異常空白域

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解錠


──バキッ。

ふわり、と体が浮いたような気がした。腐りきった床を踏み抜いてしまったのだ。手当たり次第に何かをつかもうとするも、朽ちた木などでは体重を支えることはできない。足掻くも無駄だと悟る。そうやって落ちた先は音が吸い込まれそうなほどに暗い石造りの廊下で、頭上の大穴だけが唯一の光源だ。

何かに追われる訳でもなく、闇へ闇へ突き進んでいく。そうしなければならないような気がしてならなかった。足音が暗闇に吸い込まれる。じっとり濡れた石畳を思うがままに駆け抜ける。しばらくすると、真っ赤な灯りが前方でぼうっと浮かぶ。手招きをしているような光だ。ちょうど、誘蛾灯のように。

半開きの金網の隙間から、体を古めかしい昇降機にねじ込む。錆だらけのクランクを躊躇いなく時計回りに回した。使い方を知っていたというわけではない。なんとなく、そうするのが良いと思っただけだ。不快な摩擦音と共に箱は上昇し、叩きつけられるように静止する。

昇降機を降りると、無人になった箱は力尽きたようにひとりでに落ちていく。辿り着いた先は先程と一転、陽光がいっぱいに射し込む白壁の踊り場だった。忙しなく折り返す木造の階段をのぼり、一番上まで到達すると真鍮の装飾が施されたペイルカラーの扉に出迎えられる。

その扉を前にして、初めて立ち止まることを覚える。躊躇いがちにノブへ伸ばした手を、扉の向こうから聞こえた声が呼び止めた。

「そこに、誰かいるの?」

"何かに追われていたのではない、何かを迎えに来たのだ。"

所以のない確信が芽生え、力強くノブを握りしめた。

ガチャリ。鍵の開く音がする──

休学届


[2010/8/20 11:48 北2号館3階]

八月後半の教務主任室は、主任にとって馴染みのない学生で賑わう。その日訪れた学生も、教務主任の印鑑を求めてきたようだ。しかし彼は、少しばかり他の生徒と事情が異なった。

「"大学院入試の願書を出し忘れた為、来年受験するべく1年間の休学を申請します"、と」
「申し訳ありません。全ては自己管理不足の無さが招いた事であり──」
「いや、いい。別に君は私の研究室が受け持つ生徒じゃない。私は迷惑を被らない。だがね……」

主任は捺印欄がひとつ空白の申請書に注いでいた視線をその学生に向ける。その眼光は嫌疑に満ち、彼が学生からカタブツと称されるに相応しい鋭利なものであった。学生はそれに対して動じることは無く──むしろ、不自然なまでに堂々と彼のハンコを待っていた。

「院試に落ちたというのならともかく。常識的に考えて、出し忘れるなんてことがあり得るか?まずもって君の研究室の教授がリマインドするだろう。しかし君はどうだ、願書の提出だけではなく事前払い込みもオンライン情報登録も何も済ませていない。最初から受ける気が無かったのではないかと疑わざるを得ないね、嘉瀬君」
「いえ、そんなことは御座いません」

嘉瀬と呼ばれた学生はそれ以上の弁解をするでもなく、またそれ以上の追及を無意味だとでも言わんばかりに"研究室の担当教授からは了承を得ています"と付け加えた。嘉瀬の、主任に負けず劣らず愛想に欠けた目つきは、彼の高い背丈や小綺麗な身なりと相まってかなり威圧感の強いものに仕上がっていた。主任はそんな嘉瀬の毅然とした態度に小さなため息を漏らしたのち、壁掛け時計にちらと視線を遣る。

ここは聖エンガン大学、東山キャンパス。名古屋市名東区平和公園墓地の北北東に居を構える、通称"鬼門校舎"。広大な墓地を挟んだ向こう側には高級住宅街と終末期医療センターが並ぶのが見える、実に悪趣味なロケーションの校舎だ。そんな立地故か怪奇現象の噂が絶えず、七不思議が20あるとも30あるとも言われている。もっとも有名なのは『オカ研を作ろうとした者は学園を去ることになる』であり、『毎月20日は正午になると北エリアの教員が姿を消す』もまたその一つであった。ただし、これは怪異でも何でもなく、単に彼らに集まらざるを得ない都合があるというだけの話であり──今この場を早々に切り上げさせるための手段として利用するに足りるものでもあった。

「……まあ、いい。この一年を有意義に活用するように」

捺印欄に、力んでブレた印影が与えられた。

[2010/8/20 12:23 ハローエッグ 平和が丘店]

「はぁ~、これでお前は二つ下になったってことだよね。敬語、使うか?」
「馬鹿言ってると今日こそ先輩らしく奢らせるぞ。それに今年度中はまだ一年遅れだ」

昼真っ盛りのオムライス専門店。赤白チェックのテーブルクロスが家庭的な店内にはサラリーマンやご老人、或いはそこらに乱立した諸大学の学生で賑わっている。11時の開店に合わせて入らない限り待たずに食事にありつけるのは難しく、ローカルチェーン店の底力をしみじみと感じるばかりだ。そして例にもれず待たされている大学生の男女二人、片方は嘉瀬大輝であり、もう片方は彼の古馴染の佐々本フユだ。

「奢ってやるのもやぶさかじゃないが、そうなったら"佐々本先輩"と呼べよ」
「……呼んで欲しいのか?」
「嫌だよ、気持ち悪い。あ、私は日替わりのMサイズで」
「お前なぁ……あー、俺はメキシカンの大盛りを」

他愛のない戯言は注文を取りに来た店員によって中断され、二人の関心は値段を何度も張り替えられているメニュー表に移る。

「俺の見込みじゃ、10年後にゃもう100円は吊り上がってるだろうな。プレーンを注文しても800円弱ってとこだろう」
「もしそうなったら気軽に来れる店じゃあなくなるかもね。ああいや、その頃には社会人なんだからその程度他愛もないかな」
「ほう。無事社会に出れる気でいると」

カチャン、グラスの氷が傾く音がする。夏の冷や水は短命だ。

「……それで、話を戻すけど。ほんとにこうする以外の選択肢は無かったの?院生になっても申請が通らない訳じゃないだろうに」

嘉瀬大輝。聖エンガン大学、工学部建築学科、学部四年生──もとい今日より休学生。専攻は維持管理工学で、長期間放置された建造物──端的にいうところの廃墟──の建築材料の劣化傾向に関する研究を行っている。ただし、それは世間一般の学部四年生が行う"卒業の為に言われるままにやる研究"ではなく、むしろ趣味ないしは私事の延長線上にあった。

「手持ちの時間は長ければ長いだけいい、タダで1年も時間が手に入るなら履歴書に多少傷がつく事ぐらい気にしないさ。それにもとより一浪してる身なんだから、一年ばかしの休学ぐらい誤差だろ」
「はぁ、お前って一番人殺しになっちゃダメなタイプだろうね」

嘉瀬は廃墟探索を何にも代えがたい趣味としていた。暇さえあれば全国各地の廃墟へ赴いており、最低賃金である時給745円で稼いだバイト代は全て交通費に溶けている有様。そうして生活が立ち行かなくなり藁にも縋る勢いで始めた廃墟探索ブログが大ウケし、その広告収入でなんとか電気水道は一度も止められずに済んでいた。

世の廃墟のうちの半数ほどは、彼にとって不都合なことに管理会社の手によって保守されている。故に少年時代の嘉瀬はそれらの多くに立ち入ることは出来ずに──或いは侵入して大目玉を食らって──いたが、大学生となり"研究"というそれらに立ち入る大義名分を得た彼は、正式に研究室名義で管理会社と交渉する事が出来るようになっていた。

しかし、世の中どこにでもやたら目敏い人間というのがいるもので、嘉瀬のそんな私利私欲を見抜いたかのように頑として許可を下ろさない管理会社もあった。その一つが"オオハシメンテナンスサービス"であり、愛知県や岐阜県のとりわけ損傷が激しい廃墟の管理を政府からの下請けという形で行っていた。それが官民連携関連の制度改正に伴って軋轢が生じたのか、今年の五月にあえなく契約解消となった。彼らの管理していた廃墟と土地は半年後にも、形ばかり国が所有する──しかしろくな手入れもされる見込みがない極めてグレーな──物件群と化す見通しだ。

そして国への許可取りは極めてザルで、廃墟への立ち入りはおろか、試料採集も大抵のケースで認められる。事実、おかげでピーチライナーの高架にはほうぼうの大学のコンクリ研によってポコジャカと穴が空けられており、廃線4年目にしてハチの巣の有様だ。

つまり嘉瀬は、オオハシメンテが管理していた多くの廃墟をひとつ残らず巡るべく、その時間的猶予を確保するために休学したのだ。道理に従えば研究生制度を使うべきだが、貧乏学生にそんな金はない。かといってこうも思い切りがいいのは、廃墟探索が彼にとって単なるいち趣味に留まらないからだろう。

「これも"記憶の中の廃墟"を探すため?」
「当然だろ。今回の件でフリーになる廃墟は両手じゃ到底足りない数なんだ。望みは大いにある」

彼にはひとつの、朧気でいて決して忘れる事のない記憶がある。幼少の時分に不可思議な廃墟を奔走した記憶だ。

幼い彼は確かにその足でいずこかの廃墟に踏み入り、そこに広がる不確かな迷宮を彷徨った。それが極めて非現実的な体験であろうと、彼はそれを現実だと確信し今日までをその再訪の為に費やしていた。しかしその廃墟に辿り着くまでの、或いは訪れたのちの記憶は曖昧で、今に至るまでその手がかりすら掴めていない。それでも彼の執念は燃え尽きる事を知らず、今なおその所在を探し続けている。

「ふーん。それで私は、その両手じゃ数えきれない数の廃墟へ、毎度のように連れ回される事になるって認識でいいの?」
「デザートは何がいい?」
「……グルマンディーズのシフォン」
「希望ヶ丘か。今日の目的地と反対方向だがまあいい、そうしよう」

両者間で略式的な交渉が成立する。嘉瀬が佐々本を連れて廃墟を訪れるのは常態化していたが、そうなったきっかけを嘉瀬はよく憶えていない。気付けばそれが当たり前になっていて、今更疑問に思う事もなかった。

「で、今日はどこまで行くの?」
「茅野」
「えっと……どこ?」
「諏訪って言った方が解りやすいか?」
「あぁー……んー、ちょっとじゃなく嫌かも」
「蕎麦が美味いぞ」
「地味。他には?」
「片田舎だから例の如くパティスリやカフェは充実してる。老舗でいえば……丸安田中屋のチーズケーキアントルメとか」
「……三軒は寄って貰うからね」

時機を見計らったかのようにオムライスが運び込まれる。机に置いた反動で嘉瀬の皿のチリミートがごろりと雪崩れた。

拾得物


[2010/8/20 16:21 コインパーキング]

長野県、茅野市。諏訪市に隣接している以外の特徴に欠く辺境の地で、中部地区に住む理系高校生は滑り止めの中期受験に諏訪東京理科大という茅野市の大学を一度は勧められ、"諏訪でも東京でもないのかよ……"と困惑する形でその片田舎の存在を知る事になる。

「ん~っ、涼しい!暑くないって素晴らしい!」
「調子のいいやつめ……」

片道三時間のドライブを経て山中へと辿り着いた二人。嘉瀬が"1日1000円"と書かれた手書き看板に据え付けられた集金箱に千円札を差し込んでいる後ろで、佐々本は悠然と伸びをしている。嘉瀬が車を停めた"メルヘン街道"という大通りは、無駄に大きなコインランドリーやリサイクルステーション、あるいは民家などが点々と建つだけの極めて殺風景な坂道だった。

「それでそれで?目的地はどのあたりよ。見渡す限りじゃ廃墟らしい廃墟はなさそうだけど」
「ああ、このエリアは曲がりなりにも人が生活している。まあ駅前まで下山しなきゃマックの一つも無いし、コンビニはさっき通り過ぎたローソンが最後だけどな。目的地はあっちだ」

嘉瀬は側道の方を指さす。ぽつぽつと建った民家の向こうに、三基の鳥居が縦に並ぶこぢんまりとしたもりが形成されているのが見えた。

「えーと、神社?」
「白山神社。同名の有名な神社が新潟にあるが、そっちとは全く無関係などこにでもあるちっこい神社だ。記録上で神主が不在になったのが丁度四半世紀前、俺たちが生れた頃には既に廃墟だった事を考えれば候補地として妥当だろう」
「私はそもそもこんな場所までお前が来たと仮定するのが妥当じゃないと思うけど?」

まあそう言うなと付け加えた嘉瀬が先んじて歩み出すのを、佐々本が追いかけていく。いざ近付いてみると鳥居の佇まいからその年季をより強く感じられる。参道もさして長いものではなく、まもなく本殿が二人を出迎えた。手水舎も社務所もないその境内は石畳の上で枯葉が腐敗し堆積していた。手入れはおろか、そもそも参拝客すら殆どないものと見える。

「うーわ、ぼろっちぃ。お前がよく語るような大迷宮があるとは思えないぐらいちんまいし。こっちは何さ、舞殿?」
「だろうな。雨戸が閉まったままだから、何が何だかわからんが」

嘉瀬は何の躊躇いもなく舞殿に上がり、酷く傷んだ戸板を器用に外して見せる。腐食で建て付けが悪く耐久力も落ちているであろうそれを巧みに撤去する手際から、こうした行いはこれが初めてではない事が見て取れた。

「どう?中には何かある?」
「いいや、何も無いな。それに床板が完全にダメになってるし、踏み入ったらそのまま床板に穴があくだろう。現に、舞台の真ん中に穴がひとつ……ちょっと待て、穴の中に何かあるな」

舞殿の床に空いた直径1mほどの穴。僅かに差し込む日の光をちらりと反射する何かがその穴の中に落ちていた。

「佐々本、ちょっと取って来てくれないか」
「えぇー、私?」
「頼む。俺の体重じゃ恐らく床が持たない」
「ん~、そう言われると断れないなぁ!」

嘉瀬の遠回しな世辞を素直に受け取った佐々本は、軽い足取りで床板を軋ませていく。そうして穴に辿り着いてはしゃがみ込み……穴の中のそれを持ち上げようとしたところでめきめきと穴を広げて落ちてしまった。膝から下を床に埋めた佐々本が全くの無言で恨めしそうな視線を嘉瀬へ向ける。嘉瀬はそれを見なかったことにして、開き直ったようにばきばきと床板を踏みぬきながら佐々本の後を追った。

「で、外まで持ってこれたはいいけど。何この……装置?いや容器?」
「ワシントン・エアメータっぽい形と重さだが、細かいパーツはまるで別物だな。それと錆ひとつついてないのを見るに、後から持ち込まれたものなんだろうが……」

ガシャン。やや乱暴に置かれたソレは夏の日差しをぎらりと照り返す。

「あの床を壊さずにどうやってあんな場所に捨てられるの?投げ捨てたとでも?」
「投げ捨てる……試してみるか?」
「嫌だよ、壊れたらどうすんの」
「だよな。本当になんだこれ、型番もなければ貼ってあるロゴも全然見覚えがないし。こんな機械メーカーあったかな……」

概ね円筒形をした密閉型の容器を石畳に置き、それを挟むように二人はしゃがんで観察している。側面にでかでかと貼り付けられた盾に三ツ矢のロゴマークは、嘉瀬にとって全く馴染みのないものだった。

「それにこれ、錆びてる訳でもないのに全く開かないんだけど。鍵穴が有るわけでもなけばボルトで固定されてる訳でもないのに……溶着?」
「仮にそうだとすればみだりな開封をさせない想定なんだろうが……ん?普通に開いたぞ?」

佐々本が力任せに引っ張ったり回転モーメントを加えたりしているのを嘉瀬は取り上げる。そうして数秒にらめっこしたのちに蓋に手を掛けると、蓋は至ってすんなりと回転した。そうして10回転程したのちに蓋は本体から完全に分離した。

「そんな馬鹿な……どんな手品を使ったの?」
「手品師になった覚えはないな、よくてペテン師だ」
「ああ、廃墟の立入許可を取る交渉は欺瞞だらけだもんね。それで、中身は……うわ、梱包材だらけだ。アマゾンで買った荷物みたい」
「お前、ネトショなんかするのか」
「あれは便利だよ、向こう10年で絶対に生活必需コンテンツになるね」

未知の物体と相対しているとはとても思えない緊張感の無さで発泡スチロールやプラの梱包材を取り除いていったのち、最後に残った小さな物体を取り上げる。

「これは……USBメモリだな」
「だね、言っちゃ悪いけど何の変哲もないというか。パソコン持ってる?」
「帰らないと無いな……いや待て、流石に拾ったUSBをおいそれと自分のPCには差したくないぞ。研究室の使ってないラップトップを拝借するかな」

嘉瀬は拾得物に過ぎないそれを当然のように持って帰る心積もりをしている。容器に蓋を乗せ直し、両腕で抱えるように持ちあげる。

「ああ、君の研究室ってOBが置いてったノーパソが沢山放置してあったね。アップデートとか全くしてなさそう」
「確かにボロいがまあ、win7が入らない程じゃあないだろう。そうと決まれば帰るぞ」
「待てい!カフェ!ケーキ!蕎麦!忘れたとは言わせないよ!」
「わかったわかった……って、蕎麦も結局食うのかよ……」

往路の長さに反して調査は余りにもあっさりと終わってしまった。そもそも神社の敷地がそう広くなかったというのもあるが、それ以上に嘉瀬の関心はそのUSBへと移り変わっており、形ばかりの調査報告書のための写真撮影も忘れて車に乗り込んでいった。

カノニカライザー、あるいは悪質なジャンプスケア


[2010/8/21 9:47 南五号館4階]

「で、大学の備品を復旧不能な状態にしたと」
「まあ、もとより使う予定のない機材ですから」
「一言目が言い訳なのは本当に君の悪い癖だよ、嘉瀬君」

おめおめと言い逃れに走った嘉瀬に呆れ顔を隠さない初老の男は土居下どいした 辰巳、ヨーゼフ・カール・シュティーラー画のベートーヴェンを彷彿とさせる鬱陶しい髪型のその男こそ嘉瀬が所属する土居下維管研──正式名称"土居下マテリアルメンテナンス&マネジメント研究所"──の主であり、特に使用許可を出した覚えのない第五世代のレッツノートをダメにされた被害者でもある。

「並のブラクラなら対応できるよう、情報学科の知り合いを立ち会わせたんですが……その知人には"こんなのプロでも対処できるかよ"と匙を投げられてしまったんです。つまり事故ですよ、事故」
「……はぁ、君の素直な謝罪さえ聞ければ4年前のノートPCのひとつやふたつで咎めないんだがね。まあいい、これ以上ウチのものをダメにしないでくれよ」

嘉瀬は昨晩名古屋に到着してからまず、長い帰路でお疲れモードになってしまっていた佐々本を家まで送り届け、それから深夜に無人の研究室からラップトップを拝借した。そして知人を自宅に招いて350ml缶片手にそのラップトップに例のUSBメモリを差し込んだところ、あえなくラップトップを乗っ取られて今に至る。

「それで、乗っ取られたPCは今どこに?」
「自宅に置いたままです。良からぬアウトプットを流されても困るので、ネットから断絶した状態で放置してます」
「それは……是非とも学内に持ち込まないでくれ」
「とはいえ、ただ乗っ取られっぱなしで終わるのも癪に障るので、少しは抗ってみようと思います」
「まあ……休学中の学生に強いれる事は何も無いが、あまりそっちにのめり込み過ぎるなよ」

どうにも研究への意識が脱線しがちな嘉瀬に、土居下はもはや苦言を呈す他無かった。どうあれ、嘉瀬が思い通りにならないことはとうに諦めていた。

[2010/8/21 14:42 嘉瀬宅]

「このアイコンって……あの容器に描いてあったやつだよね?」
「そうだな。何のモチーフなんだろうなこれは」

薄暗い嘉瀬の自室で床に置いたレッツノートを囲う嘉瀬と佐々本。AVでも見てそうな空気感だが、実際彼らの体感としてはそれより良からぬものを見ている心持ちだろう。画面には盾に三ツ矢のロゴマークと、端的な文面が表示されているばかりだ。白黒の極めて無骨なデザインは下手な安っぽさがないぶん"それらしさ"が強まっている。

「"Canonicalizer has been successfully installed"……カノニカライズってどんな意味なの?」
「正規化。統計学の部門で使われる単語だが、カノニカライザーという用法は無いから造語だろう。そのままの意味ではなさそうだな。カノン……聖書正典?いや、それとも関わりがあるとは到底思えないシンプルなUIだ」

インストールが完了したという文言の下に[Start]というボタンが表記されているが、嘉瀬はそれに触れることなく一晩放置していた。下手に何か触ってこれ以上取り返しがつかなくなるのを懸念したのだろうが、見方によっては既に手遅れなのに今更踏ん切りが悪いともとれる。

「そこらへんはよくわかんないけど、とりあえず起動してみれば?」
「んなこと言われたってプログラムは全くの門外漢だし、知り合いはすっかり匙投げちまったし……あっ、おい!こら!」

嘉瀬が御託を並べている横で佐々本が、何の断りもなくボタンをクリックした。それを制止するのも間に合わないまま画面は暗転し、白いプログレスバーが淡々と100%に近付いていく。

「こういうのは思い切りが一番でしょ!」
「あーもう、知らねぇぞ俺は……」

画面が再び明転するといかにもブラクラらしい耳鳴りのような音とともに画質の荒い風景写真が数秒間示され、それから画面が切り替わる。二人してそれを首を傾げながら眺めていると、今度はびっしりと長文が表示される……

「う~わだっるい。解読よろしく~」
「日本語に解読もクソもあるかよ……ったく、お前絶対論文殆ど読んでないだろ」
「卒論の既往研究なんてコピペが華よ!」
「……」

呆れて物も言えない、そんな様子で大きなため息を吐いたのちに嘉瀬はその読みやすさへの配慮が何一つない長文を読み解き始める。佐々本に比べれば活字慣れしているが、とはいえそんな嘉瀬でも頭が痛くなってくるような文章と格闘すること小一時間。死闘の果てにやつれた顔で仰向けに寝転がる。それから改めて大きな長いため息を吐いた。

「お、読み終わった?」
「読み終わった……けど、なんだこれ。思っていたものと、かなり毛色が違うぞ」

嘉瀬は読み解いたものを噛み砕いて説明していく。

「まず、このUSBは本来の受け取り主が決まっていたらしいんだよ。だから色々と事情を知ってる前提で書かれていてかなり読みづらかった。それで……だ、こいつは、自称"別世界から来た文書"だ」
「……プッ。ふふ、ごめん、続けて……んんっ」
「はぁ……笑ってやるなよ、俺だって頭痛くなるのを何とか堪えて読み切ったんだ」

突拍子もないその説明に佐々本はポカンとした顔を浮かべたのち、じわじわとこみ上げた笑いで堪えきれずに噴き出した。

「曰く、世界には科学で説明できない存在が数多潜んでいて、それを隔離して人々の正常な生活を維持するのがこの手紙の送り主の使命だそうだ。いうなれば秘密結社だな。で、彼らはこの世界にも彼らと同様の組織を作って正常性の維持を行って欲しいらしい。ご丁寧にその手引きや異常な存在の実例まで添付してあった、かなりの情報量だぞ」
「ふぅーむ……まあ、つまり……」

にやにやと嫌らしい笑みを浮かべる佐々本に、嘉瀬はひとつ頷いてから溜息を零した。

「ああ、タチの悪い手の込んだ悪戯だ。これだけディティールに拘るなら、もう少し気を遣うべき箇所が他にあるのに気付いて欲しかったな……」
「さすがにPCひとつダメにされたら、笑えるジョークも笑えなくなるよねぇ……私は他人事だから笑っちゃったけど」

嘉瀬はノートを足蹴にしながら起き上がり、改めて自信満々にロゴマークを掲げているその画面と向き直る。当初の良からぬものと向き合っていた高揚感はどこへやら、残されたのはげんなりとした疲労感のみであった。

「それで?この人騒がせなUSBアートをお前はどうするの?」
「……せめて利用しなきゃ、腹の虫が収まらないわな」

当サイトは共同怪奇報告サイトです、まずはガイドをお読みください


[2010/10/6 1:31 カフェ・メルス 猪子石店]

聖エンガン大学の東門前の大通りを少し北上した辺りに位置する、コンセプトの曖昧な平成初期の残り香を存分に感じられる喫茶店。集合住宅の一階に構えるその店は大盛無料のランチ営業と深夜3時半までの夜間営業の二本柱で高い学生人気を誇っている。決して広くない店内の、その割に高い天井を活用するように真っ赤な鉄骨で組み上げられた後付けの二階席で嘉瀬と佐々本は密談に耽っていた。

「つまりお前はカノニカライザーの設定を丸パクリしたオカルトまとめサイトを作ったと」
「ああ。それが俺の想定の数倍はウケが良くて、随分な盛り上がりを見せている」

廃墟ブロガー"Lucas_Narumi"名義のそれなりに長い活動により、嘉瀬のインターネット上での知名度は"界隈では有名"程度の下地があった。しかしそれを差し引いても彼が立ち上げた都市伝説投稿wiki"SCarejumP"の急速な盛り上がりは異常であった。会員登録制のそのwikiではやけにリアルらしい都市伝説や怪奇現象の目撃情報・伝聞情報が集まっており、嘉瀬がこれといった特別な管理をしている訳でもないのに妙なクオリティコントロールが行き届いていた。

「はへ~、何が流行るか解んないもんだね。まああんなボロPCの供養には十分なったんじゃない?んで、なんでこんな場所にこんな時間に呼び出したのさ」
「……最近、つけられてる」
「つける?」

つける。汎用的な日本語発音のそれをどういう意味で脳内変換すればいいか、佐々本は直感的に捉えられず首を傾げる。

「ストーキングされてるってことだ」
「ああ、そのつける……え、この話の流れでそれを言うってことは、サイトを立ち上げてからストーキングされ始めたの?」

佐々本の問いに嘉瀬はひとつこくりと頷く。そこに割り込むように大きなマグカップのホットコーヒーがふたつ差し出された。

「9月の頭にはもうつけられていた。家の前に時折不審な車が停まっているのも見る。最初は気のせいだと思ったが、勘違いは一か月も続かないだろう」
「いやいやいや。ストーカーがガチだとして、なんでサイト立ち上げたのと結びつくのさ。ブロガーのころから個人情報はあらかた割れてたんでしょ?」
「そうだな、今になって新たに何か個人を割り出せる情報が公開された訳ではない」
「じゃあどうして……」
「俺に理由が解るわけがないだろう。だがまあ、予想は立てられる」

口元に手を当てながら、空想するように視線を宙に泳がせる。嘉瀬が口元を隠すのは精神的な余裕がない事の現れであることを佐々本はよく知っていた。だから茶化すことはしないが、それでも彼の発言に対し突飛であるという感想は抱いていた。

「一つ目、エン大の教員説。俺が学外で何か問題を起こさないか目を光らせている可能性だ」
「君が恨みを買いやすいのは知ってるけど、そこまでされる筋合いはないんじゃない?」
「だよな。じゃあ二つ目、ブロガー時代の俺の熱狂的なファン説。ブロガーとしてではなくサイト管理人として活動していることに解釈違いを起こしてストーキングに走った」
「うぬぼれも大概にしなよ。廃墟ブロガーなんて暇なオッサンしか見てないよ」
「無茶苦茶言うんじゃねぇよ。じゃあ……三つ目。最近のサイト上での流行りで良くない影響を受けた人間が居た説」
「流行りって?」
「サイトに投稿されるものの中には、場所系のオカルトも多い。実在する場所にそれっぽいストーリーを付随させる事でリアリティを担保している訳だ。で、その実際の場所に出向いてみようなんていうブームが起こってしまっているんだよ」
「あぁー、一般人がそういう場所に踏み入る時って……」
「十中八九、不法侵入だ。許可なんか一々取るはずがない」

嘉瀬は過去の自分を思い浮かべながらそう断言した。それに付き合わされてきた佐々本は苦い顔でその説明に大いに頷いた。

「じゃあ迷惑被る人が居るのはそうだろうし、多少飛躍してるけどその怒りの矛先が君に向かなくはないのもわかる。だけど今度は、ストーカーが現れだした時期と矛盾するんじゃない?」
「そうなんだよな……例のブームは先週あたりから始まったんだ、ストーカーが現れた時期よりずっと後だ。じゃあ最後、MIB説。この世界の闇に触れてしまった俺たちを口封じするために機を見計らってる……とか」
「あのさぁ、今は冗談をいう段階じゃあないだろうに」
「少しくらい許してくれ、多少ふざけないと頭がおかしくなりそうなんだよ」

次の原因を嘉瀬が挙げることは無かった。つまるところ決定的な原因は思いついていないのだろう。佐々本もその空気を察し取って溜息を零した。

「それで、まっとうな人間なら警察に相談すると思うんだけど……」
「サイト運営から離れろとか言われたらどうするんだ。さすがにアレを手放すのは癪だぞ。けっこう広告収入が美味いんだ」

嘉瀬の守銭奴的発想に佐々本は心の底から軽蔑したような視線を送る。それでも"この期に及んで"などという言葉をはぐっとこらえた。結局のところ、遍く学生は貧困にあえぐ定めなのだ。それを理解できない訳ではない。

「じゃあ、つまり……」
「現状維持しかできないな。お前にこの話をしたのは、俺に何かあった時に事情を知っている人間が居てほしいからだ。真に信頼できる奴などお前ぐらいしかいない」

嘉瀬の恥ずかしげのない直接的な物言いに、佐々本はたった今啜ったコーヒーを噎せ返らせた。嘉瀬の顔に揶揄いは見られないのが余計に恨めしかった。

「……まあいいよ、憶えといたげる」
「悪いな。何か軽食でも頼むか?」

ポテト、と端的に返す。親友の篤い信頼の前に夜食への畏れは余りに無力だった。

変死体


[2010/10/12 12:22 生協食堂]

エンガンの後期授業は10月第1週から始まる。故に生協食堂は10月前半になると夏休みに散財して洒落たカフェにも行けなくなった学生で年内一番の賑わいを見せるのがお決まりになっていた。その日も例外ではなく、資本主義の傀儡たちが一皿280円のカレーに行列を成している。それを横目に、彼ら以上の素寒貧の嘉瀬は家で作って持ってきたスパムおにぎりを手にテレビの傍の席で漫然とニュース番組を眺めていた。隣の佐々本はそれなりに倹約に励んだのか、570円の定食に追加で注文したアジフライを頬張っている。

『次のニュースです。昨晩22時頃、滋賀県高島市の雑木林で男性の変死体を近隣の住民が発見しました。死体の損傷は極めて激しく、警察は身元の特定を進めるとともに、殺人事件として──』
「死体、ヤバいらしいね」
「ヤバいって?」

嘉瀬が聞き返すと、佐々本はiPhone4を取り出して弄り始める。

「ぐっちゃぐちゃらしいよ。その無修正画像のリンクがTwitterに出回っちゃったみたいで大騒ぎ。元ツイートは削除されたけど、2ちゃんとかに行けば魚拓がゴロゴロと……あった。これこれ」
「ふざけんなお前こちとら飯中だぞ!」
「ま、冗談だけどね」

佐々本が差し出した画面には何も関係のない猫の画像が映っていた。嘉瀬は安堵の溜息をもらす。

「私だって見たかないよ、だって頭がトータル・リコールのアレみたいに何分割もされてたって言うし……」

佐々本が両手で自身の顔を左右に引っ張るようなジェスチャーをする。それを聞いた嘉瀬はふいに黙り込むと、自身のメッセンジャーバッグからレッツノートを取り出した。カノニカライザーをインストールしたそれだ。

「ちょっ、お前それ学校に持って来るなって教授に言われたんじゃ」
「……なあ佐々本、この画像を見てどう思う?」

今度は嘉瀬が佐々本に画面を見せる。そこには頭部をバラバラに分解された死体の写真が映っていた。なけなしのモザイクは一応かかっているが、それにしたって先ほどの抗議をした人間の行いではない。案の定佐々本は極めて険しい表情を見せ、嘉瀬の肩を二回ほど平手で叩いた。嘉瀬はそれを物ともせず、レッツノートを持つ手をミリほどもブレさせない。

「お前……お前さあっ!」
「これはカノニカライザーに入ってた報告書のひとつだ。曰くこれは被害者の画像らしい。そして、この死体を作ってるというのがこいつだ」

その報告書のトップに戻ると、また別の画像が乗せられていた。そこには蓋のない立方体の箱を脇に抱えたスーツ姿の首無し紳士が映っている。

「はぁ……えっと、だからつまり。その報告書の死体と今回の事件の死体が同じような死体だってこと?」
「かもしれない、という話だ。今回の死体の画像を見れば一発だが……あった、これだな」
「ああもう見せなくていい見せなくていい、結果だけ教えて」
「そっくりだよ、瓜二つだ。割れ方は真っ二つどころじゃないけどな」
「ふむ……でもどうして?その報告書を知ってるのはお前だけなんでしょ?」
「そうだ。この情報はまとめサイトに公開していない。まとめサイトにはあくまでも設定を流用しただけで、元あった報告書を移植するようなことはしていない」

それを確認するようにwikiを開き、自身が作成したページの一覧を確認する。やはり自分でこの情報を公開した形跡は無かった。そもそも、彼自身はwikiにオカルトを投稿してはいない。

「いや待て、このUSBを作った奴がこの世に一人は存在する。そいつは内容を知ってる筈だろう」
「うーん。いや、そもそも。その情報を知っていたとて、そっくりの死体が発見されることと話が直結するとは思えないよ。お前のストーカーがアガサ・クリスティだったら話が変わってくるけど」
「そうなんだよな、訳が分からん。しかし偶然であるはずは……」

片手でwikiを、片手で報告書を漁りながら、何か手掛かりになる情報はないかと探りを入れていく。

そして、wikiのとある投稿に行き着いた。

「……"林を徘徊する首無し男"、という投稿をしている奴がいる」
「え、それって……」

投稿ページに添付された画像を佐々本に向ける。画質が荒く明度も低いが、そこに映っているのは確かに黒服を着た首無しの男だった。

「報告があった場所は滋賀県高島市、つまり事件があった場所だ。それに、コメント欄にここへ訪れようとしている旨のコメントまである」
「……あのさ、嘉瀬。私、すっごい嫌な想像をしちゃったんだけど」
「おそらく、俺も同じことを考えているだろうが……言ってみろ」

彼らは今日に至るまで、彼ら、こと嘉瀬に何らかの悪意を持った人間が居る事は想像ないしは覚悟していた。それを悟らしめうる程に違和感は積み重なっていた。しかし、それでも"ありえない"という共通認識の下で引いていた一線を、踏み越えねばならない局面に到達していた。

「もしかしたら、ほんのわずかな可能性だとしても……オカルトは、実在するのかもしれない」

それを言葉にしてしまえば、彼らの脳裏に今まで見ないふりをしてきた疑問が一気に湧いてくる。あんな死体を人間の手で作れる筈がないだとか、たかが個人が作ったサイトがこうも急速に発達するはずがないだとか。数えきれない違和感を、全て"異常な何かが存在する前提"のもとで整理すると驚くほどにしっくりきていた。

「俺たちが拾ったのは──それが別世界からのものじゃないにしろ──本当に異常な何かを取り扱う組織が送り出したもので、俺たちがフェイクだと思っていた報告書が──全部じゃないにしたって──真に存在するものについて語っていたのだとしたら……」
「……私たち、何か取り返しのつかない所まで来ちゃったんじゃない?」

佐々本の極めて不安そうな声に、嘉瀬はただ口元を隠して黙るばかりだった。

管理


[2010/10/8 8:34 南五号館4階]

「君がそれなりにテンパってたのも解るし、こうして私を頼ってくれた事も評価したい。だが……それを差し引いても、ああやって情報を公開して意見を求めたのは賢くない判断だったと言わざるを得ないかな」
「全部、見ていたんですね」
「当然だ、ルーカス名義の頃からずっと監視していたとも」

無意識に日に日に研究室を訪れる時刻が早くなっていた嘉瀬は、その日ついに土居下教授より先に研究室を訪れてしまった。そうしてwikiの動向を注視するのに神経を注いでいた所へ、スターバックスの紙袋を手にした教授がやってきた所だ。中にはブレンドが二杯入っており、ひとつは嘉瀬に差し出された。

「それじゃあ、相談の内容もあらかた察して頂ける……んですかね」
「ああ。サイトでのあのムーブメントのことだろう」

嘉瀬は自身が巻き込まれた事件の情報を自分だけが抱え込んでいる重圧に負け、件の報告書を含めたカノニカライザー内の幾らかの情報をwikiに放流してしまった。その情報は半信半疑といった風体で伝播していき、うち一握りの人間に関しては異常の存在を嘉瀬以上に確信していた。そうした面々が今回の事件の犠牲者を自身らの責任ととらえ、自分たちで異世界にあるという組織のように異常な存在を隔離して行こうという自治的ムーブメントが発生したのが昨日のことだ。

「はい。今はまだ一部の人間が騒いでいるに過ぎませんが、そのうち制御不能に陥りそうで……」
「君のサイトに限らず、世間にも例の変死事件に対して科学的に不可解な点を疑問に思う者たちが増えてきた。不安に起因する人々の流行は雪だるま式に増長する。対処するなら今だろうね」
「その対処の方法が解らないから聞きに来たんですよ」

嘉瀬には明確な焦りがあった。仮に異常な存在が本当に蔓延っているとして、それを素人が管理しようとすれば徒に犠牲者が増えるばかりだろうという畏れがそれを加速させていた。

「なに、至ってシンプルな話だ。勢いを抑えられないならその先頭に立てばいい。今まで通り彼らを先導し、コントロールしろ。君はwikiの運営者ではなく自治集団の管理者になるんだ」
「……とても、学生を導く立場の人間の指示とは思えませんが」
「休学中の君に言ってやれる事などないさ。今私は君という迷える一人間にアドバイスをしているのだよ」

教授としての土居下は至ってドライだった。散々好き放題に振舞ってきた嘉瀬に、いまさら学生面をさせる気など更々ないようだ。

「……はあ、わかりましたよ。俺が蒔いた種ですからね……」
「よろしい。ともすれば、君がまず率先してオカルトの管理を行う規範となる必要があるだろう」

開かずの扉


[2010/10/8 14:21 愛知県豊田市某所]

背負ったリュックをおろし、ガチャガチャと重い金属音を立てながら漁る。あらゆるパターンを想定して持ってきた調査器具をかき分けて、奥底に眠っていたスマホを取り出す。

「で、異常が関わっていそうだけどそこまで危険にも見えないオカルトの調査に乗り出したと」
「ああ、似たような異常建築の報告書が見つかったからここにした。まあ結局のところ、やることはいつも通りの廃墟探索だ」
「そうなってくれるのを祈るよ……」

絵に描いたようなガタガタの舗装の、街灯のない山道を淡々と進んでいった先にその廃墟はあった。打ちっぱなしのコンクリが露出した半円柱形のその施設は、山中の気候で風化が進み、踏み入っただけで崩れ落ちそうな風格がある。"開かずの扉"、記事によればその廃墟には決して開かず、壊すことも出来ない扉があるという、極めてシンプルな怪現象だ。そのシンプルさに見合わない程に大きな施設であることが不気味さを増長させている。

「そもそも、お前が調査に乗り出したぐらいでサイトの連中はお前に付き従ってくれるの?」
「それはまあ、問題はないと思う。なんだか知らんが、ネット上の俺は人望だけはあるらしい」
「自慢にはならないねぇ~、それは」

半円の原点に位置する場所に設けられた正面入り口の、ペンキの剥がれた木製のドアノブをグローブを着けた手で押し開く。鍵は掛かっていないし、いたとて蹴り破れるほどに蝶番はボロボロだ。扉の先では手狭なエントランスホールから、三方向に廊下が伸びている。空気は乾いて冷えており、音がよく反響する。

「タイルは完全に浮き剥がれてるな、放置されてかなり経っていそうだ」
「それで、管理の規範になると言ったって具体的に何をするのさ」
「それこそいつもと変わらない。好きに調査してからあたかも安全に配慮して細心の注意を払ったかのように脚色し、"安全な調査"の雛形にする」
「はぁ、お前が今日まで犯罪者じゃなくて良かったと、私は重ね重ね思うよ……ん?」

投稿を再確認し、件の扉がどこにあるのか調べるためにエントランスで立ち止まっていた時の事。遠くの方から、バキッと何かを破壊したような音が聞こえてきた。

「あのさ、嘉瀬。確認なんだけど」
「おう」
「開かない扉があるだけ、なんだよね?」
「そうだな」
「じゃあ、どうして明らかに何かがこっちへ向かってくる足音が聞こえるのさ!」
「騒ぐな。静かに立ち去るぞ」

ドタドタと床板を叩きながら駆け抜ける音が建物いっぱいに反響する。明らかな非常事態に声を荒らげる佐々本を嘉瀬は静かに窘めた。彼が真に冷静だったのか、正常性バイアスに起因していたのかは定かではないが──どのみち、背後で勢いよくひとりでに閉じたきり開かなくなった扉を見ればその冷静さをかなぐり捨てる羽目になった。

「ああクソッ!お決まりが過ぎるぞ」
「なにこれ、ぜんっぜん壊れないんだけど!」

佐々本がその扉を足蹴にするも、びくともしない。振動音すらなかった。退路を絶たれた二人に足音は着実に近付いている。

「……とにかく逃げるぞ」
「逃げるったってどこに!」
「音のしない方にだよ!」

音の主は正面の廊下から近付いてきている。音が大きくなるにつれその確信が持てた二人は、急場しのぎに左の廊下へと駆け込んでいく。

「なんでそのクソ重そうな荷物大事そうに背負いながら走ってんの、捨てなよ!」
「役立つかもしれんだろ!いいから黙って走れ!」

いがみ合いながら走る二人、上へ続く階段を見つけるとほんの少し立ち止まって悩んだのち、それを登っていく。今にも底が抜けそうな程に腐敗したブリキの階段を駆け上がっていると、佐々本がちらと確認した背後には追っ手が視認できる距離まで迫っていた。

それは概ね人の形をしているが、皮膚はヒビが入るほどにガサガサで、手足は肥大化していた。目や鼻に該当する器官は変質した皮膚に塞がれているようだ。

「来てる来てる!なにあのキモイの!?」
「俺に聞くなよ……このっ!」

嘉瀬は階段を登りきると振り返り、リュックからハンマードリルを取り出した。躊躇いなくそれを起動すると、たった今登ってきた階段に突き刺す。

「何してんの!?もう登ってきてるじゃん!」
「ほんとはコンクリ用なんだがな、背に腹は代えられん!」

ハンマードリルはバキバキと破壊音を立てながら階段の接合部を乱雑に粉砕していく。そうして一文字の亀裂を描ききった頃合いで追っ手の怪物はすぐそこまでやって来て……そのまま怪物の荷重に耐えかねた階段と共に階下へ落下していった。

「ほら、走るぞ!」
「ああもう、勘弁してよ……!」

怪物は階下から飛び跳ねて二人に辿り着こうとするが、生憎と飛距離はまるで足りていない。それに加えて、怪物が飛び跳ねるたびに、その体から乾燥した皮膚がバリバリと剥がれ落ちていた。ともかくこの場だけは凌げた二人はそのまま間取りもわからぬ施設を奥へ奥へ走り抜けていく。

「はぁっ、はぁ、ちょっと、休憩……」
「同感だ……一応、追いかけてくる音はしなくなったからな」

身体的な疲弊もそうだが、二人には状況の整理に使う時間も必要だった。適当な部屋に転がり込み、ダメもとで外向きの窓枠を揺らそうとして、肩を落としながら錆びて閉じなくなったパイプ椅子に腰を下ろす。

「どうしてこんな目に……」
「少なくとも投稿にはこんな事は書いてなかった。何なら投稿者はここを訪れた事があるかのような物言いだったしな。それで、大事なのは今何が起こってるかだが……」
「怪物が闊歩してる、絶対に壊れない檻に閉じ込められた。って感じだね。勘弁してよ……」
「なぜそうなったのか、原因を辿るより、もう少し直接的な解決法はありそうだ」
「……というと?」

嘉瀬は立ち上がり、窓際の壁に走る大きな亀裂に指を突っ込む。その指は何かに阻まれることなく壁の向こうにその先端をまろび出させた。

「あくまでも、壊れないだけ。見えない壁が有るわけじゃない。なら人ひとり通れるくらい大きく破損した壁を探して、そこから逃げ出す方が現実的だろう。それに、外壁以外なら破壊できることもさっき判っただろ?なら鬼ごっこになっても多少は上手く立ち回るチャンスがある」
「都合よく壁が壊れてたらいいけど……まあ、それに賭けるのは賛成だよ。少なくともここでずっと助けを待つより賢明だ」

そうと決まれば長々と休憩するべきでもないと考えたのか、佐々本も腹を決めて立ち上がる。

「だが……一応、件の部屋には行ってみてもいいかもしれないな」

[2010/10/8 14:33 2F 中央廊下]

1-2階を繋ぐ階段に、褐変した有機物が擦り付けられている。それは点々と一本の道筋を描いていたが、廊下に伸びるそれを追っていくととある部屋の前で途切れていた。

「これが、例の開かずの扉?」
「ああ。開かないどころかぶっ壊れてるが」
「だね……なんか、この部屋だけ異様に真新しいような」

部屋の内側から突き破るようにして破壊されたその真新しい扉の向こうは、他と変わらない無骨なコンクリート造であるものの、腐食も風化もしていない空間だった。数年前に建てられたばかりだと言われても疑わないだろう。

嘉瀬は室内の壁をまじまじと見つめたのち、先程も使用したハンマードリルを取り出した。そのままガリガリと壁を傷つけていく。そうして乱雑にコンクリート片を切り出した。

「何やってんの?あんまり音出さないで欲しいんだけど」
「サンプリングだ。さすがにコア採取用の機材は持ってきてないから雑に壊すほか無かったんだよ」
「いやそうじゃなくて、なんで今それをやって……」

嘉瀬は佐々本の疑問をスルーしながらリュックから霧吹きを取り出す。それをコンクリート片に満遍なく噴霧した。

「これを見てみろ。今、PP液を吹き付けてみたんだが……」
「えっと……殆ど色が変わってないね。つまり風化が全然進んでないってことだよね?」
「ああ。建物全体がこれだけ劣化してるのに、この部屋だけ全く風化が起こらないなんてのは考えられない」
「じゃあ、この部屋だけ建て直されたとか……」
「さっき部屋の外から確認したが、打ち直し跡コールドジョイントは生じてなかった。仮に建て直したんだとしたら、よっぽど好条件が揃ってたんだろうな。じゃあその反証に……あそこ。ひび割れて盛り上がってる所があるだろ?」

嘉瀬の指さす先には、真新しい床面に不自然に盛り上がったヒビ割れがあった。嘉瀬はそのヒビ割れのある箇所を、同じくハンマードリルで掘り返していく。そうしてその床の中から金属片のようなものを取り出した。

「これは……空き缶?」
「そうだ。スチール缶が原因で急速に中性化が進んだ結果、鉄筋が部分的に腐食膨張したんだろう。昔の作業員は平気で吸殻や空き缶を埋めて捨てるような事をしてたんだ。今じゃ有り得ない話だし……なにより、俺はこんな古臭いパッケージの缶コーヒーを自販機で見た事がない。解るか?この部屋は"昔建てられた新しい部屋"なんだよ」
「……ええと、つまり……この世界は時が止まってたってこと?」
「時が止まっていた、か。確かにそう考えるとしっくりくる」
「しっくりこられても困るんだけど……いや、いまさら非科学的だからどうこうとは論じるべきじゃないかな。それで、時が止まってたとしてどうする?」

嘉瀬はしばし沈黙する。時が止まっていた部屋、ボロボロの怪物。嘉瀬には、思い当たる節がひとつあった。

「……クロックタワー」
「ん?」
「クロックタワーという古いゲームがある。知ってるか?」
「いや、知らないけど……」
「まさにそれだと思うんだ」
「いやだから、知らないってば」

嘉瀬はもう一度部屋の外に出る。有機物に顔を近づけ、それが肉片であることを再確認した。

「奴の体は崩れつつあった、廊下のこれも奴の体の一部だろう。恐らく……あの怪物はそう長くない。その延命のためにこの部屋は存在したんだろう」
「えーっと、そうだとして。じゃあどうしてこの部屋は今になって開いたの?」
「それは……わからない。だが、とにかく。奴との鬼ごっこには終わりがあるかもしれない」

少なくとも、嘉瀬はそれを"希望がある"というモチベーションを生むためにプレゼンした。しかし佐々本の反応は至って冷ややかだった。

「で、いつまで逃げればいいかも判らないのに逃げ切れると思う?」
「…………いや、全然」

そんな二人の会話を聞いていたかのように、再び怪物の足音が聞こえてきた。それは最初の勇猛な足音から、だんだんと地を這い体を引き摺るような足音に移り変わっていた。

「私はむしろ、逃げ切るより……あれに立ち向かった方がいいと思う。あんなに弱ってるんだから、お前が持ってるその道具で何とか──」
「ダメだ、最後っ屁で爆発でもしたらどうする」
「でも……!」
「俺たちならもっと賢くやれるさ」

嘉瀬は廊下の中央に立ち、足元の床板にハンマードリルを打ち込んでいく。その刃先は旧基準の薄い床板をあっという間に貫通してしまった。

「古くなったコンクリにどういう傷を入れたらどう壊れるかなんてのは俺が一番よく知ってる。いや、それは言い過ぎかもしれないが──」

しばしそうして床と向き合ったのち、怪物の足音が迫ってきた頃合いで佐々本の腕を掴んで音から逃れる方向に引き寄せる。そこへ満を持して怪物がやって来て──

「──少なくとも、こいつを出し抜く程度の蓄積はあんだよ」

パキッ。乾いた破壊と共に、怪物の体が床下へと真っ直ぐと落ちていく。ただし、ただ一階へ落とすわけではなく──

「うわ、よくもまあここまで綺麗に嵌めたね」

怪物はその上半身だけを二階に残し、下半身を一階に晒した状態で宙づりになってしまった。直接的に仕留める事が出来なくとも、こうして身動きを封じる事は出来るだろうと考えた作戦が上手く型にはまった形だ。怪物のことをよく見てみれば、少し萎んだ気がしないでもない。

「まあコンクリートそのものの自壊を完全に制御するのは難しいが、鉄筋は別だ。最終的に目指す穴の大きさに鉄筋を絶ってやれば、コンクリートは概ねそれに付随した形に壊れてくれる」
「なるほどねぇ。なんだかんだちゃんと勉強はしてるんだ、お前」
「失礼にも程があるだろ……まあいい、後は脱出口を探すだけ──」
「その必要はない」
「……!?」

突如として二人の背後から聞こえてくる見知らぬ声。二人がほぼ同時に振り返ると、そこには嘉瀬を上回る体格の大男が立ち塞がっていた。SATを彷彿とさせる装備を身にまとっているが、こちらに銃を向けてはいない。

「初めまして。二人とも、悪いが自己紹介は後にしてついてきてくれ。アレは俺の仲間が後で回収するから、今は俺が君たちを外へ送り届けよう」

邂逅


「開かない扉を開けたり、壊れないものを壊したりするのは俺たちの本分じゃあないんだが、出来ない訳じゃないんだよなこれが」

そう悠然と語る大男、名前は城西じょうさい 浄心じょうしんという彼は不自然に綺麗な断面で切断されたエントランスの扉を前にして自慢げに胸を張る。

「助けてもらってありがとうございます、だけど……」
「俺をずっと監視していたのはお前か?」
「ちょっ、嘉瀬……!」

嘉瀬は建物から出るや否や突っかかるような態度で歯に衣着せぬ物言いをする。佐々本は慌ててそれを窘めるが、城西は気前よく笑って受け流した。

「その通りだから否定のしようがないな。だが……お前を監視していたのは何も俺たちだけじゃあないんだぜ」

城西が一枚の写真を嘉瀬に見せる。そこに映るのは黒いセダン、嘉瀬はそれに見覚えがあった。

「この車の持ち主は中川という半グレの男だ。ただし、半グレという擦れた肩書きは表向きのもので、実際にはこの世界におけるGoI……あー、なんだ、異常な存在を扱う組織の人間だったんだよ」
「この世界……そういう物言いをするってことは、つまり」
「ああ、説明が前後して悪いな。俺は世界番号AA-9430の"財団"より派遣された機動部隊Ιイオタ-06"Dawnbringer"の第一班長をやっている。お前が拾ったカノニカライザーをこの世界へ"誤配送"したのは俺たちだ」

迎えに来たジープに揺られながら、嘉瀬は城西のややまとまりの悪い説明を居心地が悪そうに聞き届ける。片手で膝の上のリュックを頑なに抱え、もう片方の手は思案する仕草のように口元を覆っている様からも彼の警戒心が窺える。

「つまり、本当なら別の世界へ送られる筈だったそれをこの世界に飛ばしちゃって、それを回収しに来たけど偶然嘉瀬が拾った後で──」
「俺が下手にSCarejumPなんてサイトをおったててしまったもんだからただ回収して終わりともいかなくなり、あれよあれよのうちに死人はでるわネットに自治マンは湧くわで収拾がつかなくなったと」
「もう少しお前に辿り着くのが早ければ良かったんだがな。俺たちがお前の居場所を掴めたのは、生協の食堂でお前がカノニカライザーを取り出したあのタイミングだった」
「あそこに持ち込んでなかったら今頃施設に閉じ込められっぱなしだったかもしれないと」
「そうだ。運がよかったな、お前ら」

しれっと言い放つ城西に、嘉瀬と佐々本はそろって側頭部を抑えて溜息をつく。城西はそれを見て愉快そうに"仲が良いな"と笑う。

「お前にお粗末な尾行を働いていた連中はこっちで処理した。ひとまずの脅威は去ったものとみていいが、断言しよう。お前は再び似たような危機に見舞われる事になる。一度足を突っ込んでしまった以上、今更手を引いたところでそれは覆らないし──悪いが、手を引かせてやるつもりもない」
「……どういう意味だ?」

城西の含蓄のある物言いに嘉瀬がすかさず食いつく。城西はその合いの手を待ってましたと言わんばかりにひとつこくりと頷いた。

「嘉瀬大輝。お前には、この世界におけるカノニカライズの責任者になってもらう」
「……はぁ?」

自信満々な宣告に対し、嘉瀬の反応は極めて煮え切らないものだった。佐々本もその采配の真意が掴めないといったふうに首をかしげる。

「お前はあのwikiで曲がりなりにもリーダーを務め、こうして自らの足で調査に踏み出す行動力も見せてくれた。俺に言われて嬉しいものかは判らんが、お前には十分なカリスマがあるんだよ」
「よく言えたもんだな、そんなに俺の事を調べ上げたのか?」
「いいや……でもな──」

城西は胸ポケットから手帳を取り出し、中に挟んだ一枚の写真を見せる。

「──俺は、お前によく似た奴を知ってるんだ。お前ほどヒョロくはないがな」

写真に映っているのは愛想に欠けた目つきの高身長の──しかしその胸には盾に三ツ矢のマークを掲げた男だった。しかし細部を観察すれば、中途半端に伸びたまま放置された髭や、一回り大きな胴回りが写真を突きつけられた彼と別人である事を物語っていた。

「これは、俺……ではない、よな?」
「彼は嘉瀬部隊長。俺たちのリーダーであり──お前を指名した張本人だ」

城西の突きつけた写真に、二人は揃って言葉を失う。ジープの排気音と砂利を蹴飛ばす音だけが、ばつが悪そうに淡々と連続していた。

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