rin rin-56--ae07
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移送用のバスから降りると、殺風景な荒野と建物群が目についた。ここは刑務所のようで刑務所で無い場所であり、自分はここで死を迎えるまで過ごすらしい。原っぱでお手製の爆弾を使って遊んでいたらうっかり二人を巻き込んで爆殺、そのまま死刑になったが執行される事は無かった。その代わりに命を人類に捧げる事になるらしい。ここはSCP財団のDクラス収容施設、ある意味での監獄だった。


「人生何があるかわからねぇってかなぁ…こんな事があるのは映画かゲームの中だけだと思ってたぜ」
「確かに」
二人乗りの軽自動車を爆破し搭乗者は全員死亡、あっという間に死刑が決まった。そのまま独房の中で壁にの字を描きながら執行を待っていると部屋から出る事を促され同意書のような物を書かされた、どうやら実験施設か何かに入れられるようであった。同意すれば生きれるかもしれないが同意しなければ死ぬ。嘘のような出来事だったが、結論は一つであった。
「ところでよ、どうする?これ?」
「……」
そして更に信じ難い事だが、今、目の前にはCGでしか見た事の無いような、化け物と言うには少し可愛らしい異形の小さな何かが居た。
「どうした?怖いか、D-810963。残念だがこいつは火薬じゃ無いぞ」
不意に背後から声がした。振り向くと自分達Dクラスを管理する管理員なる人達の一人が立っている。確か飛田とかいった筈だ、初めてここに来た時のレクリエーションで言っていた。
「いえ、問題ありません……ところで、こいつは何ですか?」
「気になるだろう?こいつは私達財団が収容する生物の一つだ。尤も、ここじゃあまり見る事は無いだろうがな」
「何故ですか?」
「最初に言わなかったか?ここは比較的軽いんだよ……正直お前達は住み込みで普通に働く感覚でも構わん、まぁ退職は出来ないが」
飛田さんは気怠げそうに答えた。
「何故?」
「表向きには死んでるからだよ…もう既にお前は死刑執行されていて、それで外に出てどうする」
「再就職ですね」
「だーかーらー、それが出来ないんだっての……まぁいい、とりあえずレクリエーションは終了だ、一応そういう生物とか物品とかを収容する組織だって事は分かったろ」
「了解です」
レクリエーションの前に聞いていた話だと、この生き物はSCPの…なんとかの一体らしい。
「ならよし!寮に戻って飯の時間を待っとけ、次!」


「可愛かったね」
「な」
「そうだ、なぁキッコ」
「ん?」
先程から話している隣の男は胸元にD-810972と書かれたプレートを付けている。彼は夜道で襲われた際、手に持っていた醤油瓶で応戦し二名を殺害して死刑となり財団に来た男だ、その為Dクラスの仲間達からは醤油に因んでキッコと呼ばれる事になった。与えられたDクラスナンバーが隣同士だったから仲良くしている。
「俺たち、これからどうなるんだろうね」
「さあなぁ……まだ仕事も言われてねぇし、でも大方さっきみたいな奴の相手をさせられるんじゃねぇの」
「例えば?」
「でっけぇ怪物の餌にされたりとかよ」
「流石にそれは無いと思う」
「分からないぜ?ひょっとすると一日中物食わされるとかかもな」
「それじゃただの拷問じゃないか」
「ならロールケーキがいいな」 「チョコが一番」等と言っていると寮に着いた。寮の入り口は二重扉になっており、内側に入るとエレベーターホールになっている。
「俺らは……確か四階だからこっちだ」
四階のボタンを押してしばらく待つとドアが開いた。乗り込むとすぐに閉まる。
「思ってたより近代的」
「ね」
四階に着きエレベーターを出ると廊下に出る。その丁度突き当たりの位置の部屋の前で立ち止まり、扉を開ける。
「ほれ、入るぞ」
中に入るよう促された。
部屋の大きさとしては九畳ほどだろうか、壁がコンクリ製の無骨な造りだからか少し狭く感じる。中央には長机と数脚のパイプ椅子がある。部屋の奥には埋め込み式の本棚があり、小難しそうな、当たり障りないような本が入っていた。左端には二段ベッド、右側には普通のベッドがありどちらも狭く寝心地が悪そうだった。試しにと寝転がってみると思いの外柔らかかった。
「なんか思ってたより普通」
「思った以上に快適かも」
「そういえばよ、飛田さん言ってたよな、ここは比較的軽いって」
「そういえばそんな事も言ってた気がする」
「なら、案外ここでの暮らしも外より悪くないかもな」
「まさか、いくらなんでもそれは無いだろう」
「だよなぁ……」
二人で部屋を見渡していると、不意に部屋に備え付けられていたスピーカーから声が流れた。
『今から三十分後に食堂で夕食を配膳する、指示があるまで各自自室で待機せよ』
「食事か、楽しみだな」
「ああ、お腹減ったね」
「ところでよ、今何時なんだ?」
「今は十九時半だよ」
「マジか!?」
「どしたの?」
「テレビは……ねぇよなぁ、じゃあ今週のマロちゃんは見れねぇのか……」
「そもそも今日は土曜だぞ」
「え」


時間が来たので食堂へと向かい、夕食を受け取り席に着くと不意に一人の女性が食堂中央の壇に立った。身長はよく分からないが何処かふわりとした雰囲気を纏った女性で、その声は拡声器を用いずとも不思議と部屋全体に響いた。
「みなさぁん、こんばんはぁ、私は貴方達が今いるこの施設の矯正長を務めている成澤といいまぁす」
成澤さんの声は気味が悪いほど頭に残った、この後数分程何かを話していたが気を逸らすのに精一杯だった。何か本能的に察した気がしたが、それはキッコも同様らしかった。
「ああいうのが一番やべーって相場は決まってんだよ」
うんうんと首を縦に振った。財団というのは話で聞いてただけだと凄くマトモで如何にもな正義の組織だったが、実際そうでも無いかもしれない。なにせ矯正長といえば、外の刑務所では確か二番目くらいに偉いお仕事だった筈だ。つまりあの人はここの最高権力者に近いという事になる、管理官の人達は大変な上司を持っている。
「ま、俺らにゃ関係ない話だ」
「そうだね、とりあえず食べよう」
「おう」
それから僕らは特に会話する事も無く黙々と食事を摂り続けた。美味しいとは思うのだが、何処か寂しい味がする。薄い鉄の皿の所為だろうか。
「明日は何をするんだろうな」
「さあ……」
「帰りてぇな」
「そうだね」
「お前もそう思うだろ?」
「……うん」
「なあ」
キッコの方を見ると彼は真剣な眼差しでこちらを見ていた。
「どうしたの?」
「もし帰れるならよ、俺は帰るぜ」
「外に?無茶だろう」
「けどよ、こんな所に居ても何も変わらねぇぜ?それに……」
「それに?」
「俺はまだやり残した事があんだよ」
彼は決意に満ちた目をしていた。
「やりたい事?」
「ああ」
「何?」
「まだ内緒だ」
「教えてくれないのか?」
「悪ぃな」
「そうか……外に出ても仲良くしような」
「あぁ、俺もそのつもりだよ」
「私もですよぉ」
施設に来て早くも外の世界への憧れを抱いていると、不意に後ろからまったりとした声が聞こえた。振り返るとそこには先程の成澤さんがいた。
「成澤さん!?」
「そんな驚かなくてもいいじゃないですかぁ」
「いえ、急に現れたもので」
「ふふふ、面白い子ですねぇ」
「ありがとうございます」
「どういたしましてぇ」
左手の先をクルクル回しながら成澤さんはキッコの背中を右手で突いていた。キッコは「ケッ」と言うと咳払いしてから尋ねた。
「ところでなんの御用でしょうか」
「特に用はないんですがねぇ、ただ挨拶をしておこうと思いましてぇ」
「そうですか」
「そうなんですよぉ、それじゃあねぇ」
そういうと彼女は手をヒラヒラと振りながらゆっくりと食堂から出ていった。しかし、別れ際に耳元で「ここからは出られませんよぉ」と囁かれた。
「軽くホラーだ……」
「な」
背筋に冷たいものが走った。


食堂を出て自室に戻るとベッドに倒れ込んだ。
「なんか疲れた……」
「にしてもよぉ、なんでこの部屋は二段ベッド一つとシングル一つなんだ?二人部屋だろここは」
「これがデフォルトなんじゃないかな」
「でほるて……?」
どうやらキッコは外国語が苦手らしかった。部屋の奥の本棚にある英和辞典が目に入ったので本棚から引き抜いたときに違和感を覚えた。
「キッコ、これ見て」
キッコはゆっくり体を起こすと、本棚に近づいてきた。自分の指さす所を見ると少し驚いた様子を見せた。
英語辞典をどかした本棚の壁には、よくわからないアルファベットの羅列があった。周囲の他の本もどかすとその全容が見えた。
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「なにこれ?」
「まぁ……あれだ、工事現場のあんちゃんがこれ壁に埋める時に書いたんじゃねぇの?もしくは棚の番号とか」
「まあそんなとこだよね」
目当ての辞典を取ってdefaultのページを探そうとdのページを引いていると部屋の扉がノックされた。「はーい」と返すと扉を開けられ、カートを押した、髪が長く後ろで馬の尻尾みたいな結び方をしており何故かエプロンを付けた見た目二十後半くらいの女性が入ってきた。
「君たち、購入届けはあるかな?」
呆気に取られていると、何かはっとしたような顔をされた。
「そうだそうだ!君たち新入りだったんだね、じゃあ売店も知らないか」
「売店?」
「そう、売店。私たちDクラスにだって物を持つ権利はあるからね、限りはあるけど。だから何か必要な物があればこうして回ってくる売店で買うんだ、私は売り子をしてるの」
売店なんて制度があったなんて知らなかった、しかしどうやらこの人も同じDクラスらしい。Dクラスの仕事にもこういった物があるのか。
「通貨は何ですか?」
「普通に円だよー、毎月二五日に給与が渡されるの。君たちは入ったばかりだけど領置金から少し貰えたでしょ?」
「キッコ、領置金って何だ?」
「ほら、ムショに入る前に金預けたろ?あれだよ」
「そういえば、でもあれって出所後に返すんでしょ?僕たち死刑済みのDクラスだよ?」
クスリと笑ってから売り子さんが答えてくれた。
「だから私たちには外の刑務所で取られたお金の一部が最初に渡されるの、上限はあるけどね」
確かに最初に布袋を貰った気がする、レクリエーションの前だった筈だ。
「キッコ、布の袋ってどこ置いたっけ?」
「んーとな、机の下に投げ込んだ筈だ」
自分のDクラス番号のD-810973が縫い付けられた袋を開けると中には二万円が入っていた。
「そう、それだよそれ、それを最初は使うの」
そして売り子さんは購入届けを渡してくれた、本来なら前回の売り子が回ってきた時に今回分を貰っておくらしい。

価格(円) 個数
タオル二枚 500
歯ブラシ 500
ワックス 500
コンタクトセット 5000
男性下着セット 3000
女性下着セット 4000
運動靴 5000
CDプレイヤー 20000
電気カミソリ 5000
CD(内容申請可能) 要相談
A4ノート 1000
H鉛筆五本 1000
小型鉛筆削り 500
図書予約便箋 300
上質箱ティッシュ二箱 1000
高級石鹸 3000
クリーム 2000
黒ポリ袋五枚 1000
花及び花瓶 500,2000
ポスター(検閲有り) 3000
写真立て,インスタントカメラ 500,10000
眼鏡 要相談
セーター 2000
聖書類(検閲有り) 定価+手数料500
書物(検閲有り) 定価+手数料500

「色々あるんだね」
「ここに無い欲しい物があったら管理官さんに言ってね、許可してくれたら買って来てくれるよ」
「管理官が買うんですか?」
「そうだよ、あの人達にもオフはあるからね。そういう時に買い物ついでに買うんだって、管理官達はここに住み込みだから休みは大体買い物に行くらしいしそのついでに。でも人によって許可の緩さや物の考え方が違うから気をつけてね」
購入届けに無い物で今欲しい物は特に無いが、ひょっとすると今後頼む事があるかもしれない。色々考えていると売り子さんが付け加えた。
「ちなみに大体の物で一番緩いのは飛田管理官だよ」
そうだろうなと思った、あの人はなんとなく優しそうだ。
「一番ぶっ飛んでるのは成澤さんだよ」
そうだろうなと思った、あの人はまぁそうだろう。
「因みにぶっ飛んでるって?」
「過去にふざけてノートPCと周辺機器一式って言ったら本当に貰えた人が居たんだよ、100000円くらいだったって。けど流石に矯正監さんに怒られたから今後は無理って言ってたかな」

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