私は私に為すことが出来る全ての中にしかいない



──歓喜、祝福、成功、栄光、幸福、名誉。




男が自らの才を用いて得たものに、それらの存在は無かった。


僅かばかりの評価と、理不尽、そして挫折感が男の得た全てだった。




決してその能力が劣っていたわけではない。


見識の狭さだとかアイデアの軽妙さが劣っていたわけではない。




ただただ、ほんの少し噛み合っていなかった。


成功者は成功者たり得るし、名を馳せる人物は自ずと名声を得ていくのだ。




男はそういう点においてある意味では優秀であった。


男は凡庸な吐いて捨てる程いる人物の端くれだった。




優秀であったが故に、一度の挫折では完全に折れることなく距離を置いて、
サイト-118での変わり映えしない作業に集中することが出来た。
そして凡愚な男であったが故に、しばらく経つ頃にはその一度は否定された場所に戻っていた。

──そして、次はさらに深い絶望と行き場の怒りが支配した。

会心の出来だった作品はあっさり吐いて捨てられ、言うなれば保険のようにして作り上げた作品がまずまずの評価を得る。

既に何かを信じるという行為が出来ぬほど男の心には傷が奥深く、入り込んでいた。
簡単に出来ていた、心を押し殺して仕事をすることも出来ず、気付けば一日中部屋に籠って怒声とも慟哭とも取れぬ奇声を布切れに吐いていた。

目立った失敗も挫折もなく、まずまずといった人生を歩んできた男にはあまりにも酷な経験であった。
同僚からは慰めの言葉や励ましの言葉を掛けられるが、それすらも不条理さを与えるとして聞く耳を閉ざした。

ある著名な政治家は、自分自身の過ちを認めること程難しいものは無いと説いた。
男は自分自身を正確に省みるには若すぎたし、自身を実情を無視して正当化できるほど無知でも無謀でも無かった。中途半端な優秀さによって脱することの難しい、負の循環へと陥っていた。

だが、現実は得てして悲劇ほど都合よく進んでいくものである。
同期の同僚が、僅かな期間で自分どころか多くを抜き去る程の作品を仕上げたのである。
コンテストという、大掛かりな場でそれほどまでの結果を出されては文句のつけようが無い。

──心は完全に折れ、もう居場所を残そうとする気概も失せた。

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