新人職員向けオリエンテーション「カバーストーリーについて」

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皆さんが現場に出るまで後二週間程となりました。本日は財団で仕事をする上で必要な事の一つについてお話ししようと思います。
この中には今から話す内容と接点が無い人が出てくるかもしれません。ですが知っておいて損はないでしょう。

本日の講習は皆さんの手元にある冊子から分かるように「カバーストーリー」についてです。これを知らないで現場に出ようものならきっと酷いお叱りを受ける事になるかも知れませんよ。

…皆さん顔が怖いですよ。緊張するのは分かりますが、今からする説明をちゃんと頭に入れれば問題ありません。もちろん現場で怒られる事のないレベルにはなるでしょう。皆さんは優秀ですから。

財団に就職したからには「カバーストーリー」というのはご存知ですよね。ほんの少しでも耳にした事はあるでしょう。まさか聞いたことが無いなんて人はいませんよね?

皆さんが知っていそうなものでしたらSCP-544-JPSCP-1970-JPでしょうか。即座に偽情報を流さなければ民間人への拡大は免れなかったでしょう。ですが「カバーストーリー」というのはこういう大規模なものに限りません。その事を理解しているでしょうか。
 
私達が日々収容するオブジェクトは、ほとんどの場合民間に出現します。運良く私達のいる施設内に出てきてくれることなんてそうそうありません。オブジェクトの規模は出現までは分かりませんが、どちらにせよ民間人に暴露する可能性は少なからず存在します。
 
それを最小限にとどめ、記憶処理と兼ね合わせ全てを包み隠す、それを迅速に行わなければなりません。いちいちサイトに連絡してカバーストーリーを模索しているようでは、時間がいくらあっても足りないでしょう。記憶処理をする時間と事情聴取をする時間で、現実を全て一から作り上げる必要があります。
 
その為あなた達、私達職員には少なからず"個人で"嘘を操る能力が必要になってきます。
もしあなた達が現場に出たとしましょう。そこでオブジェクトにより何らかの事故が起き、負傷者、もしくは死者が出てしまった。収容はつづが無く完了したが、その現場を目撃してしまった民間人がいた。
 
事情聴取、記憶処理を第一に行い何と伝えますか?交通事故、他の動物による事故、施設の事故。色々ありますよね。その対象の人物が地元の方であったら下手な嘘は通用しないでしょう。
さらに遺族の方達にも同じ事を伝える必要があります。多くの人に共通して通用する嘘を考えなければなりません。
 
また現場にいるのは貴方だけ、という事も幾らでも考えられます。応援が来てくれる事もあるでしょうが、来てくれた人達もそれぞれの役割を持っており、貴方の思考に付き合ってくれる暇がない可能性だって十二分にあります。
どうでしょう?どれだけその力がいるか自覚出来てきましたか?
 
広範囲で、多くの民間人を巻き込む事故が起きた場合はその処理に時間がかかる、関わっている企業等がある、理由付けする為の物が多い、と言った理由によりそれぞれの担当サイトで適切なカバーストーリーを議論する事が出来ます。なのでその場合はそこまで気に追う必要はないでしょう。
例えば、大規模な事故が建造物内で起きたならば漏電、ガスへの引火、倒壊などが挙げられます。また、その建物自体が収容対象であれば老朽化、改装工事などがありますね。
一定の地域、例えば山中や集落が、収容対象になる場合もあります。それらの大半は保護地域として一般には流布されます。
ですが、現場にいたのであれば情報の提供、議論への参加を求められる事は頭に入れて置いてください。
 
私達がしなければならない事は異常物体を秘密裏に、そして的確に確保し、収容し、保護する事です。その為にはあなた達個人から財団という集団全ての力が動員されます。出来ない、というのは全く通用しないのです。
 
カバーストーリーの重要性、そしてあなた達に必要な能力を理解して頂いたのであれば今回のオリエンテーションはおしまいです。
 
最後になりますが、記憶処理剤の使い方は一つ前の講習で理解していますよね?最初に話したのは向け落ちていませんか?これが出来なければいくら嘘が上手くても何にもなりませんよ。
 
1度実演しておきますか?例えば、君とかで。今日のオリエンテーションの記憶は全部消えてしまいますけど。
 
…嘘ですよ。そんなに嫌そうな顔をしないで下さい。
それでは、皆さんが現場に出るのを楽しみにしていますよ。
 
 
 
 
 
──やっとオリエンテーションが終わり。慣れない事をすると肩が凝りますね。
 
実は、今回の講習には続きがあります。
 
財団で「カバーストーリー」この言葉を使うのは主にオブジェクトが起こした事件、事故についての事が多い。
というのを前提として新人の職員達にも話をしました。
 
ですが、この包み隠しカバーストーリーなるものがオブジェクトに使われるのは母数から見たら少ない方でしょう。まぁ、これは私の体感ですけど。
なんてったって、ここで使われる例で最も多いのは多分職員です
無論、名誉ある死カバーストーリーなんて大仰な言い方をされるのは余程の要人で無い限りあり得ないとは思いますけど。
 
なぜ人かって?そんなのは分かり切っている事でしょう。
まず、この職場は世間から完全に遮断されます。私を含めて皆、ここで働いていると言うのは公言していません。別の職場を騙るのが普通です。なので亡くなったりした時はその肩書きに合わせます。元から世間との関わりを絶った人も少なからず居ます。
この時点でもう偽の情報が溢れかえってますね。
 
そしてこれが一番の理由でしょう。
それは、ここでの仕事は"常に死と隣り合わせ"と言う事です。誰であってもです。
異常存在を前に悠長な事は言ってられません。
 
Dクラスが一番死に近いなんてよく言われますが、本当にそうでしょうか。
確かに彼らは最前線にいますが、元から死んでいるようなものです。死んでも良い事を前提に雇われているのですから。
世間では死刑執行された罪人、こちらでは丁度良い実験台でしょうか。彼らは元から死んでいるようなものです。
 
オブジェクトが収容違反を起こしたと考えましょう、最初に被害を被るのは誰でしょうか?そう、そこの研究員達です。そして運が悪ければ駆けつけた機動部隊、サイト全体の職員へと波及します。
大多数の死人が出る。そしてオブジェクトの再収容が終わったらどうなりますか?
収容違反により死人が多数出た、それで終わりです。
 
どんな人がどんな風に活躍した、なんて余程のことがなきゃ公には語られません。報告書の中に名前が残ったり、他の研究員達の中で話題にはなるでしょうけど。
ただ死んだ、犠牲になったってだけですね。その後は別の死因を貼られて終わりです。
 
後は、フィールドエージェント達ですね。
施設以外じゃ、なんならDクラス職員よりも死に近いと思いますよ。
彼らに偽の死因カバーストーリーが適用されるとなれば、それは彼らが終わってしまった時です。
オブジェクトの情報が出たら真っ先に現場に急行して調査をする。その中で事件が起きるとなると、危険なオブジェクトが大半でしょうから。
 
行って調査をしているうちに何処かに引き込まれて返ってこない、化け物に殺され身体の一部しかない、異形の身となって帰ってくる。そんなのが大半です、身元が分かったら良い方かも知れません。
 
それのほとんどは遺体が回収できない、もしくは公に見せられない状態で回収される為、"行方不明"として扱われます。怪物として同じ職員に殺されてもです。
 
今日の新人達のほとんどはフィールドエージェント志望でしょう。
こんな事言ったらまず仕事を辞めるでしょうね。これを知るのはもっと後で良いんです。
 
 
 
 
 
ははっ、笑えますよね。綺麗事じゃないんですよ、「カバーストーリー」ってのは。
 
財団は冷酷だが残酷ではない?それは嘘かな。
 
どこまでも残酷ですよ。全ての人々が気がついていないだけです。
 
全てが虚構カバーストーリーで出来た団体が他の何処にあるでしょう?
 
 
 
 
 
 
 
 
 
こんな事言ってたら私の存在が嘘になってしまいますね。それでは、ここらでお暇いたします。

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執筆者: R_IIV
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最終更新: 03 Jan 2023 15:27
最終コメント: 13 Aug 2020 13:25 by R_IIV

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