SCP-XXX-JP - それだけは忘れないで(下書き)

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クレジット

タイトル: SCP-XXX-JP - それだけは忘れないで
著者: ©︎hakuyou_shiro
作成年: 2021

アイテム番号: SCP-XXX-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPは、車両の区間を閉鎖してカバーストーリー『関係者以外立ち入り禁止』を適用することで一般人の侵入を防いでいます。SCP-XXX-JPを使用する際は、レベル3職員へ事前に連絡してください。また、定期的に行われるSCP-XXX-JP-1への接触は、必ず期間を空けてから次の接触を行ってください。

説明: SCP-XXX-JPは、██線を運行していた1台の鉄道車両です。SCP-XXX-JPの走行時、自殺した身内がいる人間(以下対象)が座席に座ることで、その異常性を発揮します。対象が座席に座った後、年齢、性別不詳の人型実体(以下SCP-XXX-JP-1)が出現します。しかし、その自殺によるトラウマを克服している、または生前関係が悪かった対象には出現しません。SCP-XXX-JP-1の出現する座席は決まっておらず、対象が座った向かい側の座席に出現します。また対象が複数の場合、SCP-XXX-JP-1が複数で出現することはありません。

SCP-XXX-JP-1は基本的に温厚な態度で対象に接し、対象には必ず"無理してないか？"から語り始め、しばらくの間は対象と話すようになります。その際、SCP-XXX-JP-1は対象にとって特に好意的であった身内に似せて、身体を変化させることが出来ます。しかし、SCP-XXX-JP-1が履いている一部に赤い線が入った靴だけは変化しません。身内の自殺に耐えられない対象であるほど、SCP-XXX-JP-1が出現しやすい傾向にあります。

対象はSCP-XXX-JP-1に接触した時、対象の目や口以外の身体が金縛りのように行動出来なくなります。SCP-XXX-JP-1が対象に物理的に接触している場面がありますが、外部からの接触が成功したことはありません。SCP-XXX-JP-1への接触後、対象は非常に晴れやかな気持ちになりますが、その故人のことを忘れてしまいます。

SCP-XXX-JP-1は対象との接触後に消失しますが、消失前に少しずつやつれて目眩に襲われる様子が確認されています。それは期間を空けることで解消することが出来ます。しかし、長期間の接触を避けてしまうとSCP-XXX-JP-1は別の車両に移動してしまうため、定期的にSCP-XXX-JP-1に接触する必要があります。

SCP-XXX-JP-1は収容当時、酷くやつれた様子で消失寸前だったところを財団によって発見されました。また収容前のSCP-XXX-JPにて、1人の男性が電車の接触により死亡する事故が、駅の監視カメラに映されていました。男性は即死であったと推察されます。SCP-XXX-JP-1の出現は、その事故の後であると推察されます。

補遺: SCP-XXX-JP-1に26回目のインタビューを開始した直後、SCP-XXX-JP-1が今までとは違う反応が現れたため、記録として補遺に記載します。この時は天笠研究員が担当しており、志願したことで行われたものです。インタビュー後のSCP-XXX-JPは、特に変わった変化は確認されていません。

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対象: SCP-XXX-JP-1

接触者: 天笠研究員

<録画開始>

(SCP-XXX-JP-1が黒く変色している。しかし、会話自体は特に変化がなく話し続ける)

天笠研究員: 貴方は何故、影みたいに黒くなったのですか？

SCP-XXX-JP-1: 君、親でさえいないだろう。私が見せるのは血が繋がっていて、その人が自殺した時だけだ。育てた人がいるだろうが、血が繋がっても自殺してないんじゃ意味が無い。

天笠研究員: そう。それなら自殺した親族がいないと、その真っ黒な姿になるのですか？

SCP-XXX-JP-1: あぁ。

天笠研究員: でも、それだとおかしいです。自殺した親族でいいのであれば、貴方は必ず変化するのでしょう？

SCP-XXX-JP-1: 親族でも、良い人でないとダメだろう？良い人だったら残された人達は少しでも、ほんのちょっとでも仕方が無いと思えることが出来ても、ずっと後悔してしまうから。

天笠研究員: 私の親族に、良い人はいなかったと？

SCP-XXX-JP-1: 残念だが。自殺したって、必ずしもその人が良い人なわけじゃないだろう。

天笠研究員: 違います。私の親族にだって良い人はいました。確かに親戚にたらい回しにされてきたけど、その人のお陰でやってこれたんです。

SCP-XXX-JP-1: だから、それは育ててくれた人の話じゃ。

天笠研究員: 違うと言ってるでしょう！

(天笠研究員は突然興奮するが、すぐに落ち着きを取り戻す)

SCP-XXX-JP-1: え、何が。

天笠研究員: 私は、その人にはあまり会ってないけど、もう会えないけど、家族のために頑張っていたんです。でも、あの日電車に轢かれて亡くなってしまった。

SCP-XXX-JP-1: じゃあ、何でその人が。

天笠研究員: 貴方が、私のお父さんだからです。

SCP-XXX-JP-1: え。

天笠研究員: 監視カメラからもその様子が映ってました。それを見て、私のお父さんだと確信したんです。貴方は私たち家族のために頑張りすぎて、不幸な事故に遭ってしまった私のお父さんなんです。最初は自殺なのかと思ったけど、関係者からは酷い目眩に悩まされていたと聞きました。そしてまた、人の為なんかに頑張ろうとしています。

SCP-XXX-JP-1: (3秒の沈黙)俺が君の父親だという証拠は？

天笠研究員: その靴です。赤い線の入った。

SCP-XXX-JP-1: 赤い線？

(SCP-XXX-JP-1が足元を見る)

天笠研究員: それ、私が子供の頃にした悪戯です。

SCP-XXX-JP-1: 悪戯？だけど確実にそうだと決められないだろう。もしかしたら偶然かも。

天笠研究員: いいえ、偶然じゃありません。だって、その靴はお母さんから貰ったって。お母さんが事故で亡くなってもずっと使ってた。でも私は、元気が無さそうにいつも下を向いて帰ってくるから、私が絵を描けば下を向いても元気でいられると思って。(2秒の沈黙)もちろん怒られました。

(SCP-XXX-JP-1は動揺した様子を見せるが、すぐに考え込むように黙る。)

天笠研究員: あの日、私が怒らせたからだと思いました。だからもう頑張らなくていいんです、お父さん。ずっと安心して眠れるように祈ってたのに、これじゃ意味が無いでしょ。

SCP-XXX-JP-1: 美羽。

(SCP-XXX-JP-1が立ち上がり、天笠研究員に近付く)

天笠研究員: だから、え、今私の名前。

SCP-XXX-JP-1: あぁ、思い出した。出勤前に何とか落とそうとしたが、思ったより線が落ちなくてな。仕方なくそのままで行って、目の前が真っ暗になって。きっとその時に電車に撥ねられたんだな。

天笠研究員: お父さん？

SCP-XXX-JP-1: 美羽、無理してないか？

天笠研究員: は、あ。

(天笠研究員は動かないまま涙を流す)

SCP-XXX-JP-1: ごめんな、美羽。死んでしまって。

天笠研究員: [泣き声]良い、良いの。お父さんも、無理してない？

SCP-XXX-JP-1: あぁ、もうしないよ。

天笠研究員: 良かった。

SCP-XXX-JP-1: 立派になったな。もう少しこうしていたいが、力が無くなってきた。

天笠研究員: うん、分かってる。でも私はこのことを忘れて、お父さんのことを忘れると思う。だけどやっぱり、忘れたくない。

SCP-XXX-JP-1: そうだな。でも俺としては、そんなにも悲しみを引きずってしまうなら、故人である俺を忘れてしまって、新たに歩めるようになって欲しい。

天笠研究員: どうしてそう思うの？

SCP-XXX-JP-1: 俺の、大事な娘だからだ。忘れてしまっても、それは紛れもない事実だ。

(SCP-XXX-JP-1は天笠研究員を抱きしめ、消失する)

<録画終了>