SCP 神様救世論

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5/XXXX-JP LEVEL 5/XXXX-JP
CLASSIFIED
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Item #: SCP-XXXX-JP
Keter
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SCP-XXXX-JP。


特別収容プロトコル: SCP-XXXX-JPの規模が非常に大きいため、収容は不可能です。そのため、NASAなどの航空宇宙に関連する企業がSCP-XXXX-JPの存在を万が一感知したような場合に、それを隠蔽する事が主な収容手順となります。隠蔽は標準隠蔽マニュアルに従い、関係者に記憶処理や箝口手段を用いる事で対応してください。
それとは別に、後述の儀式によってSCP-XXXX-JPから地球に干渉された際は、その干渉した瞬間を認識していた人物に簡易記憶処理を施し、現場に干渉の証拠を残さないように処理してください。

SCP-XXXX-JP内部に住む人々の行動、あるいは財団側の過剰な干渉によってSCP-XXXX-JPに被害が発生するのを防ぐため、SCP-XXXX-JPに対する更なる調査は保留中です。

説明: SCP-XXXX-JPは、地球から192億光年離れた地点に位置する惑星です。
SCP-XXXX-JPはあらゆる点で、地球と非常に酷似しています。例として以下の点が挙げられます。

  • SCP-XXXX-JPから1億3000万km離れた地点に位置する恒星。この位置関係は、太陽と地球の関係に酷似している。
  • 上記の恒星を中心とした公転。公転速度は地球より極僅かに遅いが、ほぼ同一。
  • 地球とほぼ同一の周期で行われる自転。地球との差異はあるものの、0.01ミリ秒単位での極僅かなものである。
  • 現在の地球と似通った動植物の存在。
  • 人型知性体と、その生命体によって形成された文明の存在。

特筆するような地球との差異は、地球でいう月にあたる衛星が近くに存在していない点、そして文明の発展度が西暦700年~800年前後であるという点です。

SCP-XXXX-JPに在住する人々は、ある特定の儀式を行使する事で、日本に在住する人ひとりをランダムでSCP-XXXX-JP内部に強制的に転送させる事が可能です1。SCP-XXXX-JPに在住する人々は、SCP-XXXX-JP-Aを天現坐アマノアラザと呼称し、崇拝します。SCP-XXXX-JP-Aは、転送された時点で、小規模な改変能力を獲得します。この改変能力は、信仰されればされるほどに強化され、それに伴ってSCP-XXXX-JP-A自身もピスティファージ実体2になります。
特筆すべき点として、SCP-XXXX-JPに在住する人々は、記憶の改変に対してのみ強い耐性があります。この理由は不明です。

現在のところ、合計して37名の日本人が儀式によってSCP-XXXX-JPに転送されていると考えられています。しかしながらそのいずれも、不明な要因によってSCP-XXXX-JPで表立った活動をしておらず、また地球に帰還した実例は確認されていません。



   補遺資料1   

最終更新: 2021/07/15

発見経緯

SCP-XXXX-JPは初め、"日本人にのみ発生する、人間がその場に起源不明の肉や指の一部を残した状態で消失する現象"という未解明事象として登録されて研究対象となっていましたが、そのランダムさ、不定期さ、また範囲の広さから研究は進みませんでした。
しかしながら2021/07/04、財団職員である白神 圭しらかみ けい氏が儀式によってSCP-XXXX-JPに転送された事により、当該未解明事象が財団の予想を遥かに超えて大規模である事が判明したため、SCP-XXXX-JPとしてナンバリングされ、更なる研究が開始されました。




   補遺資料2   

最終更新: 2021/09/29

以下の資料は、先述の白神氏の調査から得られた情報の抜粋です。

    • _

    調査記録1

    2021/07/04


    <記録開始>

    (白神研究員はサイト-8190の研究室で作業をしている。)

    (白神研究員はテストのため、新規に開発された高性能GPSおよび高性能通信機を装備する。白神研究員はサイト-8105に滞在する藤川博士とテスト交信を始める。)

    白神研究員: あー、あー、聞こえますか、藤川さん?

    藤川博士: ええ、聞こえる。良好よ。

    白神研究員: 良かった、それで今日は確か……

    (長い沈黙。)

    藤川博士: ……圭?

    (沈黙。)

    藤川博士: 圭?どうしたの?何か ―

    白神研究員: [ノイズにより判別不能]…ふ……を…[判別不能]……ら…

    (藤川博士は白神研究員から送られているGPS信号を解析する。白神研究員のGPS反応は消失している。)

    藤川博士: 何 ― クソ、連絡を仰がないと ―

    白神研究員: [判別不能]…もし…はか……聞こえ[判別不能]か?博[判別不能]もし?

    藤川博士: もしもし?圭!?

    (藤川博士が白神研究員から送られているGPS反応を調べる。GPS反応は不明な要因により、地球から遥かに離れた地点に表示されている。)

    藤川博士: なんで地球からそんなに離れたところに ―

    白神研究員: (小声で)静[判別不能]に。通信は切ら[判別不能]でくださ[判別不能]。

    [不明な音声A]: おお…[判別不能]…神よ…

    [不明な音声B]: アマノアラザ様がおい[判別不能]た…

    [多数の音声]: アマノアラザ様、アマノアラザ様!

    (民俗音楽のような音楽が流れ、舞踊などが繰り広げられているのが音声から確認される。)

    (たくさんの笑い声。)

    [中略]

    [不明な音声A]: さて ― 改めて、この地に来なすった新たな神 ― アマノアラザ様に敬意を込めて、乾杯!

    [多数の音声]: 乾杯!

    (笑い声。)

    白神研究員: (笑って)すまないな。少しばかり席を外させてもらう。

    [不明な音声A]: もちろんですとも、アラザ様。付き添いましょうか?

    白神研究員: いや、いい。宴会を続けてくれ。

    [不明な音声A]: いえ ― もういい時間です。今日はお開きにしましょう。貴方様のために立派な御屋敷が用意されておりますので ― ほら、あそこです。使用人がおられるので、あの場所へ向かってください。

    白神研究員: 分かった。

    (数分間の足音。)

    白神研究員: ……聞こえますか、博士。

    藤川博士: ええ、もちろん。…何があったの?

    白神研究員: さっきまで ― 自分を中心として、宴会が執り行われていました。僕の事をアマノアラザと呼び、演舞を披露し ― 何が何だか分かりません。とりあえずは権威っぽく振舞っていますが……

    藤川博士: ありがとう、圭。その ― 大変申し訳ないのだけれど、その振舞いを続けて欲しい。何か体に異変は?

    白神研究員: …異様な全能感があります。ここに来てから、僕が頭の中で思った事が、思ったその直後に起きている気がします。

    藤川博士: …改変能力?

    白神研究員: そうかもしれません。GPS、まだ通じてますか?

    藤川博士: ええ。…その、振り切っているけど、地球より遥かに遠い位置に居るのは分かる。

    白神研究員: ええと、私は転送される直前、どういう原理かは分かりませんが ― 自分が何か、地球から遥か遠いところに行ってしまうことを心の中で理解しました。その瞬間、GPSや通信が途切れるんじゃないかという考えが頭をよぎり、即座に「通信とGPSが通じて欲しい」と心の中で思ったんです。

    白神研究員: さらに、私が「静かに」と言う直前、「なんでそんな地球から離れたところに」と言いましたよね。その瞬間……自分が通信すら届かないような遠い位置にいる事を確信して、「頼むから通信を途切れさせないでくれ、明瞭にしてくれ」と思ったんです。そうしたら……ノイズばかりが入っていた通信も、急に明瞭に聞こえるようになりました。関係はないかもしれませんが、念のため伝えておきます。

    藤川博士: 分かった。……一旦通信を切る?

    白神研究員: ええ、そうですね。また情報を集めたら連絡します。…博士、1ついいですか?

    藤川博士: どうしたの?

    白神研究員: 私は ― 本当に神になってしまったのでしょうか?

    藤川博士: …分からない。ともかく私からは、貴方は白神圭という1人の研究員である、としか言えない。…ごめん。

    (笑い声。)

    白神研究員: いえ、安心しました。それだけで充分です…ありがとうございます。

    [省略]


    <記録終了>

      • _

      調査記録2

      2021/07/06


      <記録開始>

      白神研究員: 聞こえますか、博士?

      藤川博士: ええ、聞こえる。

      白神研究員: どうも。この数日間は ― すみません、この地に適応するのに精一杯で連絡出来ませんでした。

      藤川博士: 構わないわ。そういえばこの前の通信が終わった後に、貴方が居る位置をより正確に調べてみたのだけれど、少なくとも150億光年は離れているそうよ。どうみてもGPSや通信が繋がるような距離じゃない ― どうやら、何か異常な要因によってGPSやこの通信は正常に保たれているみたい。

      白神研究員: ……そうですか。ともかく、数日間過ごして分かった事を伝えます。

      藤川博士: ええ、お願い。

      白神研究員: まずこの場所は ― 何というか、昔の日本らしい風景です。たくさんの自然に、木造の建物、市場があり、人々は金銭を媒体として、海産物を中心とする物産を流通させています。日本の時代区分に当てはめるとしたら、奈良とか平安とか、そのあたりでしょう。

      白神研究員: しかし、言語はどちらかというと昔らしくなく、むしろ近代よりだと言えるでしょう。幸い日本語なのがありがたいですが ― なぜ日本語なのでしょうね。今度その源泉を探ってみようと思います。

      藤川博士: なるほど。他に何かありますか?

      白神研究員: ええと、何というか……私の扱われ方が、あまりにも仰々しすぎるのです。道を歩けば人々は首を垂れて、道を開けるのです。食事も豪勢で、海に近い都市なので魚介料理はもちろんのこと、肉料理も絶品のものでした。

      藤川博士: それだけ聞くと少し羨ましいわね。

      白神研究員: そうですか?私には高級料理よりハンバーガーの方が合っていますからね、貴方に変わってほしいくらいです。

      (笑い声。)

      藤川博士: ともかく、かなり大変なようね。貴方はその地で何かやっているの?

      白神研究員: いえ ― 今のところは特に。ただ、この都市を治める人物が私に会って首を垂れたのを見るに、私は政治家よりも上の立場であるようです。

      藤川博士: なるほど。伝える事はそれくらいかしら?

      白神研究員: ええ。他に分かった事があればまた連絡します。


      <記録終了>

        • _

        調査記録3

        2021/07/08


        <記録開始>

        白神研究員: もしもし?

        藤川博士: はい。また新しい情報を手に入れたの?

        白神研究員: ええ、私についてです。私はやはり、現実改変者になっているようです。

        藤川博士: どうしてそう思うの?

        白神研究員: この国にも、アノマリーが居るようです。我々がSCPとしてナンバリングするような、そういう異常です。それも ― 地球より沢山。

        藤川博士: それは ― 大丈夫なの、圭?

        白神研究員: はい。ちょうど昨日、15mはあろうかという化け物が都市を襲いました。私はその化け物の攻撃を喰らい、重傷を負ったのですが…「治ってくれ」と強く思った瞬間、じわじわと傷が塞がっていきました。その瞬間 ― 自分が改変者であることを強く、強く自覚したのです。

        (沈黙。)

        白神研究員: 改変できる範囲には限界がありますが…ともかく私は、死力を尽くしてあの怪物を殺しました。

        藤川博士: それは良かった。生きてて何よりよ。

        白神研究員: はい。その後、自身の住処に戻ろうとしたのですが ― 都市の民が集まって、祭りを始めましてね。4時間くらい、「アマノアラザ様!」と叫びながら神輿を担いだり、舞踊を披露してくれたり、ともかく喧噪で豪勢な振舞いを受けました。

        藤川博士: お疲れ様。でも、なんで急に祭りを?

        白神研究員: 確か、「守護神であるアマノアラザ様を懇ろにもてなし、その力と慈悲に感謝するため」と言っていました。……なんだか…変な気持ちです。

        藤川博士: 変な気持ち?その ― 素直に喜んでもいいんじゃない?

        白神研究員: いえ ― その、私は本当に、神なんだな、と。貴方達から見れば私はただの小規模現実改変者ですが、この時代、この空間では…神として崇められるのです。

        (ため息。)

        白神研究員: 複雑な気分です。その、悪い気分では無いのですが…疲れます。何より、毎日こんな能力を行使して、たった1人で怪物達に立ち向かわなければならない、というのは…文字通り骨が折れます。

        藤川博士: なるほど。そう ―

        白神研究員: (遮って)ああいえ、心配には及びませんよ!ともかく、まだまだこの世界を探索してみます。ほら、豪勢な食事も食べれていますから、まだ ― まだやれます。

        藤川博士: だといいけど…無理はしないで。

        白神研究員: ええ、大丈夫です。


        <記録終了>

          • _

          調査記録4

          2021/07/15


          <記録開始>

          白神研究員: もしもし?

          藤川博士: あら。久しぶり。

          白神研究員: ええ…すみません、連絡が遅れました。

          (すすり泣き。)

          藤川博士: 何 ― もしかして泣いてるの?

          白神研究員: いえ ― すみません。

          藤川博士: 何があったの?

          (沈黙。)

          白神研究員: 寂しいんです。その、すみません、これだけのために通信してしまって。

          藤川博士: いいや、1人で抱え込むよりずっといい。それに圭、貴方は異常地帯に1人取り残されているんだから、もっと私を頼って。孤独なんでしょう?

          白神研究員: ええ。その ― 私は、ただの人間です。人間のはずです。でも……でも、月日が経つに連れ、自分が次第に人間ではなくなっていっている事を嫌でも認識してしまいます。

          藤川博士: …どうして?

          白神研究員: 強くなっていっているんです。信仰されればされるほど、崇拝されればされるほど、この能力はより強力になっていく。まだまだ中規模ですが…成長が際限が無いように感じるのです。僕は……それが怖い。このまま崇拝されれば、私はいつか怪物に成り果ててしまう気がして…

          藤川博士: 気を強く持って、圭。

          白神研究員: わ…分かってます。ですが…ですが、僕達財団職員は暗闇の中に立ち、戦い、光を見ずに死んでいく存在のはずです。それなのに、今の僕は…強制的に光の上に立たされている。

          白神研究員: …何より嫌なのが、その状況を自分が甘んじて受け入れている、という事です。僕は…自分が財団職員であることを忘れて、この地でずっと豪勢な生活を続けてもいい…という考えが頭をよぎっている。

          (嗚咽。)

          藤川博士: 凄く分かるよ。でも貴方は現に、よぎっているその考えを、「嫌だ」と思えている。……普通の人間よりも、よっぽど人間らしいわ。常人ならもうとっくに甘んじてそれを受け入れているわ。

          白神研究員: そういうものでしょうか?

          藤川博士: そういうものよ。

          白神研究員: …ありがとうございます。そうだ ― この場所には面白い特徴があります。

          藤川博士: 何かしら?

          白神研究員: この惑星の周りには、地球では月にあたる天体や星がありません。夜は真っ暗で、かろうじて2つ3つほどの光が見える程度です。それなのに ― この都市で見た童話や絵画には…月のような天体が描かれている。興味深くないですか?

          藤川博士: それは ― 興味深いね。

          白神研究員: シンボルを欲しているのでしょう、夜を示すシンボルを。もし地球に月が無かったとしても、こうなったのでしょうか?

          藤川博士: そうかも。なるほど ― 特筆するに値するわ。ありがとう、圭。

          白神研究員: はい。……ああ、月を見たい。今この時間は夜で、屋敷には誰も居ません。縁側に座って、酒を喰らいながら黒い空を眺めています。…帰りたいな。

          藤川博士: その ― その能力を駆使して帰る事は出来ないの?

          白神研究員: そうしようとも思いました。でも ― 帰れないんです。自分でそうしようとしても、なぜかできません。……恐らく、儀式が関係していると思うのですが。

          藤川博士: なるほどね…そうだ、いいニュースよ。この前、この異常をナンバリングしてもらうように申請して、XXXXにナンバリングしてもらったわ。更なる研究資金も得られた。これで本格的に調査を行う事が出来る。近いうちに帰れるかもしれないよ、圭。

          白神研究員: 本当ですか!それは良かった。やった……

          藤川博士: ええ、だから頑張って。もう少しの辛抱よ。帰ったら ― そう、私と天体観測なんてどうかしら?サイト-8105の最上階からはよく星が見えるわよ。そして月も。

          白神研究員: そうですね。ふふ、楽しみです。


          <記録終了>

            • _

            調査記録5

            2021/07/17


            <記録開始>

            白神研究員: もしもし、博士?都市から少し離れた山奥で怪しい人を発見しました。

            藤川博士: 怪しい人?

            白神研究員: ええ ― 何か……何かを強く恐れているのです。異様な雰囲気で…でも、怪物には見えません。何かおかしい。念のためインタビューを試みます。

            藤川博士: 了解。

            (数秒の足音。)

            白神研究員: あの…もし、そこのお方。

            [不明な音声]: ひぃっ!

            白神研究員: ああ、怖がらないで。私はしら ― いえ、アマノアラザです。そこで何をしているのですか?

            [不明な音声]: あ ― アマノアラザ?今、アマノアラザと言ったか?

            白神研究員: …はい。

            [不明な音声]: おお ― おお、良かった。いや ― 我 ― 俺に近付くな!頼む、俺に干渉するな、俺を忘れさせてくれ!

            白神研究員: は ― はぁ?

            [不明な音声]: お前はアマノアラザ、お前がアマノアラザだ、だから俺にこれ以上関わるな、見つかりたくないんだ。

            白神研究員: ふむ。その、お名前を聞いても?

            [不明な音声]: 俺?俺 ― 俺は ― あ ― いや、榊原祐樹、だ。

            白神研究員: あ……!?まさか貴方も、地球から来たのか?

            榊原氏: ああ ― ああ、お前、お前の名前は?

            白神研究員: 僕は白神圭。(通信機を口に近付けて)博士、榊原祐樹という人物を調べていただけませんか。

            藤川博士: ええ。

            白神研究員: 祐樹さん、貴方はなぜ怯えているんですか?民衆から迫害されたりしたのであれば、僕に任せてくれれば、近くの都市に戻すくらいは出来ますよ。

            榊原氏: や ― やめろ!俺をあの場所に戻すな!俺はここに居なきゃダメなんだ、忘れられなきゃダメなんだ。

            白神研究員: …何か大罪を犯したのですか?

            榊原氏: ああ ― そういうものだ。ともかく、俺に関わるな。お前は……アマノアラザだ。お前が神なんだ。頼む、俺から離れて、見なかったことにして、ここに人を近付けるな。あの地獄に俺を引き戻さないでくれ。

            白神研究員: …そこまで言うなら。さようなら、どうかご無事で。

            (足音。)

            藤川博士: 圭、榊原祐樹という人物を調べてみたけど、2019年に行方不明になってる。それも、道端を歩いていて突然消失した形で。

            白神研究員: やはり。……でも、幾つか不自然な部分がありました。

            藤川博士: 不自然な点?

            白神研究員: はい。…もう何か月も山奥に引きこもっていて、ボロボロの形相でした。なのに……ひどく健康的に見えました。腹を空かせてはいないようです。

            白神研究員: そして何より……彼から離れる時、私は1度だけ振り返ってみました。そこで彼は、顔を片手で覆いながら……

            藤川博士: ……彼は?

            白神研究員: ……笑っていました。


            <記録終了>

              • _

              調査記録6

              2021/07/30


              <記録開始>

              白神研究員: こんにちは、博士!

              藤川博士: こんにちは。元気ね?

              白神研究員: はい ― 最近は調子がいいです。なんだかいい気分なんです。最近は現実改変能力だけでなく、それ以外の ― もっと広範にわたるあらゆる改変をする事が出来るようになりました。感情改変能力とか。これなら、もっともっとこの都市を幸せにできる。

              (沈黙。)

              白神研究員: アマノアラザというのは、天より現れ坐す神と書いて、天現坐アマノアラザです。最近はこの名称にも慣れてきました。山火事に苦しむ労働者も、怪物による被害で身寄りを失った人も、飢餓に苦しむ子供も、この能力さえ使えば……みんな、みんな救えるんです!

              (沈黙。)

              白神研究員: ……聞こえてますか、博士?

              藤川博士: ええ。その ― 変わったわね。そんな性格だったっけ?

              白神研究員: うーん、どうでしょう…ただ、ここ最近、アノマリーの量が増えてきています。どうやら、この地には僕以外に神様はいないようなので、僕が対処するしかないのです。まぁそのおかげで、日に日に強さを実感する事が出来ていますが。

              藤川博士: ええと、大丈夫なの?貴方、本格的に神に成ろうとしていない?

              白神研究員: ううむ…最近は、神でもいいのではないか、と思っています。悪い気はしませんから。

              藤川博士: ……そう。少し心配だけど…ともかく、調査を進めてるからね。もう既に、こちらからそっちの調査のための小型ロケットを発射してるから。ワームホール理論とアナスタサコス時空歪曲連鎖理論に基づく ― まぁ、つまりワープ航法を多用してそっちに急行してる。あと1か月くらいでそちらに着くと思うよ。

              白神研究員: 分かりました。


              <記録終了>

                • _

                調査記録7

                2021/08/20


                <記録開始>

                (調査のために07/18に発射された小型無人ロケットがワープを繰り返しながらSCP-XXXX-JPに近付く。)

                (ロケットを操作している人工知能が、白神研究員から放出されているGPS反応を探知する。)

                (人工知能による自動操作により、ゆっくりと白神研究員のいる都市に向かって降下する。)

                (突如として、未知のエネルギー波が都市の一区画から発射され、航空機はそれを真正面から受けて大破する。)

                藤川博士: な ― 何!?(通信機を手に取り)ちょっと圭、今の圭がやった!?

                (沈黙。)

                藤川博士: ねぇ、事前に「調査のための航空機を向かわせる」って連絡したでしょ!?……ああもう、圭!聞こえる!?

                (沈黙。)

                藤川博士: クソ ―

                白神研究員: どうした?

                (白神研究員の声の近くから、歓声が聞こえる。歓声はもっぱら「アマノアラザ様」という言葉を繰り返している。)

                藤川博士: 「どうした?」じゃなくてね。今航空機を墜としたの、まさか貴方じゃないでしょうね!?

                白神研究員: ああ、スマン。俺だよ。ほら、都市の人が、急に空から現れた得体の知れない物体に恐怖してたからな。俺はこの地の唯一の神だ、都市のみんなを守らなきゃいけないだろ?

                藤川博士: し ― しばらく通話をかけてこないと思っていたら、そんなに性格が変わっちゃっていたの?

                白神研究員: 何か不満かい?藤川さん。

                藤川博士: な……何よ、その口調。あのねぇ、あのロケットを打ち上げるのに ― SCP-████や異常技術のおかげで安価に作成する事が可能になったとはいえ ― 何億って金が掛かってるのよ!?それに、地球に帰りたくないの!?

                白神研究員: 地球に帰る必要がどこにある?ああ、地球に帰って、俺に財団を守ってほしいのかい?それも悪くないね。

                藤川博士: 圭…貴方、私との約束覚えてる?地球に帰れたら、天体観測しようって…

                白神研究員: …ああ?そんな事あったか…クソ喰らえだ。

                藤川博士: ……は?

                白神研究員: 俺は神だぜ。この惑星唯一の、アマノアラザ様だ。いちいち地球なんぞに帰らなくても、もっともっとこの能力を強くして、この惑星の周辺に星を、月を、創造すればいいだけだ!それに俺はクソ財団になんて戻りたくないね、あんなマズいハンバーガーなんて食ってられるか。

                (長い沈黙。)

                (藤川博士は震えている。)

                藤川博士: ……最終通告よ。貴方、地球に帰らなくていいの?

                白神研究員: 言うまでもないな。

                (藤川博士は手に持っていたガラス製のコップを床に投げて割り、デスクを思い切り叩く。)

                藤川博士: ああそうかい!お前なんかに肩入れした私が馬鹿だったよ!はは、白神、いや、アマノアラザ、お前は神なんかじゃない、ただのどこにでもいる、強さに溺れた現実改変者、お子様神だ。

                白神研究員: はっ、なんとでも言ってろ。

                藤川博士: いいか、お前は私達を敵に回したんだ。これから先、お前が私に助けを懇願してこようと、それに応答する気はないからね。それでもいいの!?

                白神研究員: 藤川。何度言えば分かるんだ?

                (藤川博士は歯ぎしりをしている。)

                (沈黙。)

                藤川博士: ……死んじまえ、このクソ野郎!

                (藤川博士は通信機を切る。藤川博士は泣く。)


                <記録終了>


                付記: 藤川博士はその後、サイト管理官からその冷静さを欠いた行動を叱責され、行動を改めるように指示されました。

                また、白神研究員の現在の精神状態で実行されるあらゆる行動はSCP-XXXX-JPそのものや周辺環境に対して過剰に強い影響力を及ぼす可能性があると推測されたため、次の通信で音声災害を利用した精神状態コントロールを通信機越しに行う事が財団上層部の会議によって決定されました。
                しかしながら財団側からの通信の試みは現在まで失敗しています。これは恐らく、SCP-XXXX-JPが通信機を手に持っていないか、もしくは改変能力によって通信が届かないようにしているためだと推測されています。

                  • _

                  調査記録8

                  2021/09/25


                  <記録開始>

                  (深夜3時47分、白神研究員から通信がかかる。)

                  (その時偶然にも、サイト-8105に隣接するサイト-8118で収容違反が発生しており、藤川博士含む主要な財団職員は緊急で対応に出ていたため、通信に応答できる人間はいない。)

                  白神研究員: ……聞こえますか?もしもし?お願いします、応答してください…

                  (すすり泣き。)

                  白神研究員: 藤川博士?その ― もしかして今、寝ていらっしゃいますか?あの ―

                  白神研究員: ごめんなさい、僕は貴方を敵に回してしまっていたのでした。本当に申し訳ありません……罪滅ぼしにもなりませんが、今の状況を話します。

                  (複数の人々の声。)

                  (長い沈黙。)

                  (無音。)

                  白神研究員: …僕はある時から、自分自身に感情改変能力をかけて、ネガティブな感情をブロックしていました。そうしたのは確か…ああ、榊原さんと出会って何日か経ってからです。なぜそんなことをしたのか自分でも分かりませんが…ともかく、日に日に襲いに来る怪物や、過剰に恭しく接してくる民衆に、夜も眠れず、おちおち外に出られませんでしたから、ストレスでおかしくなっていたのかもしれません。

                  白神研究員: ともかく僕は、精神を正常に保ちたくて自身の感情を曲げました。……だから、僕は…貴方にあんな態度を取ってしまった。いや、今更謝ったってどうにもならないのですが…

                  (嘲笑するような笑い声。)

                  白神研究員: そして9月に入ってから、神として振舞う事に慣れてきて、ふと、自分に掛けた感情改変を解除する事にしました。つまり…正気に戻ったんです。すぐには何も思いませんでしたが…明らかに、1か月前と比べて、民衆の私に対する熱狂ぶりが……違っていました。

                  白神研究員: 僕は……怖かった。彼らはまるで、僕に依存していて、信仰さえしておけば無条件に救われると思っていて…僕が、もはや元に戻れないほどに、どうしようもないほど神様である事に気付いてしまったんです。

                  (複数人の足音。)

                  (無音。)

                  白神研究員: もはや狂気と化した信仰があまりにも怖くて、僕はまた自分に感情改変を掛けました。そして、このままじゃダメだと数日で改変を解除し、でもやっぱり怖くて、また掛けて……それを繰り返していたんです。……クスリに依存する人間みたいに、僕はこの能力に依存していました。

                  白神研究員: そして昨日、僕のもとに1つの通達が届きました。「貴方のために、ここより更に繁栄している都市に、ここよりも大きなお屋敷を用意します。そちらに移ってもらって、もっと沢山の人々を救ってください」と。僕は……心底震えました。ここですら大きいのに、ここよりも更に大きな都市があるのか、と。そして、僕が、彼らを救わなければならない、という事に。

                  白神研究員: なんとかその場は狂わずに済みましたが、頭がおかしくなりそうでした。ですが…さっき、私は…取返しのつかない事をしてしまいました。

                  白神研究員: 都市部から少し離れた山間に村がありました。そこを訪れて、アマノアラザ様直々に、魔物に憑かれた人間を始末して欲しい、と。私はその場に赴きました ― そこに何が居たと思いますか?

                  (嘲笑するような笑い声。)

                  白神研究員: まだ年端もいかぬ子供でした。その村に伝統的に伝わる魔物が、その子供に憑いている、と。

                  (沈黙。)

                  白神研究員: ……そんなの、嘘に決まっている。一目見て分かりました ― 邪魔者を始末するための嘘であるという事が。その子供は怯えていました。「殺してくれ」と言う大人たちの顔は…笑っているように見えました。

                  (震えているような笑い声。)

                  白神研究員: その地域にのみ伝わる伝承や妖怪って、地球にもあるじゃないですか。あれも ― ここと同じだ。都合のいい理由をつけて邪魔者を始末するための方便でしかない。そう気付いた瞬間、私は ― 気が動転してしまいました。

                  白神研究員: 私は……目の前に映っていた人間の頭を爆発させました。子供もろとも、殺しました。そして民家を捻じ壊し、燃やし尽くしました。はは…ああ、私の後ろにも数十名の人が居たのですが、彼等、そんな私を見て、何をしたと思います?

                  (高笑い。)

                  白神研究員: ……祈ったんですよ!普通、逃げるでしょう!?でも彼らは、「アマノアラザ様がお怒りだ」とかほざいて、「どうか怒りを収めてください」とか言って、首を垂れて手を合わせ、跪いて祈りやがったんです。私は…絶句しました。絶望しました。

                  (荒い呼吸音。)

                  白神研究員: ……それで…私は錯乱しながら「僕はアマノアラザなんかじゃない、白神圭だ」と叫びました。そうしたら、彼らは「魔物が憑いてしまった」といい、呪文のようなものを唱えだしたのです。効果なんてないのに。

                  白神研究員: それで僕は完全に発狂し、1人ずつ順番に頭を吹き飛ばしていきました。本性を暴いてやろうと……それでも彼等は、僕から目を背けず、ただ泣きながら祈っていました。

                  (沈黙。)

                  白神研究員: 僕は……怖かった。彼らは本当に、盲目的に、神という不確実な存在に救世を求めている。それも全部、僕が力を示してしまったからです。……もう、忘れられたい。

                  (荒い呼吸音。歩く音。)

                  白神研究員: 今 ― 僕は逃げてます。山の奥に進み、彼らから……狂信者から逃げています。彼らは僕を求めて追ってきています。

                  (1分間、荒い呼吸音が続く。)

                  白神研究員: …思えば、最初から ― おかしい部分があった。僕が初めて彼らに会った時、彼らは「この地に来なすった新たな神、アマノアラザ様に敬意を込めて、乾杯」と言いました。「新たな神」?という事は、古い神がいたはず。なのに唯一神?

                  白神研究員: それに、少し前に会った ― あの怪しい男。「アマノアラザ」という言葉を聞いた瞬間に態度が変わり ― なぜ、都市に戻りたくないのか、忘れられたいのか……

                  (足音が止まる。)

                  (長い沈黙。)

                  白神研究員: ああ ― そういう事だったのか。彼が、前のアマノアラザだったのか。

                  (高笑い。)

                  白神研究員: そうか ― だからあの時、笑っていたんだな。だから ― (高笑いして)だから ―

                  [不明な音声]: いたぞ!嗚呼、アマノアラザ様!

                  白神研究員: う ― 何だお前らは ― クソ ―

                  [複数の音声]: アマノアラザ様!アマノアラザ様!アマノアラザ様!どうかお怒りを鎮めてくださいませ!供物を用意しております、どうぞ ―

                  (白神研究員の絶叫。)

                  白神研究員: やめ ― やめろ!僕に近付くな!頼む、僕はアマノアラザなんかじゃない!それを近付けるな!僕は神じゃない!

                  (走る音。荒い呼吸音。遠くから「アマノアラザ様」と叫ぶ複数の音声が聞こえる。)

                  白神研究員: 藤川さん……誰か……声を聞かせてください…あの声を聞きたくない ― 博士、貴方の声を聞きたい……

                  (たくさんの笑い声。)

                  (たくさんの嘆くような声。)

                  (たくさんの祈りの声。)

                  白神研究員: いや ― いやだ!僕を忘れさせてくれ!かえ ― 帰りたい ― 博士、助けて……

                  (たくさんの足音と歓声。)

                  白神研究員: ひっ ― 掴むな!忘れろ!忘れろよ!やめ、いや ―

                  (ノイズが掛かり始める。)

                  白神研究員: 博士、助け ―

                  [複数の音声]: アマノアラザ様!アマノアラザ様!どうか我らをお救いくださいませ!アマノアラザ様!どうかお戻りくださいませ!アマノアラザ様!アマノアラザ様!

                  (1分以上の、アマノアラザを讃える声。白神研究員は何かを叫んでいるが、賛美の声や雑音、呻き声にかき消されている。)

                  (白神研究員の絶叫。その後、通信が途絶する。)


                  <記録終了>

                  この通信が記録されて以降、白神研究員からの通信は途絶したままです。また、財団側からの連絡の試みも、全て失敗に終わっています。


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執筆者: ponhiro
文字数: 17919
リビジョン数: 4
批評コメント: 2

最終更新: 16 Jul 2021 22:09
最終コメント: 12 Jul 2021 23:38 by ponhiro

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