依談 - 垢嘗/収集家

現在このページの批評は中断しています。


タイトルは"垢嘗"と"収集家"で迷っています。(垢嘗だと予想が付きやす過ぎないかが心配。)
UV/DVや、構成面、気になった点、感想などお願いします。
評価: 0+x
blank.png

この部屋には、ちょうど去年の今頃引っ越して来た。当時は大学生1年生でお金の余裕も無かったから、駅から多少遠いにしろ安い店が集まっているこの辺りに、この金額で住めることには只々感謝していた。

気になり始めたのは、入学からしばらくたち、新生活にも慣れ落ち着いてきた頃。お風呂上がりの直後とか、家の中で裸足で歩いているとき、足に何かが刺さるような、チクッとした痛みを感じることが多くなった。確認してみると、非常に細かい、硝子のような何か。でも、それは少し柔らかかった。

当然心当たりは無い。


初めての大学生の夏、旅行やお祭り等、友人と集まりすることは一通り終えたつもりだった。(膝の裏や手首が痒いのか傷だらけに荒れていたCが滲みると言うので、海へは行けなかったが。)

私、A、BとCのアパート(BとCは部屋が隣らしい)が近くにあったこともあり、共に行動することが多かった仲の良い4人組は、自分を含め全員が苦手で避けてきたものが一つ。それは唐突なAからの相談という形によって始まった。

そう、怪談だ。私の家から歩いて2分も無い、真隣に位置するAのアパートへ集められた4人は、心に壁を作りつつAの話を聞いた。でも、あくまでも”相談”であるため、完成された怪談ばかりに苦手意識を持っていた私たちは拍子抜けした。

「ごめんね、わざわざ来てもらって。そう、で、最近困ってることっていうのが、変な音が聞こえるの。それも、朝も夜も関係なく。えっとね、ハサミか何かで硬いものを切ったような、パチンッ、パチンッ。って感じ……かな。」

恐らくは聞いていた全員が思った、それは怪談ではなくただの騒音問題では無いのか、と。相談すべきは管理人ではないか。そう聞くと、Aは続けた。

「そうだよね。でも、一度報告してみたんだけど、不思議なのが、うちのアパートの全員がその音に対して苦情を出しているらしいの。あと……」

Aが次の言葉を取り出そうと口を動かしていた時だった。

パチン、パチン。カチッカチッカチッ。

「ひっ…!あっ、B、あ、足。」

小さな悲鳴と視線の先には、丸く小さな黒い染みが出来ていた。場が恐怖ではなく混乱に支配される中、

「言うのが遅かったね。そう、たまにね、この音がなった時に指の先が切られるの。」

そう言ってAは、普段隠すように見せようとしない左手を置いた。そこには、注視しなければわからない傷の細い線が、大量に刻まれていた。それを見せると、Aは半ばパニックになっていた私たちを帰した。退出際、玄関の隅には、盛り塩に混じって見覚えのある白い何かが寄せ集められていた。


それから、私はAの話を聞いた後、自分の家の現象について考えた。家中に散らかった白いものを観察してみる。初めはもっと白かった気がする。それと、もう少し小さかったような。

いや、考えなくてもわかりきっていた。紛れもない、見慣れた小さなものと、黄色く濁った知らない爪。

ふと、摘んでいる自分の指を見る。そういえば、最近いつ爪を切ったっけ。Bのキラキラしたネイルに憧れて、伸ばしていたはずの爪は、ピンクにピッタリと沿うように切り揃えられていた。


C、Bの様子がおかしくなったのは、スーパーにみかんが見られるようになった頃だったろうか。アトピーやら真菌やら詳しくは忘れたが、もともと痒みと乾燥に侵されていたCは、更に様子が酷くなっていた。

首や手の甲、背中等、身体中の至るところが痒いと言い出してはコートの内側へ手を突っ込み、音を立てて皮膚を削る。何故か長いままの爪には、茶色の垢と削り取ったものがつまっていた。周囲が皮膚科へ行こうと提案し、薬を貰ったことがあった。しかし、その薬は次の日には使い切ってしまったと言う。

そして、それはBも同様だった。


やがて、付近のアパートからは、一人、また一人と確実に居住者は減っていった。そりゃそうだ、
爪を切る音が聞こえるアパート。
何故か部屋に誰かの爪が現れるアパート。
痒みに襲われ体が蝕まれていくアパート。

それでも、実害が無いからと私はまだ残り続けていたが、ストレスからか管理人も少しづつやつれていくのがわかった。そこで、辞める前にと話を聞きに行くことにした。もちろん、この異常についてだ。

しかし、ついてみた部屋は返事がない。ノックをしても、呼鈴を鳴らしても。でも、鍵は開いていた。よくある展開だと、思ってしまった。怖い話の定番ではないか、開けない方がいい気がする。しかしその考えは、耳を澄ますと中から聞こえる不快な音によって、振り捨ててしまった。意を決してドアを開ける。念の為通報の準備は怠らない。

そこには、背を向ける管理人の姿が……いや、違う。誰もいなかった。部屋には、大量の爪が積み重なっていた。中央に存在するものは、左から爪を取っては右へ投げている。よく見ると、左には、内側に異臭のもとであろう黒い垢のついた爪が、そして右にはツルツルとした、1年間見慣れた様相の爪が積まれていた。クチャ、と、唾液が絡まった爪を取り出すと、そいつはこっちを向き、体を掻き毟った。




    • _


    コメント投稿フォームへ

    新たなコメントを追加

    批評コメントTopへ

ERROR

The MAKOdot-'s portal does not exist.


エラー: MAKOdot-のportalページが存在しません。利用ガイドを参照し、portalページを作成してください。


利用ガイド

  1. portal:6494751 ( 05 Apr 2021 06:25 )
layoutsupporter.png
特に明記しない限り、このページのコンテンツは次のライセンスの下にあります: Creative Commons Attribution-ShareAlike 3.0 License