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クレジット
タイトル: SCP-3198-JP - 花の街ファルテル
著者: CAT EYES
作成年: 2024
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SCP-3198-JPポータル
アイテム番号: SCP-3198-JP
オブジェクトクラス: Safe
脅威レベル: 緑 ●
特別収容プロトコル: SCP-3198-JPへ繋がるポータルのある道は適切なカバーストーリーによって封鎖してください。
説明: SCP-3198-JPはフランス共和国のイル=エ=ヴィレーヌ県に存在する景勝地であるArbre penché1から接続、転移可能な異常空間です。転移条件は「10:00~14:00の間であること」「Arbre penchéの幹を中心として半径10m以内に存在する花を踏まないこと」「Arbre penchéに5分間接触すること」です。
SCP-3198-JPは、地理的には現在の地球と非常に類似した景色が広がっていますが、近世以降の建造物は一切見られません。また人間の姿は確認できず、ポータル付近に存在する建造物群には多数の人型実体(SCP-XXX-JP-A)が活動しています。SCP-3198-JP-Aの頸部は直径直径50mm程度の茎に、そして頭部は花に置き換わっています。それらの多くは未知の花ですが、基底世界に存在する花も数種類確認されています。またSCP-3198-JP-Aには発話を可能にする生態構造がないにもかかわらず、人間と同様に発声が可能です 。
SCP-3198-JPはArbre penchéの周囲で、不定期に行方不明者が出たことから財団の注意を引き、現場の状況、同行者や発見者の証言、そして形式部門による検証の結果、転移条件が判明しました。その後通信、撮影機器を所持させたDクラス職員を潜入させる実験が3度行われましたが、いずれも転移と同時に通信が切断され、以降帰還しない結果に終わりました。
記録ログSCP-3198-JP: LOG01
~潜入~
潜入担当: 機動部隊Δ-4"サファリタイム" エリー・デ・マレドン 隊員
記録日時: 2024/4/17 10;39
目的: SCP-3198-JP内の調査及び音声、映像記録を保持した状態での帰還。
付記: SCP-3198-JP内は通信できないため、内部での行動はエリー隊員に一任されています。
[記録開始]
エリー隊員: こちらエリー。現在時刻10:39、ただ今よりSCP-3198-JP内に潜入します。
[Arbre penchéに5分間接触する。映像が一瞬暗転した後、SCP-3198-JP内へ転移する。]
エリー隊員: 転移完了しました。場所は転移前と同じように見えます。時刻は[腕時計を見る]針が異常な速度で動いているため不明ですが恐らく昼頃だろうと思われます。気温はかなり寒いです、体感だと0度くらいでしょうか。[周囲を見渡す]住人と思しき生物は目視では確認できません。しかし、東に1kmほど離れた所に基底世界には存在しない石壁と、西に5kmほど離れた所にモン・サン=ミシェルが見えます。現在のものとは様式が異なるようですが……2少し他に目立ったものはないため、石壁のほうへ向かいます。
[約10分間、建造物群に向かって移動する。]
エリー隊員: 目標付近に到達しました。高さ20mほどの石レンガ造の壁がそびえ立っていて、城門が設けられています。城門の両脇には、中世ヨーロッパ風の鎧を着た人型実体がロングソードを腰に差して立っています。今は幸い気付かれていませんが、このまま見つからずに潜入するのは厳しそうです。仕方がありません、潜入を第一優先として接近し、場合によっては交戦します。
[城門近くまで移動する。]
エリー隊員: 城門近くに到達しました。このまま人型実体に接近します。

SCP-3198-JP-A-1
SCP-3198-JP-A-1: 止まれ。貴様、何者だ。
エリー隊員: エリーと言います。他の街からやって来まして。決して怪しい者ではありません。
SCP-3198-JP-A-2: 貴様のように妙な頭を持つ生き物が怪しくない訳がないだろう。それに以前、同じ顔を持つ生き物がこの" ファルテルPharterre"で無礼を働いたことがある。悪いが貴様のことを捕えさせてもらう。
エリー隊員: せめてお話しだけでも──
SCP-3198-JP-A-1: 今は貴様の申し立てなど聞かぬ。大人しく着いてこい。
[紐で縛り付けられ、牢獄へ連行される。街中にはSCP-3198-JP-Aが多数生活しており、連行されるエリー隊員へ蕊を向けている。多くは丈が長めのチュニックを着用しているが、洋服Dクラス職員用囚人服を着用している個体も確認できる。建造物はいずれも中世ヨーロッパ風だがその多くは一部が崩壊している。]
[確認できる中で最も大きい建造物(大聖堂と呼称)に入り、しばらく進んだ先にある地下へ続く長い階段を下りると牢獄に到着する。牢獄の壁、檻は石造りで、地面は土である。檻の中にはSCP-3198-JP-Aが数体幽閉されており、各々が項垂れている。]
[奥の空いている監房に入れられ、檻に鍵が掛けられる。SCP-3198-JP-A-1は牢獄から退出する。]
エリー隊員: [小声で]なんとか交戦せずに内部へ潜入できました。フランス語で問題なく会話できたのが大きかったです。街中の人型実体もフランス語を話していたので、ここでの会話に支障は無さそうです。またあの人型実体が言うことを信じるのであれば、いつか申し立てをする機会があるはずです。現在の体調であれば3日は飲食なしで通常通り活動できるので、このまま大人しく待ちたいと思います。
[そのまま時間が経過する。その間、水のみが提供されていた。]
エリー隊員: [小声で]正確な時間は分かりませんが、体感で2日ほど経過しました。流石に少し空腹感が強くなってきました。このまま動きが無ければ脱獄して[2秒沈黙]誰かが階段を下りてくる音が聞こえます。しばらく様子を見ます。
SCP-3198-JP-A-1: [檻の鍵を開けながら]着いてこい、罪人。審問の時間だ。
エリー隊員: 分かりました。
[監獄から出され、階段を上っていき地上4階にある大広間に通される。内部にはレッドカーペットが敷かれており、鎧を着た人型実体が左右に10体ずつ整列している。奥には玉座が置かれており、頭部がボタン(Paeonia suffruticosa)に置き換わった女性の人型実体(SCP-3198-JP-A-3)が座っている。]
SCP-3198-JP-A-1: ピブワン公爵、仰せの通り罪人を連れてまいりました。

SCP-3198-JP-A-3
SCP-3198-JP-A-3: ご苦労様、マチュー。持ち場に戻ってもらって良いわよ。
[SCP-3198-JP-A-1は退室する。]
SCP-3198-JP-A-3: さて、ごきげんよう異邦のお客人さん。歓迎いたします。ようこそ"ファルテール"へ。
エリー隊員: 熱烈な歓迎をいただき光栄です、ピブワン公爵。あの騎士様にもどうかお礼を。
SCP-3198-JP-A-3: ええ、しっかり伝えておきますわ。それでは審問を始めます。まずお名前を教えてくださる?
エリー隊員: エリー・デ・マレドンと申します。どうかご自由にお呼びください。
SCP-3198-JP-A-3: ではエリー、貴方はどうしてこの"ファルテル"にいらっしゃったのかしら?ぜひ正直に教えていただきたいわ。
エリー隊員: 正直にお教えすれば信じていただけるでしょうか?
SCP-3198-JP-A-3: それは内容にもよるわね。
エリー隊員: 承知いたしました。この顔を見れば分かる通り、私は貴女がたとは異なる場所で生きています。しかし我々は顔が異なるからと他の文化を否定したり迫害するようなことはございません。むしろ互いに交流し、良いと思ったものは受け入れていく寛容さこそ必要かと存じます。そのため私は、この街の文化をよく知り、できれば今後深く交流をできればと考え訪れた次第です。
SCP-3198-JP-A-3: 素晴らしい志ですわ。その考えには私も賛同いたします。しかし、貴方は私たちに何を提供してどのように貢献できるのかしら?
エリー隊員: そうですね、例えば……数日前騎士様に連れられているとき、この街の文化とは明らかに異色な──私の国の服を着た方を見かけました。
SCP-3198-JP-A-3: あの服ね、とても暖かいって庶民から好評なのよ。私も試しに着てみたけれど着心地も良くてね。特にあの橙色の服は肉体労働もしやすいって大人気よ。
エリー隊員: しかし広く流通していないということは、量産には至っていないのでは?
SCP-3198-JP-A-3: そうなのよ。量産どころか1着も再現できていないわ。
エリー隊員: もし交流していただけるのでしたら、こちらの服を提供いたします。もちろん、意匠も貴女がたの希望通りに。
SCP-3198-JP-A-3: あら、それは悪くない話ね。私たちは寒さに弱くってね、今年も多くの庶民がその命を落としましたわ。貴方がたからあの服を提供いただけれるのならば、死に胸を痛めることも減るでしょう。しかしそれだけでは──
エリー隊員: では、建造物の修繕もお手伝いいたしましょう。街の様子を見るに、人手や物資が不足しているとお見受けいたしましたので。
SCP-3198-JP-A-3: 随分と気前がよろしいのね。何か裏があるんじゃないかと勘繰ってしまうわ。
エリー隊員: 先ほども申しました通り、私はただ今後も良好な関係を築いていきたいだけでございます。そこに隠し事など一切ございません。
SCP-3198-JP-A-3: 分かったわ、ひとまず貴方の言葉を信じましょう。ただ、私の一存だけでは決められませんから、他の者と話し合ってからお返事いたしますわ。よろしくて?
エリー隊員: ええ、もちろんでございます。良いお返事を期待しております。
[その後1時間に渡ってエリー隊員の目的、身辺、出身地について尋問される。その全てにおいてエリー隊員はポータル、財団の存在を話すことなくSCP-3198-JP-3を説得する。]
SCP-3198-JP-A-3: ではこれで審問を終了いたします。今回は貴方のようなお客人とお話しできてとても楽しかったわ。貴方より前にいらっしゃった方は「帰せ」と喚いたり野蛮な態度をとる方ばかりで気が滅入っていましたの。それに免じて、此度の貴方の処罰は不問といたしますわ。
エリー隊員: 恐悦至極です。こちらこそ、とても有意義な時間を過ごすことができました。それではこれで──
[鎧を着た人型実体が大広間に入室する。]
SCP-3198-JP-A-4: ピブワン公爵、処刑の準備が整いました。
SCP-3198-JP-A-3: ありがとう、オリビエ。今向かうわ。
エリー隊員: あの、処罰は不問のはずでは?
SCP-3198-JP-A-3: あら、勘違いさせてしまったわね、ごめんなさい。今から処刑されるのは貴方じゃないわ。
エリー隊員: そうですか、安心しました。
SCP-3198-JP-A-3: そうだわ、せっかくですから処刑を見にいらしたら?文化交流の第一歩として。
エリー隊員: よろしいのですか。では、お言葉に甘えさせていただきます。
[記録終了]
記録ログSCP-3198-JP: LOG02
~ファルテルの文化1: 処刑~
[記録開始]
[大聖堂から北西部にある広場の中央に処刑台が置かれており、その上に騎士が2体、頭部がダリアに似た花に置き換わっている人型実体1体が立っている。処刑台の後ろの木には長さ500mm程度の鋏が吊るされており、周りには既に多くの観衆が集まっている。]
エリー隊員: 真ん中に立っているあの人が今回処刑される罪人ですか。
SCP-3198-JP-A-3: ええそうよ。
SCP-3198-JP-A-4(騎士): ピブワン公爵がお着きになりましたので、これより処刑を執り行います。罪人は住居内で異国の着火剤3を使用したことで多くの民の命を脅かした罪に問われ、審問の結果"散弁刑"4に処されることとなりました。
SCP-3198-JP-A-6(罪人): 俺はただ……公爵様の横にいるあの男と同じ顔の奴が落としたやつを使おうとしただけだ……寒くて寒くて……ちくしょう……
エリー隊員: 散弁刑というのは?
SCP-3198-JP-A-3: このまま見ていれば分かりますわ。
SCP-3198-JP-A-5(騎士): それではまず、こちらの"天秤の葉"5を落とさせていただきます。
[それぞれの面が金色と黒色に塗られた葉が騎士によって落とされ、黒色の面を上にして処刑台の上に落ちる。]
SCP-3198-JP-A-5(騎士): "表"。では"死"から始めます。
[騎士が罪人の花弁の一枚を掴むと思い切り毟り取る。]
SCP-3198-JP-A-6(罪人): 痛え!痛えよクソ!もっと優しく──
SCP-3198-JP-A-4(騎士): "生"。
SCP-3198-JP-A-6(罪人): [悲鳴。]
[その後も花弁は毟り取られ続け、約3分後には合計67枚の花弁が毟り取られる。罪人の声はかれ、花弁の付け根である萼からは赤い液体が流れ出ている。]
SCP-3198-JP-A-4(騎士): ……"生"。罪人の運命は"生"に決まりました。
観衆1: おめでとう!
観衆2: なんだよ、"死"に100クェヌス6賭けてたのに。
観衆3: 賭けは賭けだぞ、絶対払えよなお前。
[観客は次第に散り散りに去っていき、処刑台から罪人が覚束ない足取りで降りてくる。]
エリー隊員: これで処刑は終わりですか。
SCP-3198-JP-A-3: ええ、そうよ。花弁の数は産まれたときから決まっています。私も、あの方も。そして全て抜ければ、伴侶と契りを結ぶまであの姿で過ごすことになりますわ。でも、一切彩りがないあの方と一生を添い遂げたいと思う者はそうそう現れないでしょう。ですから多くの生き残った罪人は死ぬまであのままのことがほとんどですわ。ちなみに"死"になった場合は、処刑台の後ろにあるあの鋏で首を切り落としますのよ。
エリー隊員: 生きるも地獄、死ぬも地獄ですね。
SCP-3198-JP-A-3: お客人はこの処刑が残酷だと思いますか?生きるか死ぬかは運命に委ねられ、そしてそれが観衆の見せしめにされる。しかも時には自分の命が賭けのネタに使われる。もし生き残れば醜い姿のまま一生を送らなければならない。こんなことが何百年も前から続いています。今の審問と刑罰を司る私としては、少々時代遅れなのではないかと時々考えてしまいますの。

ルイ16世の公開処刑(1793年)
エリー隊員: 私の国でも、昔は処刑が見せしめとして公開で行われ、時には娯楽として扱われていました。パーティーを開き酒を浴びながら処刑の時を待ち、罪人の死を見届ける観覧席を金で買う時代が確かにありました。今でも一部の国ではいまだに行われていますが、ほとんどの国は道徳的観点から公開処刑をやめました。
SCP-3198-JP-A-3: ではやはり──
エリー隊員: しかし私としては、その国の文化に余計に口を出すことも圧力をかけることもしたくありません。結局その国の今の文化を形作るのは、過去の慣習でも外部の人間でもなく、そこで今を生きる人たちであるべきだと考えます。この先どうするか決めるのは、私ではなく公爵様と民衆の皆さんです。
SCP-3198-JP-A-3: そうですわね、参考にいたしますわ。
[街中に教会の鐘の音が響き渡る。]
SCP-3198-JP-A-3: 今日は結婚式も開かれるのね。これほど賑やかな日も珍しいわ。もし貴方がよろしければ結婚式もご覧になって?
エリー隊員: 私のような部外者が行ってよろしいのでしょうか。
SCP-3198-JP-A-3: ええ、結婚式は処刑と同じように大衆に開かれていますから問題ございません。どうしても不安なのでしたら、こちらをお持ちになって。
[自身の花弁を1枚ちぎる。花弁は次第に硬く縮まりブローチに変化すると、それをエリー隊員に手渡す。]
エリー隊員: これはなんですか?
SCP-3198-JP-A-3: それをお持ちになっていれば、私のお客人だと皆も受け入れてくれますわ。それでは教会へ行きましょう──
[突如、街中に薔薇の花弁が大量に舞い散る。]
SCP-3198-JP-A-3: あら、もうこんな時間ですか。ごめんなさいね、ロセ公爵が呼んでいるみたいだからここで失礼いたします。教会はこの通りをしばらく真っすぐ行ったところにありますわ。用事が済んだら合図をいたしますから、もし結婚式が終わったらまた審問の広間にいらして。
[SCP-3198-JP-3が大聖堂へと戻る。エリー隊員は取り残されるが、そのまま教会へ向かう。]
[記録終了]
記録ログSCP-3198-JP: LOG03
~ファルテルの文化2: 結婚~
[記録開始]
[エリー隊員が教会に入ると、既に多くの列席者が席に座っている。エリー隊員が空いている席に座って約10分後、コスモスに似た花に置き換わっている人型実体(司祭)とマリーゴールドに似た花に置き換わっている人型実体(新郎)が入場する。]
SCP-3198-JP-A-7(司祭): オブリー家、ルコント家、ご両家の皆様、本日はおめでとうございます。ただ今より新婦が入場いたします。皆様どうぞご起立して後ろをご覧ください。
[後ろの扉から、ユリに似た花に置き換わっている人型実体(新婦)が父親に連れられて身廊を歩いてくる。中ほどで新郎は父親から新婦の手を受け取り、腕を組んで司祭の前へと移動する。]
[新郎と新婦が司祭の前に並び立つと列席者一同で讃美歌を斉唱する。教会の中は様々な花の香りで満たされる。]
SCP-3198-JP-A-7(司祭): 私たちは今、神と家族の前で、パトリック・ド・オブリーさんとマリオン・ド・ルコントさんの結婚式を挙げようとしています。まず、お祈りから始めます。皆様、目を閉じてください。
[列席者及び新郎新婦は花弁を閉じ、司祭はお祈りを始める。]
SCP-3198-JP-A-7(司祭): 皆様、どうぞ目を開けてください。
[全員の花弁が開く。その後、牧師の問いかけに対し、新郎新婦がそれぞれ誓約を答える。]
SCP-3198-JP-A-7(司祭): この指輪は、二人の愛のしるしです。指輪の丸い形は、二人の愛が終わることなく続いていくことを意味しています。今から、指輪の交換を行います。
[指輪交換を行う。新郎から新婦、新婦から新郎の順に、相手の薬指へ指輪をはめる。]
[2人が向き合い新郎が新婦を抱き寄せると、互いの雄蕊と雌蕊を絡ませる。花の香りがより一層強くなる。この間、列席者は拍手をし続ける。]
[2人の花弁は次第に色褪せ、萎びて、1枚ずつ自然に抜け落ちる。]
[10分後、花弁は完全に抜け落ちる。2人が抱擁をやめ離れると互いの子房が大きく膨らみ始め、数秒後、静かに破裂する。互いの頭部に再び鮮やかな花が咲くと同時に十数個の種子が地面に落ちる。2人は足元の種子を全て拾い上げると列席者に向かって深くお辞儀をする。列席者はより一層大きな拍手を2人に返す。]
[エリー隊員は足元に種子が転がっていることに気付き、拾い上げる。種子は白色で、直径10mm程度である。また種子の珠孔には人間の頸部から下の部分が根のように伸びている。エリー隊員は種子を回収カプセルに封入する。]
SCP-3198-JP-A-7(司祭): それでは、新郎新婦が退場いたします。皆様、盛大な拍手でお見送りください。
[新郎新婦が身廊を歩いて退場する。列席者は起立して拍手するか紙吹雪を飛ばしている。一部の列席者は全身から大量の無色透明な液体を流しており、足元には水たまりができている。]
[司祭が退場し、その後列席者がまばらに退場する。エリー隊員が退場し、1時間ほど街中を探索していると上空に牡丹の花弁が舞っていることに気付く。エリー隊員は大聖堂へ戻る。]
[記録終了]
記録ログSCP-3198-JP: LOG03
~帰還~
[記録開始]
[エリー隊員が大聖堂の広間へ入るとSCP-3198-JP-A-3が玉座に座っている。]
SCP-3198-JP-A-3: お帰りなさい、お客人。結婚式は楽しんでいただけたかしら?
エリー隊員: ええ、とても感動的な式でした。
SCP-3198-JP-A-3: そう、それは良かったですわ。それでね、貴方が数刻前に提案してくださった件だけど、さっき他の公爵とお話しして、お受けさせていただくことにしたわ。とはいっても、この国のほんの一区画だけですけどね。大変だったのよ、説得するの。
エリー隊員: 光栄です、ピブワン公爵。では、そのことを一刻でも早く他の者に伝えるため、そろそろここを発とうと思います。
SCP-3198-JP-A-3: あら、もうお戻りになりますの?
エリー隊員: はい。公爵様のおかげでこの国のことについて多くのことを学ぶことができました。深く感謝いたします。
SCP-3198-JP-A-3: 良いのよ、また是非いらっしゃって。そのときはブローチを門兵に見せてもらえば手荒な入国をしなくて済むと思いますわ。
エリー隊員: そういたします。しかしその前に、失礼を承知でいくつかお聞きしたいことがあるのですがよろしいでしょうか。
SCP-3198-JP-A-3: 貴方と私の仲なんですからそんなにかしこまらなくて良いのよ。私に答えられることならなんでも聞いてちょうだい。
エリー隊員: ではまずこの国、ファルテルはいつ頃からあるのでしょうか?
SCP-3198-JP-A-3: 私が産まれるよりもっと前、確か2,000年くらい前だったかしらね。もちろん、私の年齢は秘密よ?
エリー隊員: 存じております。ここからしばらく行った所にある修道院はその前から建っていたのですか?
SCP-3198-JP-A-3: お父様からはそう聞いているわ。皆ほとんど行きませんし、私も公爵になったとき礼拝のために一回行ったきりですから詳しいことは分かりませんけども。貴方もあそこには行かないことをお勧めするわ。十字架頭の修道女たちに捕まったら一日中念祷に付き合わされるそうですから。
エリー隊員: 十字架頭、ですか。
SCP-3198-JP-A-3: 色々な頭の人がいるわよ。貴方のような頭を持つ人も何人か来たことがあるけれど、今まで貴方ほど話の分かる方は来たことがありませんでしたから、きっと野蛮な国なのだろうと皆が噂していましたのよ。
エリー隊員: それは本当に申し訳ないことをしました。
SCP-3198-JP-A-3: 私たちこそ、そちらに断りも入れずに処刑してしまいましたからお互い様ですわ。すぐ隣の集団墓地に埋葬していますから、帰る際には是非お寄りになって。
エリー隊員: ありがとうございます。では、私はそろそろこれで。
SCP-3198-JP-A-3: また近い内にお会いしましょう。ファルテルはいつでも貴方を歓迎しますわ。
[エリー隊員は大聖堂を退出する。集団墓地に寄るとその一角に建てられた"罪人"と刻まれた墓を見つけ礼拝する。]
[ファルテルを出国し、Arbre penchéに到着する。5分間接触すると基底世界へ転移する。]
[記録終了]
補遺: エリー隊員がSCP-3198-JP-A-3に提案した内容について協議が行われ、結果として衣服及び建築技術を提供することが決定されました。理由として、"公爵"が言及した"十字頭"を含めた、SCP-3198-JP-Aと異なる人型実体が存在する可能性があり、それらを調査をするために拠点が必要である点などが挙げられます。現在は派遣する人員を選定中です。また、エリー隊員が持ち帰った種子のサンプルについて、植物学部門と生物学部門による共同研究、飼育が行われています。
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- portal:6568589 (20 Jun 2020 11:11)