茶室というごく僅かな人数のみが入ることを想定した室内には、それぞれ対照的な風貌の二者が囲炉裏を挟んで座していた。
一方は和の趣を感じさせる茶室に合わせるようにして羽織を纏った姿の人物。しかしその顔立ちは男とも女とも取れる中性的なものであり髪の絶妙な長さと相まって魔性の雰囲気を振り撒いていた。
「よく来てくれた。部隊の中では君が一番話が早いんだ」
和装の人物は、日本支部理事。その名を、升。
謎多き人物がこうして傍目には無防備極まりない姿で現れているとはほとんどの職員がつゆ知らず。
しかし、過剰であることを避ける彼ないし彼女の気質を知る人物にとってこの振る舞いはどこか納得のいく姿であるのかもしれない。
「貴方だから応じました。自分は、財団という組織に義理はないので」
升と相対するは、升の直属部隊──その実質的な隊長格にある人物である。
しかし、その顔は仮面によって隠され身に纏っているのは使い古されたジャージという不釣り合い極まりない姿。そして日本に於ける権力者に対して傲岸不遜極まりない発言。
だが、彼のそういった発言にも眉一つ動かさずそれどころか笑みすら浮かべている升。
隊長格の彼もそういったことを承知の上、好き勝手言っているのだ。
「ああ、君の財団嫌いはよく知っているとも。そして、それに反する君の周囲からの評価もね」
「御託はいい。さっさと話を進めてくれ」
「ああ、そうさせてもらおう」
強硬的な語調で話を進めようとする彼の意思に従うようにして、升の話は進められる。
言葉だけを切り出せば非常に極端な者同士の会話ではあるが、日本支部において絶大な権力、その一部を握る升に比肩するように彼の所作は整っている。
口ではああ言うものの、升から出された茶を美しく、滑らかな所作で飲む姿は隊長格という身分に見合ったものである。
「とは言っても君を呼ぶ出すことなど"部隊"に関することだけだがね。今私の部隊で自由に動けるのは何人かな? "黒天"」
黒天と呼ばれた彼は、淡々と返答する。
「"常久"と"訶備"の2人だ。"之立"は地位と権限は表向きにも十分持っているが、勤務地が勤務地なだけに難しい。2人なら上級職の立場で、十分に権限を行使できる」
「ふむ、やはり自由に動かせる方が少ないか」
「あんたが他の理事にも秘密でこそこそと動かなきゃ、もう少しは楽できただろうにな」
「厳しい話だ、耳が痛いよ。だが、他の理事に明らかになってしまえばもっと極端な方法に出ても可笑しくはない。何せ君たちは」
「『世界を救うことのない存在』だろ?」
割り込むようにして発した黒天の言葉に、升は満足気な言葉を浮かべる。
その表情に対して黒天は、嫌そうな表情を隠そうとする素振りすらなく現す。
「やはり君は面白い男だ。期待しているよ?」
「貴方の期待は、いつになっても裏切りたくなる雰囲気を持ってるんだよな」
「ああ、是非とも裏切ってくれ。存在しないことが存在意義である君たちの行動は、期待したところで期待通りに動かないだろう」
お互いにかなり痛烈な毒を吐きながらも談笑を続ける。
遠慮や下手な上下関係がない以上、かえって安定した関係が構築できているのは幸か不幸か。
「じゃあ、頼んだよ黒天」
「承りました、日本支部理事、升殿。後始末の掃除はお任せください」
互いに互いを嘲笑するような表情で、命令は下される。
だが、その関係は異常な程にまで堅固なものであるという。
日本支部理事 升 直属部隊-0("存在しません")
その存在は謎に包まれている。
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