サーキシズムへの人類学的アプローチ──ケーススタディ: 奈良の寧楽一族

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サーキシズムへの人類学的アプローチ

阿籤木 飢饗 あくじき ききょう博士、日本支部生物学部門

前書:
我々の サーキシズムへの理解はここ数十年で劇的に変わりました。この情報は、当初仮説付けられていたような単一の信仰系統からは全く違った、多様で変化していくパラダイムを明らかにするものです。我々は今では、サーキックの宗教、その様々なセクトと文化的伝統に関してより多様で、さらに詳細な像を描くことができます。

現代的なセクトは異なった解釈の産物であり、多くはその古代の前身となるカルトとの、単に表面的な類似を帯びるのみです。最も予測していなかったこと ― 特に私のようなサーキシズムの初期の研究者の間で ― はその創設者たちの、見かけ上は善なる意図でした。よく言われるように、地獄への道は善意で舗装されている ― 財団が常に心に留めおかねばならない警句ですが、我々と彼らの間には永遠とも言える距離があるにも関わらず、まさに同じ深淵を覗いているのです。

そして古代のサーカイトと同様、我々はそれが怪物に満ちていることを発見しました。

阿籤木博士は、サーキシズムについて生物学的視点に基づいた研究を行ってきました。彼女はその活動の中でサーキック系団体「寧楽一族」に対し、研究に要するサンプル提供などの交渉を行ってきました。この経験は彼らの文化について学ぶ機会を彼女に与え、彼女に人類学的知見を齎しました。この文書は彼女がそれらの経験を通じてまとめた最初の報告書です。

ジュディス・ロゥ博士、財団本部 歴史部門上級顧問―宗教的GoI脅威分析担当。

ケーススタディ: 奈良の寧楽一族

概要:

寧楽ねいらく(万葉仮名における奈良の異表記であり、起源はNälkä1の転訛であると思われます)あるい寧楽一族と呼ばれる団体は、日本国奈良県南部の山中に拠点を持つ、サーキックのコミュニティです。彼らは徹底した隠者であり、山中の洞窟に偽装した坑道の奥深くに居住しています。彼らと一般社会の関係性は皆無ですが、反面超常社会においては彼らは精力的に活動しており、日本における超常社会において一定の地位を獲得しています。

寧楽一族の特筆すべき点は、その活動指針にあります。「諸人に光を、我らに闇を。我ら闇に在りて闇を食むべし」という標語に代表されるその思想は「異常存在による正常性維持機関」という一見矛盾した集団として、彼らを日本国における超常世界に位置付けました。

歴史:

寧楽一族はその大多数が日本人には非常に珍しいMtDNAハプログループ2Z1a1a3)に所属しています。この特徴は寧楽一族の共通母系祖先がウラル語族に由来することを示唆します。また集団内でのMtDNAの画一化の傾向は彼らの文化が長らく女性家長による母系社会であることに由来しています。

しかし反面、寧楽一族におけるY染色体ハプログループ4は、多くの日本人と同様D1a2a(D-M55)5が4割、O1b2(O-M176)6が3割程度を占めており、彼らの祖先がウラル系民族と縄文人あるいは弥生人との混血であること、また父系文化が現在に至るまで主流となっていないことを示唆しています。

寧楽一族の母系祖先は紀元前18世紀に生まれた1人の女性カルキスト「カステヘルミKastehelmi」にまで遡ることが可能です。彼女は寧楽一族にとって信仰を齎した教祖であり「賀夜奈流美カヤナルミ様」あるいは「太祖様」として尊敬の対象となっています。カルキスト・カステヘルミの遍歴の記録は寧楽一族にとって重要な歴史記録であり、同時に母が子に訓話として語る定番の昔話として親しまれています。

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    私たちの偉大な太祖さま、賀夜奈流美カヤナルミさまが旅立たれたのは、昔々。まだ世界に邪悪な大蛮族だいばんぞく7が沢山いた時のお話です。

    その頃、氏御子うじのみこ8慈恩じおん9さまは、大蛮族を退治するために4人の玄御子くろのみこ10さま達と一緒に遠い西の国で戦っておられました。

    慈恩様にお仕えする4人の玄御子様は、皆とても素晴らしい方たちでした。皆のお母様のように優しく美しい酪母らくぼ11さま。雄々しくたくましい雄力おりき12さま。とても賢く辛抱強い難徳なんどく13さま。

    そして、みんなも知っている、蛇のように賢い正義の味方の裁倫さいりん14さま。

    賀夜奈流美さまはそんな4人の中で裁倫さまにお仕えし、ある時はお侍として、ある時はお医者として、大変に活躍されていました。

    ある日のことです。賀夜奈流美さまは偉大なお師匠様である裁倫さまから、大事な御使命を受けました。「東にある山々15の向こうにも、寧楽の教えを広めてきなさい」と裁倫さまは仰ったのです。

彼らの記録によれば、サアルンの命を受けたカステヘルミはアルタイ山脈を迂回しつつ中国に至り、長江付近の倭族16の1部族を教化しました。しかし、その地での定住には至らず、カステヘルミは支配部族ごと長江を下り東シナ海経由で日本へと到達したようです。

日本に到着して以降、何度かの太平洋探索失敗を経てカステヘルミの一族は「この島が東の果てである」との確信に至りました。一族は当初、紀伊半島南部の沿岸に居住していましたが、紀元前6世紀に発生した超巨大地震とそれに伴う大津波17により一族は壊滅的打撃を受けました。この教訓から一族は高所を目指して北上し、山脈に囲まれた奈良盆地に定住するに至りました。

奈良に移住して以降は比較的平穏な生活を営んでいたようですが、3世紀ごろ発生した西方部族の侵攻に抵抗の末敗北し、奈良盆地を追われ紀伊山地に逃亡しました。この敗北の記録において侵略者の王である 「イワレビコ18」という現人神19の驚異的な神通力が語られており、神武東征の逸話が由来の異なる2つの異常存在群による戦争の記録であった可能性を示唆しています。

この敗北以降、カステヘルミとその一派は紀伊山脈の地中に孤立した集落を形成し、血縁と信仰による強固な結束を持つ「寧楽一族」として発展しました。その傾向を示唆するように、3世紀以降の寧楽一族の記録はカステヘルミを中心とした記録から閉鎖的コミュニティ内の記録に変じ、それ以前の記録に比べ情報量と情報密度が著しく増大しています。

隠遁生活を続ける寧楽一族に訪れた第一の転機は、6世紀に起きた蒐集院の発足です。朝廷より「吉野の土蜘蛛」20の蒐集を命じられた蒐集院により寧楽一族は再発見されることとなりました。この再発見は当然ながら寧楽一族にとっては怨敵の再来を意味しましたが、捕らえた蒐集院の研儀官を尋問した結果「イワレビコ(神武天皇)はとうの昔に死んでいる」という情報を得た彼らは、最終的に蒐集院との「同盟関係」に消極的ながらも同意しました。

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    以前、西よりイワレビコ率いる蛮族どもが攻め寄せてから300年余り。この僅かな間に、連中は我らとの戦をとうに忘れ去ったようである。我らの一族には当時の戦いに参加したものも多く、彼我の認識の差はあまりに大きい。

    しかし、賀夜奈流美様はこれを赦せと仰せになられた。曰く「我らの玄御子、酪母さまは大蛮族のお生まれだが、正しい教えによって目覚められた。また難徳さまも大蛮族のお生まれであり、氏御子たる慈恩さまにも大蛮族の血脈は通う。なれば我らは血族の罪を子に負わせるのではなく、共に悪しき血を清める邪克じゃかつ21の道を歩まねばならぬ。我らは裁倫さまの思召す通り、正義であらねばならぬのだ。道徳と許しの心を忘れてはならぬ」とのことである。

    我らは、賀夜奈流美様の子であり孫である。数多の子を殺められた母が、赦すと仰せなのだ。そのお心を考えれば誰が戦をせよと叫べようか。

    記憶者: 監儀師 寧楽ミヒカ

以降、畿内の北部では蒐集院、南部では寧楽一族が超常組織として成長していきましたが、当時の寧楽一族はあくまで原始サーキックの信仰を奉じる異常存在の集団であり、蒐集院の正常性維持活動については傍観の立場にありました。

しかし、花山法王の引き起こした11世紀の事件が発端となり、寧楽一族は大きく「正常性維持機関」の道に舵を切ることとなります。この事件により「サーキシズムの腐敗」を初めて認知した寧楽一族の面々は、これを重く受け止め、邪克22の徹底と「正しい教えの実践」を図るべく、秘密裏に活動を開始しました。

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    寧楽の教えを歪めたのは、忌まわしき悪魂23共の企みに違いあるまい。慈恩様、酪母様、雄力様、難徳様、そして裁倫様。この極東にまで、歪められた教えが伝わっているからには、もはや御子のお歴々もご無事では無いのだろう。

    御救いせねば。我らの邪克によって、諸人に伸びる悪魂の魔手を絶たねばならぬ。

    記憶者: 監儀師 寧楽イヅナ

財団が彼らを認知したのは、蒐集院との合併の際の事です。彼らの存在は即座にプロジェクト・シトラ・アキュラの管轄となり、幾度かの交渉を経て、現在に至る「協調路線」が構築されました。財団は当初、彼らの完全収容を計画していましたが、彼らが持ち出してきた何らかの交渉材料が、財団の譲歩を引き出したようです。交渉内容の仔細については、プロジェクト・シトラ・アキュラに認可された職員にのみ公表されています。

文化、伝統、そして迷信:


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