【Qコン】悠遠より狩り立てるもの

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アイテム番号: SCP-XXXX-JP

オブジェクトクラス: Keter

特別収容プロトコル: SCP-XXXX-JPより半径2 km圏内はゾーン-δ に指定され、当オブジェクトのセキュリティクリアランス保持者以外の侵入は禁止されています。また、半径5 km圏内は同様にゾーン-ε に指定され、財団保有の船舶による巡回、並びに衛星による監視が実施されています。

SCP-XXXX-JP-Aは現在、臨時サイト-ζにおいてSCP-XXXX-JP研究チームに一時的に雇用される形で収容されています。

説明: SCP-XXXX-JPは-15° 11' 18.893"S 87° 22' 57.882"E(インド洋)に位置する、約5km×3km×1kmの双方向性の次元間ポータルです。外見上は十字架に近い形状をしており、海域上空に浮遊している形で確認されています。外部からの内部空間を観測は、次元間による光量変化により困難です。

SCP-XXXX-JPには"溶解している"と評される、下方への形状不定的、かつ自発的な領域拡大が認められており、非異常領域へのポータルの接触による影響が危惧されています。

ポータル内の空間は高低差のある砂漠に類似した様相を示しています。上空からは動植物の繊維と同物質が降り続いており、それらが堆積することにより、地形が形作られたと推測されています。この繊維中には現行生物のものと一致しないものも存在していますが、調査により、それらはSCP-XXXX-JP内にかつて存在していた生命体由来のものであると推測されています。

関連 SCP-XXXX-JP-A:

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SCP-XXXX-JP-A

SCP-XXXX-JP-Aはロバをモチーフとした生物の仮面を装着した、ヒト女性と概ね一致する特徴を持つ知的生命体です。順序としてSCP-XXXX-JP-Aの発見の後、インタビューより得られた情報をもとに、財団の調査によってSCP-XXXX-JPが発見されました。

SCP-XXXX-JP-Aは生物の遺体に対して、異常な防腐処置を行うことができます。処置に用いられる器具や消費される物品1の多くは、古代ギリシア由来の物質を含みます。しかし、それらの製法は正常の範囲内に収まるにもかかわらず、処置が完了した遺体の多くは外部干渉に対しての半永久的な耐性を保有します。そのため、物品ではなくオブジェクトの動作内に奇跡論的な要素が存在していると推測されていますが、未だ解明には至っていません。

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描写されたSCP-XXXX-JPと同様の外見を持つ存在。アルバート・ウィルス作「オアシス」より。

SCP-XXXX-JP-Aは財団の発見までの過程において、これらの処置を一般人の遺体に対しても多数実施したことを口述しています。結果として当オブジェクトが確認された周辺地域、もしくは地下においては処置が施された複数の非現行ヒト族と判断可能な遺体が発見され、その多くは財団によって回収、保管されています。

特徴として、防腐処理を実施された遺体は外部干渉への耐性のみならず、特定の視覚的情報を遮断する反ミーム性も付与されることが確認されています。具体例として、動作による奇跡論的処理が行われていると推測されているにもかかわらず、遺体からは奇跡論的リターナーによる返答を得ることができません。これがSCP-XXXX-JP-Aの正確な異常の解明を妨げる要因となっています。

発見経緯:

SCP-XXXX-JP-Aと同様の外見を持つ存在は、既に大衆向けに販売されているいくつかの書物の中で確認されていました。ただし、そのような存在は冒険譚を基本とした非現実的な創作物の登場人物として記述されていました。財団がSCP-XXXX-JP-Aの実在を明確に認知したのは2020/09/23のことであり、その時点で財団はSCP-XXXX-JPを発見していました。

当時SCP-XXXX-JP-Aはエジプト内の集落に滞在していました。財団による発見時、集落内で死亡した数名の遺体に対し防腐処理が実施された形跡が残されており、SCP-XXXX-JP-Aは集落内で重要な立ち位置に置かれていました。しかしながらSCP-XXXX-JP-Aはそのような扱いを好意的に捉えておらず、集落からの解放を条件に財団によって収容される運びとなりました。

以下は初期収容に際して実施されたオブジェクトに対してのインタビューの書き起こしです。

インタビュー担当: サルモン研究員

前記: このインタビューは集落からの解放後、付近のサイトにて行われたものです。


<記録開始>

[記述情報と重複するため省略]

サルモン: 承知しました。それで貴方は門を通ってこちらにやってきたと。

SCP-XXXX-JP-A: そういったことになります。

サルモン: では何故、こちらに貴方は門を通ってやってきたのでしょうか。話を聞く限りでは、貴方には一種の目的があるように感じられます。

SCP-XXXX-JP-A: 目的はあなた方とそう変わりませんよ。私は私を含めた生命を保護する目的があり、こちらに来たのです。

サルモン: 生命の保護、それがあなた自身の異常性でしょうか。ですが、貴方の言うその処置によって、我々が発見したあの個体と同様の状態にすることは、少なくとも私たちには不可能のようです2

SCP-XXXX-JP-A: それは致し方のないことです。この技術は私の同胞の尽力よって生み出された手法であり、結果として外部には伝わることはありませんでしたから。

サルモン: 同胞と表すということは、あなたは個ではなく、群であったという事なのですね? [収容状況の資料を閲覧する] ですが私たちはあなた以外の、あなたと同様の存在を未だに発見できておりません。それは何故でしょう?

SCP-XXXX-JP-A: あの門から出でたのは私一人だけです。他の同胞は全て、門より先に残していきました。[思案] こちらもやむを得ない事情があり、そして、特定の協力者を探しています。

サルモン: なるほど。私だけでは決めかねますが、もしかすると相互の協力体制という形で、私はあなたのお力になれるかもしれません。

SCP-XXXX-JP-A: そうですね、ならばその際はよろしくお願いいたします。

<記録終了>

その後、評議会によってSCP-XXXX-JP-Aとの協力案件は否決されました。オブジェクトの収容体制などは変化せず、SCP-XXXX-JPの調査が実施されます。

補遺XXXX-JP 1: 初期調査

2005/08/21、内部調査班-Tyと外部調査班-Fyによるポータルの初期収容作戦が立案されました。内部調査班は別オブジェクトを担当する機動部隊メンバー3人のチームによって形成され、ポータル内部空間の探索、及びポータル発生の原因となる異常の解明を目的とされ投入されました。

外部調査班はSCP-XXXX-JPの周辺1km以内の臨時サイトの建設、並びに内部調査班によって採取された物品の調査を目的され、追加派遣されました。

_第1次内部調査記録_

進行担当: エルテ・テイラー博士

調査班構成: 内部調査班-Ty(アルファ、ブラボー、チャーリー)


<記録開始>

アルファ: こちらアルファ。空間への侵入に成功した。チャーリー、ブラボーも無事だ。応答求む。

[内部調査班のカメラがポータル内部の様子を映し出す。映像は灰色の雲で一面に覆われた上空と、そこから降る繊維を映し出している。雲と地表の色彩が一体化しており水平線は確認できず、映像のみでの空間全体の大きさの把握は困難である]

エルテ博士: こちらサイト-UE93、無線接続問題ありません。まず、そちらのポータルは双方向性で間違いないでしょうか。

[アルファがSCP-XXXX-JP側のポータルからカメラを持った手を挿入する。カメラは少々のノイズを挟んだ後、カメラを保持したままのアルファの腕、そして侵入箇所と同座標の海洋を映し出す]

エルテ博士: ポータルの双方向性の確認、行えました。[カメラ映像がSCP-XXXX-JP内部空間に切り替わる] 現時点でカメラによって撮影されているもの以外に、確認可能なものはありますか?

アルファ: いいや [辺りを見回す] 何も見られない。塵以外に見えるものはないな、博士。

[カメラがアルファを中心に360°回転する。特筆すべき物体などは存在しない。]

エルテ博士: ありがとうございます。では地表と地中の調査を行った後、念のため周辺の調査を行ってください。調査に必要なボーリング器具に関してはブラボーの装備内にありますので、そちらを使用してください。

[そこから6時間程度、アルファは周辺調査を実施し、チャーリー、ブラボーの二名はボーリング調査を行っている。調査により得られたサンプルはおよそ地中30mに達しても地表と同様の繊維のみが存在する結果を表している]

ブラボー: 残念だが、有用な結果は得られないようだ。どのサンプルにも繊維だけが詰まっている。アルファからの報告も得られたが、この繊維以外に新しい情報はない。[思案] 提案させてくれ。さらに遠方への調査を行うことは可能だろうか。

エルテ博士: 許可します。ただ、現在の帰還地点に戻れるよう、標定機を設置してから出発してください。

[チャーリーによって標定機が設置される。評定機は正しく機能し、ポータルを中心として内部調査班の位置情報をサイトのモニターに映し出している]

アルファ: では、遠方調査を開始する。

[カメラは先頭のアルファが装備した状態で調査が開始される。上空から降り続く繊維は場所によって量が変化しており、その変化によって高低差の激しい傾斜が存在する地表が確認されている。また、ポータル地点から離れるごとに周囲の光量は低下している]

ブラボー: あれは [深呼吸] 建造物か? 自然物らしくない物体が見える。向こうだ。

[標定機より東に12km弱の地点においてブラボーが前方、やや右方向よりを指す。アルファがカメラをそちらに向けると、一定の高度を有する、塔のような建造物が確認される。映像からの計算の結果より、塔は500m弱の高さであることが判明している]

エルテ博士: 我々以外の生命体が存在している可能性があります。できる限り慎重に移動し、詳細な調査を行ってください。

[内部調査隊が塔への接近を試みる。カメラが塔に近づくにつれ、塔の下部に存在している、その他の建造物が確認される。それらの多くはおおよそ立方体であり、扉、及び窓に当たる部分は確認できない。]

アルファ: 家、というには必要な機能がそぎ落とされているが。

[アルファが建造物に接触する。材質は繊維と同等の物であるが、何らかの手法によって凝縮され、一定の強度を保っている様子。アルファが壁を二、三度ノックする。反響音から、建造物の内部は空洞であると推測される]

アルファ: この程度の強度であれば、穿孔機で内部を確認できそうだが、どうする?

エルテ博士: 今回は周囲の安全確認も済んでおらず、ロケーションとしても不定要素が多いためやめておきましょう。それ以外の調査を優先してください。

[アルファが了解する。3人は周囲に存在するその他の建造物の調査を行いながら、塔に向けて移動を行う。建造物はいずれも最初に発見されたものと同様である。移動中、他の知的生命体は確認されない。59個の建造物を通過し、内部調査班が塔の最下層に到着する。材質等はこちらも建造物と同様であるが、南方向に大きく長方形に空いた穴が存在している]

エルテ博士: そちらから内部探索も行えそうですが、一度帰還を行ってください。内部について、不定要素が多いためです。十分な装備と人員を整え、外部調査班による情報収集が行われてから、再調査を実施しましょう。

[アルファが了解し、標定機の座標を頼りに帰還する。]

<記録終了>

第一次内部調査の内容を踏まえ、建造物や更に遠方調査を行う目的で第二次内部調査が実施されました。これらの調査の前提として、SCP-XXXX-JP内への複数の物品の搬入、そして調査班の増員が可能となったことが挙げられます。現在、この第二次内部調査より得られた結果を基に、建造班によって前線基地XXXX-JPの建設が予定されています。

_第2次内部調査記録 1_

進行担当: 内部調査班-Ty-1 アルファ、ブラボー

調査班構成: 内部調査班-Ty-1(アルファ、ブラボー、エコー、デルタ)、内部調査班-Ty-2(チャーリー、フォックス、ゴルフ、ホテル)

前記: 当調査記録は進行担当であるアルファ、ブラボーの所属するTy-1の映像記録の書き起こしとなります。主に下層部などの調査を担当したTy-2による映像記録を閲覧したい場合、XXXX-JP全調査記録の欄を参照してください。


<記録開始>

[カメラを持ったアルファが塔の内部に侵入する。光源は確認されず、肉眼や通常のカメラによる内部の確認は困難である。AIの制御ドローンによる赤外線カメラの映像は、塔の側面に配置された上部に続く螺旋階段と、それらの中途に存在する幾何学模様の描かれた複数の扉を映し出している]

アルファ: こちらアルファ、塔の内部に侵入した。装備を整えてきたはずだが [5秒の沈黙] 著しい体温の低下を感じる。ただこれは恐らくは物理的なものではなく、感覚的、もしくは認知的な影響によるものだと考えられる。調査に影響はない。

[ドローンのサーモグラフィーを用いた熱源調査の結果、最下層付近に調査班以外の生命体は確認されない。報告通り、アルファをはじめとした調査班全員の体温の低下は確認されているが、塔内部そのものの気温の変化は確認されていない]

ブラボー: では予定通り、前方班、後方班に分かれて調査を開始する。アルファ、エコーが前方班、ブラボー、デルタが後方班に分かれ、この螺旋階段を登り上部を目指す。また、中途に存在する扉の調査も同時に行う。現在時刻は12時24分27秒、調査班、出発する。

[アルファが先頭となり、螺旋階段の進行を開始する。階段は2人が横並びになると少々スペースが余る程度の幅である。階段の材質は立方体や塔の外壁に用いられているものと同様であり、調査班が駆け上がるにあたっても十分な強度がある。出発から3分後、最下層より最も近い位置の扉に調査班がたどり着く]

アルファ: 最初の扉に到着した。が、 驚いた。どれぐらい経っているかは分からないが [思案] この扉は木製に見え、ドアノブも存在している。外見はあまり良い状態ではないが、開くには十分な強度はありそうだ。この塔にはそれだけの科学的、もしくは異常を含む技術が用いられているのか?

ブラボー: では予定していた通り、アルファとエコーが最初に扉を開け、中に突入する。私たち後方班はバックアップと退路の確保を。[20秒の待機] では3,2,1

[0のカウントと同時にエコーが扉を開き、アルファが突入する。そのすぐ後に続き、ブラボーも内部空間に突入する。内部は窓のない居住空間の一室のように見える。空間内には、古ぼけた木製の机と椅子、そして脚の1本折れ曲がったベッドが存在している。内部空間に調査班以外の生命体は確認されない]

アルファ: これは [ベッドに近づく] 掛け布団が少々乱れている。簡素な室内だが、僅かながら生活感を感じる。この塔はそういった居住スペースとしても使われていたということだろうか。

ブラボー: でしたら、下層調査班の一部をこちらに回して欲しい。上部を目指すにあたり、こちらの調査に私たちから人手を回して、状況に対応できなくなることは好ましくない。

[下層調査班より派遣された人員の到着まで、アルファとブラボーを主に部屋の調査が行われる。各物品に異常性は発見されない。ベッドや机からは生物の毛髪が一部発見された。これは後の調査により、SCP-XXXX-JP-Aの毛髪と同様の遺伝子情報を含んでいることが判明している。人員の到着により、発見物品と情報の引き継ぎが行われ、Ty-1による調査が再開される]

<記録終了>

この最初の空間の発見の後も、さらに複数の内部空間が発見されました。以下はその詳細の一覧となります。

  • 調査部隊が初めて立ち入った部屋です。内部には経年劣化により風化した、木製の机と椅子、並びにベッドが確認されています。ベッドには形の崩れた掛布団が残されており、これは何かしらの生命体によってこの場所が使用されていたことを示唆しています。
  • 部屋の右隅より椅子などと同様に風化し、破砕した木片が発見されています。これらの木片には鋭利な物品によって言語が刻印されていました。サンプルとして回収され、復元にかけられたところ、ヘブライ語により「חדרים」の単語が刻印されていることが判明しました。財団はこれをネームプレートとして使用されていたと判断し、記号的に当空間は「客室」と呼称されることとなりました。同様のネームプレートは別の空間からも発見され、それぞれに記号的な名称が割り当てられています。
  • この「客室」にあたる空間は他にもいくつか確認されており、木製の物品以外にも石製や、繊維を凝縮した材質のものも発見されています。発見された房室すべてに生活痕が確認されており、この塔が生活施設として用いられていた可能性が考えられています。
  • 他の空間との共通事項として、これらの空間の広さは様々であり、明らかに塔の外壁内に収まることのない範囲を示すものも発見されています。これはSCP-XXXX-JPと同様の双方向性ポータルが入り口付近に発生しているためと推測されています。

これらの発見の後、調査隊は塔の最上部に辿り着きました。以下は到達時のログの書き下しです。
 

_第2次内部調査記録 2_

<記録開始>

[映像は37番目の客室にあたる扉から出てきた場面から開始される。調査隊が階段を登っていき、次の扉の前に到着する。階段はそこで途切れている。カメラを上向きに持ち上げると塔の天井が近く、この扉が塔の最も高い地点に存在するものであることがわかる]

アルファ: ここが最終地点のようだ。現在まで敵性存在などと出くわしておらず、尚且つ最上階ということもあり、今まで以上に警戒が必要だろう。準備ができ次第、ブラボーとともに突入する。総員、準備はいいか?

ブラボー: [装備確認の後] それでは突入します。3,2,1

[0のカウントと同時にアルファが扉を開き、内部に突入する。内部空間は石造りの教会の様相を示しており、部屋の上部に取り付けられているステンドグラスからは光源不明の光が差し込んでいる。ステンドグラスやほとんどの椅子は物理的要因によって破壊されているように見える。空間の最奥には首の折れた女神像の存在が確認されている]

アルファ: ここは [破損した椅子に触れる] 教会か? ただ、ことごとくが破壊されている。そして [思案] ありえないことだが、感覚的に、日光だろうか。光源が存在しているようだ。ただ、今までと比べて最も体温の低下を感じる。あと、鼻を突くような腐臭もどこからか漂ってくる。恐らくだが、死体か?

[アルファが腐臭の所在を確認しようと教会内の探索を開始する。他の調査隊員もサンプル等の入手のため、各々の地点にて作業を開始する。開始から5分32秒が経過した時、ショウジョウバエ科(Drosophilidae)の羽音に類似した音声が、カメラによっても認識可能な音量で観測される]

ブラボー: シッ [全員が動作を停止する] 羽音がする。ただこれは、あまりにも、大きい、そして数も多い。アルファ、退避を推奨する!

アルファ: 総員退避、すぐに扉を開け脱出準備!

[アルファの指示と同時、ステンドグラスの破損部から背部より透明の羽が生えた人型実体が、空間内部に複数飛来する。特徴として、毛髪を含む体毛は確認できない。カメラ映像より体長は70cmほどと推定され、両手のどちらか、或いは両方に外見が花蕾に類似した発光物を保持している。出口に向かう調査隊メンバーに対し、それらの実体が殺到する]

ブラボー: 敵性行動を確認、退避のため、迎撃行動を開始する!

[ブラボーが発砲を開始する。いくつかの実体の頭部に実弾が直撃したが、実体への損傷は見られず、阻害に効果はない。ステンドグラスから次々と実体が飛来する様子が映像に映し出されている]

アルファ: フラッシュバンを焚くぞ! 全員、遮蔽グラスを装着しろ!

[アルファが実体らの中心、やや前方に向かってスタングレネードを投げつける。グレネードが炸裂し、周囲に閃光と轟音が響き渡る。映像は閃光の影響を受けており、しばらくの間乱れている。炸裂のすぐ後、ブラボーの叫び声と推測される音声が記録される]

ブラボー: こいつら、噛みついて [叫び] 装備がっ、クソったれ! 噛みついた場所から、なんだこれは! [怒号] 足が、ダメだ! 私は置いていけ!

[ブラボー以外の調査班の脱出と同時、複数の実体に群がられているブラボーの姿が映し出される。破損した装備から確認できる限り、顔の右半分は白色に変色し、眼球から緑の液体が流れ出ている。アルファ達は扉から脱出し、扉が開かぬように固定する。以降、扉に変化は確認されない]

<記録終了>

補遺XXXX-JP 2: インタビュー調査

2回の調査を受け、SCP-XXXX-JPに対し当空間に関するインタビューが再度行われました。それまで追加のインタビューや協力体制の締結を行うにあたって、SCP-XXXX-JP-Aが特定を満たす人物を指定していたため、実施は見送られていました。今回、それらの条件を満たす人員としてウェルギニウス上級研究員がインタビュー担当として抜擢されました。

インタビュー担当: ウェルギニウス上級研究員


<記録開始>

ウェルギニウス: 改めてインタビューに応じてくださり、ありがとうございます。あなたの話していた場所についていくつかお尋ねしたいことがあり、この場を設けさせていただきました。

SCP-XXXX-JP-A: 構いません。して、あなた方は既に塔に入られたと思われる。違いますか。

ウェルギニウス: なるほど。そこまでご聡明であるなら話が早い。はい。私たちは街を抜け、あの塔に入り、そしてかの、人とも呼べぬ何かと遭遇しました。あれらについてご存じのことをお話しいただきたい。

SCP-XXXX-JP-A: 街? [思案] ああ、あれを街とあなた方は評したのですね。

ウェルギニウス: 違うのですか?

SCP-XXXX-JP-A: ええ。そこには確かに街がありました。1人の鍛冶屋と大勢の放浪者の街が。あの箱はそもそもは我らの家でした。

ウェルギニウス: なるほど。時々、自分の事を貴方は放浪者と呼称していましたね。街を作り上げたということは、その名前に反するのではないでしょうか?

SCP-XXXX-JP-A: そうですね。私たちは、定住を持つことのない放浪の民でした。しかしそこに1人の鍛冶屋が訪れました。彼は私たちの知らぬ知識と、技術を持ち合わせていました。そうして彼の意見を主軸に街が打ち立てられました。放浪とは神の祝福と呪いから逃れ行くこと。ある場所に留まるということは即ち、それらと対峙し、生命の持つ力と知恵で生きていくことと同義です。[顔を伏せる] それができると、私たちは彼に期待を抱いてしまったのです。ですが [嘆息] 鍛冶屋は既に、私たちのもとを訪れた時点で、ある神に呪われていたのです。であるのに、豊穣の祝福を受けるという名目で彼はあの塔を立て、祈りを捧げました。だからこそ、と評しましょうか。[沈黙] 目論見は外れ、私たちは質の悪い神の祝福を受けました。

ウェルギニウス: その祝福というのが、あの人ならざるものの存在でしょうか?

SCP-XXXX-JP-A: はい。彼らは"大いなる六十の病"を纏い、地を駆け抜けて行きました。放浪者は皆、皮膚を掻きむしり、瞳から液を流し、臓を膨らませ、口から蛆を吐き出し、全て物言わぬ骸へと変わり果てました。それでも彼らは進行を続けました。難を逃れた私たちは畏怖を込め、彼らを猛々しい狩りとも、そして"妖精"とも呼びました。

ウェルギニウス: "妖精" [唸り] "妖精"ですか。仮にそれが私たちのイメージする"妖精"であるとして、あなた方はそれを先ほど祝福であると話されました。病を振りまく存在を、なぜ祝福であると評するのですか?

SCP-XXXX-JP-A: 結局のところ、呪いと祝福は神に魅入られることから始まります。放浪をやめた時点で、少なくとも私たちは神に魅入られました。私たちを魅入ったそれが、あるいは既に呪われていた鍛冶屋が、病と死を祝福としていたとしても、不思議なことではありません。少なからず、彼らが今のところあの教会を住処としているのは、そういったことなのでしょう。

ウェルギニウス: ではそれらよりあなたが生き残ることができたのはなぜでしょうか。それだけの存在が跋扈していたのであれば、同じ場所にいたであろうあなたもまた、ただでは済まないはずです。

SCP-XXXX-JP-A: はい。ですから私たちは、固まるのではなく、各々が街から散らばり行き、それぞれの技術を集めました。1人は妖精の襲撃にも耐えうる建材を作り上げました。1人は技術を見つけることはできませんでしたが、身をもって妖精をあの教会に誘導しました。そして私は、生命を保護する、つまり生命を偽装する術を身につけました。それが先の技術です。

ウェルギニウス: [思案] 生命を? それは最初にも告げており、そして私自身が気になっていたことなのですが [呼吸] あなたが処置を行うのは、生命が失われた、死者に対してのみでは?

SCP-XXXX-JP-A: ええ。だからこそ───条件を、付け足させていただいたのです。

[データ検閲済み]

ウェルギニウス: [嘆息] 今すぐ記憶処理剤を大量にぶち込みたい気分だ。吐き気がする。

SCP-XXXX-JP-A: 私の目的は変わりません。もし、協力していただけるのであれば、私はこれからも尽力いたしましょう。

<記録終了>

補遺XXXX-JP 3: 第三次調査

SCP-XXXX-JP-Aのインタビューを受け、SCP-XXXX-JP、そしてSCP-XXXX-JP-Aの収容体制に対するいくつかの提案がなされました。その結果、以下の3つの案が財団職員による支持を受けています。

  • "妖精"の排除、並びに打破
  • ポータルそのものの閉鎖
  • 病原体のサンプル採取、並びに対抗薬の開発

これらの案を統合し、内包とした第三次調査-プロジェクト:シルバーバレットが実施される運びとなりました。当プロジェクトには非科学的兵器、並びに奇跡論を利用した学術的技術が投入されます。以下はその草案の簡易的な写し書きとなります。


SCP Foundation

Official Documentation

Project Silverbullet


前書: 当プロジェクトはSCP-XXXX-JP-Aのインタビュー、並びに有用な結果の得られた複数の探査記録を基にして作成されています。


計画総合責任者: ウェルギニウス上級研究員

SCP-XXXX-JP-Aからの情報提供を受けられる人員、また、当計画の立案者です。計画全体の進度確認と管理、および本部サイトへの報告を担当します。その性質上、臨時サイト兼前哨基地より現場に出動する事はありません。

計画実行・現場責任者: オレール調査隊隊長(アルファ)

第一次、第二次を含めた複数の調査隊の隊長として現場に赴いた人員です。"妖精"に対する多数の交戦実績、並びに人員の喪失を最低限に収める手腕を保持しているとして責任者に選出されました

計画研究責任者: カジミール上級研究員

元GOC職員の経歴を持つ研究員です。その立場上、奇跡論に関する豊富な知識と兵器開発の実績を持ち合わせており、忠誠度テストにおいても高得点を記録していることで抜擢されました。SCP-XXXX-JP-Aも研究チームに一時的に雇用されているため、同オブジェクトの管理担当者も兼任します。


計画内容: プロジェクト:シルバーバレットは、SCP-XXXX-JP内に存在する"妖精"と呼称される敵性実体の排除とポータルの閉鎖を目的とした戦術的プロジェクトです。現在までに実施された複数の探査記録より、オブジェクトに関連する以下の事項が判明しています。

  1. SCP-XXXX-JPに指定されたポータルへの機材搬入に関しての制限は確認されていません。戦車型兵器アトラス-98を初めとした複数の兵器の搬入が既に実施され、探査に用いられています。
  2. SCP-XXXX-JP内部の構造物は、財団の保有する技術によって発生した物理的な干渉で破壊することができません。これはSCP-XXXX-JP-Aの異常性と同様の耐性を持っていると推測され、空間内の立方体内部の観測は現在まで行われていません。
  3. "妖精"に対する物理的な攻撃の殆どは、有用な結果を得られていません。搬入された兵器による複数の侵攻作戦は全て失敗に終わっています。ただし、非科学的原理を利用したいくつかの兵器による攻撃は、妖精へ損傷を与えられる事が判明しています。
  4. "妖精"により損傷を受けた職員のほとんどが未知のウイルス、あるいは病原菌による症状を発生させています。現在までにサンプルとして32例の病原体が回収されていますが、いずれも研究資料の不足により、解析は進められていません。

これらを踏まえた上でプロジェクト:シルバーバレットは以下の事項を優先とし、段階的に進行する予定となっております。全ての搬入資材、並びに投入される人員に関しては別紙を参照してください。

  • 臨時サイト兼前哨基地の建築

ポータル付近に建築資材を搬入し、奇跡論を用いた非科学兵器を搭載した前哨基地、並びに獲得されたサンプルの解析を可能とする、研究室を内包した臨時サイトを建設します。施設の建設は最優先事項とされ、SCP-XXXX-JPの研究担当サイトから可能な限りの資材と人員が投入されます。

  • 携帯、もしくは搬入可能な非科学的兵器の導入

臨時サイトの建設後、研究担当サイトと共同で"妖精"に対して有効な損傷を与えうる、非科学的兵器の開発が進められます。これは主に奇跡論における観測可能なEVE量子の量子の変換と分解、つまり神的存在に対して有効と判断された第一、第三原則を利用した兵器となることが予定されています。前哨基地に設置される兵器も同様な、あるいは改良された性能を有することが見込まれています。

  • 統合案における目的の達成

以上の事項の達成の後、「"妖精"の排除、並びに打破」「ポータルそのものの閉鎖」「病原体のサンプル採取、並びに対抗薬の開発」を迅速に実行します。


導入予定物品: 一部のみ掲載。導入される全ての物品はリスト-シルバーバレットを参照してください。
 

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システム・エリザ導入式:イーグル666


 
2022年8月20日、計画は第三段階に到達し、「"妖精"の排除、並びに打破」を目的とした第三次調査が実施されました。


 

_第3次内部調査記録_

<記録開始>

[最上階。カメラは交戦状態の特殊部隊Aと妖精の姿を映し出している。また、地面には既に数体行動不能状態に陥ったと推測される"妖精"の姿が映し出されている。兵器の命中した箇所は物理的に消失し、改変された形跡が確認できる。兵器は効果的に作用している]

アルファ: 角度20、方向7より軍団が接近中。Eはそちらの迎撃を実施。Dは後方へ退避、AとBは現在対応中の軍団を殲滅次第、Eと合流。Cは後方を始めとした他の戦闘班のバックアップに回れ!

[行動不能状態の"妖精"の数が徐々に増加する。それに合わせ、"妖精"の戦闘班に対しての攻撃行動の鈍化が確認される。一部の"妖精"は退避を開始し、破損したステンドグラスから外部空間へと退避を開始する。19分が経過した時点でほぼ全ての"妖精"は退避、或いは行動不能状態に陥る。残存した"妖精"も2分19秒にて制圧が終了する]

アルファ: 双方クリア。このまま周囲を警戒しつつ、最上階の調査を開始する。行動不能となった"妖精"らからはサンプルの摂取、そのものの保管が可能な個体が存在しているのであれば、そちらの回収も同時に実施してほしい。ただ、個体そのものが感染病のキャリアである可能性が高いため、抗菌装備を重ねて着用の上、特殊収容ユニットにて回収を行ってくれ。

[戦闘班BDが周囲警戒を実施し、戦闘班CEが"妖精"のサンプル、並びに個体の回収を開始する。戦闘班Aはゆっくりと歩きながら最奥に存在する女神像に到達する。女神像にはヘブライ語で文字が彫刻されている]

アルファ: 単語そのものは [携帯デバイスを開く] 月を意味しているようだ。信仰対象はそれに関連する女神であったということだろうか。だがこの破損は [女神像に触れる] 破損の方向が一定ではないことから、自然発生ではなく、明確に意思を以て破壊されているように思える。

[女神像は複数の乳房を持つように彫刻され、首から先の他、右腕が破損している。女神像とは別に足元には鹿と思しき動物の石像が存在しており、それも首から先が破損している。それらを取り囲むように7つの人間、或いは"妖精"を模したと思しき石像が壁際に配置されている。それらは細微な差異により別の存在であるように彫刻されている]

[アルファがカメラを保持したまま周囲を見渡す。割れたステンドグラス7枚の全容がカメラに映し出される。ステンドグラスに描かれた内容は一部破損しているものの左から順に物語として成立している様相を示しており、1人の男性と1人の女性の恋愛と死別、そして再会までが描き出されている。一番右のステンドグラスは完全に破損しており、内容を把握することはできない]

アルファ: 女神像やステンドグラスから何かしらの兆候は感じられない。これらは非異常のものだと推測するが、一部サンプルの回収は実施する。

[戦闘班Cによってサンプルの回収が実施される。後の異常調査によってステンドグラス、並びに女神像は非異常の物質によって構成されていることが判明している]

アルファ: "妖精"の出現経路の確認のため、十分な足場の建設の上、ステンドグラスの更に奥の調査を行う。これは戦闘班全員が連携する形で行い、最大の警戒度を払って実施せよ。認識災害等の可能性も考えられるため、確認は認知抵抗薬を投与した私自身が行う。そして私自身に異常な行動が見られた場合、即座に射殺しろ。

[簡易的な足場が建設され、アルファが自身の腕にエレミタ87を投与する。アルファの認知抵抗値は推定で20前後まで上昇する。建設された足場を元にアルファが1枚目のステンドグラスの外側をのぞき込む]

アルファ: [罵倒] 最悪だな。

[カメラは暗闇の中に存在する無数の発光点が蠢いている様子、並びに不定の場所に咲く睡蓮を撮影する。他のステンドグラス内部の様子も同様であるが、一番右のステンドグラス内にはそれまでの発光点より巨大な光柱の存在が遠方に確認できる。ただし、それらが教会側に接近している様子などは確認されていない。調査は早急に終了される]

<記録終了>

第三次調査における結果を元に、現在、"妖精"の排除計画に関する見直しが行われています。


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執筆者: nemo111
文字数: 21081
リビジョン数: 129
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最終更新: 03 Jan 2023 15:26
最終コメント: 03 Sep 2022 07:12 by nemo111

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