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車窓に雨が打ち付けられる。滑り落ちる雨粒、雑踏、街路樹、町の灯り、忙しない人々を囲んで流れていく。
信号機が赤くなる、緑の矢印を追いかける。また、赤くなる。
狭い窓枠に、ずり落ちそうな頬杖をつく。手の甲に頭を預けながら、燃料の入っていないジッポーの蓋を開いて、ひと瞬き火を点け、また閉じる。カチンと音が鳴る、何も写さない銀が光る。物想いに沈んでゆく。
私は、一人だ。私の周りには、誰もいない。この広い街の中で、誰かに帰りを待たれる者達の中で、私は、誰にも待たれない。
私と同じ、白く長い髪が美しかった母は、十数年前に事故で死んだ。最後に顔を見たのはいつだろうか、その表情は雲の中だ。
私に生きる術を教えた父は、数年前に病気で死んだ。仕事を始めて以来顔を合わせなかった父の顔を、棺の中で見た。私を鍛えた手を握った、硬いはずの手のひらがやけに柔らかかった。
全ては、過去の事。なのに、私はそれに縋る。マッチ売りの少女のように、燃えるジッポーの先に、さらに淡い希望を燃やす。一人の私に、誰かの力を重ねようとして。
幻想だけを頼りにして命を賭す。終わって、生きていた事を幻想に感謝し、死ねなかった事に一人泣く。
付き纏う葛藤に背を向けて、寂しさから逃げるように酒に溺れた。
飲み終わっては床に転がし、自分の情けなさに反吐が出て涙を流す。また一人から逃げるように新しい缶を開ける。その繰り返し。
何度繰り返したか分からない、既に流す涙は枯れた。残ったのは愛に涸れた私だけ。服を脱ぎ捨て、狭いユニットバスで湯に打たれ、張り付いた髪に過去が写り、嫌になって外に出る。
髪も乾かさず部屋に向かえば、犬のぬいぐるみがこちらを見つめている。捨てられない過去の遺物。母の笑顔、父の苦笑い、私の悲しみ、怒り、喜びが投射されたもの。修繕後がそれを逃さないように、必死に繋ぎ止めている。
また、涙が出る感覚がする。顔を覆う、濡れない手に一人笑う。崩れ落ちて眠りにつく。誰にも起こされない朝へ向かう。
これが、私。どうしようもない人間のなれの果て。それでも、夜久 ルシア、父から、母から貰ったこの名前がある限り、私は生きる。たった一人で、一人の為に生きる。
信号が青くなる。景色が後ろに流れていく。最後の雨粒が流れ落ちた。街灯の横で、月が欠けていた。
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アクションSFオカルト/都市伝説感動系ギャグ/コミカルシリアスシュールダーク人間ドラマ/恋愛ホラー/サスペンスメタフィクション歴史任意
任意A任意B任意C- portal:6383945 (30 Apr 2020 09:07)
拝読しました。あまり面白くありませんでした。
まず前提として、人事Taleはその人事キャラクターを知らない人でも楽しめるように書く必要があると思います。
このTaleは全体が独白で構成されており、物語的な展開がありません。したがって、面白さが不足しています。また、私はこの人事を知らなかったので、発言に共感や同情をできませんでした。
繰り返しにはなってしまいますが、当該人事を知らなくても作品の魅力が伝わるように、物語としての展開を設けたり、魅力を理解する上で必要なキャラクターな設定をうまく説明する必要があると思います。
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