墓場

そこは、やけに見晴らしのいい丘にあった。

職員用第4共同墓地。ここにはクリアランスレベル3の職員が眠っている。

自分から来ていて勝手なのだが、私という存在は、ここにどうもそぐわない気がした。
澄み切った青空、咲き乱れる花々、白い石造りのオブジェ、そして、整然と並べられた墓石達。個々の宗教によって形状は違うが、しかしそれらは一貫して、同じ役割を担っている。

こう考えるとどうも私達、組織の下で働く我々とよく似ている気がする。いや、やっぱり違う。
少なくとも私たちはこんな明るい場所にはいない。

羨ましいとは思わない。それに早くここから去りたい。

目線を少し下せば、黒い袖に抱かれた、まだ開ききっていない百合の花。きっと美しく咲くだろう。
開いていないでよかった、と思う。花の劣化を恐れたわけではない。仕事用のコートに匂いが移ってしまってはたまらないからだ。開いた百合は芳香を放つ。袖から百合の匂いがする私などそれこそむせかえるほど嫌だ。

仕方ない。やることをやって、できるだけ早く帰ろう。

『貸出』とマジックで書かれたバケツと柄杓を提げながら、彼の墓に向かう。通路の両端や墓と墓の間には慎ましげながら美しい花々が咲いている。よく管理されているのだろう。

ああ、やっぱり

やけに新しい墓石には、彼の名が刻まれていた。それが尚、彼の死を実感させた。財団でも人の死はどうこうできないのか。それとも、あえてその領域に踏み込まないのか──私が考えるべき内容ではないのだろうけれど。


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