SCP-XXX-JP - 僕は君の声を五月蝿く思った(下書き)

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クレジット

タイトル: SCP-XXX-JP - 僕は君の声を五月蝿く思った
著者: ©︎hakuyou_shiro
作成年: 2021

アイテム番号: SCP-XXX-JP

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPは、サイト-81█の低危険度収容ユニットに保管されています。SCP-XXX-JPの劣化を防ぐため、定期的に清掃を行っています。また、SCP-XXX-JPは強制終了を防ぐため、2週間に1度ステージ選択画面の操作を行っています。その際、"家"以外を選ぶようにしてください。

説明: SCP-XXX-JPは██製のパソコン用ゲームソフトです。常時パソコンに内蔵しているため、ハッキリとした形状は判明していません。同封されていたとされる説明書に異常性はありませんが、"主人公"と記された絵とパソコン上に映る主人公の立ち絵(以下SCP-XXX-JP-1)は一致していません。SCP-XXX-JPは常に起動した状態であり、制限時間まで無操作の状態であるか、人間(以下対象)がゲームをクリアしない限り、電源を落とすことが出来ません。SCP-XXX-JP以外に、同様のゲームソフトが存在しますが異常性は確認されませんでした。

SCP-XXX-JPのゲーム内容は主に、家、学校、公園、お店、最後は家と言った5つのステージを回り、ゲーム内通貨を使用出来る内容となっています。また、行く先々に選択肢が現れてルートを決めることが出来ます。ステージごとにストーリーが展開していきますが、その内容は対象に対して陰鬱な印象を持たせます。ゲームのクリア方法は"家に帰ること"ですが、その後対象は消失するとされています。¹ステージの内容は説明書に記されておらず、後に判明した内容は以下の通りです。

場所	内容
家	親に無関心から無視される。買い物に行かされて一万円貰える。
学校	暴行などのいじめが起きる。同級生に恫喝されて三千円奪われる。
公園	車に乗った通り魔に轢かれ、刃物を持ったまま降りてきて刺される。今までの怪我を含めた治療が行えるが、その為には五千円必要。
お店	買い物が可能になるが、目の前で強盗殺人が起きる。事件を回避すると二千円貰える。
家	帰るとゲームクリアになる。

SCP-XXX-JP-1は、2次元上の存在でありながら現実の世界を把握しており、音声での意思疎通が可能です。また、一度行ったことがあるステージであっても、以前とは異なる反応を見せます。SCP-XXX-JP-1は、ストーリー内の出来事を実際に体験しているかのような振る舞いを見せます。基本的に何時でも会話が可能ですが、選択肢がある場面での会話は不可能です。

補遺: 家屋の中で中山家全員²が失踪する事件があり、通報を受けた財団職員が家宅捜査を行った結果、SCP-XXX-JPが発見されました。この時SCP-XXX-JP-1に接触し、その様子を記したのが以下のインタビュー記録です。

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対象: SCP-XXX-JP-1

質問者: 笠松研究員

付記: SCP-XXX-JPは当時、名前の設定によって異常性が発揮されるとされましたが、ゲームをクリアした人に適用されることが判明し、現在は無関係と判断されました。その為、SCP-XXX-JP-1への接触は安全なものとされています。

<録音開始>

笠松研究員: 今からSCP-XXX-JP-1の質問を開始します。今日はよろしくお願いします。初めて記録するので、前と同じことを質問するかも知れません。

SCP-XXX-JP-1: はい。

笠松研究員: 貴方は自分が人間であることを主張しているようですが、本当に人間だったとして貴方は何者なんですか？

SCP-XXX-JP-1: えっと、僕は最初ゲームで遊んでて。

笠松研究員: 先に名前を伺ってもよろしいですか？

SCP-XXX-JP-1: あ、賢人です。川田賢人と言います。

笠松研究員: 貴方を発見した時、家は川田家ではなかったのですが、貴方はあの家で何をしていたのですか？

SCP-XXX-JP-1: 僕は友達の家に遊びに来てたんです。それで知人にゲームを貰ったからそれで遊ぼうって。

笠松研究員: その友達はどこに？一応友達の名前も教えていただければ。

SCP-XXX-JP-1: 友達の名前は誠也って言います。ゲームで遊ぶってなったとき、お腹が痛くなって先にやっててって言ったんです。その日に限ってトイレが長くなっちゃって。戻ったら誠也は部屋からいなくなってました。

笠松研究員: どこかに出掛けたのではなく？

SCP-XXX-JP-1: 最初はそう思いました。パソコンを見たら『ゲームクリア』って書いてあって、あまりに簡単過ぎてクソゲーだと腹を立てたか、別のゲームを買いに行ったんだと思って。

笠松研究員: 探しに行ったんですか？

SCP-XXX-JP-1: いえ、友達の部屋で大人しくしていようと。でも、もうクリアしてるから僕もしていいかなと思って、僕もやったんです。そしたら、やっぱり貰い物だからか友達を含めて、セーブデータが4つもありました。それで、もうやっていいだろうと最初から始めたんです。

笠松研究員: 4つですか。ゲームの内容は変わってないのですか？

SCP-XXX-JP-1: はい、僕がプレイした内容と一緒だと思います。それで名前を設定したら『主人公と主人公の家族を設定しました』と書かれてました。簡単な割りに凝ってるのかなと不思議に思って、説明書を見ても、ステージをグルグル回るだけとしか書かれてないし、セーブ画面は出るのにセーブ出来ないんです。

笠松研究員: 設定した名前は貴方の名前だったんですか？

SCP-XXX-JP-1: いえ、自分の名前と言うよりはあだ名をそのまま使ったんです。僕は「ケン」と言う名前で設定したんです。だけど、主人公の絵が説明書と違ったんです。

笠松研究員: それは貴方もそうですよね。

SCP-XXX-JP-1: はい。しかも妙にその姿が友達に似てたんです。最初ステージに出てくる親もどこか見たことあるような感じで。設定した名前も、僕が決めた名前じゃなくて友達の名前だったし、声まで。

笠松研究員: そこで何かおかしいとは気付きませんでしたか？

SCP-XXX-JP-1: もちろん思いましたよ。でも最近のゲームって、自分のパソコンのデータを読み取ったメタ的な演出があったりするので。主人公が僕に話しかけるのだってそういう事なのかと。

笠松研究員: そうですか。それと気になっていたのですが、右下に表示された時間は制限時間なのですか？選択肢を選ぶと時間が戻るのですが、貴方も何かが戻ったりするのですか？

SCP-XXX-JP-1: あ、それは僕も制限時間って書いてあるから、最初はそうだと思ってたんですけど、今の僕から見たら『死ぬまで』と書いてあるんです。多分、この時間は僕の寿命みたいなものだと思います。戻ると言うか、寿命が伸びたという感じです。

笠松研究員: なるほど。では、どうやって貴方はゲームの中の主人公になったのですか？

SCP-XXX-JP-1: このゲームのストーリーって、結構胸糞悪いところがあるんですよ。

笠松研究員: それは知っています。

SCP-XXX-JP-1: 僕はあまりそう言うのに慣れてなくて、早くクリアしようと思ったんです。しかも、音声付きだからステージを回るたびに、苦しそうな声が何度も何度も耳に届いて。一度家に帰ったら何か分かると思って、帰ってみたんです。

笠松研究員: どうなったんですか？

SCP-XXX-JP-1: 家に着いた途端に操作が効かなくなって、やっぱり家に帰るのが正解だったんだと思ったんですけど。そしたら『自殺』のボタンが出てきて。

笠松研究員: 今までのような選択肢ではなかったのですか？

SCP-XXX-JP-1: そうです。さっきまで選択肢があったのに、その時は『自殺』のボタンしかなかったんです。

笠松研究員: それで、押したんですか？

SCP-XXX-JP-1: (5秒の沈黙)はい。最後まで主人公は報われないんだと思って押したんです。ボタンを押したら『主人公は死亡しました。次はゲームをクリアした貴方が主人公です。』って書かれてたんです。

笠松研究員: だから、貴方がゲームの中に入ったと言うんですか？

SCP-XXX-JP-1: 今はそうとしか思えないです。それで、ゲームが始まって僕は気付いたんです。

笠松研究員: 何を？

SCP-XXX-JP-1: 起きたら家の中にいて、お父さんとお母さんに話し掛けても睨むだけで、最初は混乱したけど分かったんだ。僕が誠也にしてきたことを。特に、首を吊った時なんか[嘔吐]

笠松研究員: 大丈夫ですか？

SCP-XXX-JP-1: ごめんなさい、ごめんなさい。誠也、僕に助けて欲しかったのに、僕が無視した。

笠松研究員: SCP-XXX-JP-1、落ち着いてください。今日はこの辺にしましょう。

SCP-XXX-JP-1: ごめんなさい誠也。もうやだって言ってたのに、ごめんなさい。

<録音終了>

終了報告書: インタビュー後、SCP-XXX-JP-1が住んでいた家屋にも家宅捜査を向かわせたところ、川田家も同様に失踪していたことが判明しました。最初に確認されたセーブデータは、全部で3つ保存されていました。これらはSCP-XXX-JP-1を含めた、3人家族の川田家であると推察されます。また、保存されていたとされる4つのセーブデータは、起動した時点で既に削除されていました。