SCP下書き 億劫の愛

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クレジット

タイトル: SCP-xxx-JP - 億劫の愛
著者: ©︎hideman-and-north
作成年: 2021

設置されたSCP-xxx-JP

アイテム番号: SCP-xxx-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-xxx-JPは現在サイト-81██の収容室にて天井から吊るした状態で隔離されています。SCP-xxx-JPが動いていることが確認できた場合、財団が保護しているSCP-xxx-JPの異常性に曝露した人間(以下、対象と表記)に対して鎮静剤を投与して隔離部屋に監禁し、暴走が収まるまで直接的な接触及び対象の話を聞くことを禁止します。

またSCP-xxx-JPを発見するため、日本全国の一軒家の屋根において風向きと比較して異常な動きをしている風見鶏を回収しています。このときSCP-xxx-JPの所有者に対するインタビュー時にはSCP-xxx-JPの販売を行っている存在について言及するのみにとどめ、インタビュー終了後にクラスA記憶処理でSCP-xxx-JP購入時からインタビューまでの記憶を全て改竄してください。また既に対象が第四段階/第五段階まで進行している場合は、「大規模な社会実験」と称して対象を拘留し定期的なカウンセリングを行ってSCP-xxx-JPの異常性を可能な限り抑制してください。社会復帰可能なまでに対象が回復した場合はカバーストーリー「誘拐事件解決」を流布し対象に記憶処理を行なった後に警察に送り届けてください。

説明: SCP-xxx-JPは異常性を持った風見鶏です。通常の風見鶏と同形ですが、下記の条件を満たした人間のいる一軒家の屋根の上に取り付けられた場合において風向きにそぐわない動きを見せて、異常性を発生させます。

SCP-xxx-JPは取り付けられた一軒家内部に「失恋した」「恋人と別れた」「離婚した」「特定の人間に対して憎悪を抱いている」のいずれかに該当する人間に対して「人類愛¹」および「対物性愛²」という精神性を付与させます。この精神影響の対象への汚染の程度は四段階に分けられています。

段階	発生時期	対象への影響	メモ
第一段階	SCP-xxx-JPの設置後、上述の条件に合致する人間がSCP-xxx-JPを設置した一軒家内部に侵入したとき	対象はSCP-xxx-JPの一部である矢が向けている方向に「自分のことを愛してくれる人がいる」という強迫観念に囚われ、矢が向いている方向へとあらゆる手段を使って向かい始めます。その後、実際に対象は上記に合致する人間と出会うこととなり対象はSCP-xxx-JPの異常性について信頼を向けるようになります。	これは強制的なプラシーボ効果によるものだと考えられます。1kmや10km先まで歩き続けて恋人が見つかるのであれば運命じみたものが感じられますが、タクシーやフェリーや飛行機を使っていれば見つかるのも当然でしょう。プラシーボ効果は科学的ですがこれは明らかな異常性です。- 姫川研究員
第二段階	第一段階に移行してから1ヶ月〜2ヶ月経過後	対象はここで「人類愛」や「対物性愛」の精神影響が出始めます。このことによって対象の行動理念や性格などに影響が出ます。	対象は元々の性格がどのようなものであったかなどは関係なく穏和/温厚/お人好しといった性格になりやすいことがわかっています。- 姫川研究員
第三段階	第二段階に移行してから1週間〜2週間後	第二段階で対象に付与された精神影響が過激なものとなり愛情を理由にした自己犠牲を払う行動が目立つようになります。	この段階に進むと、無謀な人助けを行うことで死亡したり、無理な募金を行うことで破産したりするなどの副次的な問題も発生し始めます。- 姫川研究員
第四段階	第三段階移行後、SCP-xxx-JPが風向き関係なく高速に回転し始めたとき	対象の「人類愛」「対物性愛」は顕著なものとなり、人/物問わず何らかの方法で傷つける人間に対して強い敵意を見せ始めます。人/物が傷つけられる行為を目撃した場合、その行為をした人間に対して過剰な攻撃を行い、最悪の場合相手は死に至ります。しかし対象は極度な自己嫌悪に陥り自分の生活もままならない状態となり社会復帰が困難な状態となります。	第四段階に移行する時期は規則性がないと考えられており、第三段階に移行してから最短で3日、最長で2年もの歳月がかかります。この段階まで進行した対象にはカウンセリングが有効です。-姫川研究員

第一段階〜第三段階までの精神影響は記憶処理で異常性の除去を行うことができますが、第四段階まで進行すると、記憶処理では対象の精神影響を取り除くことはできません。最低でも2年間のSCP-xxx-JPとの接触を禁止することと定期的なカウンセリングが必要です。カウンセリングには別紙マニュアルを要参照してください。

SCP-xxx-JPは第一段階〜第三段階の間、ゆっくりと回転したり突然の方向転換をし続けています。これはSCP-xxx-JPの第一段階が継続している証拠だと考えられています。対象はSCP-xxx-JPが動きを見せているところを視認することでSCP-xxx-JPの精神影響が進行し続けているものと思われます。

SCP-xxx-JPは屋根から取り外された後も、SCP-xxx-JPの異常性に曝露した人間が1人でも生きていれば不定期に回転を行います。この回転を対象は未知の手段で認知し、第四段階以降まで進行している対象はSCP-xxx-JPを探し出そうとしてその場で暴れます。これは依存症に近いものだと推測されています。

加えて、対象は条件を満たすと第五段階に進行することが判明しました。

以下はその事実が判明したインタビュー記録です。

対象: 愛宕██氏(以下、愛宕氏)

インタビュアー: 姫川研究員

付記: 本インタビューは愛宕氏が何処でSCP-xxx-JPを購入したのかを調査する目的で行われました。愛宕氏は第三段階まで進行していることが判明しています。

<録音開始>

姫川研究員: それではインタビューを開始します。

愛宕氏: はい。よろしくお願いします。

姫川研究員: 早速ですが、貴女はこちらの風見鶏をいつ、何処で購入しましたか？

[ここで姫川研究員がSCP-xxx-JPの写真を愛宕氏に見せました]

愛宕氏: 正確な日付は覚えていませんが、4ヶ月程前だと思います。あの日は、私…ちょうど失恋した時でふらふらとあてもなく歩いていました。そうすると見慣れない露店³があるのが見えて、気になったので少し覗いてみたんです。そしたら黒スーツの男性が話しかけてきて…[男性との雑談の内容、重要性が低いと判断し省略]。それで失恋した話題になると親身になって話してくださって、そちらの風見鶏を紹介してくださったのです。"愛を失った方におすすめです。愛するものがすぐに見つかりますよ"と。

姫川研究員: それで購入した、と。

愛宕氏 ええ。もしかして騙されたとお思いですか？

姫川研究員: …いえ、まさか、そんな。

愛宕氏: 無理もありません。騙されたとお思いになるのも当然でしょう。ですがそちらの風見鶏は、本当に私に愛する人を与えてくれました。[愛宕氏の現在の恋人に関する話、重要性が低いと判断し省略]。…そう。愛情を教えてくれたのです。

姫川研究員: …そのようですね。

[愛宕氏に対する質問だが、重要性が低いと判断し省略]

姫川研究員: それではこれで最後の質問にしましょうか。現在のあなたにとっての"愛"とは何ですか？

[30秒近くの沈黙]

姫川研究員: 愛宕さん？

[ここで愛宕氏の体温が急激に上昇したことを確認]

愛宕氏: 愛とは人間に必要不可欠のものです。愛以外はいらないというのは過言ではありません。…ですが私達には愛が足りないのです。愛に飢え愛を枯らし愛を奪い愛を知らず愛を欲しているのが私達なのです。

[愛宕氏が立ち上がり椅子が倒れる音]

愛宕氏: …ああっ！何と哀しいことでしょう！素晴らしいことでしょう！愛のために生きなければならない私達に向けたこれは試練に違いありません！

[愛宕氏が机から身を乗り出した音]
[姫川研究員が椅子を後ろに引いた音]

愛宕氏: 愛に飢えた私達に必要なのは愛情であり愛は惜しみなく与えられるものでなくてはなりません。全てを愛するのです。愛のために行動するのです。愛を糧にするのです。…ああっ！愛よっ！…ええ。そうです。あの風見鶏のおかげで私は溢れんばかりの愛を！人に必要な愛を手に入れたのです！…さあ！愛を知りましょう！愛を見つけましょう！

[愛宕氏が姫川研究員の肩に手を置いた音と姫川研究員の短い悲鳴]

姫川研究員: …あなたは、本当に愛しているものがあるんですか…？…あ、あなたにとっての、最愛ってなんですか…？

愛宕氏: [数秒間沈黙]…え？…あ？

[1分ほどの沈黙]
[愛宕氏が倒れる音]

姫川研究員: あ、愛宕さん！大丈夫ですか！？

愛宕氏: …愛は…[声が小さく判別不能]…愛…の、ために。

<録音終了>

終了報告書: インタビュー終了後、愛宕氏は隔離室に保護しカウンセリングを行っています。しかし現在まで回復の見込みはありません。また姫川研究員はインタビュー終了後わずか1週間程でSCP-xxx-JPの第二段階まで進行していることが判明しました。姫川研究員には記憶処理を施しています。

また財団が再度調査したところ、精神病患者として入院している██名がSCP-xxx-JPの第五段階段階まで進行していたことが判明しました。現在、カウンセリングを行っていますが、愛宕氏同様回復の見込みはありません。

以下がSCP-xxx-JPの第五段階についてまとめたものです。

	第五段階
発生時期	対象に"愛"について言及したとき
対象への影響	対象に異常な交感神経の働きが見られます。そして対象は"愛"について語り始めます。その説明は非合理的なものであり、途中から齟齬が生じ始めます。"最愛"について言及されることで対象は沈静化します。しかしその後精神状態が不安定となり鬱に似た症状が見られます。また対象の話を聴いた人間は精神影響が伝染することがわかっています。

補遺:

誰かを深く愛するとその人の家の屋根にとまっている烏にまで愛が及ぶようになるという話があります。確かに愛情を注ぐということはそういうことであり、周囲にも善意であれ悪意であれ影響することがままあると思います。
しかし人の愛を弄ぶあの風見鶏は、愛に狂って周囲に危害を加えてしまう人間よりも、よっぽど、タチが悪い。-姫川研究員

Footnotes

1. 国籍、人種、性別、その他あらゆる情報問わず全人類に対して愛情を抱くこと

2. 物に対して愛情を抱くこと

3. 現在は準要注意団体として登録されています

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  yatsume_134 22 May 2021 05:35

  本当にちょっとした事ですみません。

  対象はSCP-xxx-JPが動きを見せているところを視認することでSCP-xxx-JPの精神影響が進行し続けているものと思われる。

  ここが敬体になっていません。お忘れ無く。

  hideman-and-north 22 May 2021 09:15

  ありがとうございます。修正しました。

  From: サンドボックスオペレーター

  R74 15 Jul 2021 03:55

  サンドボックスⅢに参加していないアカウントによる下書きであるため、本ページは「批評終了」に変更されました。

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  Tech Cap. of SCP-JP

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