SCP-XXX-JP-自由なき宥恕を請う(下書き)

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クレジット

タイトル: SCP-XXX-JP - 自由なき宥恕を請う
著者: ©︎hakuyou_shiro
作成年: 2021

SCP-XXX-JP

アイテム番号: SCP-XXX-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPは、SCP-XXX-JP周辺の土地を買取って、カバーストーリー『所有地』を流布することで、一般人の侵入を防いでいます。SCP-XXX-JP-Aに接触する際は、必ず犬と付き添ってください。SCP-XXX-JP-Aにはカウンセリングを行いながら、慎重に接触させています。それでも攻撃が止まない場合は、鎮静剤を打って沈静化してください。また、屋外まで及んだSCP-XXX-JPの根は、屋内に収まるように必要最低限で伐採しています。

説明: SCP-XXX-JPは██県██市にある、根が生い茂った家屋です。SCP-XXX-JPの屋内は、植物の根と一体化しており、人間(以下対象)が近付くと攻撃性を示し、根を触手のように動かします。根は最大で5mに及ぶものもあり、恒久的に根が伸び続けます。SCP-XXX-JPの根には強い毒性があり、対象が負った傷から侵入することで、下痢や嘔吐、呼吸困難などの症状が現れます。検査の結果、トリカブト(Aconitum carmichaelii)に似た毒性を持つことと、根元にはイエイヌ(Canis lupus familiaris)の死体(以下SCP-XXX-JP-1)があることが判明しました。

SCP-XXX-JP屋内には下半身が根に埋まっている、11歳の██優美を自称する人型実体(以下SCP-XXX-JP-A)が存在し、意思疎通が可能ですが、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を患っています。根による攻撃の要因は主に、対象がSCP-XXX-JP-Aに近付くことです。SCP-XXX-JPから無理に抜け出させようとすると、SCP-XXX-JP-Aに毒が回る可能性が非常に高いです。

また、犬種を問わないイエイヌが、対象に付き添っていることで、SCP-XXX-JPの攻撃性を抑制することが出来ます。しかし、犬が付き添っていても、SCP-XXX-JP-Aが精神的に不安定であった場合は、SCP-XXX-JPの攻撃性を抑制出来ない様子が確認されています。このことから、SCP-XXX-JPはSCP-XXX-JP-Aに寄生する形で、身体や感情などを共有しており、他者による言葉や行動によって、SCP-XXX-JPの攻撃性に変化が現れやすいと推察されます。

SCP-XXX-JPは、家屋周辺の住人による通報から発見されました。元々SCP-XXX-JPには、SCP-XXX-JP-Aの父親と兄弟2人が住んでいました。SCP-XXX-JP-Aの父親は、多少の怪我を負っているものの、先にSCP-XXX-JPから逃げ出したことで、命に別状はありませんでした。SCP-XXX-JP-Aの弟は無事でしたが、SCP-XXX-JP-Aの妹は重傷を負っており、現在も治療中です。SCP-XXX-JP-Aの親族と、周辺にいた住人には記憶処理を施しました。

補遺: エージェント・白尾による、SCP-XXX-JP-Aへの接触記録の一部抜粋です。接触者には録画用カメラと、常に犬を付き添わせています。

+ 接触記録XXX-JP-A-1を開く

- 接触記録XXX-JP-A-1を閉じる

対象: SCP-XXX-JP-A

接触者: エージェント・白尾

付記: 犬を付き添わせることで、SCP-XXX-JPの攻撃性を抑制することが判明し、その翌日に行われたSCP-XXX-JP-Aへの、初めての接触です。

<録音開始>

エージェント・白尾: こんにちは、SCP-XXX-JP-A。

SCP-XXX-JP-A: え、誰？あ、わんちゃんだ。

エージェント・白尾: 私は白尾と言います。この子はハッシュ。簡潔に言いますが、私達は貴女方のような不思議なものを調査している者です。それで、貴方のことを聞きに来たんですよ。

SCP-XXX-JP-A: 不思議なもの？

エージェント・白尾: そうです。なので、最初は貴方の名前から聞かせて貰ってもいいですか？

SCP-XXX-JP-A: 名前は、優美です。

エージェント・白尾: 貴方は何故こうなったかは分かりますか？

SCP-XXX-JP-A: 分からない、です。何か、もう色々と嫌になって、そしたらこうなってて。

エージェント・白尾: この根っことかは、貴方が出したということですか？

SCP-XXX-JP-A: ううん、違うと思う。だって出ようとしても出れないし、もっと痛くなるの。

エージェント・白尾: と言うことは、家が勝手にこうなったと？

SCP-XXX-JP-A: うん。それで、誰も助けてくれないのが怖くて、皆が逃げちゃって、それで、それで、私が妹を。(息切れ)

(屋内が突然揺れ始める)

エージェント・白尾: 大丈夫ですか？深呼吸をしてください。今日はここまでにしましょう。また次の機会に話を伺ってもいいですか？

SCP-XXX-JP-A: (落ち着く)はい、はい。

<録音終了>

終了報告書: SCP-XXX-JPは犬が付き添っていることで、SCP-XXX-JPの攻撃性を抑制していますが、SCP-XXX-JP-Aの精神状態によって変化することが分かりました。今後も接触を続け、SCP-XXX-JP-Aの精神状態の安定を図ります。

+ 接触記録XXX-JP-A-2を開く

- 接触記録XXX-JP-A-2を閉じる

対象: SCP-XXX-JP-A

接触者: エージェント・白尾

付記: 最初の記録から一週間経ち、以前よりも話せるようになっています。今回も犬を付き添わせています。

<録音開始>

エージェント・白尾: こんにちは、SCP-XXX-JP-A。

SCP-XXX-JP-A: あ、白尾さん。こんにちは。わんちゃんもこんにちは。

エージェント・白尾: 今日も話してくれてありがとう。早速なんだけど、この根っこは君を守っているように思えるんだが、何か思い当たる節はあるかい？

SCP-XXX-JP-A: 守られていると言うよりは、縛られてる感じです。本当は誰かに助けて欲しいんですけど、それを邪魔されてるように思えて。

エージェント・白尾: 自分の意思ではないんだね。じゃあ何で犬が近付くと、前より邪魔をしなくなるのかな。

SCP-XXX-JP-A: あ、多分昔に犬を飼ってたからだと思います。良くその子と遊んでて、居心地が良かったです。

エージェント・白尾: へぇ。その犬は今どこに？

SCP-XXX-JP-A: あ、えっと。

エージェント・白尾: ん？言うのが難しいなら言わなくても。

SCP-XXX-JP-A: 違うんです。それが、殺されちゃって。

エージェント・白尾: え、誰がそんなことを？

SCP-XXX-JP-A: 私の、父です。唯一の居場所だったのに、どうして。

エージェント・白尾: インタビューを中止します。

SCP-XXX-JP-A: コロちゃん、コロちゃん。

(SCP-XXX-JPの根が突然暴れ出し、エージェント・白尾が外に出ようとする。しかし、付き添っていた犬が、SCP-XXX-JP-Aの傍から離れない。)

エージェント・白尾: ハッシュ！何をしてるんだ！

SCP-XXX-JP-A: (2秒の沈黙)わんちゃん？

(付き添っていた犬が、SCP-XXX-JP-Aの顔を舐める)

SCP-XXX-JP-A: (笑い声)くすぐったい。

エージェント・白尾: 止んだ？SCP-XXX-JP-A、落ち着けましたか？

SCP-XXX-JP-A: あ、白尾さん。ごめんなさい、色々思い出しちゃって。嫌な気持ちになったけど、この子が元気づけてくれたんです。

エージェント・白尾: それは、良かった。(小声で)ハッシュ、次は勝手に動いちゃダメだ。SCP-XXX-JP-A、まだ話せそうかい？

SCP-XXX-JP-A: はい。それで、コロちゃんが殺されて、父親がコロちゃんを埋めるとか言って、どこかに連れて行ったんです。

エージェント・白尾: なるほど。自分で埋めたわけじゃないんだね？

SCP-XXX-JP-A: はい。そしたら、突然沢山の根っこに襲われたんです。

エージェント・白尾: それは、埋め終わったあとに？

SCP-XXX-JP-A: 父親が帰ってきてからそうなったので、多分。

エージェント・白尾: 分かりました。どこに埋められてるか分かる？

SCP-XXX-JP-A: 分からないです。でも、車で行ったようには思えないから、もしかしたら家の近くに埋めたのかも。

エージェント・白尾: 教えてくれてありがとう。今日はここまでにしよう。また少ししたらお話しようね。

<録音終了>

終了報告書: SCP-XXX-JPは途中、攻撃性を示しましたが、今回は付き添っていた犬のお陰で、大事には至りませんでした。SCP-XXX-JP-Aは何らかの原因により、恐怖から心的外傷を負っていると判断し、今後の接触は慎重に行います。また、殺されたとされる飼い犬は、SCP-XXX-JPの風呂場の床下に埋められており、飼い犬の死体から植物の根が生えていることが、インタビュー後によって判明しました。

+ 接触記録XXX-JP-A-4を開く

- 接触記録XXX-JP-A-4を閉じる

対象: SCP-XXX-JP-A

接触者: エージェント・白尾

付記: この記録前に、SCP-XXX-JPが突如暴れ出したため、途中でインタビューが打ち切られています。また、SCP-XXX-JP-Aの体に、SCP-XXX-JPの毒が回ってしまう可能性があるため、一度SCP-XXX-JP-Aに鎮静剤を打って、SCP-XXX-JPを沈静化しました。怪我人は幸いにもいませんでした。

<録音開始>

エージェント・白尾: こんにちは、SCP-XXX-JP-A。今日は大丈夫そうかな？

SCP-XXX-JP-A: はい、ごめんなさい。わんちゃん、怖がらせてごめんね。

エージェント・白尾: SCP-XXX-JP-A、謝らなくていいよ。無理そうならすぐ言っていいからね。

SCP-XXX-JP-A: ごめんなさい、ありがとうございます。

エージェント・白尾: 今まで話してきて、君の家庭内に問題がありそうだと思うんだけど、何か思い当たる節は無いかい？例えば、父親が暴力を振るったりとか。

SCP-XXX-JP-A: ずっと殴るとかはなかったけど、怒るとすぐ手を上げる人でした。(5秒の沈黙)

エージェント・白尾: SCP-XXX-JP-A？

SCP-XXX-JP-A: (震えた声で)変なこととかも、する人で。

エージェント・白尾: 変なことって？

SCP-XXX-JP-A: (沈黙)

エージェント・白尾: 言えそうにない？

SCP-XXX-JP-A: (首を縦に振る)

エージェント・白尾: 分かった。言わなくても大丈夫だよ。

SCP-XXX-JP-A: ごめんなさい。

エージェント・白尾: 気にしないで。

SCP-XXX-JP-A: あ、それと。

エージェント・白尾: ん？

SCP-XXX-JP-A: 従兄弟の、兄にもそれをされて。

エージェント・白尾: 従兄弟にも？それは、親は知ってるの？

SCP-XXX-JP-A: 知ってたらしいです。と言うか、ずっと見てたみたいで。

エージェント・白尾: 見てたのに、止めなかったの？

SCP-XXX-JP-A: はい。なのに、私の首を絞めて、やったんかって。(息切れ)

エージェント・白尾: SCP-XXX-JP-A、落ち着いて。君は。

SCP-XXX-JP-A: 私も悪いって。

<録音終了>

終了報告書: 以前よりも攻撃性が増したため、再度SCP-XXX-JP-Aに鎮静剤を打って、SCP-XXX-JPを沈静化しました。しかし、エージェント・白尾は負傷してしまったため、現在治療中です。また、父親への事情聴取により、父親は自身の行為を否認していましたが、弟がその行為の現場を見ていたことが発覚しました。

+ 接触記録XXX-JP-A-9を開く

- 接触記録XXX-JP-A-9を閉じる

対象: SCP-XXX-JP-A

接触者: エージェント・白尾

付記: これまでに、SCP-XXX-JP-Aへの接触は失敗しています。また、エージェント・白尾が復帰し、完全ではありませんが、再度接触を希望したため、特別に許可されました。しかし、この時はSCP-XXX-JPを強制的に抑制しているため、効果が薄いとして付き添っていた犬を連れていません。しかし、念の為に外で待機させています。

<録音開始>

エージェント・白尾: 白尾です。SCP-XXX-JP-A、久しぶりですね。

SCP-XXX-JP-A: (｢ごめんなさい｣と連呼している)

エージェント・白尾: 大丈夫だよ。謝らないで。今日は伝えたいことがあって来たんだ。

SCP-XXX-JP-A: (変わらず連呼している)

エージェント・白尾: あの時、言いかけてたことがあるんだけど。

SCP-XXX-JP-A: 私が、私が全部悪いんです。私が悪くていいので、もう止めて。

エージェント・白尾: SCP-XXX-JP-A、お願いです。聞いてください。

SCP-XXX-JP-A: 私が悪いから、私なんて。

エージェント・白尾: (大声で)SCP-XXX-JP-A！

SCP-XXX-JP-A: (沈黙)

エージェント・白尾: 大声を出してごめんなさい。でも、こうでもしないと聞いてくれなさそうなので。

SCP-XXX-JP-A: ごめんなさい。

エージェント・白尾: SCP-XXX-JP-A。

SCP-XXX-JP-A: (2秒の沈黙)はい。

エージェント・白尾: SCP-XXX-JP-A、貴方は何も悪くありません。貴方は頑張っただけなんです。

SCP-XXX-JP-A: (5秒の沈黙)え？

エージェント・白尾: 貴方のせいで怪我を負ったとも思ってません。自分を責める必要は無いんだ。

SCP-XXX-JP-A: 私を(沈黙)

エージェント・白尾: どうしました？

SCP-XXX-JP-A: 私を、許してくれるんですか？

エージェント・白尾: えぇ、許しますとも。

<録音終了>

終了報告書: SCP-XXX-JP-Aはその後、急激に落ち着きを取り戻し、SCP-XXX-JP-Aに対象が近付いても、SCP-XXX-JPは攻撃性を示さないほど、抑制したことが判明しました。まだ精神的に不安定な部分はありますが、犬が付き添うことにより、以前よりも落ち着きを取り戻しやすくなっています。今後はカウンセリング目的で、SCP-XXX-JP-Aへの接触が行われる予定です。

また、この結果から犬が付き添うことで、被害を受けた子供の精神的負担が軽減され、事情聴取で話しやすくなる可能性を見い出し、現在は国内で訓練を受けて認証された、4頭の"付添犬"が各地で活動しています。財団内では、この時付き添っていた犬の活動成績により、事情聴取によるストレス緩和を目的に使用出来るよう、申請書を元に現在審議中です。