SCP-XXX-JP - 翼ける(下書き)

SCP-JP SB3 » 白翼真狼の執筆地点 » SCP-XXX-JP - 翼ける(下書き)

クレジット

タイトル: SCP-XXX-JP - 翼ける
著者: ©︎hakuyou_shiro
作成年: 2021

アイテム番号: SCP-XXX-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPはサイト-81█の標準人型収容室にて収容されています。食事は一日三回、種類を問わない哺乳類の肝臓を生のまま与えています。SCP-XXX-JPの効果の増大を抑制させるため、予め傷を付けたままの状態で収容室に入室し、SCP-XXX-JPの腕に痣が出来るまで数回叩く行為を定期的に行っています。素手では限界がある場合は、道具を使用することが許可されています。

説明: SCP-XXX-JPは背中に結晶化した血液で繋がれた、翼のような皮膚を持つ15歳の男性です。体型は標準的ですが、その中で声帯と性器が意図的に切除された形跡があります。知能は低いですが学習能力が高いため、読唇術での意思疎通が可能です。また、外部から危害を加えられることに対して受容的な様子を見せますが、一定期間危害を加えられなければ精神的に不安定になり、SCP-XXX-JPの異常性の効果を増大させます。

SCP-XXX-JPの異常性は、範囲11m以内にいる負傷していない人間(以下対象)に暴力を誘発します。影響を受けた対象は周囲にいた生物を見境なく襲い、範囲外であってもその影響は継続されます。その際に対象が負傷した怪我は瞬時に治癒されますが、影響が解消した後は適用されません。また、範囲外で負傷した人間であればSCP-XXX-JPの影響を受けません。

SCP-XXX-JPによる影響は約1~3日で解消されますが、一定期間内にSCP-XXX-JPに負傷させる程度の暴行を加えることで、SCP-XXX-JPの効果を事前に抑制することが出来ます。SCP-XXX-JPが負傷した怪我などは、哺乳類の内臓を食べさせることによって短期間での回復が可能です。また、SCP-XXX-JPの現在の異常性は後から変化したことが示唆されます¹。

SCP-XXX-JPは、既に壊滅したカルト教団の活動拠点にて発見されました。元々テロ組織として財団が注目しており、テロ行為が鎮圧されたあとに財団によって活動拠点の捜査が行われました。発見時、SCP-XXX-JPは既に負傷して布を羽織った状態でしたが、接触した際は興奮する様子を見せました。しかし職員が差し出した手を見て、不安を抱いたのか異常性を発生させました。また、SCP-XXX-JPが座っていた場所に鳥の羽根が散乱していました。カルト教団は壊滅しましたが、カルト教団の教祖とされる人物は現在逃走中です。

補遺: SCP-XXX-JPに言葉を学習させて会話が可能になるまでに成長したため、録画用カメラを設置してインタビューを設けました。

+ インタビュー記録を開く

- インタビュー記録を閉じる

インタビュー記録-XXX

対象: SCP-XXX-JP

インタビュアー: 大反研究員

付記: SCP-XXX-JPは声が出ないので、読唇で得た言葉を大反研究員に通信で伝えられています。

<録画開始>

大反研究員: 質問を開始します。SCP-XXX-JP、よろしいですか？

SCP-XXX-JP: (頷く)

大反研究員: では質問します。貴方は何歳からあの場所にいたの？

SCP-XXX-JP: 産まれたときから。

大反研究員: 親はいたの？

SCP-XXX-JP: いない。分からない。

大反研究員: なるほど。では、あそこで何をしていたの？初めて見たときは怪我をしていたけれど。

SCP-XXX-JP: ずっと怪我してた。

大反研究員: 怪我をしたのはあの時だけじゃないということかな？

SCP-XXX-JP: (頷く)信じてる人が私を殴る。そして怪我を治す。みんな喜ぶ。

大反研究員: 治る？貴方を殴ったりすると怪我が治るの？

SCP-XXX-JP: 早く治る。

大反研究員: 痛くないの？

SCP-XXX-JP: 痛いけど私も治る。お供え物食べれば。信じてる人沢山で殴ることもあった。

大反研究員: 辛くなかったの？

SCP-XXX-JP: 辛いは何？

大反研究員: あぁ、つまり痛くて嫌だと思うことだよ。

SCP-XXX-JP: 辛いは違う。思わない。傷が無いは悲しい。

大反研究員: それはどうして？

SCP-XXX-JP: 天使だから。

大反研究員: 天使？その天使とは殴った人達が信じてるものかな？

SCP-XXX-JP: 少しそう、何も知らないと天使になる。私は何も知らないままだった。

大反研究員: つまり貴方も天使ということ？

SCP-XXX-JP: 凄くそう、だから殴る。そして治す。でも変わった。

大反研究員: 変わったって何が？

SCP-XXX-JP: あの日変わった。私にお話は嬉しかった。信じてる人は、みんなお話が無かった。

大反研究員: あの日に初めて人と話したの？じゃあ、どうやって天使とかお供え物とかの言葉は知ってたのかな？

SCP-XXX-JP: そう、初めて。天使とお供え物の言葉、最初から知ってた。使命と同じ。私はそれを貰った。言葉より一番大事だから。でも変わった。お話で変わった。背中が変わった。

大反研究員: 最初は違う背中だったの？

SCP-XXX-JP: 鳥の羽根だった。お話して立ったら、羽根が沢山落ちてた。

大反研究員: 落ちていた羽根は元々付いていたものだったのね。どうして羽根が落ちたか分かる？

SCP-XXX-JP: 知ったから。

大反研究員: 知った？何を？

SCP-XXX-JP: お話で使命と違うもの知った。ずっと知らないものを知った。

大反研究員: どうして知らないものを知ることが関係するのかな？

SCP-XXX-JP: 天使は何も知らない。知らないこと、良いこと。何かを知る、悪いこと。使命と違うものを知った、悪いこと。だからこうなった。

大反研究員: どうしてそれが悪いことになるの？

SCP-XXX-JP: 天使は全部許す。受け入れるから。信じてる人が私殴っても許す。平気だから笑顔だった。それが完璧。ずっと純粋。でもこうなって、さっきの辛いが分かる。

大反研究員: 完璧じゃなくなったことで、殴られるのが辛いと思うようになったってこと？

SCP-XXX-JP: そう、辛い。純粋でいるの嫌だ。良いことなのに嫌だ。でも優しい、それが一番嫌だ。

大反研究員: 優しくされるのが嫌って、もしかしてお兄さんが手を差し伸べたとき、怖かったから自分の力を出したの？

SCP-XXX-JP: 優しいのは弱いから。弱いから優しいされる。弱いは完璧じゃない。完璧だから殴る。だから治す。殴った人、完璧じゃないから治す。私治るからまだ出来る。

大反研究員: 貴方が傷付くのが完璧なら、何故殴る人が傷付いてるのは完璧じゃないのかな？

SCP-XXX-JP: 何が？殴るのは怪我してるから。怪我治すのは完璧にする。私は殴られるのが完璧。治すから。助ける。助けるの。

大反研究員: (5秒の沈黙)分かりました。ちなみに怪我を治すことはまだ出来るのですか？

SCP-XXX-JP: 出来る、暴れた人にされた顔の怪我治ってた。私の腕ギュッて掴んだから血が出て、あの人はまた来たら怪我治ってた。

大反研究員: なるほど、後で見てみますね。今日はこれで終わりです。ありがとう。

SCP-XXX-JP: 怪我したら来てね。治すからね。助けるからね。

<録画終了>

終了報告書: インタビュー後、床に落ちていた鳥の羽根が回収されて検査した結果、SCP-XXX-JPのDNAが確認されました。更なる検査でSCP-XXX-JPの羽根は、SCP-XXX-JPの骨組織から形成されていたことが判明しました。また、SCP-XXX-JPは自身に危害が及ばないことに対して非常に危惧しており、その心理的影響でSCP-XXX-JPの効果を増大させていることが判明しました。

SCP-XXX-JPの能力で怪我を治癒したとされる人物を確認したところ、その人物は怪我を負った場所を肌色に近い絆創膏を貼っていたことが分かりました。そのため、自身に危害を及ばせた人物への治癒能力が既に失われていることは、SCP-XXX-JPがその情報を知ることで効果を増大させる懸念があります。