ある男の話

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男は取り柄のない平凡な男であった。

ごく普通の人生を過ごしていたが、なかなか美しい妻と結婚し、とても可愛らしい娘をもうけた。

男は特別ではなかった、金持ちでもないし、全ての人々から愛されるような人物でもなかった。だが、男にとってこの日々は、どんな宝よりも価値のあるとても幸せなものだった。

ある日、男は不幸なことに暴走車に跳ねられた。

だが、男にとってさらに良くなかったのは、男は全くの無傷であり、むしろ車の方が粉々になってしまったことだった。

男は自分の悪運を嘆いた。


ある日男の元に、財団を名乗る者たちがやって来た。

そして、男をサイトと呼ばれる監獄に連れていった。

男はある程度抵抗したが、彼らは男の声を、願いを聞こうとはしなかった。

さらに男は自身の名を奪われ、数字の羅列でできた新たな名を与えられた。

男にとって、それからの時間はまさに地獄のようであった。

外に行くことを禁止され、24時間監視をつけられ、さらに実験という名目で非人道的なこともされた。

何より男にとって辛かったのは、愛する妻と娘に会えないことだった。

こんな男を認め、好きになってくれた妻。世界で一番愛らしい娘。

毎日妻と娘が無事かが気になり、眠ることもできなかった。

「そのうち出られる」

白衣をきた彼らの言葉を信じ男は耐えたが、それも気休めでしかないことに薄々気づいていた。

白衣を着た彼らは口癖のように「世界の正常」「人類のため」そう言っていた。

男にも彼らの正義が理解できない…というわけではなかった。

自分のように異常な存在がもし悪意をもったら…男にも想像は容易かった。

だが、やはり男は納得ができなかった。

なぜ自分のような者もこの扱いを受けるのか?

なぜ彼らは異常を隠し続けるのか?

異常と正常が交わることは不可能なのか?

だが男の、化け物の言葉を聞くものはいなかった。

男は最後に自身の"死"を願ったが、それも叶わなかった。


ある日、男のいる施設を何者かが襲撃した。

多くの悲鳴が聞こえ、男はただ怯えていた。

全てが聞こえなくなった後、男の部屋に処刑人を名乗るものが入ってきた。

処刑人は静かに言った。

「我々とて慈悲はある。元はただの人間なのだから、最後の言葉ぐらいは聞いてやろう」

そこで男は処刑人に全てを打ち明けた。

ここに閉じ込められていたこと。

非人道的な、実験をされていたこと。

数字で呼ばれ、人として認められていなかったこと。

そして、自分が今最も願っているのは解放されること…もう一度愛しい者に会うことだが、それができぬならせめて一思いに殺してほしいと。

聞き終わり、立ち上がった処刑人は、男が見たこともない、物々しい銃を抜いた。

男はそれを見て処刑人の答えを察したが…何も言わなかった。

男は処刑人に頼んだ。

自分の妻と娘は普通の人間だ、危害を加えないでほしいと。

処刑人は軽くうなずいた後、力強く銃の引き金を引いた。

そうしてその異常な男は、正義を貫く処刑人によって───救われた。


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