Tale下書き「奇跡論触媒が生むひずみ ウィッチクラフト流行の影で」

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コラム

奇跡論触媒が生むひずみ ウィッチクラフト流行の影で

公開日 2026年7月15日20:30

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自生地でのペヨーテ(Lophophora williamsii)

集団幻覚と異常な高揚感、膨大なサイオニックエネルギーの奔流、極彩色に輝く太陽、住宅街に響き渡る奇声と嬌声⋯⋯。三重県伊賀市の住宅街で今年6月に発生した「カーニバル」暴動。その「カーニバル」暴動を含め、同様のメソアメリカ先住民系の突発的儀式は、今日までに関西を中心として7件が確認されている。しかし、メソアメリカ系の奇跡論体系は未整理な分野であり、現在専門機関で僅かに研究されているに過ぎない。加えて現場に残されていた儀式の痕跡からもそれらの意味的混入は認められず、原因究明は難航していた。しかし、つい先ほど、原因がメキシコから輸入された奇跡論触媒にあったとする調査結果を三重県警が公表した。民間での奇跡論の行使による事故が相次ぐ中、今後の警察の対応が注視される。

三重県警の発表によれば、「カーニバル」暴動の発生原因となったのは、奇跡論ウィッチクラフトで触媒として使用されるペヨーテであるとのこと。ペヨーテ(Lophophora williamsii)はサボテン科に属する植物で、かつては先住民の間で幻覚剤として使用されていた。日本には観賞用として導入され、現在専門店では国内産の栽培品が乾燥された状態で安価に販売されている。しかし、今回使用されたものは民間での使用が法律によって規制されているメキシコ産の野生品だった。「カーニバル」暴動の原因儀式を行使した女性は、イベントで、"ブロウニンギアと砂礫教会"を名乗る出店者から、今回使用されたペヨーテを購入したと証言しているとのことで、三重県警は不明な超常団体の関与が疑われるとして、該当団体への調査を進める方針だ。

奇跡論に詳しい恐山統一奇跡論センターの主水吉之助教授によると「メキシコ産ペヨーテは、先住民の信仰に由来する信仰を含有している。メソアメリカ系奇跡論では大量のEVEを得る為の触媒として多用されるが、先住民由来の奇跡論は総じて他の奇跡論とは親和性が低い。その為、業務用のメキシコ産ペヨーテを他の奇跡論触媒の代用として用いる場合、余剰に発生するEVEを制御せねばならず、素人の利用は極めて危険である」とのことだ。それに加え、安価に出回る出自不明の奇跡論触媒を組み込むのは事故に繋がりやすいとも警告した。現在、奇跡論普及の煽りを受け、ネットオークションサイト等では様々な奇跡論触媒が出品されているが、それらには相当数の偽造品や系統不明品が含まれているとみられ、早急な対応が講じられる必要がある。

また、材料の乱獲や盗掘も深刻化している。一般に奇跡論触媒はそれを利用する奇跡論体系に支えられているが、特にアニミズムから発展した呪術系の土着奇跡論体系においては、信仰対象が超自然的存在であるために、奇跡論触媒は野生品の方がEVE含有量が多いことが知られている。超常災害や異常疾患の蔓延の為に、それら土着奇跡論が根付く発展途上国の経済は立ち遅れており、担い手である先住民族の殆どの社会的地位は依然として低い。そこに民間への奇跡論の普及と先進国富裕層の"高級志向"によって需要が増大した結果、現地では非合法な大量採取が横行している。特に中南米や熱帯アフリカでは犯罪組織の資金源となっており、現地では地元当局の対応が追い付いつかず、更に住血吸虫保護協会(Schistosoma Protect Institute, 略称SPI)の介入もあって、治安悪化の一途を辿っているという。また、25年にエジプトを追われた過激派夏鳥思想残党の活動の温床としても問題視されている。

これらの諸問題について、野生動植物の保全が専門のWWS大阪事務所スタッフ、グレジス・カァーソン氏は、拡大する奇跡論市場に早期の規制導入が必要であると主張する。超常カルトや麻薬カルテルなどとの結び付きが形成されやすい市場であるからこそ、法規制による裏動植物マーケットの摘発や土着奇跡論の担い手である先住民族の社会的地位改善、自然破壊で失われた環境の復元など多方向からのアプローチが必要であるという。「特攻薬は元より無く、対策の実施もこれまでと同様に困難な道のりでしょうが、辛抱強い努力こそが、病巣へは何よりも鋭いメスとなりうるのです」とも語った。


財団は語る

「国内で産する奇跡論触媒は極めて限定的であり、旧蒐集院構成員の協力もあって、神道系奇跡論に関する規制の制定は比較的スムーズに進んだ。一方で、海外産の奇跡論触媒には現在も増え続けており、その全てに対し規制を導入するのは極めて困難」と財団職員(民俗学部門)は語る。

奇跡論触媒として国内で正式に認可されているのは、鹿の角袋や竜骨など23種類だが、現在市場に流通しているものは数百種類に上り、対応は追いついていない。根底には、5年前に成立した『奇跡論に関する包括的法律』についての各省庁での認識の違いがある。1998年のベール崩壊前から奇跡論に対するノウハウを蓄積してきた文部科学省、環境省、警視庁は、前述の法案の成立直後から様々な制度や規制の導入を行っていたのに対し、奇跡論に対する態度が迷走する農林水産省、厚生労働省、消費者庁等との間には隔たりが形成された。消費者庁が認可を出した奇跡論に関する製品が、違法として警視庁に大量摘発された『TING製シャフト輸入事件』は記憶に新しいが、それらの混乱が奇跡論触媒市場の問題にも波及しているのではないのだろうか。また、一昨年のアブサン規制についても見解の分かれた各省庁であったが、今回は国内外の超常組織とも関連のある問題、共通見解の確立にはかなりの時間を要するとみられる。

また、専門人材の不足も深刻である。現在、日本国内奇跡論学部を設置しているのは統一奇跡論センターやプリチャード学院など正常性維持機関の下位組織、そして僅かな私立大学のみで、更に奇跡論触媒学となると、統一奇跡論センター以外に研究室が存在しない。サブカルチャーの普及によって奇跡論を志す学生は増えたが、選択肢の狭さからディア大学や聖クリスティーナ学院など、海外の超常教育機関に進学し、そのまま帰国せず就職する例が年々増加している。一方で、文理選択を推し進めてきた国の政策が足枷となって、民俗学、神学、物理学、工学、形而上学などの幅広い分野を横断する奇跡論学部、その国公立大学への設置は遅々として進んでいない。

何れにせよ、奇跡論に対する知識を独占してきた正常製維持団体による国政への介入は急務に思われる。奇跡論による儀式は悪魔実体や神格実体の召喚、余剰次元の生成など種々の危険性を孕んでいる為、民間での無秩序な奇跡論の利用は到底放過できるものではない。国内での規制確立のため、財団とGOCは、今年中にも政府関係者や有識者を交えた政策会議を実施する予定だ。


関連キーワード 奇跡論 奇跡論触媒 ウィッチクラフト 環境破壊


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