永劫の夜明けに臨むメタルバンド

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レーションを齧り、質の悪い鏡となったスマホを地面に叩きつける。クソッタレ太陽が登った(らしい)時刻からどれほど経っただろう。運良く屋内にいて、運良くネットで地獄の情報を手にし、運良く自宅には衣食住揃ったシェルターがあり、運良く襲われずに地下に行けた。だが、独りで何もせず死を待つことが幸運と言えようか?

世界が終わったあとにはインターネットの友人と楽しくお喋りすることを夢見てたが、どうやらバッテリーはそれを許してくれないらしい。辛うじて得た情報は、情報を持ってる者は誰もいないということだけ。まあどうせこういうことはフリーメイソンかビル・ゲイツ財団の人類進化計画と決まってるんだ。どうやら失敗に終わったようだがな、ざまあみろ。気分をアゲるために、歌詞も音程も禄に覚えていないQUEENの曲を歌いながら、数年分とはいえ限られた水分を喉から浪費する。シェルターが防音なのかは知らんが、もうそんなことはどうでもいい。外に出ていく勇気もどうせないんだから、あいつらが愛を説きながら跳ね上げ戸の玄関先をノックしてくるかここで飢えて死ぬかは神に任せることにする。尤も、太陽神は既に死んでるが。

コンコン。くぐもった音、扉越しにノックの音が聞こえる。ファック。言った側からか、スライム野郎。にしても一体全体あのベタベタ身体でどうやってドアを叩いたんだ?そんな思案をする内にも、声が中に響いてくる。よく聞こえはしないが、音楽がどうだの、1がどうだのと言っている。せっかくの人生のうち最初で最後の宗教勧誘体験だ。反応してみるとしよう。

「帰れこのクソッタレ糞液状クソ野郎共!てめえらは皆で独り寂しく日光浴してろ!」

取立人と宣教師は罵声で返事すると決まっているんだ、異形だろうが知ったこっちゃない。

「いいえ、我々はあの肉液とは違いますよ。久しぶりに音楽が聞きたいかと思って。クイーン程ではなくても、品質は保証しますよ。」

予想外のまともな返事が返ってきた。これがなりすましではないとは断言できないが、今まで聞いたアイツらの台詞はカルト的なものしかなかった。集合知のくせになりすますのは下手なんだろう。

「それじゃあ、宗教の勧誘じゃないってことか?そもそもなんであんたら外でそうやって話せてる?」

念の為ショットガンに手をかけ、疑問をぶつける。液体に銃が効くのかも聞けばよかった。

「いいえ…宗教勧誘ではないのか?と聞かれるとイエスですね。」そらみろ。
「しかし、音楽を聞いてほしいのも本当ですよ。これは第二の質問の答えにもなりますが、私達は壊れた神の教会。今は肉の神・亜種の徹底的改宗のせいで衰えてはいますが、壊れたる神を再建させるために野外バンドに周っているんです。テントは差してありますので、中に入れてはもらえませんか?」

「質問の答えになってないぞ。なんで日避けが必要な世界で溶けてないんだ?」

どんな奴かは知らないが、これ以上怪しいやつだったら疑問の代わりに鉛弾をぶつけてやる。

「あー、そりゃ、見ればわかる。」と別の声。無機質で性別は分かりづらい。

奴らの十八番だ。中に入ったら戸に足を引っ掛けて、あーだこーだあらゆる手で誘ってくる。とはいえ余生初の生存者だし、引き金に指をかけながら戸を解錠する。戸の外からは音が聞こえてくる。ゲル状ではない。しかし、人間の音でもない。駆動音だ。一体──

ハッチが開く…wow!思わず感嘆 ──もしくは叫び声── をあげちまった。入ってきたのは人型だ。体は機械で出来ている。少なくとも最初に入ってきた男の銀白の体の中で、肌色の白が占める割合は何割もない。

「こら凄えな。どうやら俺の生きてた世界の身体改造とはだいぶ違うようだが、あんたらは異世界出身か?それともマッドサイエンティストの息子?」

「いえいえ、そのどちらでもありません。夜明けの前から、この世界は超常的なもので溢れていました。そして、その中でも壊れたる神の部品を集め、再構築する。それが我々です。同業他社が皆蒸発したおかげで、いま地上で動いてるのはほとんどが機械です。おかげで我々の活動も捗るってもんですよ。」

「私らマクスウェリズムの活動はかなり斜陽気味だけどね。なぜだか太陽光発電の出力が上がってるのが唯一の救いよ。」女の声。計3人組のようだ。

「そんなわけで、俺らザ・シャッタード・デウスは世界の終わりで公演and営業中だ。現在取り扱ってるのはロックミュージック、メカニトのバイブル、食糧、身体改造、スマホ充電器、発電機、火炎放射器と冷凍光線、その他大量のマジックアイテム。全部無料!欲しいものはあるかい?」

「それならロックを…待て。身体改造ってのはなんだ?あんたらみたいになれんのか?」

「お目が高い!出来るよ。俺みたいなオールドユニークでクール、メンテナンスも楽々の歯車仕掛改造、」
「もしくは私のような近代的で自動発電、自前の脳みそでインターネットに接続できるこの最先端で機能的なマクスウェリズ厶改造のどちらかよ。」
「単なる表皮機械化もある。身体強化にゃなりはしねえが、日焼け止めには充分だ。ただし、改造のためには教会まで来てもらう必要がある。といってもここから十数kmしかないけどな。」

「十数キロ?おいおい、どうやってそこまで行くんだ?地下を掘ってくのか?それとも夜になるまで待つか?どっちにしろ飢え死にしちまうよ。」

「そいつもノー・プロブレム。ちょっと上に来てみな。大丈夫、安全は確保してある。」

そう言われて久しぶりにハッチの梯子に手を掛け、覆いがあるとはいえ明るく、そして暖かく忌々しい地上へと登る。

左を見ると、今までに見たことのない形状の大型車があった。軽自動車のような滑らかな青いフィルム、そしてそれに似合わないガチガチで古臭い荷台、その最後場にあるのは逆に近未来的とまで言えるロケットエンジン。荷台の壁は分厚く、スライド式で何かが出てくるのであろう細い隙間が幾つかある。これなら車酔い以外に心配することはなにもない。

「これをあんたら3人組で作ったのか?身体強化も?」

「いや、こいつは教会で神父様に施してもらった。夜明け前どころか数世紀前からある、由緒正しき教会守護の血筋だ。」
「今は伝道のために世界を放浪してるけど、いつかきっともう一度会える。WANのコードの導きでね。」
「そして、この車は教会に集まった信者やエンジニアの協力によって出来たものです。超常社会ではあらゆる工業のトップシェアを誇っていたプロメテウスの方々まで協力してくれたんです、速度も装甲も凄まじいですよ。」

「それはいいな。俺は無料のものはゴミと紫外線以外ならなんでももらうような男さ。ありがたく乗せさせてもらうよ。その教会でライブってのはできるのか?」

「勿論、大歓迎です。それどころか、私達なら運転しながらだって演奏できますよ。」

「そいつは凄えや。俺はこの荷台に乗ればいいのか?」

「そう。人がいる時は中からしか操作できなくなってるから、入ったらそこからトランクを閉めて頂戴。中には人工光と空気穴と運転席に繋がる音穴とインターネットがあるわ。」

乗り込むと、車とは思えないほどの快適で、まず間違いなく車ではない容積の空間が広がっていた。目の錯覚でなければ、10畳ほどはあるだろう。科学の力か宗教の恵みかは分からないが、とにかく人知を超えたものであるのには違いない。

車が動き出す。音穴から大きなエンジン音が聞こえてくるのに、揺れは一切感じない。そしてそのエンジン音も、カチッと言ったあとに霧消する。

「教会までは8分ほどで着く予定だ。その間聞いていくか?俺らの演奏。」

「それならお願いするよ。教会で待つファンの方々に悪い気もするがね。」

「ありがとう。それじゃあ、新曲生演奏だ。ザ・シャッタード・デウスの第6アルバム、Broken God、トラック3、"We Are God"。」

静寂の後、ギターが空気を掻き鳴らす。声紋は今までと変わらず、それでいて透き通った声で、歌が始まる。

It's wan of the cosmic,

It's the machine to unite us,

It's the piece of broken god,

It's us!


激しく、美しい曲だ。しかし、それと同時に何かが頭の中に入り込んでくる。清らかな視覚に反して油の混じった、それでいて心地よい匂いが鼻を満たす。太古の、創世記とまで思える時代。抽象的に組み上げられた機械の神が、他の神々と共に宇宙を創り出しているのが見える。機械の神が世界の法則を産み出し、肉で出来た異形が人を形造り、杖とWの意匠が描かれた帽子をかぶる老人が世界に喜びを撒き、5本の手の中心の目とそのシグナルが世に混沌たる超常の芽を植えている。そして、彼らの前に純然なるものが立っている。その頭に輝く王冠でさえ、見るのが烏滸がましく思えてくるほどだ。純然なるものの輝きは凄まじい。そして、その背後に、純然なるものの輝きが落とす奈落のように暗い影を受けた太陽が──

But United, We Are God!

曲が終わった。聞いた記憶はないのに、歌詞は漠然と頭に入ってきていた。

「今のは…」

「何か感じ取ったか?俺たちのバンドは、もちろん全部魂込めて曲を作って演奏してるが、音楽よりも直接的にMEKHANEの御言葉を広げる魔法が仕掛けてある。今回もそうではあるんだが、実のところ俺らにもどうなるか分からなかったんだ。」
「先程も言ったように、教会には今までいた神父様がいない。神父様は宣教に発たれる前、私たちにより多くの人を救えという使命と、一人の男性を託してくれたんです。彼は神父様から信頼されていたし、その敬虔さはこちらにも伝わってくるんですが…」

「ですが?」

「壊れた神の教会が抱える信徒は9割方が3宗派に収まってるの。それなのに、あの男はそのどれとも違うらしいの。それを聞いてもまともな答えが返ってきたことはない、ってワケ。」
「男の教義、宗教解釈は革新的なもので、一部には大いに頷けるものもあった。もちろん公にそうはしなかったがな。それにインスピレーションを強く受けて作ったのが今回の曲だ。」
「当然その男性にも監修を、というか歌意、作詞に関しては八割方を彼に任せたんです。その分、この歌には彼の魂、教義が一番強く籠っている。私たちも全貌を知らない、壊れたる神の未知の姿が。それについては、我々もまだどうなっているのか詳しくなくてね。」

「神が…神が見えた。それも一柱じゃない。機械の神、肉の神、驚異の老人、星のシグナル…そいつらが世界を作ってるのを、冠を被った純然なるものが君臨してた。そんでその後ろに影を浴びた黒い太陽が昇ってたんだ。断言できる。あれは今の太陽だ。あれはこの世の終わり、神の形をした影、地獄のラッパだ。生命と死の終焉。神の輪郭をたっぷり浴びた偽神への崇拝── おっと。すまない。あんたらには悪い言い方だったかもな、喋りすぎちまった。だが、さっきのは本当に宗教的体験と言うに相応しいものだったよ。」

「おいおい、そりゃ本当に俺らの教会のものか?壊れたサーキックの第五教会とかじゃなく?」
「分からない。だけど、それは彼に聞けば分かるさ。ほら、もうすぐ着くぞ。」

「もう数十キロを走ったってのか?早いな。しかも、あいつらに襲われずに済んだとはな。俺も神に祈れば運がよくなるか?」

「いえ、何回か襲撃には会いましたよ。この車は自動で私たちを守ってくれるんです。知ってました?奴らは冷凍に弱いんです。とはいっても、時間が経てば太陽で溶けますし、万一の事態を防ぐために行動不能にしたらすぐ離れてますがね。」

メタルバンドで宗教家で戦闘の専門家でエンジニア。流石だなと思いつつ、据え付けられていたディスプレイをいじる。さっき言っていたとおり、本当にインターネットに繋がってる。Wi-fi強度もバッチリだ。googleやtwitterを開いてみたが、こいつらは駄目だった。何もかもがあいつらに乗っ取られてる。代わりに、標準で備えられてたサイトの中に馴染みのない、それでいて聞き覚えのあるものがあった。maxwellism.com。さっきの女が口にしてた言葉だ。開いてみると、標準的な検索システム、それに1クリックでSNSに飛べる。今は@theshattereddeusでログインされてるが、これは多分彼らのアカウントだろう。

「アカウントならこっから作れるよ。教会に着いたらスマホも支給されるから、今のうちに作っときな。」

前からそう言われると、ディスプレイの画面が勝手にアカウント作成画面まで飛んだ。凄いマジシャンだな。もしくはハッカーか?ともかく、アカウント名を自分の名前、パスワードは誕生日の軽装セキュリティでアカウントを作る。瞬速で作成が完了すると、強烈なプロバガンダが目に飛び込んでくる。三っつの矢に丸の描かれたロゴ、「光を恐れよ」との文言、ついでにURL。

「それは読んでおいた方がいいわ。あの太陽の情報のまとめサイトみたいなもんだから。」
「そいつはSCP財団。誘拐・監禁・洗脳が理念のヤバい組織だ。大抵の物事の裏にはこいつが潜んでる。特技は超常宗教弾圧、今もバリバリ活かされてる。教会以上に異常物品のコレクターでな。あいつらが檻に閉じ込めてた人や動物や目覚めた太古のゴジラ野郎共は軒並みスライムになったが、一部のヤバいやつらや無機物はそうはいかねえ。むしろそれぞれに無駄に多様性があるから、スライムどもより気をつけなきゃなんねえな。尤も財団も今はマクスウェリズムネットワークと一部提携してるがね。お、もう着いたぞ。」

荷台が開くと、乗ってから一切動いた感覚はないのに車庫の景色が見える。それにしても、教会とは思えないほど近代的で広い。車庫と言ったが、訂正しよう。ここは整備室だ。あちこちに電子機器や、形容しがたい工具のようなものが落ちている。車の後ろ、つまり俺たちが入ってきた方向は銀行の金庫室顔負けのエアロックで閉じられており、前を見れば高級ホテルのような赤じゅうたんが部屋の外にチラリと顔を見せる。そこに、顔だけ見れば執事のような男が現れた。本当にホテルか宮廷じゃないのか?と思うと、その好々爺っぷりから思えないほどに声を張り、

「デウスが戻ってきたぞォォー!」

耳に響く!コイツの声はスピーカー越しのように聞こえてくる。このおじんも人造人間なんだろう。そして、その何倍も騒がしく、奥から歓声が響く。その様子はパーティー会場を彷彿とさせるほどだ。彼らは歓迎を受けながらレッドカーペットを歩き、数百、もしかすれば4桁の人がいるかもしれないと思えるほどのホールに出る。

「ディーはどこだ?」

喧噪の中でもなぜだか彼の声は一直線に耳に入ってくる。先ほどまでの話を鑑みるに、ディーとは未知の宗派に属しているという男のことだろう。

「ああ、あの人なら数日前から出てますよ。たしか南に行くって言ってたかなあ。」

誰からともなく答えが返ってくる。

「チクショウ、幾つか聞きたいことがあったんだがな。まあ、あの男が返ってくるまで気長に待つとするか。」

「携帯とかは使えないのか?ほら、車にもあっただろ?俺には今までと同じく使えるように見えたんだが…」

「あれは駄目だ。機器が積んでるとこの近くじゃないと使えない。全世界の教会に高出力のものが備え付けられてはあるんだが、メキシコのほうに教会は少ないからな。他の民間人のも大抵がドローンとか布教ついでに配ってるか、超常団体の構成員経由、もしくは財団の供給網で回ってきたかだ。それに、どっちにしてもあの男はああいう技術を使いたがらないと思うぜ。」

一体どのような人物なのか、その男というのは。こちらとしても、まだいろいろ聞きたいことがある。あの幻覚はどういう意味なのか。なぜ彼らが敬愛している神父に大いに信頼されていたのか。なぜあの太陽が彼の知っている神話に出てきていたのか。だが、このことは男が帰ってくるまでは心の中に秘めていよう。何はともあれ、明日にも身体改造を受けて、それにその神話とやらについて学ばなければ。

それにしても、周りを見渡すと本当にすさまじい施設だ。いくら弾圧から逃れるためとはいっても、どうすればここまでの物を作れるのか、もしくは、マジックアイテムでも使ってこの程度なら砂場遊びのように簡単に作れるんだろう。どうやら地下のようだが、ホールのにあるのはシャンデリアとテーブルに旨そうな料理と機械、廊下を見れば白いガラス張りの巨大エレベーター、奥にはロマンか実用か知らないがガンダムのようなものが置いてある。それとも改造された人間が立ち寝してるんだろうか?そんな荒唐無稽なアイデアが湧くほどにはこの屋敷は常識に大穴を開ける。すこし曲がって歩いてみると、漸く教会らしきものが見えてきた。さっきの演奏で頭に浮かんだものとはまた違う形状の機械の神、悪趣味そうに笑う皇帝のような男、ヴェールを被り肉を操る邪悪な者、それぞれが古代チックな絵画で壁に掛けられている。それぞれGyaros(ギャロス)、Dhul-Qarnayn(ズルカルナイン)、Κύθηρα(キティラ)と刻まれた絵の隣に、Daybreak(夜明け)と描かれた小さな絵が飾られている。左では巨大な光る整った岩が、右には無数の歯車が、そして真ん中には鎚を持った男が立っていて、彼らが対峙する前には、光がある。

「それは長い間仕舞われてた絵だよ。教会の人は皆バイカルで肉との戦争が起こると考えてて、ほら、そこのキティラの戦いの絵だ。この夜明けの絵は単なる抽象的な意味にすぎないか、無意味なものだと思われていた。でも、事実は違ったんだ。『誤りし神が君臨せし時、宇宙から神の右手が下される』だなんて予言もあったけど、空はうんともすんとも言わず、ただ一様に茜色を灯すだけだった。でも、俺たちはまだ神の再臨を信じてる。壊れたる神を組み立て、いつの日かあの偽の神を封じ込めてくれる。今はそのために協力する刻なんだ。さっき話してくれた他の神についても大いに気になるけどね。過去にあったことなんて言うのはすぐに歴史の波に流されて消え去ってしまう。いくら頭に、もしくは石碑に刻んだとしても、時の流れは悠久だ。数年前に何があったのか?数十年前は?数百年前は?完全なる記録なんてものはそうそう存在しないんだ。それを知るのが楽しみだけれど、いつ知れるかは一切分からない。僕たちの目指す神が本物かどうかさえ分からないんだ。それでも、未来を切り開くために、過去を追憶しなければならない。

とはいっても、ここは教会兼シェアハウスだ。別にインプラントをしても、他人に信仰を無理強いする気はない。それに、手術の準備には数日かかるしね。部屋はあっちだ。まだ空きはたっぷりあるし、朝になったらホールに集まること以外は特に義務はない。それじゃあ、いい夜を!」

彼の熱意に押されっぱなしだったが、実際この世に常識が通用しないことが分かったんだ。それなら神だっているんだろう。良いホテルには聖書が置いてあるように、部屋にも教典が置いてあるんだろうか。ああ、さっき彼に貰っておけばよかった。彼の体なら多分腹から取り出して渡してくれただろう。ズラッと並んだ部屋のうちの、渡されたカギに合うドアを開ける。部屋も上品で、白を基調とした美しいものだ。だが、深いところを見れば、誰かが最近まで使っていた痕跡を見つけられる。つまり、この部屋の元の主は、二度とここには戻ってこれなくなったんだろう。布団に入り、その人がどんな最期だったのかと考える。彼は誰かのために死ねたのか。それともあの独りよがりな"しあわせ"の集団の一人となってしまったのか。そのような人がもうこれ以上産み出されないことを願う。この奈落の光が降り注ぐ偽の夜明けが終わり、人類の新たな夜明けを臨めるように。いつしか彼らが、健全な日の差す屋外で、大勢の前で歌えるように。

まだ何も知らぬ神へ祈りを捧げながら、目を閉じた。


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