悲しき人形は友に別れを
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しばらくバイクを走らせていた。
必死こいて練習することもなく、危うげなく走れていると思う。
まぁ、この年にもなって乗れないほうがおかしいけど。
こんなに簡単なら、変な知識なんか抱かずにもっと早く挑戦しておけばよかった──なぁんて。
調子に乗り始めたころ。

「……ん?」

もう少しスピードを上げようかな、でもやり方分からないし、それで事故を起こしたらたら面倒だし──けっこう遠くまできたから帰れなくなるのは困るし、みたいなことを取り留めもなく考えていると。
不思議な音が聞こえた。
遠くから、波のような──ざあざあ、と。
潮が立ち引いていくような、寒々しい音。

「……?」

気のせいかと、思ったけど。
私は何か異様な雰囲気を覚え、自転車を音のもとへと進める。
やけに新品なバイクの車体が、月光を弾いてきれいに煌めいていた。
運転したせいでやや汗ばんでいる手のひらで、己の髪の毛をかきあげる。
やけに静かだ。
車も通行人も見かけなかったし、家々からは明かりが消えていた──まだ、日が暮れたばかりなのに。
まるですべてが死に絶えたような町は、見知っているはずなのに、まるで違うところにきた場所のようだった。
胸騒ぎを覚えつつ、ペダルを踏みしめた。
顔を上げて、それをみた。
遠くにいたので、最初はそれが何か分からなかったが。
自転車を減速させながら、おおきく振り仰いで──絶句した。
町のいたる所に並んだ電波塔のひとつ、その天辺に誰かがいた。
どうやって登ったのだろうか、満月を背後にその姿はさめざめと美しかった。
遠目だから鴉かと思った。
でも違った、女の子だった。
風に揺れて靡く、艶やかな黒髪。
索敵灯のような、深紅に輝く瞳。
華奢な体躯に合った、どこかの制服。
背中から、奇妙な生物の血色の糸──としか表現できないものが生えていて、それは乙女の髪のようになびいていた。
その不気味だけど神々しい糸は宙で丁寧に縒りあわされ、織りあげられて一対の翼をつくりあげている。
その女の子の両手は『前へならえ』をするように前方に差しだされていて、その肘から手のひらの辺りまでが武骨な砲塔に置き換わっている。
その先端に何度も銃火が閃き、大量の弾丸を吐きだしている。
町を襲う、堕天使。
そんな風に見えた。

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  1. portal:6546777 ( 02 Jul 2020 10:48 )
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