嫌々ながらの主と次元旅行する主

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13 September, 2004

9:47 UTC-4

ユニバース01 ""

セントラルパーク・スタジアム


秘密主義の体現のような黒一色の部屋の中に、12人の惑える男たちが座っている。ドアが再び開き、明らかに小学生程度にしか見えない少年が少量の汗を流しながら駆け込んできた。「すまない、[時間嵐]に巻き込まれてね。資料も目を通せてないんだ──おそらく9,000年前に誤転送されて、今頃化石になってる。新たな聖遺物の認定について、だったね?」少年は黒く凝り固まった老人のような声を吐き、20代の有頂天の起業家のような雰囲気で話し続ける。少年が顔にトーラス状の機械を当てると火照った顔は急速に冷却されていく。

少年が席に座ったのとほぼ同時に、部屋の時計上の不規則に動き続ける6つの針が次第に遅まって83時の位置に収束した。

「緊急の招集となってしまい、こちらこそ申し訳ない、各々の予定も詰まっているだろうから早めに終わらせよう。まず聖遺物の概要だが、先日アトラル郊外の管理番号SCP-1437に跳躍してきた宝石だ。この宝石は漂遊人格を有しており、管理に当たっていたサラ女史を死亡させた。」

扉から最も遠い位置に座る司祭風の白いローブの男がそこまで説明したところで、隣の白衣の青年が遮った。

「待った、彼女は死んではいない。ただ意識が消失しただけだ。漂遊人格の研究は進行中だ、言葉は謹んでもらおう。」

「ともかく、だ、あれが彼女に災禍をもたらしたことに違いはない。そんなものが聖遺物として適うのか?」背筋を丸めた黒服の男が爪を噛みながら叫ぶ。彼が叫ぶ間も爪は伸び続けている。

「グラブノックの伝聞書8章から13章」司祭が結論を引いた。「我らの教祖は無辜の民を死に至らしめた怪物と出会った。かの者は怪物に本能の枷を授け、その罪を赦した。遺族らは怪物と教祖を糾弾し呪ったが、かの者はその世に永久に立ち入らないことを誓い、怪物の罪を捨てて彼と共に別の世界へ飛び立った。」

一人ほどムズムズとした面持ちの聖典註釈者がいたが、司祭は無視して続けた。

「ここから得られる教訓は、如何なる罪であれそれが螺旋と波紋を遺さずに贖われるならば赦される余地があるということだ。漂遊人格に聞き取り調査を行い、恩寵を確かめる試練として遷教補佐の任務を与えた上でそれを果たせたならば聖遺物・聖人として祝福する。これが私の提言だ。」
結局のところ、一度誰かが境界線を引いたならそこからどちらにでも動かして良いことは起きないということを皆が知っていた。

「9章2節からの一連の行いは遺族への贖いと捉えるべきではない。」註釈者があくまで声を抑えて叫んだ、「が、君の提言自体に異論はない。」彼は意見を出し惜しみしているものがいないかと最初のペンギンの役を担ったつもりだったが、空間には沈黙が満ち、静寂の形をした同意が飽和量に達した瞬間に時計の針が一層重々しく響いた。

「異論はないようだな。解散としよう。」司祭は立ち上がって言った。「基本的には私が用意しよう。『天文学者』、聖人と聖遺物が増える準備をしておいてくれ。」

「あいよ。」宙天など一度も見たことがなさそうなスーツの男が同意する。

「『預言者』、直近に新世界へのぶの予定がある遷教師はいるか?」司祭は椅子をしまいながら口を動かす。

「エルドって名の上級遷教師が1名、調査員が処女跳躍を終えたばかりの暫定番号ユニバース061へ行く予定だ。事前報告と観測の推定危険度は6、エルドは今頃遺書を書いてる頃だろう。」灰色の服を着た男が6本の腕で手帳とカバンと帽子の中のメモ帳と携帯電話を忙しなく操作しつつ答える。

「試練としては申し分ない。彼に補佐が1人入ると伝えて置いてくれ。」司祭は部屋から出つつポケットから細長い機械を取り出した。

「了解。」『預言者』の声が司祭の鼓膜を震わせたのと同時に機械のスイッチが押され、司祭はその場から姿を消した。

13 September, 2004

9:47 UTC-4

アメリカ合衆国 ニューヨーク州

セントラルパーク・スタジアム

アトラルの首都エルメスには4方位それぞれに最古の4聖人の名前を冠したホテルと教会がある。権威ある教会の門にはやや場違いな一人の若者が通り抜け、跳躍を控えた遷教師だけが泊まれるホテル・イドンの地下階へ降りていった。地下1階には最先端ながらも威厳ある跳躍装置が全面ガラス張りの部屋に安置され、地下ロビーからはそれを自在に見渡すことができた。

「エルド様、お待ちしておりました。こちらがエルド様のお部屋、地下237号室のキーでございます。」フロントに立つリング状の身体をしたレセプショニストは黒電話のダイヤルを思わせる品のある動きでその男にキーを手渡し、感覚器官を一直線に揃えて礼をする。エルドも軽く礼を返し、「朝食と掃除は不要だから、呼ばない限り部屋には立ち入らないでくれ。出発の1時間前に電話だけ頼む。」と伝えてロビーから237号室へ転送された。

部屋には既に数人の先客がおり、服装からして厳重に警戒をした作業員が1人の少女を押さえつけていた。エルドは少し怪訝な顔をしたが、それでも作業員らへの礼を失さない表情へと戻してから口を開いてみた。
「会うのは久しぶりだが…」それ以上の言葉は特に思い当たらなかった。彼女の顔は大学で何度か見たことがある程度であったが、それでも「女性」より「少女」に近い状態で成長を停止させられたと語っていた彼女には見覚えがある。将来に邁進していたエルドと違いいずれ道が見えたらそこへ進むといった風な苦学生だった彼女が拘束されてエルドの隣に立っているのは同情と疑問、そして僅かなプライドへの傷を彼に与えた。
「少しばかり申し上げにくいのですが」作業員が奇妙な悔やみを序詞に沿えて話し出す。「彼女の精神は今や『サラ女史』ではありません。」
これの意味しうることは複数あったが、「背乗りか?」
最もありがちな可能性を覚悟した。時には他人の肉体を抹消し、外見を分子レベルで模倣してその人物の世界へ溶け込もうとする人間がいると聞く。しかしながら、彼女は控えめに言ってもそうするほどの地位的魅力がある人とは思えない。

「いえ、違います。この肉体は正真正銘彼女のものです。しかしながら、彼女の精神は現在、漂遊人格に支配されています。」冷静な伝達を軸にしながらも、作業員の声には確かにサラ女史への[同情?]が含まれていた。
「そういうことだ、クソ忌々しいがな。」サラ女史はソレはかつてその中に無垢な魂があった頃では想像もできないような不快感を込めた声を発した。仮にそれに哀悼や同情が含まれていたとしても、全て自己中心的な苦々しさにかき消されているだろう。詳細不明の同行者がいるとだけは事前に聞いていたが、どうやら相当な厄ネタらしい。「そもそも拘束までする必要のある存在を跳躍に連れて行く理由は何だ?」エルドは何も想定せずに疑問を投げた。「この精神は異なる世界から自らの魂一つでこの世界にやってきました。それだけで理由は十分でしょう。」まずいな、不敬だった。

「それでなんだ?十字架の上でお前らがケツを差し出し続けるのを見るのが私の任務ってなら願ったりだがな、どうせ神は試練の在庫処分を私に一任しているんだろう?されるがままさ、私は何をやらされる?」その言葉を聞いて最初の3秒でエルドは自身の脳からかつてのサラ女史を彼女の名誉のために抹消し、次いで女性と品性の観念を一時的に凪がせた。従ってソレがTo doを尋ねているとの翻訳に成功し、跳躍の同行者となることをソレに伝えた。

「へぇ、命からがらここまで逃げてきてやったのにまたどこかに行かされると。おたくの世界でも移民問題は苛烈かね?」

自暴自棄に嘆いているソレの声をかき消すように電話が鳴った。このまま連れていくしかなさそうだ。「されるがままさ、どこに行くのか知らないが自分の足で喰らい歩いてやるよ、だからこれを外してくれないか?」作業員らはしばし顔を見合わせたが、結局ソレの拘束は解かれることとなった。

廊下には

少女拉致監禁誤解の解除
少女の転送経緯の説明(精神年齢の乖離を含む)
対話によるやるべきことの確認(他にやることもないので不承不承)
軽い荷物整理
跳躍!

場面転換、カミソリの下り
[わる財読み込み]徴税官の登場、折角ならオブジェクトを使って金銭以外の概念徴収もさせたい
無闇な干渉をさせたいが、ブライトはそこまで愚かじゃない、エルドは今後の展開的にやるべきでない
どうするよ?

最悪の場合、記事リセット症候群再発
・主人公?の遷教師
あんまりベテランだと困る、それは間違いない
漂遊ブライトの扱いをどうするか
①本人の心持ち
元の世界に帰る気はないだろう、5000だし
名前はギリギリまで隠したい
罪悪感; 当人と周囲のインセンチブに大きな影響を及ぼす→詳しく分析しよう
 あり: 当人は関係者への贖いと彼女の再生を試みる; 自前の知識でできないのは自明だろう(ブライトだらけから理論を編み出してるかも?)
関係者の方は不慮の事故であることを考慮して全面的に糾弾することはないだろう 個々人がどう思うかは個々人による
 なし; 即ち、エルマ側に対処法があるかそもそもブライト化したのが罪人とか(少なくともブライト博士は今更罪人相手に罪悪感を感じることもないだろう、そもそも一般人にさえ感じるのか?) 本人はまあ好き勝手冒険するだろう
関係者側としては存在が異世界跳躍を自力でこなした秀才にして聖人(原義)の使徒、およそ望むがままにさせてくれるだろう
③わざわざ連れてく理由
罪悪感あり; アトラルでのこの殺人(仮)の罪もまた跳躍で放棄できるはずだ 彼女のボディ保全は? 知らん 脳死のような推定死亡なら最早モーマンタイ、そうじゃなきゃ今から考える
なし; ブライトはどっか見たい、関係者は聖人なら渡り跳ぶものだと納得する
④エルド(仮)との関係・態度
エルドのキャラクターも決定してないのに作れと?

しばらくは見れなくなるアトラルの朝焼けは、エルドの知る語彙では「憎悪色」に近いように見えた。あまり好きな色とは言えないが、遷教活動を続けるならいつかはこれが恋しくなるのかもしれない。起き上がろうとしてみると背中が痛い、そこで明日からの活動に慣れるため簡素な寝袋で寝ていたことを思い出した。エルマを国教としているアトラルだ、必要とあらば近場の教会で遷教師向けの最高級カプセルベッドを無料で頂くこともできるだろうし、それを咎める不文律もなかったが、エルドは現地の様式と現地の苦難に身を任せることを好んだ。人生で初めて遷教のための跳躍、それもエルマによる跳躍履歴のない宇宙への転移に対して警戒心がないと言われれば反論はできないが、「遷教師アルゴンの怠惰」の逸話にあるように女神の思し召しにすべてを託すことを心に決めていた。

寝袋を使ったことそれ自体に後悔はなかったが、噂に名高いホテルエルメス地下階の絢爛なるベッドに一晩浮かべなかったことは紛れもない損失だったろう。普段はエルメス本部を拠点としている高位の遷教師と各界の著名人、来賓として訪れたVIPの異邦人のみが入れるこの地下階を使えるのは、彼がエルメス神学院の成績優秀者であるからに他ならない。エルドは自身を筆記試験ができるだけで未来ある他人の枠を食い潰す人間だと卑下していたが、彼の努力と身体検査結果と信心がそれを否定していた。

スイッチを1度押すだけでエルマのローブへと瞬時に着替えられる。地下から天を覗く透過窓のカーテンを閉める必要すらなかった。最悪の場合最後の晩餐になるかもしれないという悪しき考えを払拭しながらフロントから届いた朝食を食べ、シャワーを浴び、跳躍までの時程のメモと時計に3回ほど視線を行き来させる。問題ない、あと1時間30分。荷物も昨日見たはずだが今一度確認して、必要になる可能性のあるものが思い浮かんだら階に行くのもいいかもしれない。たしかホテルエルメスの1ブロック先には「宇宙一のデパート」を称するデパート・得る萬1があったはずだ、必要があったらそこに行こうか?ノック。ああもう、何か問題が?

「失礼いたします、エルド様はいらっしゃいますでしょうか?ガガガ・アキステノ様から緊急のお呼び出しがございます。」

ドア越しにホテルマンの声が聞こえる。緊急?緊急????緊急呼び出しこそが緊急事態だ、何かをしてしまった?ガガガ先生の担当はあまり取っていない、つまり先生が責任者となっているこの跳躍それ自体に関わる何かだ。不正はした記憶がない、女神エルマに誓ってなんらやましいことはやっていない。跳躍装置か私の前に跳躍した人に何か問題でも起きたのか?ともかく行くしかない。役目を十分に果たしたとは言い難い歯磨き粉を吐き出してドアを開け、シャワーを全く無駄にする程の汗をたらしながらホテルマンに案内される。地下101号室。この世で最も恐ろしいもの、それが目上の人からの突然の呼び出しでなくてなんであろうか?

「失礼します、ところどころ整っていないのは申し訳ありません、緊急とのことで───」彼はそこで初めて101号室を目視し、言葉と礼儀を忘れた。べつにこの部屋は特別な部屋ではない、角部屋で窓の位置が違うことを除けばエルドの部屋と全く同じだ。そしてその部屋の真ん中、ガガガが横を向いて座っている席の向かいの椅子に、見知った人間が縛られていた。

「一体、サラ、いえサラ女史に何を?彼女はこの遷教プログラムの枠に入っていませんよね?…それに、それに縛られるような謂れもないはずだ。」
慌てて「です」と訂正したのが彼の正気の臨界点だった。サラとは唯一無二の親友とまでは言えないだろうが、間違いなくかけがえのない友人の一人であった。どちらも同じ遷教師、今も研鑽のための修行を続けておられる老師ニールセンに元の世界の惨状から救われた過去を持ち、その縁からもよく交流するようになっていた。その彼女が今監禁のような形で縛り付けられている。

「いや、縛られているのには妥当な理由があるんだよ、君が慌てふためいているのと同じくらい妥当な理由がね。来る前に話しておくべきではあったんだが、どうやら私もあわてているらしい。」
「現状を率直に言おう; 彼女は死んでいる。」
死。あらゆる生物に平等かつ必然的に訪れるべき結末の名であったが、それにもかかわらず彼女とは最も縁遠い言葉でもあった。彼女は輪廻が錆びついた世界の生まれだ。死神は世を徘徊して鎌を振るうものではない。死神の死んだ世界で死神を持たずに産まれた彼女はどんな世界へ跳んでも介錯人を授かることはなかった。跳躍の本質とは元の世界との因果を放棄することではあるが、死との無縁と縁切りすることはできない。見よ、彼らの恩師を否定するように彼女は少しずつ意識を取り戻し、目を開けて動かせぬ身をうごかそうとしているではないか!

「ウム…うぅん….クソ、なんだこの縄は?なるほど、俺が脳みそぶっ飛ばすのを止めようとしてるって話か。」
いや、確かに死んでいた。少なくともエルドはそう信じたかった。彼女は豪快な女性であったかもしれないが、決して粗野でも下品でもなかった。

サラの身体に居るモノが唸っている間にガガガは話を続ける。「彼女は脳死し、意識は漂遊人格に侵された。彼女を救う手段はこのアトラルの技術を以てしても何一つないのが現状だ。本当に残念に思っている。」
漂遊人格は彼女のそれとは違う不死身の在り方だ。自分の意識の全てを生命でない物質に宿らせ、それと縁を結んだ知性体に寄生する。物質に宿った魂は摩耗することなく宿主の身体と接続され、その体験を保持したまま別の知性体と縁を結ぶことができる。この概念の詳細は未だ十分に科学されておらず、都市の仙人、禁忌の魔術師、謎多き錬金術師などとどれも如何にもな二つ名を持つ少数の存在が達成したという曖昧な記録だけが残っている。

「この中心宇宙アトラルで何があったらそのような…禍々しいものに憑かれるんですか?彼女はただの学生だったでしょうに。それに彼女がそのような目に遭ってなぜ僕が呼び出されたんですか?」疑問を持ったから質問をしたのか、それとも悲嘆を吐かないために疑問を生み出したのか分からなかった。

ガガガは目の前のソレが抵抗を諦めたのを見て取った。「1つ目、彼女がこのようになってしまったのはバイト中だ。同位体整合団体SCPで彼女はここではない宇宙と繋ぐ穴の監視業務をしていた。恐らくそこから漂遊媒体が排出され、彼女は誤ってそれに触れてしまったのだろう。」


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執筆者: Mr_hayatochiri
文字数: 8828
リビジョン数: 24
批評コメント: 0

最終更新: 30 Dec 2024 16:52
最終コメント: 批評コメントはありません

彼女は輪廻が錆びついた世界の生まれで、100年余りを監禁されて過ごしたのだと言っていた。彼女の両親は一時の快楽のために永劫の地獄に苛まれる生を1つ増やし、官憲にそれが露見するまで17年、露見してからは実験施設で94年を過ごしたという。もし[~1/∞]


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