SCP-XXX-JP-殺した数は英雄にしたか?
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アイテム番号: SCP-XXX-JP

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPは中危険度収容ロッカーにて保管されています。SCP-XXX-JP-1-A,Bは拘束の上、標準人型収容室に収容されます。SCP-XXX-JP-1-Aは監視カメラ3台によって監視され、SCP-XXX-JP-1-Bは通常の人の食事を1日に3回行われます。SCP-XXX-JPの実験は永久に凍結されます。

説明: SCP-XXX-JPは見た目は通常の包丁と変わらない刃物です。包丁と同様で物を切ることが出来ますが切れ味が悪く、料理として使うには非常に効率が悪いです。また作成年や製造者は未だ不明であるため、いつ流通して異常性を発現したかは定かではありません。

SCP-XXX-JPの異常性は人(以下対象)が建物の床に突き刺すことで発生します。異常性が発生する条件は建物としての基準を満たしており、その範囲は駐車場などを含む敷地内までです。影響を受けた建物(以下SCP-XXX-JP-1)は、透明な壁によって建物の敷地外に出ることが出来ず、その壁は建物や敷地内で起こっていることに対して、周辺の人は自身の意識外で起こったと思い込む反ミーム性を有しています。反ミーム耐性を持つ職員はSCP-XXX-JP-1を意識的に観測することが可能です。

SCP-XXX-JP-1には対象以外の当時住んでいた住民がいた場合、下半身が異様に変形した人型実体(以下SCP-XXX-JP-1-A)へと変化します。SCP-XXX-JP-1-Aは人間に対して非常に敵対的であり、異常性を発生させた対象を優先的に襲うようになります。SCP-XXX-JP-1-Aは対象がSCP-XXX-JPを使用することで死亡しますが、変形していた身体は元に戻ります。SCP-XXX-JP-1-Aを全て死亡させることでSCP-XXX-JPの異常性を喪失させます。しかし対象が死亡してしまった場合、SCP-XXX-JP-1の異常性は消失しますがSCP-XXX-JP-1-Aは生存したままです。

SCP-XXX-JP-1の異常性を喪失させた対象(以下SCP-XXX-JP-1-B)には、高い再生能力を持つ又は不死性が与えられます。それはSCP-XXX-JP-1-Aの数が1匹などの少数であっても可能です。不死性を与えられた対象は生理的現象に変化はありませんが、致死の傷害を受けても死亡することはありません。またSCP-XXX-JP-1-Bが持つ再生能力は、傷害の度合いによって治癒される時間が異なるため、重傷であるほど長い時間を有します。

補遺: SCP-XXX-JPは、周辺の住民による飛び降り自殺の通報によって発見されました。発見場所であるマンションでは42人の住民の死体が発見され、住人の1人で飛び降りによって負傷していた男性の狼山透かみやまとおる氏が容疑者として逮捕されました。しかし、狼山氏はその驚異的な治癒力に対して財団の目に止まり、笠松研究員によってインタビューが行われました。周辺の人達には記憶処理を施して解放され、カバーストーリー『ガスの漏洩による火災』を周辺に流布しました。

対象: 狼山氏

インタビュアー: 笠松研究員

付記: 狼山氏へのインタビューは発見から2日後に行われています。また、狼山氏の精神状態を鑑みて行われたインタビューであり、余計な混乱を避けるためにSCP-XXX-JP-1-Bではなく本名で記載、または呼称しています。SCP-XXX-JP-1-Aも同様です。

<録音開始>

笠松研究員: 狼山さん、あれから2日経ちましたがどうでしょうか?何か話せますか?

狼山氏: (沈黙)

笠松研究員: 狼山さん?

狼山氏: あ、はい。大丈夫です。薬のせいかまだぼーっとしちゃって。

笠松研究員: もし体調が悪かったら仰ってください。では最初の質問をしますね。

狼山氏: はい。

笠松研究員: 貴方はあのマンションに住んでてどれくらい経ったんですか?

狼山氏: 近くの大学に通うために引っ越してて、それから2年経ってます。

笠松研究員: なるほど、結構最近なのですね。周りとの交流はあったのでしょうか?

狼山氏: まぁ、それなりに。

笠松研究員: 分かりました。では早速本題なんですけど、貴方は何故屋上から飛び降りていたのですか?

狼山氏: (沈黙)

笠松研究員: どうやら言いたいことが沢山あるようですし、質問変えますか。

狼山氏: お願いします。

笠松研究員: 率直に聞きます。あそこで何が起きたのですか?あの人達は貴方が殺したのですか?

狼山氏: 最終的にはそうです。最初から言うとなるとかなり長くなりますけど。

笠松研究員: 大丈夫ですよ。むしろそこまで話せるのではあれば嬉しい限りです。

狼山氏: 僕は最初、自炊をしようと思って材料がないか探してたんです。それで、切れ味が悪いから一応仕舞ってた包丁があったのに気付いて。

笠松研究員: その包丁はどこから入手したのですか?

狼山氏: それは正直分かりません。家の倉庫に仕舞ってあったのを拝借しただけなので。

笠松研究員: なるほど。続けていいですよ。

狼山氏: それでずっと棚に置いとくのもあれだと思って、もう捨てようと思ったんです。だけど、足が変にひねっちゃってそのまま転んで、多分包丁はその時に床に刺さったんだと思います。

笠松研究員: その包丁はどうしたのですか?

狼山氏: 賃貸だったから焦りながら抜きましたよ。案の定傷ががっつり残っちゃって終わったと思いました。そしたら急に、何て言うんでしょう。部屋の雰囲気が変わったと言うか。

笠松研究員: 外の景色が変わったとかですか?

狼山氏: いえ、ただ雰囲気だけです。何か空気がこもったようなそんな感じです。こんな息苦しかったっけって。急に出た違和感だったんで気のせいだと思ったんですけど、突然窓の辺りに何かがぶつかったんです。

笠松研究員: 何があったのですか?

狼山氏: あの、僕はそれなりに交流があったと言いましたよね?ちょうど隣に気になってる女性がいまして、その女性の人の顔が窓に映ってたんです。突然でびっくりしたんですけど、もしかしたら自分が感じた違和感は本当で、不安になったから僕の部屋に助けを求めたと思ったんです。

笠松研究員: その後どうされたんですか?

狼山氏: 今でも止めておいた方が良かったと思います。包丁を持ったまま窓を開けて、目の前にその女性がいました。いつもと同じように綺麗な顔でした。僕は話しかけたんですけど無反応で、どうもおかしくて動けずにいたらあの足かも分からない肉塊が、窓の中に入ってきたんです。

笠松研究員: 部屋の中に入ってきたんですか?

狼山氏: そうです。その女性、いやもう化け物だあれは。その化け物は僕に向かって来たんです。悪い夢を見てるのかと思いました。その時はまだ攻撃をされてなかったんですけど、逃げたくて仕方なかったです。

笠松研究員: と言うことは、やはり攻撃を受けたのですか?

狼山氏: はい、ぎこちなかったのか最初の攻撃は受けませんでしたけど、すぐに状況が理解出来なくて。明らかにおかしいのに僕は「止めてください」とか言ってたんです。絶対話が通じる相手じゃないのは分かってました。それで、気付いたら化け物を刺してました。

笠松研究員: 化け物は何か抵抗しましたか?

狼山氏: いえ、全く動きませんでした。そしたらさっきの化け物の姿が無くなって、女性の普通の姿に戻ってました。でも、でも女性は死んでしまってました。どうもこの包丁を刺すことで、人間の姿に戻せると同時に殺せることが分かったんです。

笠松研究員: その包丁以外でも同じような効果だったのですか?

狼山氏: 一応試してみたんですけどダメでした。化け物を殺せてかつ元に戻せるのはあの包丁だけのようでした。

笠松研究員: それで、その住民達を全員?生存者は一人もいなかったのですか?

狼山氏: 僕以外にも誰かいるんじゃないかと思ったんですが、大家さんも他の階の人も全員化け物になってました。危険でしたけど、玄関や窓の鍵は閉めておいてベランダから隣のベランダに移ったり、パイプで登ったり降りたりしてました。化け物はそこまで動けるようではなかったので。

笠松研究員: パイプで降りたということは外に出れたということですよね?

狼山氏: 外には出れましたけど、それはマンションの駐車場と言うか敷地内まででした。そこから出ようとしても透明な壁があって出れなかったんです。流石に絶望しました。後ろにはまた化け物が迫ってくるしで、何とか逃げましたけど。

笠松研究員: その化け物は短期間で殺害したのですか?

狼山氏: いえ、流石にあの量ですし短期間では殺せなかったです。そもそも人間に戻せたというよりは、元に戻ったことで人間を殺してしまったと思ってましたから、全員を殺そうなんてすぐに行動は出来ませんでした。

笠松研究員: どれくらいの時間が経っていたか分かりますか?

狼山氏: 休日だったんで朝からでした。多分時間的に全部終わったのは夕方頃だと思います。

笠松研究員: 最後に自殺を選んだと言うことは、最後以外でも自殺を考えていたんですか?

狼山氏: はい。こんな悪夢みたいな場所はさっさと逃げたかったし、この高さなら死ねるだろうと思って自殺しかけたんです。でも、ふと気付いたんです。

笠松研究員: 何を?

狼山氏: 僕が死んでもあの化け物が消える保証はどこにもないし、もしかしたら世に放たれてしまうんじゃないかって。あの数ですよ?そんなの今よりもっと酷いことが起こるはずです。僕にはまだ家族や友達がいましたし、僕が自殺したことでそんなに迷惑なことが起こるなんて耐えられませんでした。

笠松研究員: それで続けようと思ったんですね。

狼山氏: はい。最後の化け物をやっとの思いで殺して、何とか最悪な場所から解放されました。

笠松研究員: そうだったんですか。え、なら何故自殺なんかしようとしたんですか?

狼山氏: 周りを見て、また気付いたんです。化け物を倒した僕は英雄のように思えたんですけど、化け物が人間の姿に戻ってしまえば僕はただの殺人者なんです。僕は、どう見ても大量殺人者なんですよ。英雄なんかじゃない。

狼山氏: そんな奴、何も知らない人達から見たら僕は殺人者で、捕まって裁判にもなれば死刑確実です。守っていたはずの人達や、家族と友達から犯罪者として見られるのは死ぬより辛いです。

笠松研究員: だから飛び降りたんですね。

狼山氏: はい。でも死ねませんでした。凄く痛くて苦しかったけど何故か死ねなかったんです。僕を捕まえた警察の人達は驚いてて、そしたら貴方達が来て今に至ります。あの時は人生が終わったと思って錯乱してました。

笠松研究員: 教えてくれてありがとうございました。その不死についてまた詳しく話をしてもらうと思います。今日は沢山話して疲れましたでしょうから、ゆっくり休んでいてください。

狼山氏: 僕も少しスッキリしました。ありがとうございます。

笠松研究員: いえ、では行きましょうか。

<録音終了>

終了報告書: インタビュー後、Dクラス職員を用いた実験によってSCP-XXX-JP-1-Bの証言は正しいことが判明しました。SCP-XXX-JP-1-A,Bの不死性に関しては未だ不明な点が多く、またSCP-XXX-JP-1-Aが少数であっても不死性が与えられるため、SCP-XXX-JPの実験は永久的に禁止されることとなりました。元Dクラス職員であったSCP-XXX-JP-1-Aは今後も詳細な調査が行われ、SCP-XXX-JP-1-Bも協力の元に行われます。


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執筆者: hakuyou_shiro
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最終更新: 27 Oct 2021 00:48
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