れんしゅうちょう

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遺(←)天

仕事中とは打って変わってあどけない表情で寝る彼に、私はいったい何をしてあげられるのだろうか
幼い少年のように眠る彼の前髪を掻き上げる
きっとそんなに遠くない未来、彼は記憶処理によって私のことを…いや私達のことを忘れてしまうのだろう
さみしくない、悲しくないと言えば嘘になってしまう
願わくばいつまでもこの日々が続いて欲しい。いつまでもあの図書館で二人を待ち続ける。とっくに成人した彼らに不似合いな、子供向けの絵本を持って

今は出来るだけ長く”今回”が続くことを祈ろう
明日も、明後日も、来週も、来月も。来年だって一緒に過ごそう。
今の関係のまま。私達のまま。変わる必要なんてないから
だからどうか、このまま


物陰から敵影の有無を窺う。上からは出来るだけ殺すなとの指示が出ているが殺すなといわれた訳ではない。
息を殺し予備の銃の弾丸を確認する。なるべく音を立てないように―――
コツ
背後から発せられた音に瞬時に振り向き銃を構える。
不味いな、こんなにも早く居場所が割れるとは思わなかった
少しの焦燥感と緊張を抱えながら相手の見当を付ける。
味方は全員エリア内の別区画にいる。音の犯人は99%敵、残りは…
人影を捉えた銃口が考えるよりも先に火を噴く。と同時に相手の顔を認識する。
残りは未確認の異常生物でも何でもなかった。民間の子供だ。
喉からは掠れた音が漏れ出る
何故子供がここにいる。民間人の避難は済んでいた筈だ。
子供の顔が恐怖に引き攣り、手に抱えたぬいぐるみをきつく抱きしめる。
駄目だお願いだ。よけてくれ。外れろ外れろ外れろ
必死の願いも虚しく、俺の放った弾丸が固まった子供の眉間を貫く。小さな鉄が皮膚を貫き骨を砕き脳を掻き、また皮を破って反対側へと抜けていく
一部始終が網膜に、脳裏に鮮明に焼き付けられる。恐怖に固まる幼い顔、小さな頭を貫いた弾丸、揺れるおさげ髪。
冷たいコンクリートに叩きつけられた体からは血や髄液などで濁った液体が流れ出て、白いワンピースをゆっくりと汚していった。
それは次第に彼女のきつく編まれたおさげ髪にも染みていく。
私はそれをただ荒らいだ息を抑えながら見つめる事しかできなかった


日焼けして変色した木箱に手を突っ込んで赤の絵具を手に取った
固まりかけのキャップを力ずくでこじ開け、残り少ない絵具を絞り出す。鮮やかな20号は黄色と白と少しの青緑に吸い込まれ生気を帯びる。油で滑らかに伸ばし、たっぷりと筆に乗せ、その勢いを殺さないようにキャンバスへと持っていく
先が細くなるよう切った自分用の筆は空間を思い通りに滑り、緩急のついた線を伸ばしていく。幼子の手のひらのようなかわいらしさを、体に巡る血液のような生命力を、数日後には散ってしまう一瞬の儚さを捉えて離さないように。
目に映る景色は瞬きの度に変わっていく。風向きが変わり、雲の形が変わり、日の角度も変わる。でもここに存在する空気は、気配は、少し見えにくいだけで相変わらずそこにいる
見失ったかと焦っても、葉っぱの裏や足元にきょとんとして座っていたりするのだ
そいつを捕まえたままキャンパスに見えたもの全てを擦り付けて重ね合わせていけばいい
境内を風に乗って踊るようにはしゃぎまわる子供たちを尻目に私は絵を描き続ける。兄妹かはたまた親戚か、3つほど年の離れた子供二人はここら辺で見たことのない顔だ。都会から遊びに来た子供たちというところだろう
逸れた意識を再び紅く染まったモミジに向ける。例年通り見事に色づいた紅葉は先ほどと何も変わらない紅で視界を染める……何も、変わらない?
思い返してみれば雲の形もずっと同じ形のような気がする。

有為転変、諸行無常のこの世界で何も変わらないなんてことがあるだろうか。
キャンパスの中とキャンパスの外の視界を見比べる。日の角度、雲の形、境内の中の兄妹の様子。何も変わっていない。少なくとも私が絵を描きだしたのが10時、腕にはまった時計の示す時刻は1時半といったところだ。つまり私が絵を描いていたのはたったの3時間ということになる。
「うそでしょ…?」
思わず口からは否定の言葉が漏れた。
絵を描くには普通1か月以上の時間が必要だ。粗方描き終わった

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