結婚は楽しい

このページの批評は終了しました。


 ノガレス研究員は彼をデートに誘おうと考えていた。財団で休みを、それも二人同じタイミングで取れるのはとても稀であったからだ。彼に合わせて休んだことはまだ気づかれていないと思うが、善は急げという。今すぐ彼の部屋へ向かおう。ノガレスがそう思った時に、業務用のスマホが鳴った。財団に忠誠は誓っているが、彼との恋路にのしかからせる程ではない。どうせ部下が新たなオブジェクトを発見しただとか、Anomalousオブジェクトを壊しただとかそんなことだろうと思って、適当に先延ばしにするつもりで開いた。だが、その内容は面倒だなどと言っていられるものではなかった。

 "SCP-001報告書の審査依頼"。送り主は、さっきからずっとどうやって誘うかを想像していたポロナイズ博士。ナンバーも送り主も、何度見返しても間違いはない。001ダミーファイルを作れだなんて命令は上から出てないし、忘れていたとしても気の利く上層部の奴らは"思い出させて"くれるはずだ。ともあれ、送られてきたからにはこれを読む以外に道はない。覚悟を決めてファイルを開く。



 ダメだ、特別収容プロトコルしか読んでいないが、頭が混乱してくる。注記もない謎のオブジェクトクラス、収容違反目前なのに対策は無し、それに“この報告書の完成をもってSCP-001はノガレス研究員に譲渡されます”だって?
 頭を冷やして見直したい。エアコンをつけよう。待て、部屋もおかしい?見慣れているはずの自分の部屋は、肉とクリームで出来たような壁の中にある。もう一度スマホを見ると画面はフラクタルな画像に変わり、足が生えてどこかに駆けていった。何だ?何の異常だ?頭の片隅に僅かに残った冷静な部分で考えようと試みたが、その残りも部屋の壁のようにぐちゃぐちゃの思考になった。今は本能と身体と脳が叫ぶ言葉に従え。

逃げなければ。

 私は今ファイルに埋め込まれたナニカでおかしくなっているのかもしれないし、そもそも送られてきたこと自体が罠だったのかもしれない。やはり脳の整理はできないし、死体に整理された記憶が入っていても意味がない。今は命がけで、走れ。ドアを開き、廊下に出る。左側からは蝋の海が迫ってくる。ここは現実かそれとも地獄か?なにか解決策があるとすれば一つ。彼、ポロナイズの所へ行かなくては。畜生、次に会う時のロマンティックな挨拶は10も考えてきたのに、こんなクソイカれた状況で会うことになるとは。廊下を走り、頭部がケーキや包丁になっている人もどき共を押し退け、ポロナイズのドアの前まで着いた。鍵はかかっている。生きたポロナイズが部屋の中にいることを願って、ドアを叩き腹の底から助けを求める。

「助けて!何もかもがおかしくなってる!きっと収容違反よ!報告書を見てからおかしいの!あなたが送ってきた001を再収容して!」

この地獄の喧騒の中でも、誰かがこっちに来る足音がはっきりと聞こえる。ポロナイズがドア越しに語り掛けてくる。

「いや、SCP-001は収容できない。でも、影響をうまい具合に取り扱う方法を思いついたんだ。」

ドアが開き、博士が出てくる。博士の頭は真っ二つに割れ、鼻より上が床に落ちる。血の一つも流れ出ない断面には、小さな小箱がはまっている。恐怖で自分の耳をもつんざくほどに叫んだが、彼の声は直接頭に届くかのように容易に聞こえる。

「ノガレス研究員、結婚してくれるかい?

何?なんだって?今なんて?全身を焼かれたあとに氷水に叩き落されて感覚が麻痺するように、混乱した頭は何も考えられなくなってショートしていた。彼女が言葉の意味を数十秒後に理解したとき、突き飛ばされていた包丁男の腹の中から男が出てきた。

「やあ!Laugh is Funのラフィ・マクラファーソンだ!今回のドッキリは楽しんでくれたかい?」

ああ、ハハ、なんだそうか、そんな単純なことか!この陽気な声でやっと気づいた。笑いと安心で思考も生き返ってくる。なぜわからなかったのだろう。自分のことが本当に笑えてきてたまらない。これは全てドッキリだったんだ!肉壁もケーキ男も、そして、ポロナイズからのプロポーズも。

「おっとお嬢さん、どうやら何か勘違いしているようだね!その彼氏さんからの箱の中身は一体なんだと思う?」

そう司会者が言ったと同時に、博士は頭の箱を開けた。指輪。結婚指輪だ。ああ、なんというお馬鹿さんなのだろう!私に告白するためにこんなサプライズまで仕掛けてくるなんて!心が躍るようだ。夫の体を抱きしめる。こんな幸せな時は笑うに限る。そう、笑おう!笑おう!笑いあって共に生きていこう!二人で笑える人生を歩んでいこう!


「みんな、今回も楽しんでくれたかな?今回はスペシャルサプライズ、とある2人の結婚の物語だ!人生は山あり谷あり、その中でどれだけ楽しんだということが重要だろう?特に、プロポーズされるなんてロマンティックな日が来たときなんかは、喜んで笑うっきゃない!面白いも嬉しいも、全部一緒くたにして笑おう!笑って幸せを感じよう!君たちがまたこの喜劇を見に来てくれることを楽しみにしているよ!そして忘れないでおくれ、笑いっていうのは楽しいもんだ! 僕らと一緒に笑おう! 笑おう! 笑おう! 笑って僕らの仲間になろう!」






 インターネットにこの感動的なプロポーズが公開された時、血塗れのまま放棄されたサイトで、指輪と2つの亡骸がひっそりと消えた。

ERROR

The MrDrYTisgod's portal does not exist.


エラー: MrDrYTisgodのportalページが存在しません。利用ガイドを参照し、portalページを作成してください。


利用ガイド

  1. portal:6321361 ( 14 Apr 2020 06:12 )
layoutsupporter.png
Unless otherwise stated, the content of this page is licensed under Creative Commons Attribution-ShareAlike 3.0 License