Tale下書き「現代の林子平」

「異常性を体系化しようと目論むことが何故、貴方の粛清対象となるか今ようやく分かりましたな。貴方方は排除したいんでしょう、そうだ、貴方方は異常性が存在しないと信じたい、夢見てる」
 数発の乾いた発砲音の後、分厚い学術書が所狭しと並べられた書斎には頭蓋を吹き飛ばされた老人の死体が残された。図星だった。下手人として選ばれた若い男が実行前に、上官に言われたことと何ら変わりなかった。変わりなかった。
 
 灰色の雲が頭上を流れていく。コートの内側に仕舞い込んだ自動拳銃の金属の筐体が服に押し当てられる感覚が何となく居心地悪かった。老人の自宅を何事も無かったかの様に立ち去り、駅まで歩く間に、若い男は、己の中に毬の存在を感じた。それは、己にすら針を突き立てる気高き自衛心、正常性を守っているという誇りだった。だが、己があの老人の言葉を反芻する度、その毬は縮小していった。男は己を見出した。嘗て男が義務として足繁く通ったあの施設にはなかったものこそが、男を完成させた。男は老人の家に向かったときには無かった皮のトランクの持ち手を固く握りしめていた。

 男は、車窓から眺める街の風景に、事実を見出した。もはやそこに崇高な理念など見出せなかった。男は宿命だと感じた。このトランクの中の原稿には、それを確信させる何かが宿っていた。

 男は消えた。別れの言葉も残さず、組織から消えた。男が身につけていたGPSは、住宅街の側溝で濁水に洗われていた。男は、北に向かった。仙台へと、それが男の嘗ての古巣に対する反逆だった。男は今や獅子身中の虫だった。
 
—— 

 月日が経ち、男は

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