Apollyonといっしょ! 2020年なつまつり!!

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大人でも項垂れるような暑い暑い夏のある日。
ある職員は、休日を一人娘とのんびり過ごしていた。

「おかーさん! テレビかえてもいい?1

「ええ、良いですよ。何が見たいの?」

普段は財団の博士としてあちこちに出張している彼女は、必然的にテレビにも疎くなる。
一応普段は託児所に預けているので、見る番組も大凡教育番組であろうとは想像がつくが。

「うーんとね、あぽりおんといっしょ!」

(……あぽりおん? アポリオンってあのApollyon2かしら……? まさかね……聞き間違いでしょ……)

「……そう。はい、リモコン」

「ありがとー!!」

そう言って幼い娘が押したのは、国営放送の番号であったため一抹の不安は消えた。
次の瞬間、一瞬で不安が現実のものになったが。

 


 

『みんなー!! こんにちはー!!』

「Apollyonのお兄さん、タローランです!」

「Apollyonのお姉さん、マーサです!」

それぞれお兄さんとお姉さんと自称する男女は何故か、白衣を羽織ってその胸元には財団であることが一目で分かるロゴが印刷されていた。

「それじゃあ今日も、モントークたいそうからいこうね!」

なんでももぐもぐごっくんするおうさまのように元気いっぱいに動こうね!」

スタジオの後ろには7本の柱があり、その内1本を残して根元から折られている。
そしてその後ろには形容し難い鎖に縛られた大きな怪物のセットが、鎮座している。

どこからどう見ても子供向けとは思えないのに、当事者である子供たちの反応はどうやら好評のようである。

そしてやけに重苦しい曲調の音楽が流れ始め、子供たちが男女がいる中央へと集まりだす。
少しずつ口を開き、言葉を紡ぎだす。

 
 

『──爾の時KESHPETH雲を超え……』

 
 


 

(頭が痛くなるわ……収容違反の嵐じゃない……)

「お母さん、今からちょっと電話するから向こうの部屋に行くね?」

「うん! わかった!!」

「……あー、何か気分が悪くなったら遠慮せずにお母さんのところに来て言ってね? その……最近暑いから、部屋の中だからって安心せずにね?」

 


 

「みんなー? 元気いっぱいにできたかなー?? お兄さんは動き過ぎて今にもちぢんじゃいそうでーす!」

男性の背後では、可視光線が照射され偶然射線上にあった風船が手のひらサイズにまで縮小している。

「タローランお兄さんほどじゃないけど私も少し疲れちゃったなー! 今お外に出たらからだがぐにゃぐにゃになりそうだなー?」

女性の背後では液体──具体的にはスライムのような形状の物体が、上下に弾みながら動いている。そして取り込まれた観葉植物は、同様にその形状をスライム上に変化させた。

二人が疲れたという旨を話し出すと周囲の子供たちからも疲れたという言葉が相次ぐ。
勿論、これは出演する子供たちが駄々をこねたりしないよう配慮の結果生まれた、Apollyonといっしょ恒例のものである。

「よし、次はタロニュのうたを歌って少しやすもうね」

「みんなはタロニュのうたは好きかなー?」

お姉さんと自らを呼ばせるマーサがそう聞くと、子供たちはそれぞれ好き放題に喋り始めるものの皆揃って"タロニュの歌"が好きであると言っている。

タローランとマーサだけでなく、子供も全員座った状態で音楽が流れ出す。
まるでチューニング音のような不思議なメロディの曲調で、スタジオもそれに合わせるように照明の光を若干弱める。

 

『──不思議なひかりに照らされて~、何でも知ってるみんなが慌てだす~、地球もどこかへいっちゃって~

 


 

(いや、歌詞までApollyon一色かよ……どこまで喧嘩売ってんだ……)

隣の部屋に移動したとはいえ、音声は微かにだが聞こえてくる。
何から何までApollyon指定のオブジェクトを暗示させるような行為に、怒りや焦りを通り越して溜息しか出てこない。

あまりにも酷すぎて現在電話中であることを忘れそうになる。

「──██博士、状況を報告してください」

「っ、すまない。状況は──」

 


 

「みんなー! 今日はたのしかったかな~?」

『楽しかったー!!!』

「うんうん! そう言ってくれてお姉さんとっても嬉しいな~!」

「それじゃあ、みんなで最後にふしぎなカメラの前でピースしようね!」

"Apollyonといっしょ!"の放送では、最後にその回で登場した子供たちが集合写真するのが定番である。放送初期では、色褪せた本をお兄さんとお姉さんと名乗る男女が日替わりで朗読するコーナーであったが、視聴した子供が不可解な行動を取り始めたとして差し替えになった。

ファンの間では、集合写真に写った子供の数名が行方不明になっているという根も葉もない噂が立っているが、そんなことはないのである。"Apollyonといっしょ!"という長寿番組がそうそうやらかす筈がないというのは、有識者の間で常識となっている。

「それじゃあ、みんな~? あの二人を呼ぼうね~!」

「せ~の~!」

 

ピカピカさ~ん! はかせ~!

 
 


 
 

「……えーと、何あれ?」

「おかーさん? あれはね、『ピカピカさん博士のつくろうね!』だよ~! きょうは、パンドラのはこ? を作るんだって!」

──ピッ。

「……ああ、私だ。すまない、また仕事が一つ増えた」

「おかーさん?? どうしたの???」

 
 
 
 

先日、確認された"Apollyonといっしょ!"及び"ピカピカさんと博士のつくろうね!"という番組は存在しないとの旨が、放送局側から通達された。しかしながら、放送されていたことは事実であるため現在調査中である。

また、出演者として登場していたジェームズ・マーティン・タローラン研究員とマーサ・ハードキャッスル博士は財団職員として実在するものの、関与していないことが確認されている。

確保、収容、保護。 申し訳ないが休暇中であってもこの理念を忘れぬよう。

日本支部理事"升"

 


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  1. portal:6360224 (22 Apr 2020 03:01)
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