地獄からの退店、あるいは別の地獄への入場

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「ファック!俺らの街をぶっ壊したんだ、出口の場所くらい教えたっていいだろ!?ロイ!ここから一番近い町はどこだ!」

「10km先、コウカンだ。ぶっちゃけると、俺たち100人全員があそこまで逃げ切るのはきついだろうな。」

普段通りの彼らであれば、店員は難なく殺すことができただろう。だが、街の崩壊、住民と店員とも双方あまりに多い人数、そして数年ぶりに見た血を流す屍が彼らの冷静さを悉く欠いていた。

「あー、あまりいい案ではないと思うが、最善の選択がある。運命に全て任せて、イケアの四方に散らばることだ。合計で見れば、生存率は上がると思うぜ?」

果たして彼の案は採用され、彼らは散り散りに分かれた。先ほど愚痴を言っていた青年、ジョゼフは彼とロイ含め10人ほどのグループとなったが、最悪なのは店員が揃いも揃って彼らの方向へ走ってきたところだった。

「このグループの中に"血が出ないバケモノ死体愛好家"がいるなら名乗り出てほしいが、一体全体俺らの何があいつらの心を惹きつけてるんだ?」

独り言気味に叫んだところで、彼らの一人の物資に挟まっている肉片が見つけられることはない。彼らは武器を持っていたが、生憎2桁にも登りそうなスタッフのバーゲンセールをいなすほどのものは無かった。

ジョゼフはこのまま12時間耐久デスマラソンをすることを覚悟していたが、その時彼の目に、今までイケアで見たことのない絶望を叩きつけられた。行き止まりだ。今までにイケアで、いや外にいたころのショッピングモールでさえI字型で行き止まりの通路を見たことがない。彼ら10人は一様に同じことを確信した ──死。

ウィーン。

彼らの後ろの壁から、久しく聞いていない電子音と摩擦音の混ざった音が聞こえてきた。彼らが何年も望んでいた音。ふと上を見ると、希望の4文字、E,X,I,T。目配せすら要らない、彼ら10人は一斉にイケアの外へ飛び出していった、その先に何が広がっているか確認もせずに。


右を見れば美しいほどに緑の炎が燃え盛っていて、左は統率なく逃げ惑う人たちがいる。息もつかせてもらえない、後ろでは、何人かの職務怠慢なイケアスタッフが外に飛び出さんとしている。

.1秒にも満たない逡巡の後、彼らは行く先を決めた。少し距離を置きながら、亡者さながらの人々の流れについていく。上を見上げると、看板がこの地がアメリカのマンハッタンだということを示している。

「なあ、すまない、そこの人!今は緊急事態なのか?どういう状況なのかわかるか?」

ジョゼフは近くにいた小太りの男に尋ねる。

「俺だって分かんねえよ!いきなりWTCの方からヤバイ爆発があったと思ったら、ショパンみてえな地獄が広がってたんだ!」

意味の分からない言葉もあるが、この状況はこの世界にとっても普通じゃないようだ。どうやら、今はアメリカ同時多発マジカルショーの真っ最中らしい。この世界のアルカイーダは地獄の作り方を学んだのか、とジョゼフがそんなことを考えているうちに、人々の川が豪華を体現したようなホテルになだれ込むのが見えた。事前に決まっていたのかは知らないが、どうやらここが避難場所らしい。既に結構な人数が避難しているらしく、入り口では警官やアンドロイドのような男たちが迎え入れてくれた。

ホテルの部屋は有り余るほどにあったが、もしもの時のため、と言って下の階の部屋から1部屋4人ほどが割り当てられた。ジョゼフは難民組の中で余り(彼に人気がなかったわけではなく、機械的に割り振られたのだ)、もう1人余ったガッフィアスの他はアジア人とアメリカ人の2人組と一緒になった。

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