SCP-XXXX-JP 最初は、そう、それはただ一つのチーズ

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アイテム番号: SCP-XXXX-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-XXXX-JPはサイト-8XXXの人型実体収容エリアに収容されています。SCP-XXXX-JPの収容室から半径███ｍは特別警戒区域に指定され、一般の職員の立ち入りは禁止されます。

一日に一回、D職員3名を指定職員に指定し、午前7時40分までにSCP-XXXX-JPを中心とした120度間隔の円状に配置してください。これ以降、午前7時43分まで指定職員以外の一切の立ち入りは禁止します。なお、これらの指定職員に関しては午前7時41分以降SCP-XXXX-JPの収容室内の清掃の完了が確認され次第、回収、処理されます。

説明: SCP-XXXX-JPは██県内に存在する███駅のホームで発見されました。SCP-XXXX-JPは恐らく15歳程度であると予想される人型実体(SCP-XXXX-JP-1)とそれに対して発動する異常現象の総称です。検査の結果、SCP-XXXX-JP-1は一般的な人間の男性と極めて類似した特徴、及び身体構造を有していました。

SCP-XXXX-JPの異常性として、午前7時40分以降に発生する異常現象が挙げられます。

午前7時40分から午前7時41分の1分間に、SCP-XXXX-JP-1を中心とした半径███ｍの円に存在していた生物のうち、一部の直径に存在していた全ての生物は死亡します。なお、この時SCP-XXXX-JPの異常性が発動する直径の位置はSCP-XXXX-JP-1を通るという点以外不規則であり、現在までに規則性は確認されていません。

この異常性の発動後、SCP-XXXX-JP-1は破裂し、四散します。

四散後のSCP-XXXX-JP-1を人間(Homo sapiens)が視認した場合、視認した対象は過度な空腹を訴え、SCP-XXXX-JP-1の捕食を試みることが確認されました。

実験で行われた、SCP-XXXX-JP-1を捕食したD職員へのインタビューにおいて、対象は「おいしいチーズ¹を食べていた。」と供述していたようです。この時、対象はSCP-XXXX-JP-1の捕食開始から終了までの一切の記憶を喪失していました。

捕食されたSCP-XXXX-JP-1については、数時間程度で同地点に再出現することが確認されています。なお、この時出現したSCP-XXXX-JP-1は、破裂から捕食までの一切の記憶を保持していました。

以下の記録は、収容時に行われたSCP-XXXX-JP-1へのインタビュー記録です。SCP-XXXX-JP-1の刺激を避けるため、記録はボイスレコーダーを用いて行われました。

対象: SCP-XXXX-JP-1

インタビュアー: 柊研究員

付記: 異常性の関係上、インタビューは午前7時40分までに終了すること。

<録音開始, （20██/04/18）]>

柊研究員: 本日はインタビューにご協力頂き、ありがとうございます。

SCP-XXXX-JP-1: [沈黙]

柊研究員: …早速ですが、何故███駅に居たのかについて教えて頂きたく思います。

SCP-XXXX-JP-1: …覚えてない。

柊研究員: …では、いつごろから███駅に居たのか、については覚えていますか？

SCP-XXXX-JP-1: …知らない。

柊研究員: …何か覚えていることはありますか？

SCP-XXXX-JP-1: [考え込むように沈黙]…名前。

柊研究員: 名前？何の名前ですか？

SCP-XXXX-JP-1: 俺…俺の名前は森内…だったと思う。

柊研究員: 森内？それがあなたの名前ですか？

SCP-XXXX-JP-1: そうだ…俺は…そうだ、俺は…チーズ…

柊研究員: チーズ？

SCP-XXXX-JP-1: チーズ、そうだ、チーズ…!最初は…そうか、チーズのせいだ…全部…、嫌だ嫌だ嫌だ!!最後に…最後にチーズが…ただ一つ…チーズが食べたい!!助けてくれ!!チーズが、チーズがぁ!!

柊研究員: …!、落ち着いて下さい!!

SCP-XXXX-JP-1: [識別不能]

<録音中断, （20██/04/18）]>

終了報告書: 錯乱したSCP-XXXX-JP-1については、午前7時40分以降自発的に沈黙しました。

これ以降、SCP-XXXX-JP-1の錯乱は確認されていません。

調査の結果、森内蓮(以下、森内氏)という少年が、1ヶ月前にSCP-XXXX-JP-1の発見された███駅のホームで自殺していたことが確認されました。なお、この森内氏は両親から虐待を受けていたようです。森内氏の両親については、森内氏の自殺後、自宅で自殺しています。また、森内氏はSCP-XXXX-JP-1と極めて類似した特徴、容姿を有していました。

現在、財団はSCP-XXXX-JPと森内氏は関連するものとみて調査中です。

補遺: 以下は、財団によって回収された森内氏の日記帳、及びそれに関連する母親の日記帳の内容です。現在、SCP-XXXX-JPの異常性との関連性が指摘されています。

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森内氏の日記

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6月13日
　健康診断にいった病院で友人に会った。好きな食べ物を聞かれたからチーズだと答えたら女子みたいだと笑われた。以前日記をつけていることを話しても笑われたが、別に気にしていない。学校がこれで親もめんどくさいとか勘弁してほしい。

7月6日
　軽食をとろうとしたら親に怒られた。今まで何も言わなかったくせに。受験が控えてるからどうだとか言われたが、特に気にしていない。

7月8日
　今日は夕ご飯の味が薄かった。何かの冗談かとも思ったが、どうやら母が栄養思考にはまったらしい。栄養の本ばかり読んでいる。今更栄養に気を使ってももう遅いくせに。そういえば、朝ごはんも無理やり食わされた。受験前だからしっかり食べて学校にいけだとか、最近うるさい。

9月3日
　軽食をとろうとしたら殴られた。最近、親がうざいと思っていたが、まさか殴られるとは思わなかった。もしかするとこれが虐待というやつだろうか。そういえば、最近両親は喧嘩ばかりしている。いずれにしても、もういままでのように親とは接せない。

12月24日
　最近は親と一緒に居るのが怖い。今日は友達の家に泊まろうと思う。そういえば、最近は親から薬を飲まされるようになった。何の薬かは教えてもらっていない。怖いので、飲んだふりをしている。

12月25日
　気分が悪い。本当に意味が分からない。友達の家から帰ってきたら突然トイレに連れていかれ、昨日食べた物を吐き出させられた。友達の家に行くことが禁止された。本当に虐待なのかもしれない。実際、最近は少ししか食べていない。頭がくらくらしてきた。

1月1日
　お年玉は貰えなかった。豪華な料理も今年はなかった。まわりの家ではみんな正月を楽しんでいる。いつからこんなことになってしまったのだろう。最近は殆ど何も食べていない。うちで出されるものは毎日同じで量も少ない。そういえば、最近体がだるくなってきた。とてもじゃないが、動く気にはなれない。

2月5日
　今日、自分の体を見てぞっとした。やせ細っている。最近は学校にも行けていない。何か食べようと冷蔵庫を漁っていたら殴られた。これが虐待というやつなのだろう。そう思ったが、もう周りに相談する機会も元気もない。生きているのが辛いと思った。

3がつ4か
　のうがはたらかない。ぼーっとする。だるい。ぺんをにぎるのがやっとで、うごくことができない。もうだめかもしれないとおもってしまう。でも、せめてここにおれがいきたあかしをのこそうとおもう。おれがしんだあと、おやがさばかれるしょうこになるかもしれない。そのおもいで、むりやりにっきをつけている。

3がつ
　すきなものをきかれた　しんぱいしているのだろうか　だが　もうしんらいできない　いまはしょくよくすらわかない　あいしたこたえるといった　なんでもいい

いたいおやになぐられたわらわれたひどいゆるせない

じゅうはち　きょうあたますっきりいってくるかいほうさいごチーズたべたい

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母親の日記

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6月13日
　息子にがんがあるといわれた。信じられない。まだ中学3年生なのに。なぜ息子なのだろう。落ち込んでいるわけにもいかない。がんについて調べて、治療費をためて、必ず治してみせる。ショックを与えないよう、がんであることを本人には伏せることにした。

7月6日
　チーズを食べようとする息子を見つけたので、叱っておいた。調べたところによると、乳製品はがんを悪化させるという説があるらしい。がんを悪化させないためにも、今後、乳製品を出すのは控えようと思う。

7月8日
　今日は栄養について調べて、食事の栄養バランスをととのえた。少し味が薄いが、これも息子のためだと思って割り切る。夫も協力してくれている。

9月3日
　また息子がチーズを食べようとしていた。どうやら、夫が買ってきていたものを見つけたらしい。驚いて止めるために殴ってしまった。本当に悔やんでも悔やみきれない。ひとまず今日は、夫に注意をした。

12月24日
　今日は息子が友達の家に泊まりに行くことになった。大丈夫か心配しつつ、悟られないように平静を装う。そういえば最近、息子が家に居る時間が短くなった気がする。これが親離れなのだろう、そう思うと少し寂しい。

12月25日
　不安は当たった。息子が友達の家で乳製品を食べてきた。許せない。ひとまず食べた物を吐かせた。今後は外出も制限しなければならない。

1月1日
　がんの治療費に充てる為、お年玉もおせちも用意できなかったが、息子と共に過ごせているだけでも幸せなことなのだと感じる。

2月5日
　冷蔵庫を漁っている息子を見つけたので止めるために殴った。なぜ学習してくれないのだろう。最近は学校にも行かせていない。

3月4日
　息子が一日中部屋に籠るようになってしまった。何とかしてあげたい。

3月5日
　何か食べたいものはあるか聞いてみたらなんでもいいから食べたいと言われたから明日までに考えておいてもらうことにした。体のため、食事を沢山出すわけにはいかないが、せめて好きなものを食べてもらいたい。

3月6日
チーズが食べたいと言われた。信じられなかった。なぜ、これだけ息子のことを気遣っているのに、息子にはその思いが通じていないのだろうか。

3月18日
今日は訳あって朝方に日記をつけている。今日の夜に書き足す一文は、きっと最高の一日だったと書かれていることだろう。息子が一人で外出していった。薬のせいか、最近は元気がなかったが、まだそれだけの元気が残っていたようで嬉しかった。最近の私の行いは間違っていたと思う。手術をするためのお金もたまった。今週中には手術できるだろう。まだ気は抜けないが、帰ってきたら今までの行いを説明して謝罪し、本当に好きなものをいっぱい食べさせてあげようと思う。