーズに起因し、XXXX-JPは数日にわたるバッドトリップを経験しました。後にXXXX-JPは「盲目にされ、暗く声も届かない空間に閉じ込められる」幻覚を見たと供述し、自身が収容される事や、視界を遮られる事に強い恐怖を抱くようになりました。
一方で、この経験は能力を成長させたようです。読心能力の内容は「その人の思考がそれぞれ複数の声となってXXXX-JPの脳内に入り込んでくる」というものでしたが、バッドトリップの後、声だけでなくその人の姿形も浮かび上がるようになったと供述しています。
これはXXXX-JPにとっても非常に感覚的なもので、説明に苦労していた。ただまとめるなら、彼女がある人の心を読む時、その人の姿が5~6人ほど彼女の脳内に現れ、その人の思考を身振り手振りを交えながらそれぞれ話すのだという。
幸運にもこの変化は、例の懸念事項をも進展させた。「くぐもった謎の声」にも、その持ち主の姿が朧げながら見えるようになったらしい。それは158cm程度の小柄な人で、その声を発する時の身振りは「焦っているような」もの。まるで何かを訴えているかのようだ これが彼女の供述であった。
バッドトリップのトラウマは一部の業務に支障を与えました。例えば業務の一環として収容セクションを訪れる際、XXXX-JPは著しい不安、恐怖を感じるようになったと表明しました。事実、収容室内に封じ込められた人型実体と遠隔で対話をするような時はより強い不安を露わにし、その実体の心を読むことを避けています。一方で、この行動をとった理由に対しXXXX-JPは自分でも納得のいく説明ができず、より深刻な悩みとなっているようでした。この問題のため業務量は減らされ、代わりに心身のケアが行われるようになりました。
解明: 2009年、XXXX-JPが22歳の頃、懸念事項について本格的な実験調査が実施されることになりました。元より懸念事項を理解するために必要な事項は研究開発部門によって仮説が立てられていたため、本実験はそれを実行に移すものです。
結果として、調査はその正体を理解するに至った一方、XXXX-JPの精神状態の悪化を招くこととなりました。
今思えば、この調査をした事を後悔している。調査にあたって、主任である私やXXXX-JPもその背景と目的に同意していた しかし、彼女の同意は消極的なものであった。彼女は、声の正体を知りたいと思うと同時に、それが知るべきものではないという漠然とした不安も抱えていた そしてその不安は、的中してしまったのである。
調査にあたって、彼女には2種の記憶補強剤を調合した薬を投与された。一方はより繊細なものを「視認できる」もので、他方はそれを「記憶できる」もの。その効果を簡単に言えば、肌を蠢く微細なダニが見えるようになって人の顔は流動し、普段は見えない壁や天井、空気の構成物が映り、そしてその光景が脳にへばりつく、といった所か。常人だとトラウマ必至だが、彼女の精神性はこれを耐えるには充分だった。
彼女はこれを投与されてから、私に対して能力を反復使用した。彼女は「私の頭の中で6人の貴方が今の思いを語っている」と言い、「もう1人、姿が見える」と補足した。彼女は私を見ては目をつぶって集中するのを繰り返し、その度に姿とその声が鮮明になっていくと苦しそうな声で言った。
そして10分も経たないうちに、彼女は激しく発汗し始めた。私が尋ねても無言で、まるでショートしたかのように固まってしまった。私は実験の中止を申請しようとしたが、彼女は下を向いたまま、ただ私の腕を掴んで止めた。やがて彼女は、顔を上げて私を4秒ほど見つめた そして次の瞬間には、耳を塞いで震えていた。動悸、混乱、恐怖が彼女を押さえつけた。それは、私がこれまで見てきた心の弱い読心能力者とまるで同じだった。
彼女はただ、「私がそこにいる」と話した。しかしそれだけで彼女の精神がやられるとは思えなかった だから私は、その「私」の話した言葉が彼女の精神を弱らせたのだと思い、それが何だったのか尋ねた。
返ってきた言葉は、私達にとっては職業柄何度も何度も聞いてきた、しかしながらいつ聞いても嫌な一言であった。
「ここから出して」。
事件: 実験後、XXXX-JPはしきりに周囲を見回すようになり、何かに対し怯え、避けようとするかのように目線を頻繁に逸らすようになりました。また、初対面の人に能力を使用することを拒絶するようになったために業務が続行できず、定期的なケアにおいても目を合わせようとしなくなりました。この行動や不安感の理由を報告するよう働きかけましたが、XXXX-JPは黙秘し、ほとんど情報を提供しませんでした。ただしXXXX-JPは一度だけ、「すぐそこまで迫っている」と述べています。
膠着状態が続いていましたが、2010年3月、XXXX-JPは突如として錯乱状態に陥り、そして間もなく自身の部屋内で異常死しました。この事件は明確に何か異常な現象が関係していたため、現在も調査の対象となっています。
「私を収容して」
事件の起きた夜、彼女はすすり泣きながらそう電話をかけてきた。突然のことに当惑したが、その逼迫した声色は私達を駆り立て、手ごろな空きチャンバーが無いか、そこに彼女をすぐに移送できないか各所に連絡させた。
やがて彼女はごく普通の収容室に収容された。私達は監視カメラ越しに彼女の姿を見ていたが、そこには自信家としての彼女とも、トラウマに怯える彼女とも異なる姿があった。あれだけ恐れていたはずの収容室に入ってベッドにへたり込み、シーツで目を覆いながら何かに怯えていた。彼女は時折周囲を見回したが、鏡を見つけると、それを思い切り割って半狂乱で遠くへ投げた。私達は、彼女が何か幻覚を見たのかと勘違いしていた。
ただ、事件が起きた。収容室の電気は消え、カメラ映像は暗闇しか映さなくなったのだ。収容室へ続く扉はビクともしなくなり、状況を確認できなくなった。周囲は奔走したが、ただ私だけは、何も映さなくなった監視カメラから聞こえる音に集中を向けた。再び収容室が開くまでの10分間、そこには耳を疑う音声が記録されていた。
「ここから出して」。そういった趣旨の小さな声が何百回も繰り返されていたのである。明らかに1人の人間からは出せないはずの何重にも重なった声が、ただずっと繰り返されていた。繰り返される「ここから出して」の中には布の擦れ合う音、抵抗するような声、すすり泣きながら謝罪する声も混じっていたが、その声はやがて搔き消された。
そして10分後、声は消えた。無音が何十秒も響いた後、収容室の照明は元へと戻り、扉は勢いよく開いた。そこには理解し難い光景があった。力なくベッドに座り込む彼女の両目は刳り貫かれ、誰の目にも死亡しているのが明らかとなっていた。ふと彼女の手元を見ると、そこにはベッドシーツがあった。彼女はシーツを強く握りしめていたのだ。
なぜシーツを握りしめていたのか。それは、彼女の後ろにある壁を見れば一目瞭然だった。そこには彼女と同じ大きさの、しかしあり得ない量の赤い手形が、べっとりと幾重にも貼りついていた。手形は彼女の手元、腕、そして目元にもあり、それはまるで彼女が目元をシーツで隠すのを引き剥がしているかのようであった。目元には夥しい数の手形があり、それは言うまでもない嫌な事実を示していた。シーツを握りしめていた手元は、死後もまだ力があるかのように、そしてまだここにいたいと懇願するかのように、ひどく鬱血していたのである。
彼女の両目は未だに発見されていない。
付記: 収容室の照明が回帰する際、XXXX-JPの読心能力の対象となったことのある全ての人物が数秒の幻聴を経験したと報告しました。調査によれば、その幻聴はくぐもった女性的な声色であり、そして一概して何かを訴えかけられているかのような漠然とした不安に襲われたと証言しています。
その内容は判明していません。
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任意A任意B任意C- portal:6637840 (11 Jul 2020 10:56)
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