プロジェクト・カムタカラ
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──今日はスクラントン賞を受賞された森野雄太郎教授をゲストにお迎えしています。よろしくお願いします。

アナウンサーのよく通る声とともにやさしそうな男性が入場する。ああ、森野さんだ。懐かしいな、と記憶が巡る。

理論が発表されてから初の応用事例として、プロジェクト・カムタカラがありますが、これはどのようにして成し遂げられましたか。

かつて財団に収容されていた三種の神器と、それに関連する諸事象を原因とする問題は、その性質から信仰と神格に対する深い理解と統一的な理論がなければ根本的な解決が不可能でした。

ヴェール崩壊以後、既存の信仰への見直しが始まり、我が国では実験事実としての神話的現象がより詳しく解析されるようになりました。先ほど紹介したうちの研究室の信仰状態観測の中で、日本国全体の現実性と三種の神器への認識との間の強い相関関係が発見されました。

これを踏まえて「三種の神器が国を守る」という概念がこの事象の原因であると指摘した報告書を公開前評価として財団に提出しました。ただ、どうやら相当の機密情報だったらしく対応がエスカレーションして鵺理事に説明を求められるようになってしまいました。

それは大事ですね。そこからどのようにこのプロジェクトに繋がったのか、詳しくお聞きしてよろしいでしょうか。

今は資料のほとんどが公開されているので、財団に許可をもらっている範囲はお話しすることができます。

三種の神器にまつわるこの現象は財団に収容されていました。現在では一般的な神的アーティファクトの存在は異常でなくなりましたが、私の研究が完成するまで財団がこれを収容していた理由は、財団がのちに発表したものなのですが、いくつかあります。

当時「この事象の正体はミーム的情報に依拠し、それにより各人に特集な能力を与える現象である」ということは鵺理事のみが知りうる情報でした。他にも彼女のみが知る情報の中には、「この事象の正体を認知した人は当該ミームの影響下から外れ、周辺の現実度を維持できず現実性災害を引き起こす」というものがありました。

このミームを収容し続けるためには、信仰を「食べ」続けなければなりません。まさにピスティファージ実体です。ヴェール体制下では基本的に三種の神器が特殊な能力を持つというミームを信じる人はほとんど存在しなかったため、一般職員が収容することになりました。

そのような特集なやり方をしていたのですね。

はい。

信仰の内容は変化するものですから、三種の神器は現実性維持することで国を守るのだというミームを職員に広めていたわけですね。この収容体制について、鵺理事には選択肢が三つありました。

一つ目は、ヴェール崩壊以前の収容体制を維持するというものです。

二つ目は、三種の神器の超常性について、一般の財団職員に知らされていた保護情報を国民にも広めるというものです。これは、ヴェール崩壊以後、超常に対する理解深まったから可能になったものです。

三つ目は、三種の神器にまつわる信仰の真実を知った際に起こる災害を技術によって防ぎ、保護情報を撤回、本来の信仰の形へ回帰させるというものです。

では、教授は鵺理事と協力してその三つ目とったわけですね。

はい。その通りです。私の研究が完成する前は、鵺理事は安全のために財団職員のみでの収容を継続しましたが、この研究で状況が解決の方向へ向かうことになりました。

報告を受けた鵺理事は私に私とその周辺に研究チームを結成するように求めました。財団内部では扱いにくいですし、これ以上正体を知るもの増やすのは得策でないと考えられたのでしょう。

研究チームを即座に集め、神格モデルを使い、行うことのできる政策の規模や当時の信仰状況を元に、信仰についての解析を深めました。その結果、この情報を開示しても何ら問題ないことが発覚しました。

この結論に至るとき、どのようなことが決め手となったのですか。

私たちのチームは全員がこのミームによって付与される能力の効果は、信仰によって生まれ、維持されるものだと把握していました。しかし、現実性災害は発生しませんでした。この理由を詳しく調べたのです。

まず、外部の信仰をシャットアウトした環境でも現実性災害が発生しないか調べる実験を行いました。結果、現実性は低下の傾向を示すどころか、より高めになる傾向を示しました。このメカニズムの解析のために、個人の信仰流を測定し、神格モデルに基づいて予測される様々な物理量を用いて三種の神器に関わるミームの信仰振動子をシミュレートしました。

三種の神器そのものについては調べなかったのですか。

調べなかった、と言うよりも信仰状態の観測結果には関係ないんですよ。早い段階で形代は本質的なものではないという証拠が集まりましたからね。この問題の本質は信仰にある、と早い段階で絞り込めたことが解決の必要条件だったと思います。では、その本質である信仰はどのように変動したか、というところが重要になってきますね。

シュミレートの結果、三種の神器の能力が信仰を集めるミームによるものだと認識しても、“信仰が失われなくなった”というところにあると、統計的に結論づけられました。

ミームだと認識すること自体が問題なのではなく、ミームと認識してもなお信仰を維持できるかどうかが問題だったのです。

伝統的な信仰を含め、非科学的で真実でないと思われていた諸現象への認識が変化していったことにより、

理事が「長年にわたる問題がようやく解決します」と仰っていたのが印象に残っていますね。

類似の現象が多く起こっていることを把握していたので、自信をもって「もちろん可能です」と答えることができましたね。

旧弊に囚われず柔軟な対応をしていただいたと思います。

このような対応が可能になったのは信仰が実態をもって社会に存在することができるようになったことが大きいですね。



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