小渕博士のSCP-████-JP研究日誌 (1)

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[201█/2/11]

「…と、いう訳でして。詳細はこの資料をご一読ください。」

「ああ、ご苦労様。確り目を通しておくよ。」

「それでは失礼します、小渕博士。」

あの薄ら寒い北向きのオフィスからここに移ったのはつい先々週だったか。あの時は天井の高く日当たりも良い仮眠に最適な自分だけのテリトリを手に入れていたく喜んだものだが、まさかこんな形で皺寄せが来るとは。本来なら俺だけが恩恵に預かる筈だった陽光の大半を独占しながら我関せずで毛繕いをしているソイツを俺は恨めしく睨まざるを得なかった。

[この情報は暫定的なものです。この情報を更新する権限は小渕博士、██博士、███博士が保有しています。]
最終更新日時: 201█/2/10

アイテム番号: SCP-████-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-████-JPは現在、その異常性から収容がなされていません。SCP-████-JPはサイト81██内を徘徊しているため、SCP-████-JPを発見した職員はSCP-████-JPがサイト内の備品を破壊しないよう細心の注意を払ってください。SCP-████-JPの行動範囲を狭めるため、SCP-████-JP用のトイレ及び給餌器はセキュリティクリアランスレベル0エリアの警備員室横に設置し、小渕博士のオフィスに移動されました。朝と夜の2回通常のネコ科用飼料を与えてください。また、破損したSCP-████-JP-2は全て低脅威度物品ロッカーに保管して下さい。

そうやって好きに歩かせて失敗した事案が何件あったと思ってるんだ。麻酔を打ってでも部屋にぶち込んだまま外に出すな。 - ███博士

決して好きにさせている訳ではありませんよ、███博士。好きにさせないために研究しているのです。強硬手段はその後でも遅くないのではありませんか。 - ██博士

説明: SCP-████-JPおよそ5歳前後と推測されるマーゲイ1とイエネコの交雑種のメスです。SCP-████-JPは落下などの物理的衝撃への耐性と他の個体に比べ高い知性を持っていると推測されます。SCP-████-JPは収容に対し非協力的であるものの、財団職員に対し非敵対的です。しかし、後述の飛行欲求からとる行動によりサイト内の備品を破壊した事案が複数件報告されている他、サイト内で頻発している書類やクリアファイル、ハンガー等の備品の紛失事件にも関与していると推測されます。

SCP-████-JPは物質に対し何らかの干渉能力を有していると推測されます。SCP-████-JPが障害物や職員の体をすり抜ける現象が何度も目撃されています。また、未知の手段で後述のSCP-████-JP-1を作成するなど能力の全容の解明には至っていません。

SCP-████-JP-1はSCP-████-JPが不定期に作成する非異常性の実体です。分析の結果、SCP-████-JPの発見当初に回収されたSCP-████-JP-1を除く全てのSCP-████-JP-1個体はサイト内で紛失していた物品で構成されていました。SCP-████-JP-1は翼のような形状をとっており、SCP-████-JPはSCP-████-JP-1を完成させると自ら装着して高所から飛び降ります。然し、SCP-████-JP-1はSCP-████-JPに飛行能力を付与するには明らかに不十分であるためSCP-████-JPはそのまま墜落し、SCP-████-JP-1の大半は着地地点の周囲の物体を巻き込んで大破します。SCP-████-JPはこの行動にのみ非常に執着しており、他の一般的なネコ科動物のような狩猟本能が備わっていないと推測されています。

補遺████-JP-A: 発見経緯 201█/2/1 13:00ごろ、██県██市の不燃物処理場にイエネコじゃない猫がいるとの地元住民の通報があり現場に駆け付けた警察官の中に紛れていた財団のエージェントが廃棄物の山をすり抜けて逃走するSCP-████-JPを目撃し、その存在が明らかになりました。SCP-████-JPはエージェントに確保された時は目立った抵抗を見せなかったにもかかわらず、サイト81██に到着直後に特異性を発揮し、護送中SCP-████-JPを直接捕えたままの状態だったエージェントの手をすり抜けて逃走しました。その後、サイト内で一時行方不明になりましたが██博士が設置した給餌器に近寄り、その中の睡眠薬入り餌を摂食して鎮静化し一時的確保に至りました。

ここ最近このサイトを一番騒がせている問題児だ、前にこのデータを読んだ時から内容に余り進展がないように思える。幸い、このサイトには大層な機密情報も独り歩きする核爆弾も(おそらく)無い事だけが救いだろうか。
だがいつまでもほっつき歩かせている訳にもいかない、さてどうアプローチを取ったものか。

「あー、おい、なんだ、その…SCP-████-JP。」

これではまるでコミュニケーション障害じゃないか。だがしかしどう接するのが正解だったと言うんだ?相手は動物だぞ?█████でも呼んで来いってんだ。
俺の猛烈な自虐をよそに、件の猫はこちらへ振り向いた。俺の目には番号を呼んだタイミングでこちらを向いたように見えた。報告書に知性が高いと書いてあったが、もしかすると人語を理解しているんじゃないだろうな?少し確かめてみるか…

「お前から見て右にある資料棚の上に乗ってみろ、今日のメシに生肉を加えてやる。」

俺がそいつの目をジッと見詰めたままそう命令すると、そいつはピンと背筋を伸ばしてさっさと棚に登って行った。どうやら言葉を理解している上にそれを隠す気もないらしい。

「現金な奴だな、全く…しかし言葉を理解しているのが分かったのはいい進展だ、そこで待ってろ。」

言葉を理解すると分かればコミュニケーションをより円滑にする他あるまい。俺はふと思い立ち、そいつを残してオフィスを後にした。


「わかりました、そういう事でしたらぜひお任せ下さい!」

「ありがとう半田君、ちなみにどれ位で完成するかわかるか?」

「少しお時間頂けるならこの場でお渡しできます!」

「流石だ、ならここで待たせて貰うよ。」

「はいっ!」

この返事の良い好青年は半田研究員、このサイトの中では指折り程度しかいない技術職出身の職員だ。その希少価値と人当たりの良さからサイト中の職員たちにいたく愛されている。実際、言い方は悪いが非常に便利な存在だろう。俺のように機械がさっぱりな人間には特に、だ。彼に依頼の品、小型のノートパソコンを手渡してから空いた椅子を拝借して待つことにした。

「お待たせしました!」

「ありがとう、まさか一時間も掛からないとはな。」

「この程度でしたらいつでもお申しつけ下さい!」

「そうさせて貰うよ、では。邪魔したな」

彼に頼んだのは端末内の余計な機能の除去だった。文字を入力して人工音声を出力する機能だけを端末に残してからあの猫に手渡すことで、言葉での双方向的なコミュニケーションを可能にして見せようという企みだ。我ながらシンプルでいて効果的だと思う。問題は奴にタイピングが出来るかどうかという点に尽きる、が…何となく今日の俺なら上手くいく気がする。多分な。


「待たせたなSCP-████-JP、戻った…..ぞ……..」

俺は絶句する他なかった。それに遅れて自分の軽薄さに呪った、意志を持つタイプの異常存在と直接関わらなくなって久しかったせいで完全に感覚が鈍っていたようだ。

「やってくれたな……」

オフィスの中心に位置するデスクとその上に置きっぱなしになっていたデスクトップパソコン、マグカップ、その他諸々が大破して床にぶちまけられていた。酸化したコーヒーの匂いが鼻を刺す。当のクソ猫は壊れたグラインダー(俺が半日前に仕上げて提出するばかりになっていた報告書の紙束製、書き直しだクソったれ)を背負いながら悪びれもせず足元へ寄ってきた。褒美の肉を持って来たものだとでも勘違いしているのかもしれない。
俺はそいつから一旦顔を背け、わざとらしくため息を吐いてから向き直って告げた。

「……今日のメシは抜きだ。」

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ページ情報

執筆者: Ruka_Naruse
文字数: 3649
リビジョン数: 33
批評コメント: 3

最終更新: 28 Jun 2020 13:37
最終コメント: 21 Jun 2020 10:55 by notyetDr

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