古ぼけた神

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朝が来る。目を開く。そして我等の神に祈りを捧げる。
1日が始まる。

ここ数ヶ月、アレは落ちて来ていない。私は1人溜め息をついた。アレを喰わずとも食糧は潤沢にある。それでもアレは我々の間で貴重なものとされている。…おかしな話だ。喰うものを、増して生き物を選り好みするなどあってはならぬ事。こんな罪深い行いをするのは、この星の中でも我々の種族くらいだろう。

食物連鎖の頂点。それは確固たるものであり、どのような虚構もこれを否定することは出来ない。ここ千年余り、我々の天敵は現れていない。その通りだろう。
しかし、頂点という地位は揺るがずとも、明日その座を追われない保証はない。現にこの世は説明不可能な事実が溢れかえっている。

例えば、これだ。

鼠色の、どこまでも高く伸びる柱。随分と進歩した我々の技術でも、この柱の頂点を拝むことは出来ていない。我々は古来よりこれを神として崇めてきた。
何故か。この柱は、我々の知る中で最も美味であり、栄養価の高い生き物を落とすからである。幼少の砌、両親からこの話を聞き耳を疑った。不定期に、たかだか美味いだけの生物を落とすだけの柱を巡り、我々の祖先は戦争を続けてきたそうだ。長い戦争に勝利した国、私の生まれた国が、この柱を神として奉ったのだと。
水はけの良い土壌、暖かな気候、そしてこの柱を得たのだと。

馬鹿馬鹿しい。そんなことのために死んでいった者がいる事を考えると怖気が走った。欲望とはこうも理性を腐らせるものか。

柱を見上げた。
黒い影が見える。落ちて来ている。
「イデルコ」
「お呼びですか、司祭様」
「神が…神がまた、私たちに糧をお与えになったようだ」
「では、儀式を?」
「うむ」

イデルコは信者を即座に集結させた。信者たちは一斉に声を上げる。
落ちてくる。まもなくだ。いつもよりゆっくりと落下してくる、その異形の身体。
アレの事を、私たちは何も知らない。ただ神の恩恵だと言い訳し、解明を放棄しているのだ。
アレは、何を思って落ちて来ているのだろうか。


「そろそろ地上だ」
D-4560は、使命を全うすべくそう言った。
「何がある?」
通信が帰って来た。実験を担当する███博士だ。
「今のところ、変わった様子はないが…」
そう答えながら地上を見渡す。登る前と同じ景色だ。だが…何かが違う。D-4560は真下に目をやった。見たことのない建物がある。教会のような…。
「そっちの下にも我々はいるのか?」
博士が言う。そう言われれば、真下では何かが蠢いている。あと少しで地上だ。あれは博士だろうか?
「ちょっと待て、着地体勢に入る………」
久しぶりの地面を踏む感覚。地面というのはこんなにも有り難いものだったのか。そう思いながらD-4560が顔をあげると、
「ああ、嘘だろ」
ケロイドのような肌質、逆さまの頭、夥しい手足を持った生物。
大勢いた。その全てが、不気味に嗤っていた。ご馳走を前にしたような目だった。全員が彼を見ていた。
「地面に着いたが……クソ。頼むよ、アンタらが下はこんな風になってるって言ってくれてたら、俺は……」
涙が溢れてきた。奴らは俺をどうする気だろうか。楽しそうに嗤っている。
博士が何かがなっている。おそらく俺は今から殺されるだろう。なんだよ。
「上にいた方が良かったじゃねぇか。」

パチン。


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