私が過去に一度だけ訪れたサイト。サイト81NRは奇妙だ。
いや──奇妙というより奇っ怪。奇っ怪というより変。変というより不気味。不気味というより──怖い、恐ろしいサイトだ。事実、私の頭に"風呂場で見る醜い汚れ"のようにこびり付き、取れない。簡単に拭えそうで、どうやっても落ちることがない。──まるで幼少期に見た悪夢だ。
眼球がひっくり返そうな夏の日。灼熱のコンクリートジャングルの中、私はとある仕事のためサイト81NRに向かっていた。タクシーの行き先は東京都患区。いわばこの熱帯雨林における休息所だろう。クーラーの効いたサイトを思い描くと、自然に口角が上がる。
ハッ!と気づいたときにはもう遅かった。運転手が鏡越しに、冷ややかな視線を私に向けている。
軽く会釈するが、……どうやらもう手遅れのようだ。
──(こうなっては仕方ない。サイトにつくまでは、おとなしくしておこう)。
私は心の中で、静かに誓う。あれは、2015年の夏のことだ。
──サイトに入って"まず"目を奪われたのは、奥からやって来た一人の男性だった。
「赤い」スーツを着こみ、「鼻眼鏡」を付けた彼は、自らを"蝸牛 夢五郎"と名乗った。今考えると変な名前だが、当時の私はなぜか納得した。してしまった。
どうやら彼はこのサイト81NRのサイト管理官のようだ。
奇妙な外見のサイト管理官が出てきたので、今度は人外の博士でも出てくるかと思ったが、思いの外サイト81NR職員はマトモだった。
ただ一つ気になるのは、皆、異様に生気が無い。まるで取り憑かれた様にキーボードを打つ者。無駄に思えるような実験を繰り返す者。そんな人間ばかりだ。……私には、あのサイト管理官より彼らの方が不気味に思えた。
- portal:6286008 ( 07 Apr 2020 06:11 )

コメント投稿フォームへ
批評コメントTopへ