墓場再臨編

俺を担当するカウンセラーは、鮮やかな瞳の青色がやけに目立つ、初老の男だった。

「墓、ですか」
「うん。財団所有の共同墓地だ。知り合いがひとりで管理しているんだが、流石にキツくなったらしい。人手を探してたんだが、流石の財団も人手不足に喘いでるってわけだ」
「で、俺にお鉢が回ってきたってわけですか。ひとりだけ生還したくせに能無しの俺に」

額から微かに伸びる、忌々しい黒い破片に触りながら、俺は不作法に言い捨てる。しばらく世話になった人にこんな言い方はないだろう。それは分かっている。
結局、俺はこの人とは一切打ち解けることはなかった。カウンセラーと打ち解けると言うのも変な話かもしれないが、俺は歩み寄る努力すら怠った。ただただ内向きの、自罰的な言葉と、棘ある雑言に終始したのだった。

「私と君はまだまだ話し足りない。きっともっと分かり合えただろう。ただ、時間が来てしまった」

俺は何も言えない。きっと、あちらの瞳に映る俺の顔はひどく歪んでいることだろう。元々、俺は自分の感情を偽ることに長けているわけではない。それは無論、自分に対しても。

「君はその、頭に残った破片と、仲間への贖いを持って生きていく。それはきっと苦難の旅になるだろう。だけどね、それは決して苦しみだけの道ではないんだ。若い君は、これからたくさんの美しいものを見れるんじゃないかな」

────私とは違ってね。

カウンセラーの作り物の瞳が、そう言った気がした。喉がきゅっと絞まる。
俺に溜まった罪悪感が今になって沸々と湧き出し、俺の心を焼け爛れさせた。

俺は咽帰るように言葉を吐き出す。それが咽頭を通り、唇を伝った瞬間、あの地獄のような熱とは裏腹に、嫌な冷たさが背を伝う。

「すみませんでした」

違う、きっとこの言葉ではない。これではないのだ。俺が言うべき言葉は、彼に伝えるべき思いは。
しかしこれ以外に何を言うのだ。今の俺には、一切わからない。

「さぁ、行っておいで。君には時間があるんだ」

変わらぬ微笑みを、カウンセラーは浮かべていた



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