SCP-2254-JP 夜闇のスシブレーダーと願望の灯台

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アイテム番号: 2254-JP
レベル5
収容クラス:
euclid
副次クラス:
{$secondary-class}
撹乱クラス:
keneq
リスククラス:
warning

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犬吠埼灯台。

特別収容プロトコル: SCP-2254-JPは犬吠埼灯台内に自主的に留まっているため、財団施設内での収容は不要です。

SCP-2254-JPの存在する地下室への扉には反ミーム紋章が組み込まれています。灯台付近に監視小屋が建てられ、侵入を試みる人物が発見された場合直ちに駆けつけ拘束、尋問されます。

SCP-2254-JPはプロジェクト・パラゴン及び大洪水前時代部門極東支部の監督下にあります。しかしながら、SCP-2254-JPによる自身の説明によれば、SCP-2254-JPは当時代の出来事について現在引き出している以上のことは把握していないと予測されるため、SCP-2254-JPへの更なるインタビューは低優先度項目とされています。

GoI-8134("闇寿司")潜入中のSUME-CI人員はPoI-1134-a("闇")及びGoI-8134の活動を監視し、大洪水前時代の生存者との接触、歴史的資料の発見・調査の記録を阻害します。

説明: SCP-2254-JPは日本国千葉県犬吠埼灯台内の地下室に存在する、生物学的にSCP-1000と類似した人型実体です。SCP-1000との最も顕著な相違点は、彼らに見られる理論化された超常現象への耐性を持たないことです。しかしながら、その身体構造から予測される高い運動能力1から、SCP-2254-JPが収容を突破しようと試みたならば、無力化せずに再収容するには専門の機動部隊の出動が必要です。

SCP-2254-JPはSCP-1134-JP等に関連する競技、「スシブレード」を好みます。SCP-2254-JPが地下室外に出る目的のほとんどはSCP-1134-JP-1となる魚を釣る、またはスシブレードを練習する為です。補遺2254-JP-3及び4を分析するに、SCP-2254-JPのスシブレーダーとしての実力は少なくともGoI-8134やGoI-8135("回らない寿司協会")の幹部に匹敵するものです。SCP-2254-JPは主にその場で釣った魚をSCP-1134-JP-1に使用しますが、闇寿司、いわゆる"邪道な寿司"に分類されるSCP-1134-JP-1を回すことも可能です。

補遺2254-JP-1: 初期収容

SCP-2254-JPは2020/6/14、SCP-4840-Aによる隠蔽が弱まったために民間人が地下室を発見しその存在が発覚しました2。当該人物は地下室の写真をSNSに投稿していたため財団Webクローラーがその言及を発見し、その後SNSにはカバーストーリー"捏造"及び記憶処理ミームエージェントが散布されました。また、地下室に通じる扉には軽度な反ミーム処置が施されました。

発見後、機動部隊ヘート-1("ロンギヌスの槍")及びゼータ-1000("太陽の眼")による監視の下で、精神安定度評価が行われました。結果SCP-2254-JPは友好的だと判断され、オブジェクトクラスはKeter3からEuclidに変更されました。

補遺2254-JP-2: 第一次インタビュー記録

その後、SCP-2254-JPに対するインタビューが行われました。以下はその記録です。

インタビュアー: 止雨博士、大洪水前時代研究部門極東支部レベル3職員

インタビュー対象: SCP-2254-JP

前文: 形式的、心理分析のための会話を除いたSCP-2254-JPの初めての対話。機密保持のため止雨博士はインタビュー後の断片的な記憶処理に同意した。また止雨博士は司令部と接続された隠しカメラとイヤホンを着けていた。


止雨博士: こんにちは。まず、あなたに何か名前はありますか?

SCP-2254-JP: 私は…生まれた頃はイアの使いと呼ばれていた。だが、もう今ではそれが私を指す名だとは思っていない。まあ、君たちがいつも呼ぶように、SCP-数字、数字、数字で呼べばいいさ。私もそっちの方が慣れてる4

止雨博士: ではでは次に、SCP-2254-JP、貴方はどれほどここにいるんですか?

SCP-2254-JP: 夜が何回来たかということなら、すまないが覚えていない。もとから数える気もなかったんだが、最近私は特に衰えて、物忘れが激しいものでな。ただ、私が産まれた時の事なら覚えている。あれは少なくとも数億年前、まだ太陽の子、つまり君たちだな、が大勢の中の一種であった時代に、私の主、星辰の者と呼ばれていた人たちによって創られた。

止雨博士: しかし報告によれば、妖精、あなたの言う星辰の者が住んでいたのはこの海の向こう側の大陸となっていますが?

SCP-2254-JP おお、あの者たちのことを知っているのか。その通りだよ。彼らは太陽の子を毛嫌いし、最初の父の都へも住まず向こうの大陸に定住した。だが、少数の者は、やはり太陽の子、そして都の神々たちと袂を分かつべきではなかったと考えた。まあもしくは彼らの近くに金属と歯車と情報の神の棲み処があったから、そこから離れたかっただけかもしれんがな。だから彼らは船を造り、そして付き添わせる者として、太陽の子を象った暗い土に女神イアの祈りを捧げて私を創り上げた。あの頃は今では見られぬ島々がここと向こう岸の間に大勢あったからな、ここまでたどり着くのはそれほど難儀ではなかった。そして彼らは私をここへ置いていき、大陸への旅に出た。

止雨博士: 妖精には大した腕力はないはずです。少なくともあなたの種族ほどには。貴方をここに置いていくのは得策だったとは思えませんが?

SCP-2254-JP そうとも言えるが、私は役目を命ぜられたうえでここに持たされたものでな。私に任されたのは港守。彼らの同胞がいずれここに来るとき、私に出迎えさせようとしたのさ。海の向こうの大陸に棲み留まった残りの者も、太陽の王アダム・エル・アセムに魅せられて、海を渡ってこちらに来ると。ところで君は星辰の者たちのことを知っていたが、海の向こうの彼らが今どう過ごしているかを知っていないか?

止雨博士: [小声で、隠しマイクに向かって]司令部、情報を流しますか?

司令部: ネガティブ。SCP-2254-JPが夜闇の子の反乱太陽の子による妖精の虐殺を知ったらどうなるか分からん。

止雨博士: すみません、分かりませんね。あなたの方はどうなのですか?この地でずっと待ち続けているのでしょう、一体何人の妖精がここへたどり着いたんですか?

SCP-2254-JP: 0人だよ。星辰の同胞には、彼らと別れて以来一度も会ったことがない。もっとも、彼らは心の奥底では、その事を知ってたんだろうさ。私をここへ置いて行ったのは、大方、ただの彼らの願いだ。"あいつを港へ捨てたのだから、それには意味がなくてはならない。あいつは意味ある存在なのだから、きっと同胞はやって来る"。そんな馬鹿げた考えで、私をここへ置いていったんだろう。

止雨博士: ならば─ 貴方はなぜ、もう誰も来ないと分かっているのに、ここを離れないのですか?

SCP-2254-JP: 私も彼らと同じだよ。祈ってるのさ。彼らがいつか帰還し、また私を連れて旅をするかもしれないと。そのために私はここで待っている。

止雨博士: 妖精は確かに永く生きます。しかし、彼らはあなたたちのような造られたものとは違います。彼らには既に、定められた終わりがあるのです。

SCP-2254-JP: [笑う]たとえそうだとしても、私はそれを信じないし、それに役目がなくなったことは、役目を終える理由にはならない。私は未来永劫、この海の向こう側を見ることよりも叶わない、再開の願望を抱き続けて生きていくさ。

[記録終了]

補遺2254-JP-3: 第二次インタビュー記録

2020/7/10、SCP-2254-JPが初めて地下室の外に出ていくのが確認され、SCP-2254-JPは急遽監視職員により確保されました。その後の追及により、SCP-2254-JPは定期的にスシブレードのトレーニングを行うため外出することが判明しました。そこで、付近にいた休暇中のSCP-1134-JP研究者の鮭川博士が呼び出され、スシブレードとの関係を詳しく調べることを目的としたインタビューが行われました。また、当インタビューの途中でSCP-1134-JP-aによる襲撃があったため、その戦闘記録も連続して記されています。以下はその記録です。

インタビュアー: 鮭川博士、SCP-1134-JP研究者兼スシブレーダー

インタビュー対象: SCP-2254-JP

前文: SCP-2254-JPはスシブレードを"鮨相撲"と呼称するため、鮭川博士もそれに合わせている。


[形式的な会話を省略]

鮭川博士: では、貴方の言う脂相撲について話してください。

SCP-2254-JP: これは少し前に人里で流行った遊戯のようでな、私がこれと出会ったのは数千年前、まだ山に住んでいた頃だ5。一人の握り手が、修行とやらで私の住んでいた処の近くに現れてな。私のことを神と思い違えたのか知らないが、とにかく太陽の子にしては驚くほど仲良くしてくれてね。彼が山で生活するのを助ける代わり、私は彼から鮨相撲を教わった。

鮭川博士: なるほど。しかし、外に出て修行するというのはやめてもらえませんか?このままだとこちらの業務にも支障が出て、貴方の生活まで制限しなければならなくなります。

SCP-2254-JP: [数秒考え込む] とはいっても、私に戦う相手がいなくとも、こいつは私と彼との道が交わったって証なんだ。いくら財団の頼みでも、そう簡単に辞めるわけには行かない。

鮭川博士: [沈黙] では、正式な認可を取っていないため約束はできかねますが、この地下室を拡張して修行部屋を作るというのはどうですか?財団の技術力なら、迷彩を施して海に開ける洞穴も作れると思いますよ。

SCP-2254-JP: おお、それはいい案だな。君のお上は頭が固いだろうが、まあ私からもそれをお願いした──

[SCP-2254-JPが立ち上がる。]

鮭川博士: どうしました?

SCP-2254-JP: 鮨相撲の使い手がここに来ている。それもかなり強い奴が。

鮭川博士: なぜ分かるのですか?

SCP-2254-JP: 微弱だが鮨場6を感じた。しかもまずい、ほとんど気付かれずに情報を握られた。それもこのほぼ密閉された地下室の情報をな。すまない、日の入りまではどれくらいあるかね?

鮭川博士: 今が18時50分ですから、日の入りまで5分です。

SCP-2254-JP: 君も語りぶりを見るに、鮨相撲を嗜むのだろう?すまないが、少しの間、敵を迎撃してはくれないかね。

鮭川博士: その必要はありませんよ。外では財団の機動部隊が待機していま──

司令部: クソッ、駄目だ。たった今機動部隊は全員戦闘不能になった。、8人意識喪失、残りの6人は発狂してる。かき集めた財団のスシブレーダーも全員ラーメンの汁にやられた。

鮭川博士: 全員同時だと!?司令部、敵の姿はカメラに写っていますか?

司令部: ああ。照合させたところ、襲撃者はSCP-1134-JP-a、"闇"と同定された。

鮭川博士: わかりました。第一優先はSCP-2254-JPの保護、増援が来るまでaを迎撃します。寿司の使用許可を。

司令部: 使用を許可する。SCP-2254-JPの言った通り5分経ったら彼を戦闘に参加させても構わない。SCP-2254-JPの手の内を晒させろ。

鮭川博士: 了解。

[鮭川博士が灯台から出る。SCP-1134-JP-aが敷地の入口に立っている。]

SCP-1134-JP-a: あんたが彼の言う"太古のスシブレーダー"7、ってわけじゃあなさそうだな。そいつはどこにいる?

鮭川博士: "闇"、どうやってここを知ったのですか?職員の中に協力者を持っているのですか?

SCP-1134-JP-a: 俺の質問に答えろ。それに"財団"と言ったな8。あんたらの方は俺らを知ってるらしいが、俺らはてめえらをよく知らないんだ。だが、どうやらお前らと俺たちはぶつかり合わなきゃいけない運命にあるらしい9

鮭川博士: 記憶にないですね、その太古のスシブレーダーとやらには。でも、交渉が成立がしなかった時に何が起きるかは、あなた方のような野蛮な人種が一番知っているでしょう?

[SCP-1134-JP-aと鮭川博士が構える。]

両者: 3、2、1、へいらっしゃい!

[SCP-1134-JP-aから塩ラーメンが、鮭川博士からサーモンが射出される。]

SCP-1134-JP-a: 多少骨があるとはいえ、種も仕掛けもないただのサーモンじゃコイツには勝てねぇ。お前ごと吹っ飛びな。

[鮭川博士がコトブキ式ノウアスフィア抑制器10を起動する。両者の寿司が通常のスシブレード時と比較して顕著に重力の影響を受ける。]

SCP-1134-JP-a: なに?

[鮭川博士が拳銃でSCP-1134-JP-aに発砲する。それと同時に、ラーメンの汁が溢れながらもサーモンに衝突して大きく弾き飛ばす。しかし、鮭川博士の場所までは届かない。]

鮭川博士: 貴方が知らないのなら特別に教えてあげましょう。財団は手段を選びません。わざわざ君たち異常存在の遊戯に積極的に付き合う気はないのです。

SCP-1134-JP-a 情報をどうも。だが、たまには遊ぶのも大事だぜ?こうやって、

[SCP-1134-JP-aが弾丸を握る。寿司化した銃弾は抑制機、及び銃弾の握りの異常特性11によって空中で停止する。それを鮭川博士に向けて射出する。]

SCP-1134-JP-a: な。

[弾丸が鮭川博士の右下腹部に命中する。弾丸は寿司化されていたため抑制器によって速度は大幅に軽減されていたが、鮭川博士は僅かに出血する。]

鮭川博士: た…確かにそのようですね。しかし、も…もうそんな言は無意味です。私の役目は時間稼ぎ、陽は既に落ちました。今からは、闇を統べる夜の時間です。

[SCP-2254-JPが灯台から出てくる。彼の手にはヒラメのえんがわが握られている。]

SCP-1134-JP-a: あんたが奴の言ってたスシブレーダーか?人間じゃないようだが、どっちにしろ失望したよ。そんな十人並みのネタを出されたって、旨くもなんもありゃしねえ。[懐に対して明らかに大きいサイズのラーメンを取り出し、射出する。] だが、その図体だけは興味がある、くたばりな。

SCP-2254-JP: …へいらっしゃい。[えんがわを射出する。]

君は私の寿司を十人並みと言ったが、私に言わせればラーメンだろうがハンバーガーだろうがスターゲイジーパイだろうが全部まったく既視感マシマシの代物だよ。そして、そうなればもう勝負を決める要素はもう僅かしかない。実力と、願いだ。もっとも、この程度の勝負なら、願わずとも勝利を確信できるがね。

[えんがわがラーメンにぶつかり、ラーメンはSCP-1134-JP-aの胸元へ向かって正確に跳ね返る。一方えんがわはSCP-2254-JPの差し出した手に向かって放物線状に跳んでいく。]

SCP-1134-JP-a: ガッ…た、確かに、今の俺じゃあ力不足なようだ。流石は彼が言っていただけあるな。ここは素直に引くとするよ。だが、あんたとはまた会うことになるだろう。望もうが望むまいが、寿司の意思が引き合わせる。

[SCP-1134-JP-aが(おそらく機動部隊の全滅後に駆けつけたと思われる)トラックに乗り込む。運転手は不明な人物PoI-4134("御蓮寺 恋司")12である。]

鮭川博士: [負傷部を抑えながら]追わなくていいのですか?

SCP-2254-JP: ああ。どうせ追ってもすぐにまかれてしまうだろうからな。

それと、思い出したことがある。さっき君に話したことだが、1つ間違いがあった。鮨相撲を見たのはあの時が初めてではない。私たちが向こう側から来た時だ。ウム。確かそうだったはずだ。船がこの辺りにまで来た時、その天上から巨大な箸が降りてきたんだ。そして海を回し、島を釣り上げた。そこに、2人の男女と、ひとつのはしらが降り立った。おそらく父の都から来ていたんだろう。

鮭川博士: 彼らが柱を担いで降りてきた、ということですか?

SCP-2254-JP: いいや、柱そのものも、──少し奇妙に感じる呼び方だが── まるで1柱の神のように、ひとりでに降りてきた。彼らは柱の回りでくるくる回りながら、どんどん島を生み出していった。[数秒の沈黙] いや、本当さ。多分、この物理的な世界の出来事ではなかったと思う。だが、私達は全員同じ光景を目の当たりにしてたし、彼らが自分より、立っていた島より何十倍も大きい島を生み出した、そういう事実をそのままに感じていた。そして驚いたことに… いいか、これは私も理解してはいないが、私たちが実際に見て感じたことをそのまま言うぞ、柱が、島を回し始めて、そこら中にばら撒いた。もちろん、私達は広い海の上から俯瞰してたわけじゃない。だが大陸の隣りにあった海に、島を大勢ばら撒いた。更にだ、あの時感じた感覚は紛れもない、山でやさっき感じたものと同じ、鮨場の気だった。概念と一体になったような世界での体験だが、物理世界では違うとは言い切れまい。

鮭川博士: 待ってください、では、その島というのは─

SCP-2254-JP: ああ。君の思っている通りだよ。私達のいるこの島、日本そのものが一つの寿司だ。

[記録終了]


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執筆者: MrDrYTisgod
文字数: 10601
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最終更新: 03 Jan 2023 15:26
最終コメント: 07 Aug 2021 10:09 by MrDrYTisgod


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