小渕博士のSCP-████-JP研究日誌 (2)

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[201█/2/13]

「それでは、インタビューを開始します。落ち着いた態度を心がけて回答してください、SCP-████-JP。」

窓から直射日光が差し込みだす午後2時、やけに質素になった小渕博士のオフィスで1人と1匹が対峙する。

『わかった ぇんしょする』

人工音声が間抜けな噛み方をする。丸1日教え込んだ甲斐あってストレスなく会話できる程度の入力速度には仕上げたが、まだまだ練習が必要そうだ。

[この情報は暫定的なものです。この情報を更新する権限は小渕博士、██博士、███博士が保有しています。]
最終更新日時: 201█/2/12

アイテム番号: SCP-████-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-████-JPは現在、その異常性から収容がなされていません。SCP-████-JPは主に小渕博士のオフィスにいますが、まれにサイト81██内を徘徊するためSCP-████-JPを発見した職員はSCP-████-JPがサイト内の備品を破壊しないよう細心の注意を払ってください。SCP-████-JPの行動範囲を狭めるため、SCP-████-JP用のトイレ及び給餌器はセキュリティクリアランスレベル0エリアの警備員室横に設置し、小渕博士のオフィスに移動されました。朝と夜の2回通常のネコ科用飼料を与えてください。また、破損したSCP-████-JP-2は全て低脅威度物品ロッカーに保管して下さい。
ここはメモ用紙ではありません、削除させて頂きました。 - 小渕博士

説明: SCP-████-JPおよそ5歳前後と推測されるマーゲイ1とイエネコの交雑種のメスです。SCP-████-JPは落下などの物理的衝撃への耐性と他の個体に比べ非常に高い知性を持っています。SCP-████-JPは収容に対し非協力的であるものの、財団職員に対し非敵対的です。しかし、後述の飛行欲求からとる行動によりサイト内の備品を破壊した事案が複数件報告されている他、サイト内で頻発している書類やクリアファイル、ハンガー等の多種多様な備品の紛失事件にも関与していると推測されます。

SCP-████-JPは物質に対し何らかの干渉能力を有していると推測されます。SCP-████-JPが障害物や職員の体をすり抜ける現象が何度も目撃されています。また、SCP-████-JPは不可視の実体を出現及び消失、操作することができます。この不可視の実体をSCP-████-JP-1と呼称します。SCP-████-JP-1を粘土で型取りしたところ、これが10代の人間の両手の手首から上に非常に似た形状をとっていることが判明しました。

SCP-████-JP-2はSCP-████-JPが不定期に作成する非異常性の実体です。分析の結果、SCP-████-JPの発見当初に回収されたSCP-████-JP-2を除く全てのSCP-████-JP-2個体はサイト内で紛失していた物品で構成されていました。SCP-████-JP-2は翼のような形状をとっており、SCP-████-JPはSCP-████-JP-2を完成させると自ら装着して高所から飛び降ります。然し、SCP-████-JP-2はSCP-████-JPに飛行能力を付与するには明らかに不十分であるためSCP-████-JPはそのまま墜落し、SCP-████-JP-2の大半は着地地点の周囲の物体を巻き込んで大破します。SCP-████-JPはこの行動にのみ非常に執着しており、他の一般的なネコ科動物のような狩猟本能が備わっていないと推測されています。

補遺████-JP-A: 発見経緯 201█/2/1 13:00ごろ、██県██市の不燃物処理場にイエネコじゃない猫がいるとの地元住民の通報があり現場に駆け付けた警察官の中に紛れていた財団のエージェントが廃棄物の山をすり抜けて逃走するSCP-████-JPを目撃し、その存在が明らかになりました。SCP-████-JPはエージェントに確保された時は目立った抵抗を見せなかったにもかかわらず、サイト81██に到着直後に特異性を発揮し、護送中SCP-████-JPを直接捕えたままの状態だったエージェントの手をすり抜けて逃走しました。その後、サイト内で一時行方不明になりましたが██博士が設置した給餌器に近寄り、その中の睡眠薬入り餌を摂食して鎮静化し一時的確保に至りました。

「つまり貴方は、」

こいつの話は悠長で無駄が多く、知性の有無と学のなさは別問題だと再確認させられる出来だった。

「つい先月急に知性を得て、それ以前の記憶は何もないと。」

『msっそういうことだ わたしのこれまでのけんきゅうきろくをmsるっとはぶかれたのはいささかしんがいだが』

「重要度が低いと判断しましたので。」

どうやらこの猫、キーボードの左端にあるAやZを打ち損じる傾向にあるようだ。

『しんらつだなきみは まあいい すぐにあうばらしさにきづかせてやる』

「質問はまだまだありますので次に行きましょう。これらの言葉に聞き覚えはありませんか?」

俺はニッソ関連の単語をずらりと並べて見せる。正直、こいつを始めて見たときから二重螺旋のマークが頭にチラつきっぱなしだった。

『いや しrsない おぼえてないだけかもしれないgs』

「わかりました、知らない旨を記録しておきます。」

まだ断定されたわけではないが、奴らではないとなると出所を掴むのはかなり厳しそうだ。

「では次の質問に移ります。貴方は高所から落下することに強い欲求を感じていらっしゃるようですが、それはなぜなのでしょうか?」

『きゅうにいんぎんぶれいにんsったな ろこつだぞ』

なんで慇懃無礼なんてボキャブラリがあるんだこの猫。

「大切な質問です、答えて下さい。なぜ私のテリトリーがこうも荒らされなくてはならないのかを。」

『いっそすgっすがしいな だがいいしつもんだ なぜわたしがこうもそらにゆめをいだくのかおしえてやろう』

いちいち鼻につくなこいつ。ボキャブラリは財団職員から学んで増やしている可能性が高そうだ。どういう意味かって?オイオイ皆まで聞くなよ。

『おとこのろまんだ』

「は?」

いけない、素が出た。そもそもお前メスだろ。

「…えー、どういう意味でしょうか。」

『ぜんせのきおくというものだろうか じっさいにみたことんsどないのに しっかりやきついているのだよ』

まさか畜生の口から前世という言葉を聞くとは。いや厳密には機械が喋っているのだが

「何が焼き付いているんですか?」

『このくにがほこるさいてん とりにんげんこんてすとだ』

「……」

流石に存在くらいは知っているが、それとまともなリアクションが取れるかは話が別だった。

『だいじょうぶかね どくたーおぶち』

「ええ、大丈夫です。つまり貴方は猫でありながら鳥人間コンテストに惹かれてそれを模倣するために何度も墜落しているのですね?」

『いちいちそういういいまわしをしなkysだめかね どくたー』

ああ駄目だ、絶句モンだろう。

「ですが、ならどうしてわざわざ人に被害が出るように飛ぶのですか。安全面から見ても屋外で人知れず墜ちた方がいいでしょう。」

『それはksんたんさ わたしのいぎょうをみてもらわねばいみがないdsろう』

承認欲求モンスターかよ。猫のくせして小生意気に…

「あー…そうですね、貴方が私の見る限りではそこのトイレを無視して職員用トイレを勝手に利用する程には人間的かつ理性的に振舞うにもかかわらず空を飛ぶことに関しては無我夢中になるのは、そういう異常性である可能性がありそうですね。今度実験してみましょう。」

『そうだな たしかにそらをめざすわたしのこころはいっしんふらんだ いちぅだ わたしのゆめをじゃまするものはなにもない』

「物理的な障壁も、ですか?」

『もちろんだとも』

障壁と見做したものを透過する、とでも書き表せばいいだろうか。経験則で言うなら抑え込むほど厄介になるタイプだな、現状の抑え込みは掠りもしていないのだが。

「ではお聞きしますが、なぜ最初に確保された時にエージェントの手から逃れずサイトに到着してから逃走を図ったのですか?貴方の偉業とやらが邪魔されるとは思わなかったのですか?」

『いっただろう じゃまはさせない そして』

「そして?」

『すくらっぷのやまよりいいものをちょうたつできるきがした やせいのかんだ』

「……インタビューを終了します。」

録音装置を切り、ここ一番のため息を吐いた。このクソ猫、最初から俺たちの厄介に預かる気満々だったのだ。


「舐めてんのか畜生!」

閑散とした休憩室の一角、赤い自販機の傍から罵声が響き渡る。まあ最も響き渡らせているのは他でもない俺なのだが。

「はっはっは、まあまあ落ち着けよ小渕君。相手は猫なんだろう?人間が目くじら立ててちゃ面目無いだろうに。」

いかにも愉快そうに笑うこの男は鳴瀬、一応俺の同期だ、一応。

「だけどよ、あそこまで堂々とした居直り強盗は中々ないだろう。ああ思い出すだけでイライラする。あの時の奴の顔は間違いなくしたり顔だった。」

「人間以外の動物が敵意以外の感情表現に表情筋を使う事はないさ、それはきっと勘違いというやつだろう。」

「そんな事言ってんじゃねえんだっての!」

「無論、わざとだ。君がいつになく愉快な人間になってるのでつい、な。気を悪くしたなら謝ろう。」

この男はいつもそうだ、すぐにこう、"ぶった"言い方をしてくる。もう少し品のない職場だったら腹くらいはぶん殴ってただろうな。

「謝るくらいならお前も一緒に考えてくれよ。俺は奴をさっさと収容房にぶち込んでやりたいんだ。」

「そうさな、まあ一番簡単なのはそいつの夢を叶えてやることだろうな。『自力で空を飛ぶという夢を叶える』事を原動力に動くのならば、それを達成さえすれば何らかの形で異常性が落ち着く可能性もある。予算なら余程の浪費でもしない限り降りるだろう。」

俺はボトルコーヒーの蓋を緩めながらその提案に頷いた。確かに、如何にあいつが飛ぶのを阻止するかで頭が一杯だったがそういう着眼点も最もだ。俺はどちらかと言えば余計な実験は省く主義だ、故に奴に好きに試させてやる実験など考えもしなかった。

「わかった、実験の申請をしてみよう。もしかしたらワンチャンス有るかもしれない。」

「ああ…健闘を祈っているよ」


実験記録: ████-JP-A

日付: 201█/2/14

担当者: 小渕博士

対象: SCP-████-JP

内容: 高さ4mの木製の台を設置した実験チャンバーに複数種類の素材の細い棒材や薄い板材、及び一般的な工具を配置してからSCP-████-JPを侵入させる。

結果: SCP-████-JP はカーボン繊維で素材を統一したグラインダー型のSCP-████-JP-2を作成し装着、台に上ったのち飛び立つも1m地点で墜落した。破損したSCP-████-JP-2を回収して調べた結果、過去のSCP-████-JP-2と比較しても構造的な進歩は見つからなかった。

全然ダメじゃねえか。 - 小渕博士

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ページ情報

執筆者: Ruka_Naruse
文字数: 4924
リビジョン数: 17
批評コメント: 0

最終更新: 28 Jun 2020 13:37
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