充分に発達したスポーツは、戦争と見分けが付かない。
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メモ: プロメテウス・ジャーナルではスニッチが仕様変更されているが、この頃はクィディッチ黎明期でルール模索中だからということにする。

13 September, 2004

9:57 UTC-4

アメリカ合衆国 ニューヨーク州

セントラルパーク・スタジアム


その新設されたスタジアムは騒然を超えて最早狂乱と言ってもいい有様だった。3年前は祈祷と悲鳴で満ち溢れていたセントラルパーク跡地に突貫工事で建てられたこのスタジアムだが、この観客らをただの復興支援の慈善業者と呼ぶにはあまりにも理性に欠けている ──もっとも、それこそがスポーツスタジアムの在るべき姿だろう。

出場選手の独占取材を取り付けたニュートン・ウリックにとって、関係者特別席に座れるのは独占取材と同じくらいに胸躍ることであった。先方の都合だの粘り強い交渉だのといった面倒なことは上に任せるというのが彼の信条だったため、昨日の夜になって急遽取材が決まったと聞かされてもそういうものだと受け入れた。それに、スポーツは彼の大好物だ──特にクィディッチは。97年にローリングが彼らの脳に夢を植え付け、1年後にショパンが夢を現世に押し出して以降、クィディッチは世界で最初の異常パラスポーツとして再誕した。マンハッタンの魔法少女の件もあって急速に現実化と環境整備が為されたこのスポーツは、いくつかの国がプロチームを擁するほどとなっていた。

いくら急な予定だから仕方がないとはいえ、流石に彼の格好はこの空間には場違いなものがあった。色が落ちたのか元の色なのか分からないカーキ色の服と安っぽい鳥打帽もそうだが、丸められた新聞を握っているのも周囲には彼以外にいない。周囲の人間は別に彼を怪訝な目で見るわけでもその他の関心を持つわけでもなく、談笑や激励など各々の職務に取り組んでいた。43番の席を見つけて荷物を置き、ウリックは手に持っていた自社の新聞を広げる。恋昏崎という日本のメディアを一躍有名にしたのもこの記事だ。つまり、巡り巡ってイロスエ氏は彼の恩人ということになる。まあ、どちらにせよ数段ほど立場が上の上司だが。

ものを書くにあたってその題材に精通しているというのは大いに歓迎されることだが、それに心を囚われているというなら話は別だ。一般人がクィディッチに対してどれほど無知なのかウリックは予想さえできなかった。ならば草稿を組み立てる他ないだろう。

恋昏崎新聞社

スポーツ

####クィディッチ読者説明草稿####

現在時刻: 2004/9/13 10:13
クィディッチとは、選手全員が浮遊した状態で相手チームの妨害を避けつつ敵陣にあるゴールにボールを投げ入れる球技である。1チーム7人4ポジションで行われ、1人はゴールを守る「キーパー」、3人がボールを運ぶ「チェイサーと」なる。

飛行しながら行う以外にもこのスポーツには数多の特異な点があるが、おそらく最大の特徴は3種のボールが存在することだ。チェイサーが狙う通常のボールは「クアッフル」と呼ばれ、これをゴールに入れると10点。

ゴールに入れても点にならず、そもそも誰にも制御できない自律暴走球の「ブラッジャー」が2つある。付近のプレイヤー目がけて無差別に突進してくるこの危険なボールを仲間から遠ざけ相手の側に追いやるのが、チームに2人いる「ビーター」である。

そして最後の1球は小さく素早く不規則に動く「(黄金の)スニッチ」、これのルールは単純だ。残る1人の選手、「シーカー」が担う役割はこのスニッチを掴むことだけ。そして、その瞬間に掴んだチームには150点が与えられ、ゲームの半分が打ち切られる。

ゲームは前後半に分かれ、スニッチが掴まれない限りにおいてはそれぞれの試合時間は40分だ。


こうして書いてみると、キーパー以外はほとんどが馴染みのない用語だな。そう思いながら時計を見遣り、10時15分、各チームのコート内ウォーミングアップ開始を待ち構える。ここセントラルパーク・スタジアムを本拠地とするマンハッタン・マジカルガールズが先に入場し、日本からの使者イッポンスギ・ヤタガラスを出迎える。この特別席から入場ゲートは立体的に遠く離れているが、最新鋭のパラテク義眼を凝らせば今日のインタビュー対象がはっきりと見えた。マンハッタン・マジカルガールズ所属、背番号17番、シーカー、リリー・サルベート。

彼女は「マンハッタンの魔法少女」ではない、つまり初期メンバーではない女性だが、半年前に加入して一躍チームのエースとなっていた。[色/分類による弱性提示]でありプロメテウス社製の奇跡論増幅器を搭載した箒を使用していたことは一時期物議を醸したが、現地の番組で彼女自身の身のこなしを見せつけてからは文句を言う者は一人としていなくなった。

こんなところだろうか。そう考えているうちにいつの間にか開始までの残り時間は10分となり5分となり、ウォーミングアップを切り上げ一度裏に戻った選手たちが入場してくる。ある選手は曾祖母から受け継いだ箒を、またほかの選手は自らの羽根を、そしてサルベートはプロメテウス社製の奇跡論箒を使って空から入場してくる。

ここセントラルパーク・スタジアムを本拠地とするマンハッタン・マジカルガールズ、日本から(出向)してきたイッポンスギ・ヤタガラス。両チームの選手入場が終わり、(n)年前のテロの犠牲者に黙祷が捧げられる。
黙祷が終わり、選手たちはポジションにつく。羽根を持った悪魔実体の審判が中央へ向かい、ホイッスルが


全観客はそれに釘付けになり、自らの役割を果たそうとしていた選手たちも遅れてそれに続いた。彼らの目には慣性を知らないかのように停止したサルベートとその右手に掲げられたスニッチが光っていた。審判がもしも拘束力のない悪魔契約の下で働いていたならば、きっと彼も前半終了の笛を吹くことを忘れていただろう。

10分の休憩の後に後半戦が始まっても、人々はまだ自分が夢の中にいると錯覚していた。一番いたたまれないのは意気消沈の中ながら執念のブロックで後半の失点を20点に抑えたヤタガラスの久方ひさかたキーパーだろう。2週間後に彼のことがようやく日本のスポーツ紙に書かれるまで、クィディッチを扱う全世界あらゆるメディアはサルベート選手を称賛する語彙を競うだけのものとなっていた。



13 September, 2004

11:12 UTC-4

アメリカ合衆国・ニューヨーク州

マンハッタン カフェ・ランターナ


「まだ昼前ですし、コーヒー程度にしておきましょうか。このカフェのオススメのコーヒーはアイリッシュらしいですよ。」

「遠慮しておきます。僕はこの後運転しますし、それに昼食も特に決めてませんからラザニアを頼みますよ。」

・取材
・???
・襲撃
・拷問
・合作
・試合/潜入
・窮地
・圏域
・Happy End


第三法則 1998 tale jp



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