目が覚めた彼女がまず記憶したのは形而下に存在する自己への違和感だった。次に自分が誰なのか思い出せないことに気づいた。そして自らが何をすべきかを身体が知っていることを認識し、理性はその直感に権限を譲渡しその傀儡となった。
視界不明瞭; 霧が出ている。かなり遠くに動かない明かりが1つ; 人工のものだろう。降り積もり今も降る雪; 低体温症の恐れはなし? 痛覚は残っていたし、熱さと冷たさの感覚を想起することもできたがこの豪雪の中では感じない。私がここにいる理由; 不明。私が誰だったか思い出す必要がある。
私の由来; 不明。足跡はない。この雪の柔らかさでは足跡が完全に消えるまで数時間はかかるだろう。この雪が冷たくないことから私の知る常識とは違った挙動を見せるのかもしれないが、何であれ私がどこからやってきてどうしてこの雪原の真ん中で倒れたのか説明するものはなかった。名称不明、由来不明、外見不明、常識欠如、唯一信じられるのはこの肉体だ。整理すべきものは一瞬で組み立てられ、ひとまず「何も分からない」と分かることに成功した。最初に覚えた違和感については考察の余地はなく、とりあえずそれを頭の端に留めながら明かりのある方向へ歩いていく。そこで白衣を纏っていることに気付き、同時に雪に一切の不快感がないことも知った。私の知る雪は体に触れればすぐに融解し衣服の機能を水々しい拘束衣へ誘拐していた。やはり別種の何かなのだろう。
少しふらつきながらも歩いている内にだんだんと明かりははっきりしてきて、遂にそれは酒場の前に掛けられた[提灯?]となった。家以外はどの方角も同じ画しか映さない銀世界は彼女にドアノブを捻る以外の選択肢を与えなかった。
ドアを開けると鈴の音と共に客のざわめきと亭主の声が聞こえる。「いらっしゃいな、お嬢さん。」
「とてもお嬢さんだなんて年齢ではないと思うけれど。」どういうわけか、彼女の答えは対話というよりは反射に近かった。そして、その答えを返すと同時に脳裏に老婦人の姿が、自分だと断定できる像が浮かび上がってきた。
「ここでは見た目なんて関係ないのさ。嬢さんは今ここに来たばっかりだろ?しかも誰か案内人に招かれたわけでもない、道端にほっぽられてな。」
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任意A任意B任意C- portal:6321361 (14 Apr 2020 06:12)
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