ディア大学の新興宗教

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Deer College Odyssey

The Buck Stops Here


すべての責任は取る
スリーポートランド 2047年 3月22日 金曜日 第六生命エネルギー 10Kj
第2種以上の特殊生命体は免除!

NEW RELIGION OF DEER COLLEGE

THE FIRST CANDIDATE OF SCRANTON PRIZE IN THEOLOGY


ディア大学の新興宗教
スクラントン神学賞の筆頭候補

著者 フリー・ビリーヴ (⁂sapphire_lover)

ディア大学の宗教統計は、数年前まで卒論からの解放戦線とメカニトが半数を占めていた1
だが、1人の熱心なディアリーを中心としてそれが変えられている。それも、次元路と太平洋を飛び越して。

 ディア大学の生徒であるミディアム・ヘンダーソンの研究が、ディアのみならず世界で注目を集めている。学生ならではの活動力で中国の聖クリスティーナ学院、日本の帝都大学と提携して大規模なプロジェクトを立ち上げた。その結果創成されたのが、現代初の人工神格実体である空飛ぶスパゲッティ・モンスターだ。

CHANGE THE WORLD FROM CAFETERIA


カフェテリアから世界を変えよう

 形而上学部所属のヘンダーソンの論文テーマは、『人類に有益な神格の創成: EVE放射プロセスからのピスティファージ排除と神格の性質操作』。詳しいことは論文を読んでもらいたいが、まず注目されるのはその合理的な脳筋さだ。

 神格創成の試みは30年代から行われてきたが、その方法は多くが深層意識抽出、偶像崇拝、共鳴機など不安定、もしくはコントロール困難な方法であった。これに対しヘンダーソンがとった方法は単純明快、信仰の人海戦術だ。米日中での大規模な広報活動とキャンペーンにより、民間から大量の信仰を得た。例として、ディア大学のカフェテリアやアンブローズ・レストランの一部店舗などでは、信仰割引が行われている。信仰と言っても放血や祝詞で神への敬意を示す必要はない。書類の「はい」に丸を付け、食べる前に「ラーメン」と唱える2だけで、パスタが半額になる。この資本主義的な手法によって、多くの信仰が集まった。他にも単なる慈善事業として、貧困地域の豊穣祈願の対象を明確にスパゲッティ・モンスターへ定めてもらうのもかなりの成果を上げた。

 そして、十分なEVEを確保した後も多くの科学者の心を折ってきた問題があった。それがピスティファージ実体による信仰掠奪、俗に言う「悪魔の取り分」だ。新宗教の場合は、そもそも預言者の信じていた神がピスティファージだった、などということもある。その時もたらされる被害が尋常でないことは、皆も歴史の授業でよく知っているだろう。この研究では初めから神が存在しないことが分かっていたために幾分か楽とも言えたが、それは「ピスティファージに妨害されず、無にEVE放射の焦点を当てて神格の輪郭を形作り、それを形而上に顕現させる」という至難の業をこなさなければいけないという事でもあった。

MAKE SOMETHING COME FROM NOTHING


無から有を産む

 神格が生まれるのに必要なのは、誕生媒体となる存在と信仰(EVE)だ。古代から存在する神格はそのほとんどが元来存在したものだが、そうでなくとも有名な(一部は悪名高い)神格は普遍的な概念から生じている。例として、緋色の王を上げてみよう。緋色の王は長年(と言っても約40~50年ほど前までだが)、敵対的な思想、概念の一種と考えられてきた。しかしながら、あの忌まわしきマンハッタン・クライシスにて緋色の王の性質を継承した神格実体が顕現し、その考えは完全に否定された。その後の多くの血と涙とその他の体液の滲む研究のおかげで、現在は緋色の王が思想を素として、前時代と現代の間に人間が違和感を感じる際に放射される微小なEVE3を吸収する神格だと判明している。これにしても、やはりどこかしらに落っこちていた「元来他の概念と比較してとてつもなく強大な力を持つ、『前時代と現代の間の違和感』の概念」を媒体としている。108評議会の一員である日本の五行結社が発案した腹八分目計画によりこうした敵対的、なおかつほぼ無自覚な行為からEVEを吸収する神格は近年ほぼ基底次元に影響を及ぼさなくなっているが、彼らが行った放射拡散に比べ、ピスティファージ含め何も存在しない形而上空間の一点に祈りを注ぐのは極めて難しい。

 そこでヘンダーソンの共同研究者、帝都大学の日奉 蕎氏が利用したのが虚無概念、パターン・スクリーマーだ。パターン・スクリーマーが何なのかは、現代科学ではいまだ確定はしていない。というより、確定することが許されない「対抗概念」であるとの考えが主流を占めている。しかしながら、例えば液体であるガラスが日常で多く使われているように、不安定で流動的なものもあらゆる方法で活用できる。今回の彼らの目的においてはパターン・スクリーマーは適任だった。虚無概念は、それには何も内包されていないのと同時に、森羅万象すべての性質を内包しているとも言える。日奉氏は確率操作を得意とするMirai社と提携し、対象として取った虚無概念が神格実体である可能性を限り無く高くした。次に基底次元で未発見の神格1つに見当をつけ4、そうして定められた空飛ぶスパゲッティ・モンスターの平素同位体的性質に合うように様々な儀式を行った。5結果として、現在の対象概念がスパゲッティ・モンスターである確率は99.99999%以上となっている。喜ばしいことにここはスロースピットではないので、この数値は実際にそのものであると同定できる。

WHAT FARTHEST FROM HOLINESS AND CLOSEST TO RELIGION


神聖さから最も遠く、宗教に最も近いもの

 彼らがここまで理論立てたのが、45年の2月だった。ネタバレをするとほぼすべてが彼らの試算通りに行き、既に神は降臨しているのだが、未だに彼らの名誉と財布を脅かし続けている問題がある。それが倫理と安全の問題、分かりやすく言えば監督者たちにペコペコして金を払った上で実験許可を貰う必要があったということだ。財団の神学部門6が定めた実験手順は緋色の王が眠るほどに古臭い基準で定められているが、その改正なぞ試みようものなら飛び出てくるのが財団法務部門だ。任天堂、ワンダーテインメント博士™と並び世界三大法務部門と呼ばれるこの機関の錆びれた玉座に座るのは、歩く官僚災害、脳の防腐処理を忘れた89歳の老害たるシェルドン・カッツだ。その小賢しい頭脳は悪を正義に、神格を悪魔に変え、民事、刑事、宗教裁判のいずれでも負けたことがない。特にTtt社が原告となったThaumiel訴訟は、10年経った今でも世界中の法学部の話題の的となっている。いくらこちらが有用性、科学の発展を説こうとも、神をも恐れぬ奴らには無意味だった。つまるところ、研究チームに残された道は、監督者の安全基準をクリアすることだった。金銭の問題は宗教法人税、ノウアスフィア干渉許可など大量の支払うべき代金があったが、それは監督者へ向かうもののみではない。上記で上げたアンブローズ・レストラン、Mirai社、更に宣伝協力を請け負ってもらったマクロカオシズム、E&E社、マクスウェリズム社など、文化発展への寄与は幾分の徳政にもならずに容赦ない請求が立ちはだかる。いくら支援金が出ていたとしても、一時期実験の続行に暗雲が立ち込めたこともあった。

 そんな中に手を差し伸べたのが、超常重工業の会社である日本の東弊重工。この会社は今でこそ多少おちぶれているが、20年から30年の超常科学史はプロメテウスと東弊の2社が支えてきたといっても過言ではない。そんな東弊がこの事業に全面協力を申し出た理由は、この研究と東弊社の多面的な利害一致だ。社には神格を利用した発電で大規模な事故を引き起こした過去がある。この事故は各方面に大きな衝撃を与え、プロメテウス社も怖気づいて予定されていた神学研究、活用を中止してしまった。この事件がなければ、この分野は20年早く発達していたとさえ言われる。そして、今回画策しているのはそのリベンジだ。過去の影からくる社のある種病的なまでの神経質さ、安全管理は財団の禁呪をやすやすクリアし、巨人の右肩は大きく下がった今でも学生の金銭事情を支えるのに十分な高さとなっている。更に、社がフランチャイズや補助商品開発など大きく関心を寄せているパラスポーツ、スシブレードもこの問題にかかわってくる。次面で詳しく説明するが、今回創成されたスパゲッティ・モンスターは豊穣や身体機能の効率化などの恩恵がある。中でも、名前の通り麺類には殊更加護が強く作用する。東弊社のフランチャイズする「東弊アンバージャック」は革新派なことで知られるチーム。過去に名を馳せた二代目「」などが所属していて、麺類などの俗に呼ばれる「闇寿司」に属するものも頻繁に使用する。そしてそのスシブレートレンドであるのが、精霊。現在、アンバージャックはその上位互換ともいえる神格寿司について模索されている。驚くべきことに、アンバージャックでは「アポセオスシ」と呼ばれているこの神格寿司計画は、アスリート特有の情熱で現代神学研究の一歩手前まで進んでいる。これら2つの理由から、ヘンダーソンらの研究と東弊重工、そして東弊アンバージャックは互いが互いを補助し、一つの目的を達成する同盟関係を築き上げた。そのような経緯があって、現在ではスパゲッティ・モンスターの分霊を寿司に憑依させる計画が進行していて、東弊重工の名は歴史に刻まれるであろうヘンダーソンの研究の「SPECIAL THANKS」のトップに載っているというわけだ。そして、東弊重工の2046年第四四半期は大幅黒字となっている。我が校の生徒が未来を紡ぐ大企業の礎となるのは、極めて喜ばしいことだ。

LORD HAS A GIFT FOR YOU


天からのギフト

 遂に神は降臨した。どんな神にも、 —それが一般的な言葉の定義には当てはまらないとしてもー 信仰があるならば形而下に及ぼされる"恩恵"がある。先ほど軽く触れたように、スパゲッティ・モンスターの恩恵は豊穣、身体機能の効率化、それに加えて旅の安全や詭弁の露呈などの加護がある7。しかし、大量の人間からのEVE放射を受けているとはいえ、まだ誕生から日が浅いために恩恵は薄い。実用化に向けた研究は未だ進行中だが、現在も微々たるものとはいえアフリカ貧困地帯などの豊穣に携わっている。この面で提携しているのは、国際慈善NGOのマナによる慈善財団だ。「マナによる」の字は少々胡散臭い宗教のイメージを感じさせるが、実際にそうでないことはよく知っているだろう。読者の中には疑問を持った者もいるかもしれない。「善性とは言え、他宗教の団体と一緒に行動するのはよくないのでは?」、と。しかし、事実は真逆である。形而上からの恩恵はアキヴァ放射の形で表されるが、これはより強い別の放射があればそれと同じ流れとなる。即ち、他の恩恵がもたらされる場所にスパゲッティ・モンスターのアキヴァを放射すれば、それは別の、より洗練され焦点の合っている流れに統合され、より良い効率で恩恵がもたらされる。更に、共同研究者であるクリスティーナ学院のジワン・カミカセ氏は素晴らしい遺伝異常の持ち主であり、形而上の神との(機械を使うより流暢な)会話が可能である。これにより、まだ弱い生まれたての神との対話、訓練を行い、より高い効率での恩恵享受ができるようになることを期待されている。

 そして、この歴史的快挙を成し遂げた三者には、史上初の学生としてのスクラントン賞授与も噂されている。緩慢な進歩をしていた神学に、大きな、大きな可能性を切り開いたのだ。三校在籍の教授らのみならず、境界線イニシアチブやICSUT(彼らの脳でも理解できる丁寧な論文を書いたことは、間違いなく授賞理由の一つとなるだろう)の中でさえそのような主張が大きい。現在、芸術学部ではアナートのディアリーがhotなトレンドを逃すわけにはいかないとこぞってヘンダーソンの銅(もしくは他の素材の)像を作っている。

 神学のみならず、科学というのはいつだって人間を驚かせる情報を秘めている。予想の斜め上どころか、四次元方向を指さす場合だってあるのだ。読者諸君も普段当たり前のように思っていることが事実なのかどうか、疑ってみてほしい。例えばこの新聞の価格欄。ディアリーならこれがジョークだということは当たり前のように知っているだろう。だが残念ながら、神にジョークは通じない。この新聞を取った人物からはEVE10Kj(人体にほとんど影響のない量だ)が徴収され、スパゲッティ・モンスターに捧げられる。あなたの購読は、今は育ちかけの実が1つ生るほどにも満たない恩恵となる。しかし、神学研究が進めば、祈り1つでアスポーテーションさえ出来るようになる未来がやってくるかもしれないのだ!皆にも、その発展を支える柱となってほしい。それじゃあここらへんで、祈りを捧げて終わりにしよう。今もなお貧困にあえぐ子供たちの満腹と科学の発展を願って、ラーメン!

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  1. portal:6321361 (14 Apr 2020 06:12)
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